
Who’s Next by SATANIC Editing Room Vol.32: Tive
SATANIC ENT.を編集するスタッフが気になるバンドをピックアップする連載企画"Who's Next”。次の時代を担うアーティストの考え方を紹介していきたい。
今回、インタビューしたのは大阪のハードコアバンド、Tive。特にハードコアシーンにおいては破竹の勢いで次々に活躍の場を増やしているバンドだ。
そのサウンドもいわゆるハードコアとは一線を画しており、知的でオルタナティブな雰囲気を感じさせる。ファッション性を見てもオールドスクールなハードコアバンドのスタイルとは決定的に異なっている。今だからこそ表現できるハードコアを鳴らす彼らだが、そのルーツは何か?
Interview&Text_Ryo Tajima(DMRT)
Photo_Taio Konishi
L to R: 求健太(Gt)、拓真(Dr)、幾実(Ba)、佐伯基(Vo)
ルーツはTurnstileと大阪ハードコアシーン
ーざっくり、現在のメンバー編成に至るまでを教えていただければ。
佐伯基(以下、基):もともと自分とギターの健太、ドラムの拓真は同じ高校の同級生で、後から健太の友人の幾実が加入して現在の編成になりました。
求健太(以下、健太):自分と佐伯と拓真は高校生の頃、BBQ CHICKENSの「BIG MAC」やTurnstileの「Drop」をカバーしたりしていました。
ーBBQ CHICKENSもルーツにあるとは! TiveのサウンドにはTurnstileからの影響が感じられるのですが、影響は大きいですか?
基:大きいですね。2015年にTurnstileが来日したとき、僕は高1だったんですけど、健太に誘われて拓真と一緒に観にいったんですよ。そこで初めてリアルなハードコアに触れてモッシュやステージダイブが繰り広げられる光景に衝撃を受けたんです。そこから始まりました。
健太:その日の対バンでSANDとNumbernine、Tiger、BRAVE OUTが出演していたんですが、そんな大阪のハードコアバンドからも大きく影響を受けてきました。
ー大阪には他の街にない素晴らしいハードコアシーンがありますよね。そんなシーンからどんな影響を受けてTiveに繋がっていますか?
健太:個人的な解釈なんですけど、大阪のハードコアバンドの楽曲は、どこか聴きやすさがあってキャッチーなパートがあると思うんです。それはリフや曲の構成などから感じるんですけど、自分が曲を作る上でも気づかないうちに影響を与えられている部分はあると思いますね。
ー今年の2月に発表されたEP「核に匹敵する優しさ、それと諦め」。タイトルや楽曲から非常にコンセプチュアルな内容だと感じたんですが、Tiveが今、表現したいことを凝縮したような内容だと言えますか?
健太:そこでいくと、今回の音源は「恥部」(2022年発表の1st EP)をリリースした時点でタイトルも決まっていたし、曲も「あい・あい・あい」以外は元になるものがあったんですよ。
ーあ、そうだったんですか!
健太:当時は一気にリリースしたいと思っていたんですけど、曲の仕上がりも甘かったのでもっと練って考えようということになり、先に完成していた曲を「恥部」として出したんです。その後、活動しながら並行して制作を進めて、自分たちが満足いく形になった曲もシングルとして順番に発表していき、「核に匹敵する優しさ、それと諦め」に至ったんです。
ーこうして「恥部」と「核に匹敵する優しさ、それと諦め」を並べて聴くと、バンドが活動をしながら徐々に変化していった感じが伺えますね。楽曲の中には、naiadっぽさというか。ちょっと激情ハードコア味を感じるパートもあると思ったのですが、そこは意識していますか?
健太:いえ、バンドとして意識している部分はないですね。僕は個人的に好きで聴いていたこともあったので、パートとして反映されている部分もあるかもしれないですが、叙情的な湿気のある感じではなくカラッとした雰囲気を表現したいので、バランスを見ながら作曲しています。曲の湿度は自分の中で守ってます(笑)。
ーさっき、大阪のハードコアにキャッチーさを感じるという話もありましたが、Tiveの楽曲にもメロディがあったり、曲の中で展開がリピートする部分があったりと、聴きやすさが感じられます。やはりキャッチーさも踏まえ曲のバランスを考えているんですか?
健太:自分がハードコアを聴き始めた時、曲の違いもバンドの違いも何がなんだかわからなかったので、あの頃の気持ちを忘れないようになるべくキャッチーにしようとは思っています。「恥部」を出した頃と比べると、もう少し抜け感がある方がいいなと思う部分もあったので、メロディを入れた楽曲も増えていった流れがあります。
昭和歌謡的な聴きやすさも意識しながら
ーそういった聴きやすさという点で、佐伯さんが日本語詞を歌っているというのは大きいと思うのですが、ボーカルに関しては、どの辺りから影響を受けていますか?
基:好きなバンドがTurnstileやKnocked Loose、Veinなどでハイトーンのシャウトがずっと好きだったので、自分のスタイルもそっちに寄っていると思います。日本語詞については、健太がPALM(大阪のハードコアバンド、日本語詞のボーカルが強烈)から影響を受けていたり、僕も健太もTHE BLUE HEARTSが好きだったりするので、そこからの影響も大きいですね。
ーボーカルのリズム感も独特ですよね。細かく1音ずつ叫ぶ感じに聴きやすさを感じます。
基:これはもう、そうならざるを得ないというか。歌詞は健太と相談しながら考えている部分もあって、こういう譜割になっているんです。
健太:自然な歌い方を追究していくと、昔の童謡や昭和歌謡のような、八分音符に1音ずつ乗せるような譜割になっていきました。そんな風に昔からある日本の歌の影響もあるかもしれないです。余談ですけど、基はTurnstileがきっかけで音楽以外の面でも影響を受けて、英語を勉強するために留学できる大学に行ったんですよ。帰ってきて実際に英語を話せるようになってたし、なんかそれが悔しくて(笑)。だから、Tiveのスタート当初は英詞で歌おうかっていう話もあったんですけど、僕個人としては「絶対に日本語でやってくれ」と。
基:いわゆる日本語ロック論争のようなことが、2人の小さい世界でも起きていて、だいぶ話し合いを経て、しばきあって今の形に落ち着いているんです。
ーそういった経緯があっての日本語詞なんですね。でも、だからこその個性を強く感じます。しかし、佐伯さんはTurnstileの影響もあって留学されたんですね?
基:はい、恥ずかしながら(笑)。当時、10代だったのですがTurnstileのメンバーと話したい、アメリカでライブを観たいっていう理由で留学しました。実際に向こうでも会話することができましたし、ありがたいことに先日の来日では同じステージに立つことができました。
ー有言実行ですね。本当に素晴らしいと思います。ちなみにTiveはロゴのデザインも特殊ですね。パッと読めない感じが実に洒落ていると思います。
健太:文字ではないロゴにしようってことを僕の方で考えて、メンバーと一緒に、ああでもないこうでもないって話をしながら考えました。そこから自分たちでルールを作りながら、この光のここは守らなくちゃいけないだとか、モチーフは縦と横で並べて構成しないといけないだとか、そんなことを言い合って作っていったんです。
ーTシャツにはバックに<OSAKA HARDCORE>とデザインしたものもありますよね。そういう点からも大阪をレペゼンしている感じが伝わってきます。
健太:ああ、あのデザインは「あえてこういうことをしてもいいんじゃないか」っていう自分たちなりの遊び心です。というのも、僕らは今でこそハードコアとして認知してもらえるようになっているんですけど、最初の頃は大阪でもアウェイで、なぜか京都でのライブが多かったんですよ。それで『SUMMER BASH FEST』に出るタイミングで思い切って、あのデザインのTシャツを出してみたんです。
ーそういったバンドとしての経緯が表れているんですね。では最後に、Tiveは今後どんな活動をしていきたいですか?
健太:自分たちのペースを保ちながら活動していきたいと思いますね。ライブも多いですし大変なんですけど、飲み込まれないように自らの意思を持って続けていきたいです。動かされるんじゃなく、自分たちで動いていきたいと思っています。
幾実:目指す場所という意味だと、海外の『Sound and Fury Fest』や『Outbreak Fest』といったフェスを目指していきたいという気持ちがありつつ、健太が言うように自分たちらしい軸を持って頑張っていきたいです。
拓真:僕は他メンバーほどハードコアの知識はないし、ヒップホップも好きなんですけど、健太の曲を聴いたときにわかりやすし、めちゃめちゃいいなと思って、それで今も一緒にやっているんですけど。僕みたいなハードコアを深く知らない、縁がないという人でも、曲が耳に入ったら聴いてくれると思うんですよね。そういう人にまで届いてハードコアがもっと日本中で聴かれるようになったらいいなと思います。
ーそうですよね。だからこそ誰もがわかる日本語詞で歌っているし、キャッチーさも意識して曲作りをしているわけですし。やはり大きなキャパでのライブをしていきたいと思いますか?
健太:それはもちろんそうですね。もっと聴いてほしいという根底にある思いに繋がります。多くの人に知ってもらって聴いてもらうためにも大きなライブにはどんどん出た方がいいと思っています。
基:ただ、その上でも僕はだらだらと活動していくつもりはないと常に思っていて。どのライブが最後になるのかはわからないというくらいの心持ちでステージに挑んでいます。だからこそ是非、僕らのライブを観てほしいです。
Tive
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