HOTSQUALL “HOPE” INTERVIEW!!
HOTSQUALLが5thアルバム「HOPE」を3月13日にリリースした。
コロナ禍やバンド初のデジタルシングル3部作リリースなどを経て、結成25周年イヤーに完成させた本作はメンバーいわく「過去の自分たちと未来へ向かう自分たちのハイブリッドな作品」。本作について、チフネシンゴ(Gt, Vo)とアカマトシノリ(Vo, Ba)に聞いた。
Text by Chie Kobayashi
「寂しい」と素直に言えた
──本作は25周年イヤーにリリースされる作品となりますが、こういうアルバムにしようという構想はあったのでしょうか?
チフネシンゴ(Gt, Vo) いや。コロナ禍になってからずっと曲作りをしていて。その間に「SEVEN SHOUTS」と「RAIN GROOVES」というミニアルバムも出したんですが、そのときにできていた曲のネタたちを、1曲入魂という感じで、ゆっくり時間をかけて作っていった感じだったんです。だからその時その時の気持ちが切り取られている。それが25周年に向けて、アルバムとして仕上がったという感じですね。
──「曲が集まってきたし、そろそろアルバムを出そうか」という感じ?
チフネ そうですね。もちろん25周年のタイミングでアルバムを出したいという気持ちはあったけど、それにあわせて無理に作ったというよりは、このタイミングで仕上がった曲たちを集めてアルバムにしたという感じですね。だから最初はうまく並べられなくてビックリもしました。
──揃った楽曲を見て「今の自分たちはこういう気持ちなんだ」と気付くような?
アカマトシノリ(Vo, Ba) そうですね。
チフネ 特にこの1年は、俺たちバンドマンにとっては寂しいなと思うことが多くて。だから楽曲のアプローチという意味ではなく、曲に向かっていく自分たちの思いがエモーショナルだったなと思うかな。あと、今までにないくらい素直に「寂しいな」という歌詞を書いた覚えがあります。
──素直に「寂しい」と言えたのはどうしてだったのでしょう?
チフネ いろいろやってきて、カッコつけなくなってきたのかなと思います。大人になったっちゃ大人になったのかもしれないけど、悲しさとかくよくよしている気持ちを素直に出すことに抵抗がなくなってきた。若い頃は、弱っちい自分を見せたくないって思ってたんだけど、そういうことに抵抗がなくなってきたし、自分自身もそういうほうが刺さるようになってきた気がします。
アカマ 本当に特にコロナ禍以降は気持ちが動くことが多くて、その気持ちを残したい、その気持ちをバンドで表現したいという想いで作ったからエモくなったのかなと思います。
──でも素直に出すのが、HOTSQUALLは似合いますよね。ピュアさがあるというか。
チフネ ピュアさか、なるほど。これまでも「寂しい」とか、そういう本音はあったんだけど、そこから「こうありたい」というものを一生懸命歌ってきていたんですよね。“人生を笑え”もそうだけど、「こうありたい」とか「こういうふうに生きていこうぜ」っていうものが多かった。だけど、今回は痛いときは痛いって言うような感じの素直さがあるのかもしれない。だから「似合っている」と言われると「確かに」と改めて気付かされました。
みんなでColdplayのライブを観に東京ドームへ
──サウンドアプローチの面では新しさを感じました。前作のインタビューで「HOTSQUALLらしくないと思って外していたものも、やりたいことだからチャレンジしてみた」とおっしゃっていましたが(https://satanic.jp/contents/558044)、これまではJ-POPとパンクロックの融合がHOTSQUALLという形でしたが、今回はJ-POPというよりも海外のポップパンクっぽさがあるなと。
チフネ あー、なるほどね。うん、その通りです。自分たちとしては、曲作りの流れの中だったから気付かなかったけど、言われてみれば、参考にしている音楽は洋楽だったり、初期衝動のようなバンドになっていったなって。
アカマ うん。
──そういうものを参考にするようになっていったのはどうしてですか?
チフネ どうしてだろう? 自然だったな。でも言ってもらった通り、「俺たちはこうじゃなきゃ」みたいなこだわりがなくなっていったからかも。本当に、自分たちが好きなパンクと日本のポップスを取り入れてやってきたけど、洋楽はずっと好きだし、洋楽を聴いて育ってきたし、最近新しく聴いてハマったものもあるしで、そっちの引き出しを開きまくったって感じですかね。でも意識的にみんなで聴いたりもしたかも。
アカマ うん、そうだね。
チフネ それこそみんなでColdplayのライブに行ったり。
──3人でですか?
チフネ うん、あとエンジニアさんも一緒に。もちろんもともとColdplayは好きだったけど、HOTSQUALLとColdplayって今まではあんまりリンクしていなかったと思うんですよ。でも好きなものは好きだし、そこの引き出しも開けてみようって。Coldplayに限らず、そういうものをいろいろ開けたものの中に、洋楽のロックバンドが多かったから、そういうものができたのかなと思います。
──せっかくなので、今作を作る中で影響を受けたなと思う、最近ハマっている音楽を教えてもらってもいいですか?
チフネ 「Coldplayが好きなんだよ」ってみんなに言って聴いてもらっていたのは僕ですね。もともと好きだったけど、最近改めて聴いて、ますます好きになった。ドウメンはMuseだと思う。最近聴き始めたと思うんだけど、圧倒的にMuse。
アカマ Museだろうね〜。
チフネ アカマちゃんは?
アカマ 俺はFoo Fighters。
チフネ それぞれ1アーティストずつあげるならそれですね。いや〜、Coldplayの東京ドーム、マジで楽しかったな〜。ライブ終わってからみんなで「ああだったね、こうだったね」っていうのも楽しかった。
──そこでは「自分たちでもこういうことやりたいね」みたいな話をしたんですか? それともただただ「ライブかっこよかったね!」みたいな?
チフネ 「ライブかっこよかったね!」ですね。とにかく「ライブかっこいい!」の衝撃が強かったから。やっぱすげえやと思いました。
──HOTSQUALLって根本に少年心がありますよね。鳴らすことや作ることももちろんですが、聴いたり見たりするのも好きなんだろうなと。それが長く続けられる秘訣の一つなのかもしれないですね。
チフネ ああ、それはそうかも。
「Just The Way You Are」はやりたいことが伝わってからトドメのように出したかった
──並んだものを見て、最初はうまく並べられなかったと言っていましたが、本作の楽曲制作において軸になった曲を挙げるとしたら何になりますか?
チフネ 2022年の終わりから2023年にかけてデジタルシングル3部作を出したんですけど、その3曲(「Memories」「Sonic」「Distance」)かな。自分たちとしてはそこからチャレンジが始まったという感覚で。チャレンジだったからこそ、ちょっと出すときはドキドキしていたんだけど、今やライブで外せない曲になって。それが自信になったことも、こういうロックのアルバムになったのかなとは思います。実はそのタイミングで、アルバムの2曲目に入っている「Just The Way You Are」もできていて。だから正確にはその4曲が軸になった曲かなと思います。
──「Just The Way You Are」は、いわゆるHOTSQUALLらしい曲かというと違うかもしれないですが、“今のHOTSQUALL”としてはど真ん中の曲だなと思いました。
チフネ うれしい。自分たちとしてもすごくいい曲ができたとは思っているんですけど、いきなりこの曲を出したらみんなビックリするのかなと思って、「どう思うんだろう?」と思った曲でもあって。今の自分たちがやりたいことが伝わってから、トドメみたいに出したいなと思った。だから3部作を出して、アルバムの軸としてこの曲を出せたら、というのは満場一致でした。
アカマ 「Just The Way You Are」はアレンジをして歌入れまで終わったときに「これは伝わるな」という意識がありました。感動するように歌うとか、歌謡曲っぽくとかポップスっぽくとか、そういうものを超越して、ブッチ切れたなと。“人生を笑え”(「Laugh at life」)の向こう側にいった感じがして、すごくワクワクした。チャレンジした曲でもあるんですが、この曲を表現するために必要だったものという意識で。もともと自分たちの中にあったものをさらに掘り下げただけ。だから挑戦的ではあるけど、HOTSQUALLを好きだと言ってくれるお客さんは、間違いなく好きになってくれるだろうなとも思っています。
──そんな新たな影響も受けながら作った「HOPE」で、特にチャレンジしたことや、成長したなと思うところを教えてください。
チフネ ここにドウメンがいたら、あいつは絶対に「リズム」って言います。それこそ洋楽を参考にしたから、リズムで新しいことに挑戦している曲が一番多いので。
──楽曲の元を作るのはチフネさんとアカマさんがほとんどだと思うのですが、「いつもとは違うリズムを取り入れよう」と思って作っていたということですか?
チフネ そうですね。一旦は慣れているメロディックパンクのビートでやってみるんだけど、「これじゃ今までと一緒だよね」という話になって。今まで作ってきた自分たちの、みんなが知ってくれている曲に勝てないなと思った。それでちょっと違うビートに挑戦してみようと思いました。そういう意味では、特にリズムにこだわった作品な気がしますね。
──新しいHOTSQUALLを見せたかった?
チフネ そうですね。あとは自分たちも飽きたくないし。今までの代表曲に勝てなくて、結局新曲をライブでやらなくなっていくというのも嫌だから、違うリズムで存在感を出したいというのはすごくあったかな。
──お二人がチャレンジしたことはありますか?
チフネ 俺は結構シンプルにすることが多かったかなと思います。メロディアスになると、メロディもどんどん複雑になっていったり、展開が何段階にもなったりするんだけど、そういうものも結構削ぎ落としたし、ギターもあまり難しいことはやらずに印象的なことをループさせたり。足すより引く作業が多かった。これは意識しました。
アカマ これまでは「あれも入れてみよう」とか「これも試してみよう」みたいな感覚で曲を作っていたんだけど、今回は最初に曲のイメージを考えるようになって。そのイメージをもとに作っていったら、そこにまっすぐに突っ走れるようになった。「これはこの曲のコンセプトに合わないからいらない」みたいな判断ができて。歌入れのときも「こんな感じで歌ってみよう」って試してみる、みたいなことがすごく減ったと思う。
──お二人のお話を伺っていると、アレンジやプレイで色付けしていくというよりも、その曲が何を伝えたいかということを全員が理解して、それを表現するために曲を作っているという作り方になっているように感じました。
チフネ わぁ、ズバリそれですね! それがまさに「HOPE」を表現する言い回しでした。
──だからこそ、歌もエモーショナルに聴こえるのかもしれないと思いました。
アカマ そうかも。歌い方を考えるとか、変に俺の我を出すんじゃなくて、「ここはこういうシーンだよね」とか「こういうことを歌っているよね」っていうものに、ただ歌を乗せるというイメージだった。だからやりやすかったですね。その割には何回も録り直したけど(笑)。
過去と今のハイブリッドな作品に
──今作に「HOPE」というタイトルを冠したのはどういった想いからだったのでしょうか?
チフネ 最初に話したように、いい曲はたくさんあるけど、これをどうやって1つにするんだろうと思っていたので、タイトルにもすごく悩んだんです。そんなときに世の中的にいろいろなことがあって。地震も、争いもあるし、個人的にも憧れていた人が遠くに行っちゃったり。そういうことを考えていたら、「これを1つにまとめたら『HOPE』じゃない?」と思って。俺たちが今みんなに発信したいものも“HOPE”だし、自分たちで持っていたいものも“HOPE”だし。このアルバムでは、過去の自分たちと、未来に向かっている自分たちのハイブリッドな作品ができたと思っているんです。ずっと自分たちが持ってきたHOPEの種でもあるし、思い描いていて、迎えたい先でもある。それも含めていろんな角度から見て「HOPE」しかないなと思いました。
アカマ でもチフネからそんなシンプルなものが出てくるのが意外で、最初はちょっと困惑したんですよ。
チフネ 最初は「……おお」みたいな感じだったもんね。でもそのあと多くを語らずとも「いや、いいね」ってなった覚えがあります。
アカマ もしかしたら20代とか30代前半のときに「『HOPE』にしよう」と言われたら首を傾げていたかもしれないけど、25周年の今の俺たちが持っているものとか、今の気持ちを全部吐き出したときにすごく合っているなと思いました。
──今年はバンド25周年イヤー。秋にはベストアルバムのリリースを予定しているとのことですが、ベストアルバムはどうして出そうと思ったのでしょうか?
チフネ 15周年のときにもベストアルバムを出していて、そこから10年経ったからというのが一つ。あとは「HOPE」ができて、新しい未来に手がかかったという感覚があって。今なら昔の曲たちと向き合える、今の曲たちなら昔の代表曲たちと遜色なく並べられると思ったからこそ、今なら堂々とベストアルバムが出せると思いました。
──「HOPE」の初回購入特典には、ベストアルバム選曲投票応募カードが付いています。ベストアルバムはファンの方からの投票がメインに?
チフネ そうですね。どのくらい集まるのかにもよりますし、みんなの意見が偏り過ぎて数曲しか選ばれなかったらそれ以外は自分たちで考えないといけないですけど(笑)、みんなからの投票はめちゃくちゃ参考にしようと思っています。
25周年を迎えた今「まさに成長期」
──そのほかに25周年で考えていることはありますか?
チフネ まずは夏まで「HOPE」のツアーを回って。秋から年末にかけて、何か大きなこと……自分たち的にはチャレンジになるようなイベントをやりたいなと思っています。あとは「ONION ROCK FESTIVAL」の復活を考えています。会場との兼ね合いもあって、今年の5月はさすがに難しいんですけど、会場や時期を変えてでも「ONION ROCK FESTIVAL」をやろうという話をしています。もし開催が今年叶わなかったとしても、その種まきはしようと。
──それは楽しみですね。精力的に活動する25周年イヤーになりそうですが、バンドとしてはこの先をどう考えていますか?
アカマ うーん……全く考えられません(笑)。
チフネ 「HOPE」ができてやっと次に進めるという感じで。1つ1つやっていくことしかできないですね。時代的にも、本当にいろんな意味で何が起こるかわからないということを実感させられたので、とにかく一歩一歩、地に足をつけてやっていくだけかなと思います。その結果、30周年を迎えられたらいいなと。
アカマ イメージ的には、コロナ禍に「SEVEN SHOUTS」と「RAIN GROOVES」を作って、デジタルシングル3部作を作って「HOPE」が完成したというこの期間が、小学1年生から6年生までという感じなんです。「HOPE」ができたことによって、次の展開が待っているような、HOTSQUALLの新しい章が始まるような気持ちです。
チフネ アルバムに入っている「I'm In Growth 」は、まさに今の話を曲にしたものなんです。「俺ら、今まさに成長期だよね」って。この曲は「HOPE」の裏テーマでもあります。
──25周年を迎えたバンドが、自分たちのことを「成長中」と言えるの素敵ですね。
チフネ そうですね。この先、どうなっていくんだろう? 自分たちでも全然わかりません(笑)。
──とはいえ、25周年というキャリアを持つことは、バンドシーンではベテランと捉えられると思います。若いバンドとの共演もしていますが、そういった意味でHOTSQUALLの立っている場所を、どのように捉えていますか?
チフネ 確かに若くていいバンドはいっぱい出てくるからすごいなと思うし、意識することは意識します。でも自分たちのことを中堅とか、ましてや大御所とかはまったく思っていなくて。まぁ年は取ってますけど(笑)。一つあるとしたら、後輩も増えてきているし、自分たちでONION ROCK RECORDSというレーベルもやっているので、千葉の後輩を中心にフックアップをしていきたいなという気持ちは、今までで一番あります。
──ということは、もしかしたら今後ONION ROCK RECORDSから別のバンドがリリースすることも……?
チフネ あります。というか、水面下で進行中です(笑)。楽しみにしておいてください!
HOTSQUALL「HOPE」
1. Sunny Days
2. Just The Way You Are
3. Good Night Dear
4. Too Much Emotion
5. Sonic
6. Skelter
7. We Don't Care
8. Get It Back
9. Distance
10. Thousand Dreams
11. I'm In Growth
12. Memories
13. Grateful Shout
14. Reason(CD-Only Bonus Truck)
HOPE TOUR 2024
2024年3月19日(火)千葉LOOK
ONEMAN
2024年3月30日(土)HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-4
w/ THE CHERRY COKE$, SonoSheet(O.A)
2024年3月31日(日)水戸LIGHT HOUSE
w/ SECRET 7 LINE
2024年4月6日(土)酒田hope
w/ FRIDAYZ
2024年4月7日(日)秋田Clbe SWINDLE
w/ T.O.C.A
2024年4月12日(金)札幌KLUB COUNTER ACTION
w/ AK-47, milestone for 10years
2024年4月13日(土)苫小牧ELLCUBE
w/ AK-47, milestone for 10years
2024年4月19日(金)磐田FM-STAGE
w/ BACKLIFT
2024年4月20日(土)三島ROJI
w/ SCREW WALKER
2024年4月28日(日)京都GATTACA
w/ Nothern19
2024年4月29日(月・祝)神戸太陽と虎
w/ Nothern19, SKA FREAKS
2024年5月11日(土)鈴鹿ANSWER
w/ at ANYTIME, GOOD4NOTHING
2024年5月12日(日)滋賀B-FLAT
w/ GOOD4NOTHING
2024年5月17日(金)名古屋RAD SEVEN
w/ FIVE STATE DRIVE
2024年5月23日(木)八王子RIPS
w/ INKYMAP
2024年5月31日(金)横浜F.A.D
w/ Dizzy Sunfist
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