Who’s Next by SATANIC Editing Room Vol.38: Japanese Super Rats
SATANIC ENT.の編集スタッフが気になるバンドをピックアップする連載企画"Who's Next”。
今回はストリートスケーター、吉岡賢人率いるパンクバンド、Japanese Super Rats! マイペース&不定期な活動でありながら、シーンの注目度は実に高く、徹底的にオリジナリティ溢れるステージは圧巻の迫力。これぞ、パンク! なパフォーマンスと活動を展開している。2026年1月に久々に活動を再始動させたことを受けてインタビュー!
Photo_Masashi Ura, Text_Ryo Tajima
L to R_Micci(Gt)、Ryoga(Ba)、田中レイ(Dr)、吉岡賢人(Vo)
パンクスに憧れていて自分もなりたいと思ったのがきっかけ
ースケーターとして活躍している賢人さんですが、どういった経緯でハードコアパンクバンド、Japanese Super Ratsを結成することになったんですか?
吉岡賢人(以下、賢人):数年前、俺がいろんな人に「バンドやりたい!」って話をしていた時期があったんですよ。そしたら、とある先輩が「あの白塗りのヤツとやんなよ」って感じでMicciさんを紹介してくれたんです。
ー白塗りのヤツ=バンド、Violent Magic Orchestra(通称:VMO)のことですね。Micciさんは、VMOのメンバーとしても活躍されています。
賢人:そうっすね。で、VMOのライブを観にいったんですよ。
Micci:それが初対面で、じゃあ何かやってみようかってことで2人で“何か”をやることにしたんです。
賢人:で、スタジオに呼ばれて行ったら、Micciさんがファストコア的な音源を作ってきてくれて、それを爆音で流しながら、マイクを渡されて「叫んでりゃいいから」みたいな(笑)。いやいや、わかんねぇわ! できる気しねぇわ! と思ったんですけど、「もうすぐ本番あるから」って。
Micci:ライブをね、もう決めちゃってたんですよ。大阪のCONPASSってライブハウスで。
田中レイ(以下、レイ):最初は演奏せず音源を流して叫んでるだけだったんだよね?
Micci:そうそうそう。ギターも弾いていないしベースを弾いているフリをしてたんです。当て振りですらない。音源を爆音で流して、とりあえず暴れるみたいな。
レイ:表現だね。
Micci:そう。大きい音の表現。
賢人:音が流れ出した瞬間に2人ともステージから降りて暴れて、俺は思いついたことをとりあえず叫びまくるっていう。それがコロナ禍前、2020年の頭だったかなーと。
Micci:せっかくだしと思って撮影しようと思ってカメラを設置しておいたんですけど、始まると同時に2人ともいなくなっちゃったから空っぽのステージが撮れてたんですよ。
ーやばいっすねー。
賢人:あれ、めっちゃ緊張したなー、あんま覚えてない(笑)。

ーじゃあ、賢人さんが「バンドをやりたい」と思ったことが発端だったということだと思うんですけど、そもそもどんなバンドがやりたいと思っていたんですか?
賢人:あの時、とにかくパンクスに憧れていて、自分もなってみたいって思っていたんですよ。THRASHERのジェイク・フェルプス(Bad Shitというバンドをやっている)もそうですけど、アメリカのスケーターはけっこうバンドをやっているヤツも多いので、俺もって。ただバンドがやりたかっただけで、具体的なイメージはあんまりなくて。
Micci:そこから発展していった感じだよね。もともと俺は、2人(BaのRyogaとDrの田中レイ)とは知り合いじゃなかったし。
賢人:そうこうしているうちに、Micciさんを紹介してくれた先輩から、「そろそろドラムとかベースを入れようよ」って言われて、『バンドかー、たしかに』って思っていたところに、Ryogaから「ベースやりたいです」って、めっちゃいいタイミングでDMが来たんです。Ryogaとは駒沢公園とかで一緒にスケボーするスケーター仲間だったんで間違いないなって。ドラマーに関しては俺の中で決まっていました。レイがやっていたパーティによく遊びに行っていて、めっちゃカッコいいドラムを叩いていたのがレイだったんで、声をかけてって流れでしたね。
レイ:そのパーティっていうのは、コロナ禍の間に、渋谷のgee-ge.っていうハコで仲間たちとやっていたシークレットレイブパーティなんですよ。それを毎月深夜にやっていて、まだ規制も厳しい時期だったんですけど、約3年間続けていく中で、賢人と出会ったんです。
賢人:あのパーティは本当にやばかった(笑)。ハウスに合わせてドラムしたり、ステージとフロアの境目がなくて豆まきとかやってたし。

ーRyogaさんは、もともとベースを弾ける人だったんですか? Japanese Super Ratsに入るために始めたんですか?
Ryoga:僕は15歳くらいからベースを始めたんですけど、きっかけはスケボーで腕を骨折しちゃったことだったんです。そのリハビリとして始めたんです。
賢人:Ryogaは昔から目立ってて、パークにキッズなのに、めっちゃおしゃれでパンクスっぽいヤツいるなと思って気にしていたんですよね。そしたら、一緒にバンドをやる流れになったっていう(笑)。この4人になったのが2022年くらいですね。
ーRyogaさんはどんな音楽が好きなんですか?
Ryoga:やっぱり入口がスケートなのでBlack Flagから入って、スケートロックというか、スーサイダル(SUICIDAL TENDENCIES)、White Zombieとかですね。今は拠点がイギリスで、そっちでもバンドをやっています。The Boxmenというバンドと、ちょっとエモ寄りなNunonというバンドです。

なんじゃ、こりゃ? をやりたかった
Micci:ちなみに、この4人編成になってから、今ライブでやっている曲を一気に作って1発目のライブがO-EASTの深夜だったんですよ。
ーそれも2022年でしたよね。じゃあ、曲も歌詞も4人になって固まったという感じなんですね。
賢人:いや、2023年くらいまで決めてなかったです。ベースを考えて適当に変えたりしながらやっていましたね。2023年に捕まったときに中(留置所)でバーっと一気に書いたっすね。それくらいしかやることねぇわって。その時に出てきた歌詞です。あれは、そのための時間だったんだなってことにしています(笑)。
ーそのようにして出来上がった曲が2024年には1stアルバム『駆除するな』として配信リリース。楽曲はスラッシュパンクやファストコアの要素もありつつ徹底的にパンクですよね。作曲するにあたって意識したものはあったんですか?
Micci:……刹那を表現するってところですかね。うるさい・速い・かっけぇっていう。
一同:(笑)。
賢人:それをできるだけシンプルに。
Micci:そうだね。歌詞に思いがこもっているし、そういう気持ちを伝えたいと。
ージャンル的にはハードコアパンクという感じですよね。
Micci:はい、フレーズ的にはメタルリフっぽいものもあるけど、ハードコアパンクが軸ですね。あと、音源はちょっとノイジーに仕上げています。あれは、俺らはこういうイメージですっていう世界観の構築ですね。ずれていても、その方がカッコいいっていう提示です。

ー賢人さんはJapanese Super Ratsのボーカルを考えるうえで、どういう音楽を意識していますか?
賢人:そこはあんまり他の音楽を聴かないようにしていたんですよね。影響されやすいんで、すぐに真似しちゃうから。絶対に他のボーカルと被らないようにしたかったし、歌い方も素人で何もわからないから、とりあえず思いっきり叫ぶだけにしようって決めていたんです。全部本気でシンプルに叫ぶっていう。まぁ、俺は昔から先輩が映画を観せてくれていたりした影響もあって、INUとかTHE COMES、GAUZEとか、日本の初期パンクやハードコアパンクが好きなので、そういうノリは入っているかもしれないです。
ーやっぱり、<誰かと被らない 同じようなことをしない>というアティチュードは重要ですか?
レイ:そこが1番重要じゃないですかね、俺ら的に。
賢人:うん、「なんじゃ、こりゃ??」をやりたかったんで。
Micci:曲自体も何かを参考にしたわけではまったくなくて、この純粋なる刹那を表現しようとしたらああなったっていう。
レイ:その辺り、ちょっと普通のバンドとは違う部分なんです。成り立った経緯や集まっているメンバーも、いわゆるシーンの中で活動している人たちというわけではないので、バンドマンとして普通やらなくちゃいけないっていうことは、このバンドではやりたくないんです。Micciさんも俺も、自分たちのバンドはあるし、そうじゃなくてパンクであることをやるというか。路傍の石ころというか、ね。
賢人:スタジオに入った時は、「みんなで概念になろう」って話してるんですよ。
Micci:そう、概念ですね。別に練習している気もない。
一同:ない。
Micci:フレーズ確認とかじゃなくて、単純にその刹那の確認だけ。
一同:(笑)。
賢人:俺もけっこう考えたんですけどね。歌詞にしろパフォーマンスにしろ、俺にしかできないことをやろうっていうのは考えたんですけど、素人だからあの形しかできないっていうか。叫ぶしかねぇって。毎回、声しぬけどただ思いっきり叫ぶ。
Micci:結局、気持ち的には“概念”なんで。アンプとかなくてもいいと思うんですよ、刹那の表現という極論で言えば。単純にうるさい音を出すために使っているだけの集団としての概念っていう。

パンクにある反抗には日本のスケーターマインドがマッチすると思った
ーなるほど、概念として刹那を表現しているなんて究極でしかない。バンド名にあるJapanese Super Ratは、もともと賢人さんのスケーターとしての通称でもありますよね。そこに“s”を付けてバンド名としたのには何か理由がありますか?
賢人:めっちゃ考えたんですけど思いつかなかったんですよね。自分が思うパンクは反抗のマインドが含まれているものだと思うんですけどそこに筋を通そうと思ったんです。日本でリアルに反抗が成立しているのってスケーターなんじゃないかと思って。毎日、路上でスケートして厳しく注意されたり、こんなに怒られるのって世界中を見渡しても日本くらいなんですよ。そんな世界一スケートが厳しい国で反抗しながら生きているっていうのがピタっときたんです。自分のスケートネームでもあるJapanese Super Ratは殺鼠剤なんかじゃしなない不死身のネズミってところがきていて、そういう存在=スケーターなんですよ。そんなスケーターの思いを載っけたかったので、バンド名にしたんです。せっかくやるんならリアルなバンドにしたかったんです。
ーそんなJapanese Super Ratsですが、2026年1月にUNDER R TOKYOとUNDER R OSAKAで久々にライブを開催しましたね。
賢人:そうですね。今回は初めて自分たちで企画したライブで、初めて自分らのバンドTが出せたのが嬉しかったです。Ryogaがそろそろイギリスに戻るってことで、日本にいる間にライブをやろうって話になり、どこでやるかを考えている時に、レイから「スケートできる場所でやったらいい」って話もあって、東京と大阪にあるUNDER Rでの開催になったんです。本当にありがたかったですね。
ーバンドとしては、これまで同様できる時にできることをやって活動していくという感じなんですね。
賢人:そうすね。誘ってもらえるフェスもあったりして、出れるなら出たいんですけど、みんなの予定もあるので、神出鬼没な感じでやっていきます。
レイ:やれるんならやりたいけど、無理したらパンクじゃなくなるからね(笑)。
賢人:あんまり頑張らずにね。呼吸をするように自然に任せるように。
Micci:刹那だから。
賢人:そうそう。いやぁ、基本的にスケーターだからしょうがないす(笑)。
ー新作音源を作ろうみたいな話にはならないですか?
賢人:あー、アルバムは作りたいですね。
Micci:またRyogaが日本に戻ったタイミングとか、機会を見て絶対にやろうとは思いますね。前作『駆除するな』も通して10分ないので。
レイ:そこがいいなって。友達に「聴いて! すぐ聴き終わるから」って言いやすいじゃん。
賢人:渋谷から品川に着く前に終わるもんね。なんなら余るくらい。
Micci:話してて思ったけど、結局伝えたいことを伝えるのに、そんなに時間なんていらんのかもね。なんか……宇宙を考えている気分になってきました。
ーそもそも概念ですからね。例えば、大きなフェスだったりイベントに誘われた時はどうでしょう? メンバー全員が日本にいたらやるという感じですか?
レイ:持ち曲が10分弱なので、すぐ終わってもいいのなら。
賢人:30分もたないなー(笑)。
Micci:何なら転換時間より短いですからね。ライブの合間に回すDJよりも全然短いですから。でも、この間は急遽入ったメンバーがいて。
賢人:そうすね。タンスクスクっていう内モンゴル出身のスケーターがいて渋谷の路上で出会って一緒に滑っていたんですけど、そいつが馬頭琴をやっているってことだったので、UNDER R TOKYOでのライブ、2、3日前にスタジオに来てもらって2曲合わせたんですよ。それで尺を稼ぎました。
Micci:なんか2曲歌ってたよね。
賢人:そう、馬頭琴で「翼をください」と「今日の日はさようなら」。
一同:(爆)。
賢人:リハ前日に『エヴァンゲリオン』観て、これやりたいなって思ったんで。
ーああ、なるほどが過ぎます。
Micci:あの馬頭琴タイムの方がバンドの演奏時間より長かったかもしれない。ガーってやって馬頭琴、バーってやって馬頭琴って感じでライブやったんですよ。すごく刹那だったと思う。
賢人:今後、タンスクスクの馬頭琴はちょいちょい入ってもらおうかと思っていますね。そんな風にスケーターが混ざってきたら面白いな。
Micci:馬頭琴があったら、イベントに誘われても30分の尺稼げるかもしれないよね。10分弱演奏して、20分強、馬頭琴。でも、実際に2ndアルバムが出来たらどうなるんだろうね? 20曲やって20分なのかな? それも表現の具合として違う気がする。もう次のアルバムが出来たら、今サブスクに上がっているのは刹那的に消えるのもいいかも。刹那として忘れるっていう。音源が聴きたかったとしても概念として昇華されている状態。
賢人:みんなの記憶の中だけにある。刹那、カッコいいっすね(笑)。
ーこうして久々のライブを終えて、Ryogaさんは再び渡英されるわけなので、もしかしたら次のライブは数年後ですか?
Ryoga:いや、半年後にビザが切れるので一旦、帰国します。
Micci:あ、そうなんだ? じゃあ出来ちゃうな。
賢人:歌詞考えておかないと。アルバム出したいっすね。「刹那」って曲、作りますか。
Micci:それ、もうアルバムタイトルになっちゃうよね? というか、これからずっと『刹那・一』、『刹那・二』、『刹那・三』ってなっちゃう。
賢人:全然あり得ますね!
INFORMATION
Japanese Super Rats
https://www.instagram.com/japanesesuperrats/
