LIVE REPORT

Earthists. / HIKAGE / Prompts / Sable Hills "4D TOUR 2025" LIVE REPORT!!

Report by MOCHI(LIVEAGE A.D.)
Photo by Yuto Fukada / Oct Osawa / Leo Kosaka


2025.6.8
Earthists. / HIKAGE / Prompts / Sable Hills "4D TOUR 2025" @ 代官山UNIT

 

Earthists.、HIKAGE、Prompts、そしてSable Hillsという、次世代の国内ラウド・シーンをけん引すると目される4バンドが、新たな次元のムーヴメントを起こすべく集結した『4TH DIMENSION』。2025年1月に渋谷club asiaで開催されたイベントがソールドアウトしたことを受け、ツアーとして規模を拡大。東名阪に加え札幌の4都市を廻るツアー『4D TOUR 2025』が実現した。

発表時から注目を集めていた通り、ツアーは名古屋、大阪とチケットは完売。その勢いのまま6/8(日)に行われた東京でのツアーファイナルも、完全ソールドアウトを記録した。四者四様のバンドが互いをリスペクトしつつも火花を散らし合った、代官山UNITでの凄絶な一夜を、ここにリポートする。


 

この日は当日券の販売もないほどの超満員だけあって、会場前にはオープン時から長蛇の列が形成されていた。そして中に入れば、フロアは開演を待たず後方までぎっしりと人が詰めかけていたほど。その観客も、この4D TOURのオフィシャルTシャツはもちろん、国内外のメタル/ラウド系のバンドやフェスのTシャツで武装しており、この日出演する4バンドの名前が、広く世に知れ渡り始めていることがうかがい知れた。

 

スタート時間を5分ほど過ぎたあたりで、いよいよ会場が暗転。トップバッターはEarthists.だ。ビカビカに派手なライティングとSEとともに登場し「METAHOPE」でパフォーマンスをスタートさせるや、フロアからはクラウドサーフが続出。そのままステージダイブまで敢行する者も現れた。いきなり最高潮のもう一段先へと、会場全体が一気に沸き立っていく。



 

音源にしろライヴにしろ、Earthists.に触れるたびに驚くのが、情報量の多さ。メタルコア~Djentにテクノやボーカロイド、アニメソング等々を貪欲に取り入れながらも、闇鍋的なごった煮感や散漫さは一切見られない。ゆるぎなくポップで、そのうえでメタルバンドとしてのヘヴィさもしっかり担保し、自ら標榜する「HYPER METAL」に昇華するセンスはさすがだ。この日もトップバッターながら、ほかの3バンドを見るための体力を根こそぎ奪おうとせんばかりの、攻めまくりなセットリストで進行。フロアもダイブにジャンプにダンスにと、カラフルかつ目まぐるしい曲の展開にしっかり呼応し、さらにボルテージを高めていった。

会場をさんざん上へ下へと揺らした後 「Overvision」で、壮大なメロディをYuto(g,vo)が歌い上げるなか、Yui(vo)自ら観客の上に飛び込んで渾身のスクリームを響かせて終了。後に控えた盟友たちに思い切り高いハードルを残していったのだった。

続いたのがSable Hills。一番手のEarthists.がメタルの可能性を拡張していくバンドだとしたら、彼らはあくまでメタルの伝統を守りながら、近年は大型フェスへの出演も増えているようにどこへでも打って出られることを証明しようとするバンドだと言えるだろう。先ほどまでのきらびやかな盛り上がりを、空気を切り刻むリフ、殴りつけるようなブレイクダウン、そして胸を熱くさせる勇壮なメロディで、戦闘的かつ汗臭い雰囲気へと塗り替えていった。4月にドラマーが脱退したことも記憶に新しいが、サポートメンバーを含む全員が放つ獰猛なグルーヴには、メンバーチェンジを経たぎこちなさは皆無。それどころか、次世代を担う一角としての自負と頼もしささえ宿っていた。

 

人差し指と小指を立てたメロイックサインを掲げ、愚直なまでに「メタル」であろうとする彼らのサウンドに、フロアもサークルピットをはじめとした、まさにメタルのライヴらしい盛り上がりで打ち返す。Takuya(vo)いわく「大阪でしかやるつもりがなかった」という初期の名曲「Embers」や、オリエンタルなメロディが高らかに鳴り響く「Tokyo」と、空気を一切緩めることなく、40分のセットを駆け抜けていった。今年9月には自身のFRONTLINE FESTIVAL 2025を主催し、10月にはさいたまスーパーアリーナにてLOUD PARK 25への出演が決定しているSable Hills。すでに海外ツアーも経験しているものの、今後は全世界のメタルファンにより広く、そして深く存在感をアピールしていくに違いない。

3番手には4D唯一の地方・札幌出身のHIKAGEが登場。目をむきながら叫び、歌うGen(vo)を筆頭とした全員の、血管が2、3本は切れそうなほどのテンションの高さにまずおののかされた。しかしスタイルはメロディックなハードコア/ポスト・ハードコアを基盤にしつつ、プログラミングで全体を彩ったり、ときには図太いビートダウンを轟かせたり…と、芯が通りつつもバラエティに富んだもの。特にヴォーカルメロディの親しみやすさはこの日随一だろう。また中盤にうねるヘヴィなグルーヴが光る「WAIT??!!!」を配置するなど、決して勢い任せにならない、手の内の多さも魅力だ。地方からのし上がってきた、まさにたたき上げのパフォーマンスで少し疲れが見え始めた観客に喝を入れ、そしてぐいぐい引き込んでいく。



そんな彼ら、なんというか…エモいのだ。Genによれば、札幌という地で全方位に牙をむきながら活動してきたが、次第に仲間の存在の大きさに気付いたのだという。そんな彼が「ISOLATION」で登場したPromptsのPK(vo)ともにフロアへと突入する場面や「全員で幸せになろうぜ」と語ってから、優しささえ見せるメロディが響く「Happy」を歌う場面に、否応なしに胸を熱くさせられた者も多いはず。そしてバネの強いグルーヴの「SiCK」でこの日のライヴを締めたHIKAGEは、これからも全国を駆け回りながら仲間を増やし、飛躍していくことだろう。


ここまでライヴを観ていて惚れ惚れしたのが、まったくスタイルの違うバンドが登場しても、フロアの人口密度になんら変化が見られないこと。バンドによって多少の人の入れ替わりこそあっただろうが、最後までバーカウンター周辺まで詰めかけた人の数が減ることはなかった。そしてライヴの盛り上がりも、それぞれの音楽性由来のノリの違いこそあれど、放たれる熱量は同等で、会場内の湿気がムンムンと上がっていくのだ。冒頭で、出演バンドの存在が幅広い層に知られていると触れたが、各バンドのファンはもちろん、この4Dそのもの、そしてシーンのファンがいかに熱心なのかが読み取れた。



いよいよ最後に登場したのはPrompts。Bloodaxe Festivalなどの屈強なハードコア・シーンで揉まれながら、レーベル契約にツアーにと海外へも積極的に挑んできた彼らのライヴは、さすがに大舞台慣れした貫禄を見せつけるものだった。

不穏なSEに導かれてメンバーが登場し「Sun Eater」で、一気に会場を掌握。無慈悲に叩き潰すブレイクダウンに、空間を捻じ曲げる不協和音、そして浮遊感のあるエフェクトとメロディを駆使したダークかつ重苦しいサウンドで、フロアを容赦なく蹂躙してみせた。曲間をSEでつなげることで、緊張感を緩ませないステージ運びも見事だ。


 

とはいえ非人道的なヘヴィネスだけが、彼らの武器ではない。PKが韓国から日本に渡りバンド活動をする中で感じた、自身のアイデンティティに関する苦悩を綴った「Stranger」は、この日のハイライトのひとつだ。PKの「歌ってくれ!」という叫びに呼応し、会場全体で壮大なシンガロングが生まれた瞬間、歌詞に込められた思いが昇華されたことだろう。また「Asphyxiate」では、ステージ袖から持ち込まれた酒をメンバーがラッパ飲みさせられるという、やんちゃさを見せる一幕も。地道な活動で培った実力と随所にあふれ出る人間臭さこそ、Promptsの魅力だ。

そしてラストには彼らのキャリアでも特にポップなメロディが光る「Empty Sandglass」を披露。強豪3バンドが徐々に上げてきたハードルを乗り越えてみせた、堂々たるパフォーマンスだった。



 

終演後、全出演バンドと観客が集まった記念写真が撮影された後、今年10月から11月にかけて『4D TOUR 2025 -Season2-』の開催が発表された(チケットはすでに先行受付中)。仙台、神戸、福岡、千葉の4都市を廻る予定で、Sable HillsのTakuyaによれば、これが成功すれば2026年以降も継続して開催ができるかもしれない…とのこと。それも今回の盛り上がりを見れば、半ば約束されたも同然だろう。

全体を通して印象的だったのが、各バンドのメンバーがMCで「みんなで新しい時代を作る」としきりに口にしていたこと。もちろんこの日ですべてが変わったことはないだろうが、将来の変革への大きな一歩だったことは確実。Earthists.、HIKAGE、Prompts、Sable Hillsらが筆頭となり、かつ他のバンドが追随することで、4Dからまた新たな次元が、シーンが生まれることに大いに期待したいし、そうなることは間違いないはずだ。



Earthists. + HIKAGE + Prompts + Sable Hills 
4D TOUR 2025 -Season2-

 
10月26日 仙台ROCKATERIA
11月1日 神戸太陽と虎
11月2日 福岡Queblik
11月8日 千葉LOOK
 
チケット先行受付リンク
https://eplus.jp/4DTOUR