INTERVIEW

HOTSQUALL「SEVEN SHOUTS」INTERVIEW!! part2

Interview by Chie Kobayashi
Photo by Akira”TERU”Sugihara

 


HOTSQUALLがニューアルバム「SEVEN SHOUTS」を9月23日にリリースする。先行配信された「Grateful Shout」を中心に聞いた先月のインタビュー(HOTSQUALL「SEVEN SHOUTS」INTERVIEW!!)に続き、今回は3人に全曲解説をしてもらった。
 

01. Grateful Shout

 


チフネシンゴ(G, Vo):前回のインタビューでも話したように、「Grateful Shout」は自分たち的にある意味では挑戦した曲でもあったんですけど、まわりの反応を見てると、1つの僕ららしい曲として違和感なく受け取ってもらえているみたいでうれしかったです。「ライブでシンガロングしたい」みたいなのも多く見かけたりしたし「伝わってるな」と思いました。ただ、現状だと直接ではなく、SNSとかでしか受け取れないのは残念ですね(笑)。

アカマトシノリ(Vo, B):ここまで日本語詞が多くてグッと熱く攻めるタイプの曲は初めてに近い感じだったから、それに対して多少なりとも抵抗を感じる意見もあるのかなとかも想像もしてたんだけど、それは全然ないみたいで。それよりも曲そのものの持つ熱量に対して「HOTSQUALLっぽくていい」という声が多いように感じられて、素直にうれしかったですね。

チフネ:“HOTSQUALL節”が炸裂したんですかね。昔からよく言われるんで(笑)。自分たちではわからないんですけど。

ドウメンヨウヘイ(Dr, Cho):コロナ禍だからこそ聴いてほしい曲だったので、「こんな時期に聴けて元気が出た」という声をもらえたのもうれしかったです。

チフネ:ただ……さっきも言ったけどやっぱりライブでの反応が見えないのは寂しい気持ちはありますね。ライブでの、新曲を初めて披露するワクワク感だったり、それを初めてみんなに受け取ってもらってる興奮度だったり、「この部分はこんなふうに聴いてくれてるんだ」みたいな反応っていつも楽しみにしているし、バンドマン冥利に尽きる瞬間でもあるので。早くこの曲をみんなでシンガロングしたいですね。

 

02. Life Is Short Movie 

アカマ:この曲の元ネタはツアー先のホテルでできたんですよ。その頃、改めてThe Beatlesの映画を観て「やっぱりいいなあ」と思っていて、なんとなくベースを弾いてたらそれっぽいフレーズが出てきたので、そのまま作っていきました。最初はいいなと思って合宿の時にメンバーに聴いてもらったんだけど、それから自分でさらに詰めていくうちになんか方向性が難しくなってきちゃって、一旦ボツにして。

チフネ:最初聴いた印象はいい感じだったんですけど、迷宮入りしちゃったみたいで(笑)。で、俺が預かることにしたんだったよね。

アカマ:そうそう。チフネに「あの曲、今どんな感じになってる?」と言われて、詰めてる途中の段階で改めて聴かせたら「なんか当初の雰囲気と変わってない? もっときらびやかなイメージだと思ってたのに」って言われて。迷ってることを伝えて、チフネに預けたら、思ってた以上にきらびやかになって戻ってきた!



チフネ:The Beatlesっぽい歌い回しの曲を、ちょっとダンスな四つ打ちに乗せたら面白いんじゃないかなと思ってリズムをちょっと触ったり、前奏を付け足したり、淡白なところにCメロや落ちサビを加えたりして。あと、メロディに対してのコードもいじったけど、サビのメロ自体はアカマが作ったものから変えてないよね。

アカマ:楽しみに待っててしばらくしてから聴かせてもらって「なるほど!そうそう、こんな感じ!」っていう形になって戻ってきたのはうれしかったなぁ! 歌詞は子供との会話の中でヒントが生まれて。3歳の息子によく「人生って面白い?」って聞かれるの(笑)。で、俺も酔っ払ってるときなんかに「自分が思ってるようにはならないのが人生かもね」って答えるんだよね。「自分が思ってる以上に幸せなことも起きるし、思ってる以上につらいことも起きる。ある意味、まったく予想がつかない、でもロマンチックな映画みたいなものかもなあ」って。

チフネ:そんな話をしてて、メロディに対しての語呂とかも考えて、「ただの『Movie』じゃなく『Short movie』にしたらどうか」って話をして。その頃からイメージはあったんですけど、それで冒頭とラストに映写機の音を入れて繋いでいるんです。

アカマ:歌詞もすごく気に入ってる。チャップリンの名言を引用したりもできたし!

ドウメン:僕としても、リズムも今まであまりHOTSQUALLでは使ってなかったようなものだったので面白かったですね。で、ドラムを叩きながらコーラスをするのが難しい曲なので大変でしょうけど、そのぶんやりがいを感じてて。早くライブでやりたいです。

 

 

03. No Boy No Cry

 

 


チフネ:この曲はメロディ自体は数年前からあったんですけど、なんだかずっと日の目をみなくて。いいメロディだと思ってたから聴かせる系かなと思ったりもしていたので、もうちょっとだけゆっくりしたテンポだったんですけど、そうなるとなんだか既存の曲に勝てない感じがして僕の中で寝かしていたんです。でもなんかパッと閃いて「思い切って速くしてイケイケの曲にしちゃえ!」と思ってテンポを上げて、思いっきりイントロから派手なリフを付けてみたら一気に化けてきて、そのまま勢いで出来上がっちゃいました。

アカマ:チフネが言うように、俺も最初に聴いたときからずっとメロがいい曲だなと思っていて。だからグッと速くしてきたときは正直戸惑ったんだけど、過程を見ていくうちに、クールな感じにバチっとハマってカッコいい感じになったと思いました。「朗々と歌うだけがメロディアスじゃない」ということにも気付けてすごく勉強になりましたね。で、大サビでは日本語でバーンと伝えたいメッセージと共に突き抜ける感じも気持ちよくて。シンプルではあるんだけど、展開がいっぱいあって歌うのも面白い曲なんです。

チフネ:AメロがあってBメロがあってサビがあって……という構成ではなくて、ちょっと洋楽っぽいというか、好きな構成ですね。メロディ自体は2パターンしかないのに、それをどうドラマチックにするかというのが挑戦で。間奏で転調したり、いろいろ詰まってて演奏してても面白い曲ですね。



ドウメン:僕的にはコーラスワークも聴きどころの1つですね。僕とチフネさんで入れ替わり立ち代わりコーラスをしたりしてて。

チフネ:たしかに。主旋律に対して上のハモリと下のハモリを交互に入れたりしたら新しくて面白いんじゃないかなと思って。クロスするときに一瞬三声になるところとかも渋い(笑)。

ドウメン:実際にやってみると大変でしたが(笑)、完成したものを聴いたときにカッコよくて、「こうしてよかったな」と思いました。

チフネ:歌詞は、ネット社会というかSNSというか、そういう無機質な世界に対しての思いを歌ってますかね。知らない誰かが、知らない誰かを攻撃したり、誹謗中傷とか炎上とかっていうのを見てると、なんか違うんじゃないかなって。そういう無機質で温かみのない空虚の世界に対しての真逆の表現として「温もり」という言葉は絶対に入れようと思ってました。

アカマ:なるほどね。みんなSNSとかにはいいことだけ書けばいいのにね。「楽しかった~!イエ~イ!」とかね(笑)。そしたら「会えてないけどあいつ、元気してるんだ」とか「あいつら、今レコーディングしてるんだな」とか、仲間の様子を知れるいいツールなのになぁ。「温もりに触れて」って歌詞を日本語で歌えるのは改めて気持ちが入るね。
 

04. Flame 

チフネ:ええと、この曲は誰が元ネタを作ったんでしたっけ?


ドウメン:私です。

チフネ:おー!20年選手にして、初めてのドウメン先生(笑)!



ドウメン:最初、曲作りをするにあたって「HOTSQUALLっぽい曲を作ろう」と思って作ったらこじんまりしちゃうだろうから、突き抜けてみようと思って、何も考えずいったん好きにやってみました。それでもしメンバーに気に入ってもらえたら、そこからアレンジして作り上げていく段階でみんなにHOTSQUALLに戻してもらえばいいやと思って。

チフネ:初めて聴いたときは、なんでか大爆笑しちゃいましたね。ちゃんとカッコいい感じの曲なのになぜかみんなで大爆笑(笑)。

アカマ:なんというか、逆にカッコよすぎて照れたっていうね(笑)。

チフネ:あと曲の原型を聴かせてくれるときに、アカマは弾き語りなんですけど、ドウメンは打ち込みで、なんならギターも自分で弾いてくるんですよ。それが鬼のギターソロで、もはやどこ弾いてるか分からない! 自由度は半端なかったですね。そしてさらに歌はドウメン先生の裏声(笑)。まぁでもそのぶん、アレンジのイメージは湧きやすかったかもしれないですね。

アカマ:「Life Is Short Movie」のときに自分で一度ボツにしようとしたって話をさっきしましたけど、作った本人がだんだんと完成形を見失なってきて、引っ込めたくなるタイミングもあることを知っていたので、とにかくこの曲をドウメンが気に入るようにカッコよく仕上げられないかという気持ちでしたね。だから「ドウメン、がんばれ~!」って、応援するような気持ち。歌詞の原文もドウメンが書いたので、「俺がカッコよく歌ってやる!」という気持ちだったし、演奏も難しいとこもあったんですけど「バッチリやってやろう!」って自分に言い聞かせて。

チフネ:さっきドウメンも言ってたように、曲の持つカラーが今までのHOTSQUALLとはひと味違うと思うし、アレンジもイケイケでハードな感じにしてみたしね。

ドウメン:完成したものを聴くと、どこかにちゃんと僕の思ってた味のようなものが残りつつも、ちゃんとHOTSQUALLの曲に仕上がっててよかったです。実は……まだネタのストックはあるので、今後も僕のアイディアの曲が出せるといいなと思っています。

 

 

05. You've Gotta Feeling 

チフネ:この曲は、アッパーでハイテンションで、僕とアカマで勢いよく掛け合うような曲が欲しくて作った感じですね。歌詞も、特に強烈なメッセージとかはあえてなくして、そのときに思ったことをワッと勢いで書いて。こういう、明るくてノリがよくて変に難しくない曲は僕たちの好きなパターンの1つですね。



ドウメン:ええと、僕はね……。

アカマ:自分が作った曲の時と全然テンション違うじゃねえか!(笑)

チフネ:「FLAME」を経て巨匠みたいな雰囲気出すようになっちゃった(笑)。

全員:あはは(笑)。

ドウメン:ドラム的には、この曲はリズムを跳ねさせるのがポイントですね。あとカウベルを使ったりしてるのでそこらへんも面白いですよね。

アカマ:ノリが跳ねててハッピーな感じが出せて、とにかく明るく楽しく作れたっていう印象があります。

チフネ:「アッパーで楽しい感じ」というコンセプトが最初からしっかり決まってたので、アレンジとかもそこまで悩まずに楽しくできたかな。意外と悩んだのは、勢いを出すためにいかに噛むか噛まないかのギリギリまで言葉が詰まった歌詞を乗せるかということ(笑)。あとは、自分がメインを歌う場面でどんな声色でやるのがいいのかということくらいで。いざやってみたら思った以上に面白かったので、掛け合いの曲とかメインボーカルが入れ替わる曲とかも今後もっとやっていってもいいなと思いましたね。

アカマ:なんならドウメンが1人で歌って、掛け合わないのもいいね(笑)。

 

 

 

 

06. Don’t Leave Me Alone  

チフネ:この曲は今作の中で一番古くからあるんじゃないかな。メロディは10年くらい前からあった気がしますね。もともとすごく気に入ってたメロディなんだけど、ただいいメロをツービートに乗せてみた……っていう、ふわっとしたトゲのない形からどんなふうに特別な曲に仕上げていったらいいかが難しくて。どう化けさせるかっていうのがずっとこの曲の課題だったかな。で、これもテンポを上げて、サビの譜割を変えて、コーラスアレンジを考えて、演奏のキメのポイント作って、転調させてみて……とちょっとずつ触って形にしていきました。もともと僕がギター1本で作った曲で、弾き語りのイメージが強かったから、それをバンドアレンジに変換するのも頭を悩ませた理由の1つだったんだと思います。

ドウメン:本当にずっとあったもんね。メンバーみんなお気に入りの曲だったからいつも作品の収録曲の候補には上がるんだけど、アレンジしては「うーん……まだかな」というのを繰り返していて。ようやく完成できてうれしかったです。



アカマ:俺もずっと前から「いいメロディの曲だな」とは思ってたんだけど、どういう曲になったらライブでも映えるのかっていうのがいまいち掴めなかったんです。でもあるときチフネが仮で書いていた歌詞がめっちゃいいなと思って。エモーショナルな感じなんだけど、しみったれすぎていない、哀愁漂う感じ。その雰囲気で「ああ、この曲は哀愁なんだな。そういう色の熱量で歌えばいいんだ!」と解釈できて。歌から始まる、しかも低い音程という、HOTSQUALLにとっては新鮮な感じの入りも、最初は難しく感じたりしたんですけど“哀愁”をヒントにしたら歌えるようになってきました。

チフネ:あと……この曲の歌詞ってけっこう内向的だったりもして。それも悩んでた理由の1つなんですけど。いつも、前向きでいようとポジティブに歌ってるバンドが、こういうある意味での”弱さ”を提示するのはどう思われちゃうかな?って。でも考えてみたら、逆に自分はそういう音楽にもとても励まされてきたし、この曲の歌詞、一見パートナーとか恋人とかに向けて「そばを離れないで」って歌ってるように感じると思うんですけど、実は自分の“自信”に対して言ってて。「どうか自分を信じる気持ちよ、そばにいて」っていう。だからこれも内面的な意味での1つの応援としてアリだなと、思い切って入れました。

 

 

 

 

07. High-On The Winding Road- 

アカマ:これは俺が曲の原型を作りました。去年、20周年を迎えた俺らが主催した新木場Studio Coastでの「GRATEFUL ONION 2019 ~Rock Soldiers festival~」の景色が最高すぎて「あの景色で感じたものを曲にできないか」そして、「もっとあの景色を揺らせたら」と思って作り始めた曲です。自分たち含めて、ライブハウスを根城にしてるバンドでスタジオコーストであの景色を作れたということがすごく感動的だったんですよね。それまでの道のりはすごく長かったし、当日まで本当にプレッシャーもあったし不安もあったからこそ余計、あの景色は感慨深くて。最初はわかりやすく単純にそれを書いた歌詞にしてたんです。けど、チフネに見せたら「もうちょっと違う切り口の伝え方ができたらよりよくなりそう」と考えてくれて。そしたら自分の中でいろんなことがリンクしてきて。自分がカッコいいと思う理想のヒーロー像を主人公にしてその生き様を俯瞰で見つめているような、淡々としながらもすごく深みのある歌詞になってよかったです。すごく思い入れが強い大切な1曲になりましたね。



チフネ:最初聴かせてもらったときは、フォークっぽいというか、ギターを弾きながら1人でストリートで歌ってるような、いい意味で無骨な印象だったんですけど、聴いてるうちにエモパンクっぽいイメージが湧いて。テーマリフとしてギターで再現できるメロディをあえてピアノで入れてみました。音源だからこそ出せる良さがあるというのも好きだし、なにより曲の世界観を大切に伝わりやすくする事が重要だと思ってて。

ドウメン:僕としても、この曲でまたHOTSQUALLの音楽の幅が広がったんじゃないかなと思ってます。重厚な曲調なのでドラムパターンも色々と悩みながら試行錯誤しつつ挑戦もできたし、今までとはまた違った世界観のドラムになってよかったです。

アカマ:俺は大サビの流れのところに入ってる、チフネとドウメンが日本語で歌ってる部分がすごく気に入ってて。チフネが最後に加えてくれた部分なんだけど、歌詞の内容も歌い回しも絶妙だし、すごくいいスパイスになってて大満足!

チフネ:たしかに、あの部分を英語にしてたら割と普通に聴けちゃうというか、ただエモパンクみたいな曲を作りたいで終わっちゃいそうなところを、世界観に合わせた日本語を乗せることでHOTSQUALLの曲にすることが出来たのかなと思います。

 

 

HOTSQUALLが送る“七つの声援” 

アカマ:改めて振り返ると、自分たちができることを持ち寄って完成度を上げる努力をしてたら、今まで自分たちができてたことよりも1歩上のことができるようになったのかなと。バンドの成長を感じられる作品になったと思います。あとは、いつも通り……いつも以上に熱量がバッチリこもっていて、聴くと元気になると思うので、ぜひ聴いてください!

チフネ:望んでなかったけどこういうご時世ということもあって、時間をかけてしっかり作れたかなという印象がありますね。それから「SEVEN SHOUTS」というタイトルは“七つの声援”という意味で。1曲1曲違う角度からそれぞれのスタイルで聴く人を応援してるんです。時には友達みたいに、時には叱咤激励するみたいに、時には叙情的に、時には内向的に。それぞれの声援を受け取って、前向きになってもらえたらうれしいです。

ドウメン:「High-On The Winding Road-」のときにも話しましたけど、HOTSQUALLの幅が広がった作品だと思います。バンド結成21年目にして幅が広がるなんて、これから先のバンド人生もまだまだ楽しみと思えるのも幸せだし。

アカマ:最高じゃん、俺ら!(笑)

ドウメン:みんなにもまだまだ進化していくHOTSQUALLを見せられると思うので、これから先も楽しみにしていてほしいです。




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HOTSQUALL「SEVEN SHOUTS」
01. Grateful Shout
02. Life Is Short Movie
03. No Boy No Cry
04. Flame
05. You've Gotta Feeling
06. Don't Leave Me Alone
07. High-On The Winding Road-

2020年9月23日発売
品番:ONION-1012 / 2000円(税別)
レーベル:ONION ROCK RECORDS

「Grateful Shout」先行配信中
https://linkco.re/XZ6rFVTN

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