LIVE REPORT

ENTH "SLEEPWALK TOUR" LIVE REPORT!!

Report by 柴山順次(2YOU MAGAZINE)
Photo by ENTH

 

2019.11.14
ENTH "SLEEPWALK TOUR 2019"
@新栄 DIAMOND HALL


ファッション、グラフィティ、スケボーなどのストリートカルチャーとバンドがクロスオーバーすることで生まれるものであったり、ローカルカルチャーであったり、CREW感であったり。そこに圧倒的な面白さを見出してしまったが最後、気付いたら抜け出せないまま何十年も経っているわけだが、やっぱりいつだってユースを探してるし2019年だって本当に沢山の面白さに直面した。その中のひとつがENTHが3月にリリースしたミニアルバム『SLEEPWALK』だった。名古屋というローカルシーンで04Limited SazabysやBACK LIFTらと共に活動を重ねてきた彼ら。結成当時はメロディックパンクを全身で鳴らしていたENTHが作品を重ねるごとにその枠を取っ払い続け、『SLEEPWALK』では斜め上からの新しさ「ネオメロディックの最前線」に躍り出たのだ。言葉の意味はよく分からないがとにかく前衛的であることはアルバムからもそのアートワークからも感じていたが、ライブを観てそれは確信に変わった。ENTH、規格外過ぎる。

3月から始まったSLEEPWALK TOUR 2019のファイナルシリーズとして行われた名古屋はダイアモンドホール公演。会場にはENTHのマーチに身を包んだキッズは勿論、ENTHと親交の深いストリートブランドやスケボーブランドを着たキッズも数多く見られる。言わずもがなバンドTシャツは最高だ。でもバンドからリンクしたファッションを楽しみながらライブハウスにおしゃれしていく文化も最高だ。80年代のスケートカルチャーも90年代のストリートカルチャーもしっかり2019年のライブハウスに受け継がれていることをENTHのライブではいつも感じる。そんなことを思いながらフロアをウロウロしていたらENTHの仲間のバンドマンや服屋や絵描きがスケボー片手に続々と集まってきて、初めてAIR JAMに行ったときや、あの頃DEVILOCK NIGHTで感じていた「あの感覚」を思い出した。ローカルストリートカルチャーてんこ盛りの大集合。この時点で既にめちゃくちゃ楽しいぞ、今日。

ライブはTrack'sからスタート。ENTHがネオメロディックの最前線ならばTrack'sはメロディックの最前線。ポップでファストなショートチューン「Silly man」でライブが始まると大シンガロングが巻き起こり「Faraway country」「Magic」「Diva」と休む間もなく降り注がれるメロディックパンクに湧きまくるオーディエンス。その光景をステージ袖から嬉しそうに見守るENTHの面々。いや、見守るなんてものではなく、誰よりも楽しんでいるのが表情から伝わる。きっと全国各地でこういう夜を沢山過ごしてきたのだろう。長いツアーのファイナルシリーズがワンマン公演ではなく対バンを迎えての開催であることは、ENTHが仲間と過ごすこの時間を大事にしているからだろう。そういったENTHの思いを汲み取ってステージに立ったTrack'sからのアンサーともとれる電光石火のライブに胸が熱くなる。エモーショナルが衝動的に疾走する「GreenHouse」や、メロディが目まぐるしく展開する「17 years」など「これが俺達のメロディックだ」と言わんばかりに畳みかけるように全15曲をあっという間に演奏しENTHに繋いだTrack's 。ラストの「Daydream」を聴きながら、バンドが共にツアーをすることや対バンすることで生まれる関係性だったり思い出であったり、そうやって過ごした時間が生む信頼って物凄いだろうし、振り返るにはまだ早いけど、いつか振り返ったときに今日のことは鮮明に覚えているはずだと思った。


Track'sからのバトンを受け取り、ステージに立つENTHはその表情から何処か達観して見えた。この感覚は結構衝撃だったのだが、敢えて分かり難い例えをするならば、超サイヤ人でいることが普通になった超サイヤ人というか、気負うことなくブーストしているような、そんな自然体の強さを3人が全身から放ちまくっているのだ。Track'sとの応酬とも取れるようにライブは「STARTLINE」からスタート。ネオメロディックの境地に辿り着いたENTHがぶっ放すザ・メロディックパンクな「STARTLINE」の破壊力たるや。もう一度だけドラゴンボールで例えさせてもらうと、いきなりかめはめ波を撃つような、出し惜しみゼロなENTHのスタートダッシュ。そしてそのまま元気玉、「ムーンレイカー」と続く。ああ、今日のENTHは最初からトドメを刺しにきてる。「死に場所は!」の大合唱にダイアモンドホールが揺れまくる。彼らの生き様が綴られた代表曲ともいえる「ムーンレイカー」はENTHと共に歩んでいた盟友ともいえる曲だ。この曲がダイアモンドホールで鳴っていることがただただ嬉しい。


間髪入れずにけたたましくtakumi(Dr/Cho)がドラムを叩き出し、Naoki(Gt/Cho)のギターのハウリングが重なったところで雪崩れ込んだ「”TH”」も圧巻だった。迫りくるリフからのツービート、スラッシャーなコーラスワーク、どことなく漂うサイケ感、もう本当にこのバンドはカテゴライズが出来ない展開で楽しませてくれる。ニューヨークハードコアばりの肉薄なハードコアチューンに良い意味でふざけまくった歌のアンバランスさがまさにENTHな「NO MONEY」、ソウルとブルースをENTH流に調理した「Voo-Doo Shangrila」、激ポップなメロディックパンク炸裂な「IN MY VEIN」とバックグラウンドの幅広さがライブの展開からビシビシ伝わる。そしてENTHの真骨頂である「HANGOVER」でボルテージはマックスに。この曲、もうライブで何回も何回も何回も何回も聴いてきたが、何でも有り過ぎて毎回笑ってしまう。



ハードコアなリフもエモーショナルなメロディも激情なギターソロもゴリゴリなベースも、そしてそれを全部ひっくり返すラストパートと、全部乗せが過ぎる。面白いのは、この曲を初めてライブでやり始めた頃はポカーンとしていた客席が今や「HANGOVER」がライブのハイライトのひとつになっていること。「Let it die(t)~まこっつ走れ~」も「Bong! Cafe’ au lait! Acoustic guitar!」もだが、無しを有りにするENTHの力技でいつの間にかスタンダードにしてしまうのが彼らの面白さである。カテゴライズなんて要らないはずだ。「ANU」とかめちゃくちゃ変な曲だなってアルバムを聴いて思ったけど、やはりライブで観ても変な曲だなって思う。ポップだしハードだし歌詞も攻めてるしそもそも「ANU」って意味分からないし。そしてこのタイミングで『Never Let Go』からエモーショナルが疾走するナンバー「Crime in my mind」を投げ込んでくるんだからもう。ENTH、全く読めない。全く読めないから面白い。


そうこうしているとステージにSPARK!! SOUND!! SHOW!!のタナカユーキ(Vo/Gt)が登場。『SLEEPWALK』の中でも異彩を放っていた「SUKI」に乱入しフリースタイルでラップを披露したのだが、飛び込んでくるリリックがタナカユーキからENTHへのアンサーのようでいちいち刺してきた。この関係値もまたツアーや酒を交わすことなどで生まれた産物だろう。このサプライズにはキッズ達も大興奮、そしてステージ脇のバンドマンたちも拳を高く振り上げながら大騒ぎしていた。そりゃそうだ。めちゃくちゃにハマっていたしハチャメチャにかっこっ良かったもの。「Before Sunrise」「HENT」「Bong! Cafe’ au lait! Acoustic guitar!」とライブでずっとやってきた名曲群をこれでもかとフロアに投下。ピースフルな空気をENTHらしさ全開に届ける「LOVE ME MORE」で会場からまたもや大合唱が起きると、その流れでSKAとハードコアが見事に融合した「Gentlemen Kill」で文字通り殺しにくる。それに負けじとSKAダンスからダイブ、モッシュ、フィンガーポイントとパンクマナーばっちりなフロアからの返答も頼もしい。


ライブ後半戦、まだまだ攻撃の手を止めない彼らが放った「HAHA」の威力も凄まじかった。ど頭の「タンタンタカタカ」のスネアの連打はばちばちにハードコアだし、ブレイクダウンビートもばっちり。随所に盛り込んでくるNaokiのリフも最高に気持ちが良い。そしてENTH最大のポップソング「NO FATE」で会場を完全にひとつにすると、アルバムタイトル曲である「SLEEPWALK」を丁寧にじっくりねっとり響き渡らせ、ライブはエンディングに。「Will」のシンガロングがダイアモンドホールに広がりENTHが作り上げてきた軌跡を感じた所で、活動初期から大事にしてきた「Get Started Together」を集まったオーディエンスと全身で叫び歌いステージを後にする3人。本編やりきりスタイルでアンコール無しのいさぎよさでツアーファイナルシリーズ、地元名古屋編を終えた。

基軸にあるのはメロディックパンク。そこに出会った人や聴いた音楽や食べたものや着ている服や、そうやってあれもこれも吸収することで出来上がるENTHのハイブリットな音楽はまさに彼らそのものだ。ライブが終わりロビーに出ると、会場に展示されていたENTHのライブ写真にはいつの間にかina takayukiによるペイントが施されており、これもまたENTHを取り巻くカルチャーの表れだなと名古屋ローカルカルチャーを誇らしく思った。そして、そのど真ん中にいるのが、他ならぬENTHだ。


[SETLIST]
1.STARTLINE
2.ムーンレイカー
3.”TH”
4.NO MONEY
5.Voo-Doo Shangrila
6.IN MY VEIN
7.HANGOVER
8.Let it die(t)~まこっつ走れ~
9.ANU
10.Crime in my mind
11.SUKI(with タナカユーキ from SPARK!! SOUND!! SHOW!!)
12.Before Sunrise
13.HENT
14.Bong! Cafe’ au lait! Acoustic guitar!
15.LOVE ME MORE
16.Gentleman Kill
17.HAHA
18.NO FATE
19.SLEEPWALK
20.Will
21.Get Started Together




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