LIVE REPORT

HONEST presents. "Carry On" LIVE REPORT!!

Report by 横堀つばさ
Photo by しゅんた.

2025.3.2 @LIVE HAUS Shimokitazawa
HONEST presents.  "Carry On"
 

前任ベーシストの脱退が発表されたのが、2024年12月末日。それから約3カ月の時を経て、2025年3月2日(日)東京・LIVE HAUS Shimokitazawaの舞台にHONESTが帰ってきた。いや、帰ってきたと書くのは語弊があるかもしれない。片翼を失った彼らは、岸田奈央人(Ba,Cho)という新たなメンバーを仲間に加え、地続きの物語の中で次なるページを捲ったのだ。JasonAndrewとOwLをゲストに迎え、再出発の狼煙を上げた自主企画『Carry On』。ここでは白昼の下北沢でHONESTが産声を上げた1日の模様をレポートする。

「海外っぽいべニューで良いスリーマン。HONESTがやりたいことってこういうことだろ」「今日の3組で新しい風、吹かせようぜ」とHONESTの意図を最大限に汲み取り、目覚めの一撃を響かせた1番手はJasonAndrew。「Statement」や「Close Your Eyes」で下腹部をビリビリと震わせたかと思えば、「メロディックパンクやろうぜ!」と雪崩れ込んだ「VintageII」では目まぐるしいスカのリズムに観客もステップを踏み倒す。「ZERO / Know Your Enemy」を一例にJasonAndrewの楽曲たちは、ジャリジャリとした音像を備えながら矢継ぎ早に展開が移ろっていく。しかし、MCでもシャウトされていたように、王道を行くメロディアスな主軸をブラさないからこそ、確固とした親しみ深さを所有しているのだ。「Wanted Break」でピリオドを打ち、真っ向からヘビィネスを炸裂させた4人。ラブコールたっぷりの30分で、ひりつく祝祭を作りあげた。

セカンドランナーのOwLは、「Magic」で鮮烈に幕を切り下ろした。「メロディックのバンドはどんどんいなくなってるけど、こっからアゲていきたい。うちらのメロディックパンク、喰らって帰れ!」「ブッ飛ばしていくぞ」と容赦のない言葉を添えて「Morning」や「Remember」「Uzu」を乱打。<Jump into a new place And I want to surprise you>とネクストステージへ羽ばたく様子を歌う「Dazzling」も、「何回も立ち上がれば良いから、これからも一緒にやっていこうね」と届けた「Everything」も、HONESTへのエールとしてのみならず、友人の復活を契機に自分たちを再度奮い立たせる鼓舞としての役割を果たす。「次は私たちだ」と力強く言い切ったOwL。追い求めてきたメロディックへのプライドに負けない3人の佇まいはもう、心底頼れるスケールになっている。

「俺たちを観に来たんでしょ。何カ月も待ってくれていたわけだし、みんなで歌いたいな」と告げた樋口浩太郎(Gt,Vo)が伸びやかに弾き語り始めると、すぐさまフロアの合唱が重なった。新体制となったHONESTのオープニングナンバーに選ばれたのは「Radio」。ラジオから流れてきたあの曲に衝撃を受けた瞬間を記したナンバーでスタートを切り、<Let’s singing this stupid songs>と旗を上げれば、「運はガムシャラの味方」と紹介した新曲「Fortune favors the bold」へ。夏目拓実(Dr)のツービートがスコアを埋め尽くす冒頭から表題をコールする樋口の叫びでビートをチェンジすると、客席もハードコアチックな風貌に変身していく。

HONESTのこれからを早くも予感させたところで「ここに集まっているみんなは、メロディックやパンクが、そして音楽が好きな人だと思っているから。格好良く音楽やって、格好良く暴れていこうぜ」と、もはや必殺技と言っても不足無しの「I Like You」から「Honestly」を繋げる。堂に入った岸田のコーラスワークは、中音域の響きが豊かな樋口のボーカルを補強しながら、確かな存在感を誇示。新たなピースががっしりとハマっていることをアッパーチューンで示したからこそ、「あの日をもう一回取り戻すための歌」と放たれた新曲「One More Time」と「Daisy」を束ねたひとコマは、HONESTがメロディックに留まらないフェーズへ突入していることを伝えていた。

なぜなら、<One more time, One more chance>と再起を願う「One More Time」も、樋口の微かに甘いボーカリゼーションがラブソング的な香りを漂わせる「Daisy」も決して爆走する1曲ではないから。TURNSTILEをはじめ、メロディックの盤外からの影響を公言している彼らは、速い=キラーチューンといったある種の規範に対して疑問を投げかけていると言えよう。それは「今日集まってくれた君たちとJasonAndrew、OwLに捧げます」と約束を結び直した「Let Me Be Near You」を経た、樋口のこんな語りからも読み取ることができた。

「THE STORY SO FARを観に行って、海外の好きなバンドたちは端から端まで飛んで遊べるカオスな空間を作ってた。俺たちもそんな空間を作りたいと思ってる。俺らはメロコアって言われたくない。HONESTって思われたい。俺たちは俺たち自身になる」。ジャンルに拘泥することなく自分たちと対峙していく中で、字義通り自由な時間を生成していくこと、言い換えるとHONESTが貫き通してきたコンセプトである「CREATE NEW VALUES」をより実現していくことを再度宣言し、ドロップされたのは「I’ll Just Be Myself」だった。上行系の音階を辿るリフと張り上げる樋口の姿が印象的な同曲は、まさしくバンドの信念を体現。そこから「俺たちはマイノリティー!」と連ねた「Minority」には、「多数派になれなくとも、信じ抜く音楽を鳴らし続けたい」という揺るがぬ反骨精神が滲む。なんせ<I Know I cannot change But I don’t like this>である。奥底で渦巻くドロドロとした不満はなくならないのかもしれないけれど、それも自分自身。自らをマイノリティーと断言してしまう潔さはHONESTがHONESTとして揺るぎない根を張ったことを象徴していたし、会場から湧出した特大チャントはHONESTの表明にオーディエンスが共振した証なのだ。


「歌うのは生きがいだからさ。これからも俺たちをよろしくお願いします!」とラストに鳴らされたのは「Memories」。無数の思い出たちを抱えて、進行し続けていく決心を叩きつけ、新生HONESTの初陣を終えた。MCでも幾度も語られていた通り、IKKI NOT DEADからJasonAndrew、CAFFEINE BOMB RECORDSからOwL、そしてPIZZA OF DEATH RECORDS所属のHONESTが一同に介したことは間違いなく大きな意義を含有していたはず。その意味とは、幾度も戦ってきた盟友たちがそれぞれの住む地を見つけたことへの祝福だけではなく、この3組が各々の手法でこの先を担っていくという決意でもあった。『Carry on』――継続すること、繋いでいくこと。新たな船員を迎え入れたHONESTの車輪は、ここから回り始めていく。

 

 

【HONEST SETLIST】
1.Radio
2.Fortune favors the bold
3.I Like You
4.Honestly
5.One More Time
6.Daisy
7.Lonely Boy
8.Let Me Be Near You
9.I’ll Just Be Myself
10.Minority
11.From me to you
12.Memories

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