INTERVIEW

THE CHERRY COKE$ “LOVE THY DRUNX” INTERVIEW!!

結成25周年を機にCAFFEINE BOMB RECORDSに移籍したTHE CHERRY COKE$がオリジナル・アルバムとしては5年ぶりとなる『LOVE THY DRUNX』をリリース。バンドの地元である大田区の平和島をタイトルに掲げ、バンドを始めた頃の衝動を歌った「PEACE ISLAND」をはじめ、これぞチェリコと言えるアイリッシュ・パンクはもちろん、それだけにとどまらない曲調の振り幅が聴きどころの楽曲に加え、スコットランド民謡やシーシャンティーのカバー、さらには「さらば青春の光」の再録バージョンも含む全12曲。25周年を飾るにふさわしいその充実ぶりは頼もしいかぎりだ。バンドを代表して、KAT$UO(ボーカル/バンジョー)、MASAYA(ギター/ブズーキー)、LF(ベース/バウロン)の3人に、バンドの精神を端的に表したタイトルを持つ最新アルバムに話を訊いた。

Text by Tomoo Yamaguchi
Photo by TCC$


 
 
――今回の『LOVE THY DRUNX』は原点回帰じゃないですけど、バンドの根っこのところに立ち返って、もちろん大きなテーマも歌いつつ、今一度、バンドの本質を飾らずに表現しているんじゃないかと感じたのですが、何かそこに繋がる心境の変化があったんでしょうか?
 

MASAYA: 心境の変化と言うよりは、結成25周年だし、10枚目のアルバムだしっていう節目ということが大きかったですね。だから、新しいことをやると言うよりは、元々のスタイルがあって、そこに手を加えるぐらいの気持ちで作ったんですけど、25年の集大成と言うか、25年の流れはできるだけまんべんなくフレーバーとして入れてるつもりではいます。やろうと思えば、たとえば分数コードを使って、耳触りよくすることもできるんですよ。でも、「昔の俺達ってそんなことしてなかったよね」って感じで、もう無骨なね。Bm-A-G-Bm-A-Gみたいなスクエアなんだけど、ボンボンボンっていう。そういうのが昔のTHE CHERY COKE$だったよなって思い出しながら、敢えて角張った感じで作ってるところも含め、これまでの流れを踏襲する感じは意識してました。
 
――今回、いわゆるドリンキングソングも多いですよね?
 
KAT$UO: そうですね。年々そういう気持ちになってきたところもありつつ、昔から地元だったり、友達だったり、お酒だったりがテーマになることが多かったんですけど、今回は、より大きくなくと言うか、より小さく自分達の周りの出来事を歌いたいっていう気持ちがありました。だから、曲も全然揃ってない時から、地元だったり、友達だったり、お酒だったりをテーマにして、アルバムに統一感を持たせたいと考えて、タイトルもネイバーフッドみたいな感じにしたいっていうのがぼんやりあった上で、上がってきた曲に歌詞を付けていったんです。ただ、曲調に合わせて歌詞を付けたら、最初に考えていた方向性とがらっと変わっちゃうこともあって、そういう時は「こういうことを歌いたいから、こういう曲にして」ってMASAYAに言って、曲を手直ししてもらうこともありました。
 
MASAYA: だから、けっこう前に作って、21年の5月に前作の『OLDFOX』のリリースツアーのファイナルで披露した曲があったんですけど、それなんかはもう一番に入れるつもりでいたんですけど、曲を並べてみたら、「入るとこなくない?」ってなっちゃって。
 
――「TOKYO ROMEO MASQUERADE」という曲ですよね。
 
MASAYA: そうです。世界観が違いすぎたんですよ。あの曲はネオ・スウィングって言うか、マイナーなスウィングナンバーという要素がけっこう強めだから、やっぱりアイリッシュ・パンクっていう感じとは違ったんですよね。
 
KAT$UO: (CAFFEINE BOMBの社長の)MOPPY君が「これは違う」って言ったって言っちゃってもいいんじゃない?(笑)
 
MASAYA: 俺はリードトラックぐらいの気持ちでいたんですけどね。
 
――じゃあ、他にも曲としてはすごく気に入ってるし、出来はいいんだけど、今回のアルバムには合わないからという理由で入らなかった曲があるんですか?
 
MASAYA: よくぞ訊いてくれました(笑)。「スガシカオ」って仮タイトルの曲があったんですけど、スガさんが以前、所属していたオフィスオーガスタ系のサウンドが、僕、大好きで。
 

――え、そうなんですか。
 
MASAYA: 元々は浅井健一さんとか、THE BLANKEY JET CITYが神なんですけど、スガさんとか、THEATRE BROOKとか、そっちのアーティストも好きで。オフィスオーガスタ系と言うか、アコギも鳴りつつ、洒落た感じで、ドラムがタンタン・ドタンじゃないですけど、そういう感じの「スガシカオ」って曲があったんですけど、それも当然のことながら、今回はボツになりました。
 
KAT$UO: それは俺が「要らないんじゃない? ごめんなさい」って言いました(笑)。
 
MASAYA: ちょっとアダルトな曲ではあったんですけどね。
 
――でも、「TOKYO ROMEO MASQUERADE」も含め、いつか陽の目を見る機会もあるんじゃないですか?
 
MASAYA: そうですね。2人で弾き語りライブやる時に披露できたらいいですね。
 
――今回、スコットランド民謡の「NANCY WHISKEY」とシーシャンティーの「DRUNKEN SAILOR」というTHE CHERRY COKE$のルーツと言える曲のカバーも収録されていますが、今回のアルバムの作風を踏まえてカバーしようということになったんですか?
 
KAT$UO: 前作で言うと、「パブリック・ハウス」って曲があるんですけど、そういうへっぽこアイリッシュな、ちょっと間の抜けた曲を入れることによって、チェリコのイメージって、ぐっと締まると言うか、そういうところで、「NANCY WHISKEY」ともう1曲、似たような曲があって、「でも、2曲は要らねえか」みたいな話になって、今回は「NANCY WHISKEY」を選んだんですけど、前からやりたいと言ってたんですよ。こういう音楽を好きな人は知ってるメロディだから、やる以上はオリジナルの歌詞つけてやりたいねって。たぶん、THE ROZWELLSが初めて日本語のオリジナルの歌詞を付けてやったのかな。
だから、俺達も書いちゃってもいいだろうって、日本語の歌詞を書いてやったんですけど。だから、「NANCY WHISKEY」は、へっぽこアイリッシュ枠で、「DRUNKEN SAILOR」は、単純にかっこいいし、お客さんも好きそうだし、いつもそんなふうに選んでるんですけど、前にライブでやったこともあったから、今回、ちゃんとやってみようかみたいな感じで。で、途中に「The Raggle Taggle Gypsy」ってスコットランドのフォークソングの間奏を加えて、アレンジして。
 
MASAYA: 前回、カリブ海クルーズ(フロッギング・モリー主催の「Salty Dog Cruise」)に参加したとき、「DRUNKEN SAILOR」、1回やったんですけど、ややウケだったんですよ(笑)。
 
KAT$UO: 外国人に媚びるためにやったのに(笑)。
 
MASAYA: 逆に俺らの日本語のオリジナル曲のほうが盛り上がったから、へえっと思って。その時からあったネタではあるんですけど、テンポはもっと遅かったですね。
 
LF: キーも違ってた。
 

MASAYA: それを今回、挑戦してギリギリまで今のテンポに上げたんです。間奏にKAT$UOさんがさっき言ってた「The Raggle Taggle Gypsy」って別の曲が入ってるんですけど、そこもね、かなり速いからSUZUYO(ティンホイッスル/アルトサックス)とMUTSUMI(アコーディオン)は大変なんですけどね。
 
――さっきMOPPYさんの名前が出ましたが、CAFFEINE BOMBとはどんな出会いがあったんですか?
 
KAT$UO: 昔から友達なんですよ。12年と13年に徳間ジャパンから『BLACK REVENGE』と『COLOURS』っていうアルバムをリリースして、それからけっこう空いてから、「もう1回、徳間ジャパンからリリースしませんか?」って話が来たとき、ちょっと考えて、徳間ジャパンからリリースするべきかどうかってMOPPY君に相談したんです。ちょうど俺達、所属していた事務所が解散したばかりで、マネージャーもいなかったから、自分達で何をしたらいいのかもわからなくて、「マネージメント込みでチェリコをCAFFEINE BOMBでやる可能性ってありますか?」って訊いたんですよ。そしたら、「リリースだけだったら、いつだってできるけど、今、それ以外でチェリコにやってあげられることがそこまで思い浮かばない」って。ただ、「いつかはチェリコと一緒にやりたいし、リリースするんであればチェリコのことを大事にしてくれるレーベルから出してもらいたいと思う」って言ってくれて、徳間ジャパンとの話し合いにも同席してくれたんです。そこで、「徳間さんはどういうことをやってくれるんですか?」みたいなことを、俺らの親代わりじゃないけど、言ってくれて。向こうとしてもね、インディーで名を馳せてるレーベルの社長が来て、「チェリコ、ちゃんとやってくださいね!」って言われたら、ぴっとするじゃないですか。結局、その時は徳間でやらせてもらうことになって、『THE ANSWER』と『OLDFOX』をリリースさせてもらったんですけど、徳間とは1枚ごとのスポット契約だったから、『OLDFOX』をリリースした後、次のリリースはどうしようって考えてた時にMOPPY君から連絡が来て、「来年、チェリコは25周年だね。このタイミングでやってみる?」って言ってくれたんですよ。もうすでに自分達で事務所を作ってたんで、マネージメントは必要ではなかったから、リリースをしてくれるんであれば、それだけでもありがたいっていうことで、去年の初めだったかな。メンバーにも伝えたら、ぜひってことになって……という流れですね。だから、長いこと気にかけてくれて、ようやくこのタイミングでみたいなところはありますね。
 
――アルバムのリリースに先駆け、5月から3か月連続でシングルをリリースするというのは、MOPPYさんのアイデアだったんですか?
 
KAT$UO: そうですね。それが最近のやり方なのかって教えてもらいました(笑)。アルバムが仕上がったの、めちゃくちゃ早かったんですよ。去年の年末には録り終えてて、1月にミックスして、割と余裕があったから、いろいろな仕込みもできましたね。
 
――3か月連続シングルリリースの選曲とリリースする順番は、どんなふうに決めたんですか?
 
MASAYA: みんなで多数決で決めました。
 
――第1弾の「PEACE ISLAND」はアルバムのリード曲だから、曲調を考えてもこれしかないという感じで即決だったと思うんですけど、第2弾の「Wayfaring Man」は?
 
KAT$UO: けっこう迷いました。もっとチェリコっぽい、それこそさっき言ったへっぽこアイリッシュを入れたほうがマスに届くんじゃないか。逆に「Wayfaring Man」は曲自体はかっこいいし、好きな人は好きかもしれないけど、ちょっと小難しい印象も与えかねないかもっていう話もしたんですけど、なぜだか、これに落ち着いて。
 
――セオリー通りじゃおもしろくなかった?
 
KAT$UO: そうかもしれない。だから、第3弾シングルは、構成、サウンド、ノリすべてが、これぞチェリコと言える「BRING ME A BEER」になりました。これは満場一致でしたね。
 

――ところで、16年に発表した「さらば青春の光」を今回再録したのは、どんな理由からだったんですか?
 
KAT$UO: 元々はアコーディオンのMUTSUMIが加入するにあたって、ミュージックビデオで新メンバーが加わってたらおもしろくない?って曲だったんですよ。
 
――そうでしたね。
 
KAT$UO: それでミュージックビデオを作ったんですけど。
 
MASAYA: 音源にはしなかったんです。
 
KAT$UO: その時ちょうど、さらば青春の光の今のマネージャーのヤマネ(ヒロマサ)さんがチェリコのマネージャーをやってくれていて。
 
――そうだったんですか。
 
KAT$UO: そうなんですよ。この曲のタイトルを決めるとき、候補の中に「さらば青春の光」があって、だったらさらば青春の光に「さらば青春の光」のミュージックビデオに出てもらえばいいんじゃないってもう完全に内輪のノリで決まったタイトルとミュージックビデオだったんです。本当はそれをMUTSUMIが加入したお知らせとして、YouTubeにアップして終わりだったんですけど、マネージャーのヤマネさんと大田区のバスケットボールの大会を見にいったら、選手のお子さんの中に心臓病を患っている子がいて、その手術を受けるのに3億円必要だっていうポスターが会場に貼ってあって、なんとなく気になったから写メを撮ったんですけど、ヤマネさんと何かできることはないかなって話してるうちに「さらば青春の光」をリリースして、その売上げを寄付したらどうだろうって話になって、当時の事務所の社長に相談したら、ぜひやりなさいって言ってくれて。その後、ドーネーションも満額集まって、手術もちゃんと受けられたんですけど、そのうちにさらばがYouTubeをやり始めて、そのエンディングで使ってくれたら、さらばのファンの人達が、音源化してほしいって言ってくれるようになって、それに応えたっていうのが直接の理由ではあるんですけど、手土産代わりにCAFFEINE BOMBに多少なりとも色気のある話を持っていきたかっていうのもあって(笑)。しかも、再録にあたっては、さらばの2人とかヤマネさんとか、めちゃくちゃ協力してくれて、そういういろいろな気持ちが混ざり合っての「さらば青春の光」の収録なんですよ。
 
――「feat. ザ・森東」となっていますが、ザ・森東は、さらばの事務所ですよね。
 
KAT$UO: そうですね。さらばの森田君と東ブクロ君だけだったら、「さらば青春の光 feat.さらば青春の光」になって、ややこしくておもしろいと思ったんですけど、さっき言ったヤマネさんにも歌ってほしくて。ヤマネさんって元々バンドマンなんですよ。それもあって、「feat. ザ・森東」になりました。
 
――再録するにあたっては、原曲のアレンジを踏襲しているんですよね?
 
MASAYA: ハモリがちょっと増えている以外は、ほぼほぼ同じなんですけど、全員が原曲を超えるぞって意識しました。そんなに手を加えてはいないですけど、痒いところに手が届くようにはなってるんじゃないかな。
 
KAT$UO: 手を加えることも考えたんですけど、最初に出したやつで、もう仕上がってんなってなったんですよ。
 
――さて、原点回帰を思わせる曲がある一方で、『LOVE THY DRUNX』にはアイリッシュ・パンクにとどまらない曲も収録されていて、そういう曲も聴きどころではないかと思います。たとえば、「NATIVE DANCE」は、前作の「Social Network Slave」に通じるファンキーでブルージーな魅力がありますが、MASAYAさんとしてはどんな狙いがあったんですか?
 
MASAYA: この曲は真鶴で「Dong Chang Camp」っていうアコースティックセットの配信ライブをやったとき、「既存の曲をやるのもいいけど、その場でばっと1分か1分半そこらの曲を作ってやってみよう」って作ったんです。だから、その配信ライブを見ている方は、「あの曲だ」ってなると思います。ただ、その時、アコースティックだったものを、パワー感とか、曲のサイズ感も全然違うものにアレンジしているんですけど、ストーン・ローゼズの『セカンド・カミング』って2ndアルバムに入っている「ベギング・ユー」という曲がすごく好きで。その曲が持っているダンサブルな要素をアイリッシュとかケルトとかに落とし込んでみたって感じですね。そういう曲を作りたいとずっと思ってたんですよ。
 

――この曲のKAT$UOさんのボーカルが西城秀樹っぽくって。
 
KAT$UO: あぁ~(笑)。
 
――ご自分でもその自覚があるわけですね?
 
KAT$UO: 自覚があるって言うか、レコーディングしていると、MASAYAが「今、秀樹入りましたよね」って言うから(笑)。
 
MASAYA: でも、それはとてもいいことなんですよ。
 
KAT$UO: いいことなんだ(笑)。
 
MASAYA: 最初、言われ始めた時は、KAT$UOさんも「えっ」と思ってたと思うんですけど、ブースで聴きながら、冷静に判断している僕らは「入ってんな。もう泣いてる、歌が」みたいなね。その人にしか出せない味って言うんですか。だから、「入ってる、これ。秀樹来た」ってアガるわけですよ。めちゃめちゃいいことをおっしゃってくれました。
 
――色気が出ていると思います。
 
MASAYA: たとえば、Lさんとか僕とかがコーラスやるじゃないですか。やってすごくわかるわけですよ。KAT$UOさんの声の存在感には敵わないって。
 
LF: イメージできてもできないんですよ。存在感が出ない。やっぱり専門職には敵わないんだって思います。
 
KAT$UO: でも、それは僕がギターやベースを弾けないのと一緒で。それが僕はたまたま声だったいう話だと思います。だから、LさんやMASAYAの存在感が薄いとか、そういう話ではないと思いますけどね。
 
――幻想的なイントロからテンポアップする「AS A HUMAN」のような曲は、MASAYAさんが得意とするところですね。
 
MASAYA: 得意なんでしょうね、きっと。僕、ずっと悔しいなと思っていることがあって。
 
――はい。
 
MASAYA: ケルトやワールド・ミュージックをやってるバンドが、こういう曲を出さないんですよ。ここまでやっちゃうと違うよってリスナーに思われるかもしれないってビビりもあると思うんですけど、逆にアニソンやゲーム音楽の作曲家のほうがそういう境界線を超えた曲を作ってくる。めちゃめちゃケルトの楽器が入ってんのに、めちゃめちゃポップだったりするんですよ。
 
――なるほど。
 
MASAYA: だから、俺らだけでも超えていって、やれるんだぞって見せていかないとって言うか、アニソンやゲーム音楽の曲にも負けたくないっていうのが元々の根底にある曲ですね。
 

――この曲は音符を詰めたベースプレイもかっこいいですね。
 
LF: ありがとうございます。でも、実は大きく取っている部分がけっこうあるんですよ。TOSHIのドラムの手数や音数の多さに合わせて、最初はユニゾンでベースラインを作ってたんですけど、MASAYA君が「逆に大きなアプローチでお願いします」と言ってくれて、なるほど、そういうことなんだって思いました。音数を減らしていったら、音の広がり方が全然違うんですよ。狭い視点で見ずに、もっと広い視点で見る必要があるってことを改めて学んだという意味で、この曲はとても気に入ってます。
 
――フォーキーでノスタルジックな「LAST TRAIN」の歌詞は、前作の「ラスト・ピース」と同じように主人公の視点によるストーリーテリングも聴きどころです。
 
KAT$UO: この曲はMASAYAが作ってきた時は、どバラードだったんです。でも、前作の「ラスト・ピース」の枠にはめるためのバラードは要らないと思って、「バラードじゃない感じで行けないかな」とMASAYAに相談して、いろいろアレンジを加えて、今の状態になったんですよ。
 
MASAYA: 「もっとカラっとさせてよ」「もうちょいどう? もうちょっと行ける」みたいなやりとりを、KAT$UOさんとたぶん3、4回してると思います。テンポもアルバムの中で一番、気を遣いましたね。「ちょっと遅すぎるね」「ちょっと速すぎるね」ってやりながら、もうそこしかないっていうテンポを狙ったんですよ。そういうことをレコーディングの直前までやってましたね。
 
LF: だから、組んでたベースラインが一気になくなって、ドキドキしました(笑)。
 
MASAYA: ああ、レコーディングが早いからね。ドラムとベースは。
 
KAT$UO: 歌詞は最初、バラードだった時に付けたから、それこそバラードっぽいちょっと湿った感じではあるんですけど。

 
――この歌詞のポイントは、《諦めた筈さ》と繰り返しながら、最後、《今からでも間に合うかな》と歌っているところですよね?
 
KAT$UO: そうですね。僕自身は諦めてはないんですけど、諦めそうになったこともあるし、諦めてたらたぶん今とは違う人生を送っているんだろうなって、その諦めたほうのイメージで、諦めたとしても自分だったら、こう思っていただろうなってことを書きました。
 
――「LAST TRAIN」」を聴いて、もしかしたらまだ間に合うかもしれないと思うリスナーもいるんじゃないかと思うのですが、今回、「CHEER SONG」もそうだし、「BRING ME A BEER」もうそうだし、リスナーを鼓舞したり、慰めながら、励ましたりする曲が他にもあるじゃないですか。そういう歌詞は意識的なものなんでしょうか、それとも自然に出てきたものなんでしょうか?
 
KAT$UO: これまでもそうだったと思うんですけど、歌詞を書きながら、僕に言えることと言うか、人に伝えられるってそんなにないと思っていて。だから、言い方を変えているだけで、常に自分の中にある感情だったり、言葉だったりを、曲に合わせて出してるだけなんですよ。だから、大きなテーマとしてはどの曲もそんなに変わってない。たとえば、友達と飲みに行って、そいつがなんか元気なかったりへこんだりしてたら、きっとこういうこと言うかなとか。だから、答えが出るような歌詞っていうのはなくて、しんどいよな。そりゃそうだよなっていうぐらいでとどめてると言うか、別に答えなんか出さずに話ぐらいなら聞くぜとか、飲み行こうぜとか、大変だったねぐらいのアプローチのほうが逆にいいのかなっていう。それが僕に書ける歌詞と言うか、嘘じゃない言葉と言うか。こんななりで、こんなタイプの人間で、あんまりきれいなことばかり歌ってたら、ちょっと釣り合いが取れない。チェリコというバンドがイメージ的にそうだし。大雑把だけど、 あったかいバンドみたいな感じに映ったらいいかなってところですね。
 
――ところで、今回、ベースはどんなアプローチを? もちろん、曲ごとにそれぞれだとは思うんですけど、全曲で共通して心掛けていたことはありましたか?
 
LF: ベースを聴かせたいわけではなく、その曲に合うベースを弾きたいと思ってるので、テクニカルなことはあまりせずに、全体を通して聴いたとき、ウワモノがどれだけきれいに聴こえるか、曲のノリを一番生かせるかということだけを意識しました。派手にしようと思えば、もっと派手にはできるんですけど、チェリコのベースって、どういうものなんだろうということを改めて考えたんですよ。HIROMITSU君の時代も含め、過去のチェリコのアルバムを全作聴いて、この25年間、こういうふうに発展してきたんだってことを踏まえた上で組み立てていきました。
 
――「PEACE ISLAND」にはベースソロもありますね。
 
LF: ついに来たかっていう。加入して、今年10年目なのかな。10年目にして初のベースソロ。緊張しました(笑)。
 
MASAYA: イメージとしてはランシドのマット・フリーマン。「PEACE ISLAND」はUSのストリート・パンクのイメージで作ったんですよ。だから、ギターも敢えてそういうバンドのギタリストが弾くようなプレイにしていて。
 
LF: MASAYA君はランシドって言ってたんですけど、僕自身は最終的にリッチ・キッズ・オン・LSDっていうバンドのジョー・ラポーソのようなベースソロがかっこいいんじゃないかと思いつつ、いろいろミックスしたら、こうなりました。
 

――MASAYAさんは今回、ギターはどんなアプローチで?
 
MASAYA: ギターでしっかり雰囲気を作りたいという意識でギターは全部入れてますね。だから、アコギも曲ごとに場面場面で持ち替えて。音の鳴りが1本1本違うんで、メーカーから4、5本借りてきてもらって、エンジニアのANDREW(FOULDS)君と、「この場面はこれかな」「いや、そっちじゃない。もう1本のほう」みたいな使い分けをけっこうしていて、適材適所と言うか、頭に描いてる歌が乗った後の世界を想像して、場面場面で狙っていきました。
 
――もちろん、エレキギターも?
 
MASAYA: そうです。エレキもメーカーから持ってきてもらって、「この曲はこれかな」「いや、ちょっとそれヘヴィすぎるな」「じゃあ、もう1本のほうを弾いて」みたいな。ギターソロも同じように、1本1本試して。それをやってるとけっこう時間が掛かるんですけど、使える時間内でギリギリまでやりました。
 
――ところで、THE CHERRY COKE$の曲はアコーディオンがメロディを弾いたり、リズムを刻んだりしているんですけど、アコーディオンとギターのバランスはどんなふうに考えているんですか?
 
MASAYA: アコーディオンがリード・ギターみたいなものだと思ってるんですよ。だから、「もう好きなだけ弾いていいよ。あとはこっちでやるから」って常々言ってます。うちのムツミは「もっとちょうだい」って言うと、やれる男なんで。「もっともっと」「もっと何かないの?」って言うと、「こうですか?」「お、それいいじゃん」ってなるんで、限界まで引き出してやろうと思ってやってますね。

 
――なるほど。そういう発想なんですね。ありがとうございます。最後にリリース後の活動について聞かせてください。
 
KAT$UO: リリースツアーはまだちょっと先なんですけど、地元大田区のニューエイトというフィリピンパブをライブハウスにしたヤバいところがあるんですけど、12月にそこからスタートして、来年の4月ぐらいまでかな。各地を回ります。その間、2月の末から3月の頭にかけて、またカリブ海クルーズに呼んでもらったり、楽しい事も色々と考えているので楽しみにしていて欲しいです。



THE CHERRY COKE$  “LOVE THY DRUNX”
CBR-130 / 3300円(税込)

1.RISKY DREAMS
2.PEACE ISLAND
3.さらば青春の光 feat. ザ・森東
4.NANCY WHISKEY
5.LAST TRAIN
6.NATIVE DANCE
7.WAYFARING MAN
8.DRUNKEN SAILOR
9.AS A HUMAN
10.FAIRY TAIL
11.CHEER SONG
12.BRING ME A BEER
 

サブスク&DL各種
https://orcd.co/5lxmejw
 

LOVE THY DRUNX販売サイト
http://squidarmy.com/?mode=cate&cbid=2924874&csid=0

 

▼THE CHERRY COKE$ Official site https://www.thecherrycokes.jp/
▼CAFFEINE BOMB RECORDS Official site https://caffeinebombrecords.com/