LIVE REPORT

SHANK Zepp Tour 2023 "Rude Foundation" LIVE REPORT!!

Report by ヤコウリュウジ
Photo by 岩渕直人

2023.5.26 @Zepp Diver city
Zepp Tour 2023 "Rude Foundation"

 

思い返せば、「もう戦う時期じゃないかな」や「取り戻しにかかりたいと思います」といったことを昨年10月に開催した『STEADY』ツアーで口にしていたSHANK。ニューシングル『Rude Foundation』をリリースし、バンドとして初のZeppツアーでは、まさにその通りの現実が目の前に広がり続けていた。
この日、ゲストとして登場したのは、お互いにまだCDをリリースしていない15年ほど前にライヴハウスで出会い、そこからずっと親交を深めてきたHEY-SMITH。こういった舞台に呼ばれたからには主役を喰う勢いで突き進むのが礼儀。猪狩秀平(G/Vo)の「来たぜ、東京! 踊れー!」というアジテートも必要ないほど、初っ端の「2nd Youth」から完全にオーディエンスを魅了。フロア前方の密集度も凄まじく、無数のオーディエンスが熱に浮かされる光景はやはりいい。
激しいリフにサビの抜けがたまらない「Be The One」、ゴキゲンなムードを加速させる「Not A TV Show」を放ちながら、軽快でYUJI (Vo/Ba)と猪狩のハーモニーも気持ちいい「Don't Worry My Friend」を続けるように、ただブチ上げるだけじゃない器の大きさを見せつけるのは流石。
中盤でも「Heartbreak」や「Inside Of Me」等を淀みなく叩きつけ、会場全体を自分たち色に塗りつぶしつつ、「オレらの時代、やっときたよ。戻ってきたからには大逆襲していくんで、皆さん、道連れよろしくお願いします」という猪狩の言葉から、感じるがままに踊りまくればいいインストの新曲をドロップ。バンドとして前進してる姿を見せてくれる。
終盤はホーンのイントロで会場が沸き立った「Dandadan」、自由にやれと突きつける「Let It Punk」とプレイし、猪狩が「この3年間、しんどいことがいっぱいあったと思うけど、よくここまでたどり着いた」とオーディエンスを讃えつつ、「乗り越えられない壁があったときはパンクロックを聴け! オレたちのライヴに来い!」と宣言してからの「Goodbye To Say Hello」でフィニッシュ。最後まで存分にオーディエンスをヒートアップさせていた。

 
そして、主役であるSHANKは、いつものように庵原将平(Vo/Ba)、松崎兵太(G/Cho)、池本雄季(Dr/Cho) の3人がステージ袖からゆったりと歩みを進めながらの登場。いつでもどこでも、彼らは気取ることも気負うこともなく、その日の最高到達点を目指すだけ。そんな頼もしい様子から高らかな歌声で一気にオーディエンスを惹きつける「Surface」を放ち、足元をしっかり固めたところで一気に踏み出して「Good Night Darling」を続けたが、その加速が素晴らしかった。力強くグッドメロディーを飛ばし、オーディエンスも瞬時に呼応。庵原の掛け声にフロアが波打ち、松崎の裏打ちに合わせてオーディエンスが感情の赴くままに踊り狂った「Life is…」でも歓声や拳で会場の熱気が撹拌され、ライヴハウスが戻ってきたことをまざまざと見せつけてくれる。
少し間を空けて、「早くやれ—!」というフロアからの愛ある野次に「うっさい、ボケ!」と庵原が即座に返しつつ、笑いが生まれるのも様々なガイドラインが緩和された今だからこそ。こういうやり取りにほくそ笑みつつ、「(この状況は)みんなで勝ち取ったんで、楽しくやりましょう!」と庵原の言葉に続いたのは「Set the fire」だった。声を聴かせて欲しい、火を灯し続けろと歌い、松崎も前のめりになってギターをかき鳴らす。さらに激しく盛り上がりを見せていくが、どこか温かな空気も漂うのがSHANKのライヴ。彼らの自然体なスタンスがそうさせるのだろう。

その後、妖艶なムードを纏い、Sublimeを彷彿とさせるような新曲「Foundation」を響かせた後に続けた「Cigar Store」の勢いがまたすごかった。メンバー3人が生み出す疾走感に会場全体が引っ張られ、フロア前方は飛び交うオーディエンスで大渋滞。そりゃ、スニーカーやスマホも無くす人が出てくるのも当然か。曲が終わり、ステージ前に立つセキュリティへ落とし物を渡す光景も何だか懐かしく、ニヤリとしてしまった。
深くエグりながら突き抜ける「Wake me up when night falls again」を、観る者のテンションをアゲるライティングも相まって、よりエネルギッシュに響かせた後、ただただ自分と向き合ってるという曲だという言葉からもうひとつの新曲「Rude」をプレイ。ライヴで聴くと新たな印象があり、浮遊感も漂っていて、これまでのSHANKではなかったようなニュアンスといっていいかもしれない。また改めてライヴで味わってみたいと思う1曲であった。
庵原の歌い出しに合わせてクラップが起こり、無数の拳が突き上げられながら、あっという間に狂乱のダンスフロアが広がったのが「620」。2000キャパを超えるZepp DiverCityが一体となって生まれるパワーは強烈であり、何か合図があるわけでもなく、曲の展開に合わせてノリ方が変化するフロアが痛快だった。

もっと来いよと言わんばかりに庵原がフロアを覗き込み、それに応えるべくオーディエンスが共に歌い叫んだ「Hope」を畳み掛け、光を求める「Bright Side」へ。いつも思うが、この曲から感じられるバイタリティは秀逸。聴く者の力となる曲であり、鳴り終わった瞬間に大きな拍手に包まれたのもとても自然なことだったに違いない。
中盤戦に入り、いつものように緩いMCがありつつ、さらに気持ちを開放してくれる「Frustration」、強いタイトルコールに心を揺さぶられた「Departure」、会場全体を揺らしたシリアスなスカチューン「Take Me Back」と淀みない流れ。バンドとしての底力を見せつけつつ、ここでInstagramにリクエストがあったという「The One Second Future」をプレイ。飄々としながらも決して独りよがりではない彼らのスタンスが垣間見えた瞬間であっただろう。
ここで庵原がハイボールのプルトップを開けてひと息つきつつ、披露したのが「High Tide」だった。スローテンポで削ぎ落としたアレンジ。思わず息を呑むほどの美しさに酔いしれたところ、小気味よく揺らしながら引っ張り上げる力も共存する、妖艶なスカチューン「Wall Ride」を放ち、キレのいいリフから激走する「Phantom」へ。突っ走りながらも落とすところはしっかり落とす抑揚も実にいい。気持ちよく翻弄されたオーディエンスは続けた「Weather is Beautiful」で前のめり過ぎて、もうグッチャグチャ。感じるがままに声を上げ、拳を握りしめ、その瞬間の感情を爆発させていくのだ。

そんなオーディエンスへ向けて「こんなクズが何とかなってるのはホントに皆さんのおかげです」と庵原が語り、愛を伝えながらもっと強くなると誓う「My sweet universe」を奏でていく。ミラーボールもまわり、華やかなライティングの中、互いに気持ちを確認し合うことができるのはライヴだからこそ。ずっと心に残る印象的なシーンであった。
  そこで妙にドラマティックなムードにしないのも、やはり彼ら。本編ラストは「Steady」と「Movie」を速射砲のように連投し、全力で振り切るSHANKらしい締めくくり方だった。

アンコールでは、「次の曲、撮っていいですよ」と庵原が話し、撮影OKの状況で「Honesty」をドロップ。あまりにもオーディエンスがしっかり思い出として残したいという気持ちが強すぎた結果、あれだけ本編で暴れまくっていたオーディエンスが微動だにしないというアクシデントが起こり、「もうちょい盛り上がってよ」と松崎が笑う場面もあったが、頑なにならず、いろんな角度から物事を考える彼ららしい試みと言えるだろう。
その反動もあったのか、「BASIC」ではとんでもない数のダイバーが生まれ、バンドもそれならばと「Stop the crap」と「submarine」を叩き込む。ガツガツと攻め立て、オーディエンスも歓喜の姿を何の遠慮もなくさらけ出す、最高のフィナーレだった。
自分自身の感情に制限をかけず、ありのままでいられるライヴハウスはやはり素晴らしい。この体験が明日への活力になるのだ。

>>>SHANK HP