LIVE REPORT

EGG BRAIN "Welcome To The ROCK SHOW 2021" LIVE REPORT!!

Report by 山口智男
Photo by AyuMegadewi Kubota

 

2021.9.17
EGG BRAIN  “Welcome To The ROCK SHOW 2021”
@恵比寿LIQUIDROOM

 

「この日を待ってくれてた奴もいるだろうし、迷ってた奴もいるだろう。でも、こうしてライブハウスに遊びにきてることは大正解だからな!」

 この日、JOEY(Vo/Gt)はそう言いきった。しかも序盤の4曲が終わった段階でだ。ライブハウスに足を運ぶことに対して、感じる必要がない後ろめたさを感じてしまっていた観客がもしもいたとしたら、その言葉にどれだけ救われたことだろう。それも含め、この日、ここには歓喜の感情が満ち溢れていた。

 新型コロナウイルス感染拡大の煽りを食らい、中止にせざるを得なかったツアーを1年越しに“Re: START”し、それがもうすぐゴールを迎えるんだから、それもそのはずだ。中止になった前回のツアー・ポスターを、敢えてそのまま使い、ツアー・タイトルの2020の上に2021と上書きしたところにツアーを中止せざるを得なかった悔しさを忘れやしないぞというメンバーたちの思いが窺える。だから、ツアーの“Re: START”にはリベンジという意味もあったんじゃないかと想像するが、そういうツアーが結局、前述したように歓喜の感情に満ち溢れたものになるところがやはりEGG BRAINなのだろう。

 バンドの完全復活を印象づけた20年1月リリースの5thアルバム『AIN’T SEEN NOTHING YET』のオープニングを飾る「Welcome To The ROCK SHOW」がSE代わりに流れる中、「東京!楽しんでいこうぜ。よろしく!」とJOEYが声を上げ、ライブは『AIN’T SEEN NOTHING YET』収録の「Dear My Friends, Thanks For A Miracle」でスタート。ライブのオープニングにふさわしいライブ賛歌は、昨年8月、バンドがファンから募った映像を元にMVを作ったことによって、バンドとファンの交歓を称えるアンセムになった。

本来なら観客とともに歌うべきシンガロングを、観客が声を出せないならとこの日はKUN(Ba/Vo)とUchie(Dr)が観客の分も声を上げると、観客たちが精一杯の手拍子で応える。

「行こうぜ!」とJOEYが観客に声をかけ、バンドの演奏はテンポアップ。「CROSS THE SKY」「KILLING IN THE MOSH PIT」とノンストップで繋げ、ぐんぐんフロアの熱を上げていく。そして、「東京、このまま行くぞ!」と、たたみかけるようなリフが印象的な「METEOR」になだれこむと、より一層激しさを増した演奏に観客たちは一斉に拳を上げたのだった。

 フロアの一体感を感じながら、「東京に帰ってこられました。1年半くらい経っちゃいましたけど、マジで楽しみにしてきたからな!」と改めて挨拶したJOEYが語ったのが冒頭の言葉だった。そこから「一緒に笑おうぜ!一緒に熱い気持ちになって帰ろうぜ!」と観客たちに呼びかけ、EGG BRAINの正調ポップ・パンク・ナンバー「Start From Scratch」をはじめ、バンドが披露していったのが、『AIN’T SEEN NOTHING YET』の曲を軸にした新旧の楽曲の数々だ。

 カントリーっぽいメロディが楽しい「Bob」から、「初デートに行きましょう」と「FIRST DATING DAY」、さらに「Surfin’ In The Blue」と繋げた流れでは、デートがサーフィンだったというストーリーも楽しませつつ、古き良き時代のアメリカン・ポップスを連想させる持ち前の陽性のポップ・センスも楽しませる。ひょっとしたら、90分という長尺のセットの中では聴き流されがちなセクションかもしれないが、洗練という言葉も思い浮かぶEGG BRAINのユニークな魅力を印象づけるという意味では、聴きどころの1つだったはず。

中盤では、9月29日にリリースする2ndミニアルバム『6 KICKS IN YOUR ASS』から「GiveÜ Chips!」と「Breathe」の2曲を続けて披露。「パーティー・チューンだけど、行けますか?」とJOEYが紹介した前者は、裏打ちのリズムのハード・ロッキンなギター・リフと唸るベースがタフなイメージをアピールしながら、Uchieのドラムが作るディスコっぽいノリが観客を踊らせ、そこから一転、ミッドテンポでじっくりと聴かせた「Breathe」はEGG BRAINの魅力の1つであるハーモニーワークの素晴らしさも味わわせた。

因みに、ライブができない期間、30曲ぐらい作った中から6曲を厳選した『6 KICKS IN YOUR ASS』はEGG BRAINのいろいろな魅力が楽しめる曲が揃っているらしく、「いいアルバムができたので、みんな、楽しみにしていてください」とJOEYも自信満々だ。

「良いツアーになりました。各地で濃厚な時間をみんなと過ごせた気がしてます」とラストスパートを掛ける前にJOEYはバンドを代表して今回のツアーを振り返ったが、思えば、この日、JOEYはツアーできる歓び、ライブができる歓び、そして、こうしてファンのみんなと直接会える歓びを度々、口にした。

たとえば「Bob」を演奏する前には、「久しぶりにみんなとライブができて、なんてステキな日なんだろう」と言ったし、KUNの下ハモも聴きどころだった「ALCATRAZ」では、「みんなのおかげでステキな夜になりました。ステキなみんなにバラードを贈ります」とちょっとクサいことも言った。言わずにいられなかったのだろう。

そして、「この時代にライブハウスに遊びに来てるみんなは最高だと思います。みんな、リスペクトです」ともう一度、会場に足を運んだ観客の決断を全肯定すると、「これで終わりじゃない。EGG BRAINはどんなことがあっても進んでいくから!」と宣言。

そして、「みんな、仲間だ。友達の歌を。おまえらと俺たちの曲!」と言って、「MR. SUNSHINE」からラストスパートを掛ける! ダンサブルな「MUZIC」、スカパンクの「VITAMIN」と繋げ、観客を踊らせながら、「こんな時代だからこそ、音楽が、ライブが、ライブハウスが必要なんだ! 前を向いていこう。絶対心から笑える日が来るぞ!」と勇気を振り絞るようにJOEYは叫んだ。

 そして、「ラスト2曲。アンコールなしでぶちかますぞ。この次、会ったら、これを超えていこう!」と再会を約束してからバンドが最後に披露したのが、明るいポップ・パンクの「Brighter Than Ever」と2ビートで駆け抜ける「SEVENTEEN」。曲調もさることながら、その選曲には未来を肯定するその2曲でライブを締めくくりたいという思いが込められていたように感じられたが、観客たちがバンドの熱演に精一杯応えたことは言うまでもない。

「東京、ありがとう! また帰ってくるからな。それまでみんな元気で! バイバイ!」(JOEY)

 EGG BRAINは9月26日に大阪BIG CATで迎えるツアー・ファイナル公演を待たずに11月5日から始まる全9公演の「THIS MUST BE A KICK-ASS TOUR」の開催を発表している。そこには他の誰でもない、自分たちの手で未来を掴み取りにいくのだという力強い意思が窺える。 

 

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