SAND Pre "Summer Bash Fest 2024" LIVE REPORT!!
Report by Erolin(Burning Sign / Nodaysoff / SMDcrew / Back Yard Zine & Records)
Photo&Movie by Piikan(Live photographer & Video grapher)
2024.9.14 @心斎橋 SUNHALL
summer bash fest 2024
残暑の厳しかった今秋の行楽シーズン、9/14土曜に大阪サンホールで開催された”Sand”主催のハードコアイベント『Summer Bash Fest 2024』は、外の暑さが霞んでしまうほどの熱気に包まれた1日となった。
ここ数年のシルバーウィークを前後とする連休では恒例になった西のSummer Bash Festと、東のBloodaxe Festival。
それぞれ毎年レジェンド~アップカミングな海外アーティストがラインナップされることでも知られ、今年のSummer Bash FestにはSandのVo.Makoto氏/Furious Recordsが招聘した、今後を期待されるUSサンフランシスコ出身の”No Right”が出演。
イベントはNo RightやSandを筆頭に総勢18バンド&4人のDJ、昼の12時からノンストップで行われた。
ほぼ真っ暗の照明で始まるフェス
Summer Bash Festは2ステージで進行する。
サンホールには本来1ステージしかなく、2つ目のステージは毎年ステージ自体の設置を含めて、すべての音響機材を持ち込む形でゼロから作られる。
遊び場は自分たちで作ってしまう、といったDIY的な考えに基づいており、イベントの主催メンバーも設営・撤去に関わっていたのは裏側で印象的なシーンの一つでもあった。
各ステージのサウンドチェックが終わり、イベントは”CE$”のDJからオープン。ゆったりとしたレゲエが、だんだんと人の増えていくフロアの期待感とともに溶けていく。
バンドのライブがスタートする頃には、いつの間にか日本語ラップを交えたセットに変わっていた。
バンドの先鋒は地元大阪から”SLUG”、Bステージからのスタート。
ほの暗い赤や青色の単照明のみ、時間は真昼間で華々しい音楽フェスのオープニングだというのに、フロアはほぼ真っ暗に近い状態で始まった。
バンド全体から発する禍々しさも相まって、さらに陰鬱とした空気が加速していくにも関わらず、会場は早くも多くの人で埋まり、後方の入り口は上手く扉を開けて入れないほどに。
延々と繰り返されるトランスめいた展開、全ての音に覆いかぶさるようなノイズなど、ドゥーミーなハードコアに様々な要素が混濁して観る者の平衡感覚を失わせるような音楽性。
そこへ限界を超えて膨らみ切ったあとに待つ凶悪なモッシュパート、それに呼応するように最後列まで広がるピット。
そして最後は長い長いギターのフィードバック音で引きづるようにライブは終了。とても昼の13時とは思えない異様な光景に、色んな意味で錯覚に陥ってしまった。
こんな形で幕を開けるフェスは、他になかなか無いだろう。
あの頃の音楽を、あの頃に生まれた若者が新たに表現する
SLUGが終わるとすぐに、Aステージのトップバッターとして勢いのあるハードコアモッシュクルーWest Side Unity代表、”UNHOLY11”がスタート。
この夏には待望の1st EP「Shit Up Late」をリリース、期待度が高まるこれ以上ないタイミングで初のBIGイベント出演となった。
Vo.GKTの並々ならぬ気合いに満ちた煽りに応えるように、モッシュピットはライブ初っ端からまるで爆発物を投げ込んだかのような広がり方をみせた。
もはや何段落としかわからないレベルのビートダウンやモッシュパートにパラメータを全振りした楽曲構成、仲の良いバンドのVo.勢がこぞってフィーチャリングする曲など、古い人間には懐かしさも覚えてしまうタイムレスな光景。
90's後期~00's半ばにかけて生まれた「関西極悪ハードコア」というサブジャンル、まさにあの頃の音を、あの頃に生まれた若者たちが新たな形で表現し、それをまたあの頃に生まれた若者たちがフロアで歓迎する。
これは大袈裟ではなく、ハードコアやパンクの細々と、しかし力強く続いている歴史の一端を垣間見た気がしたのであった。
ステージ間は各5分ほどの転換時間で矢継ぎ早に進行していく。
広島の”Sugar”は冒頭の2バンドと比べると重心高めなサウンドで、次にどんなパートがくるのか読めない楽曲展開が特徴的であり、各曲の中で短いスパンの激しいテンポチェンジや転調を重ねていく。
しかし思わず口ずさめるようなリフやダンサブルなフレーズも多く顔を覗かせ、奇天烈さとキャッチーさを両立させるバランス感覚は若くしてセンスの塊といったところ。
ピュアに熱を伝えるタイプなMCとの対比もよく、ポジティブなバイブスでフロアが満たされていく。
同じく広島出身ということで、ステージを終えたばかりのUNHOLY11からVo.GKTがすぐに駆け付けてフィーチャリングしていたのも印象的なシーンの一つだった。いい意味でバンドのルーツが想像しづらく、それと比例するようにスケールの大きさも感じられる今後が楽しみなバンドである。
カラッとしたサウンドのバンドが続く形で、次は大阪”Razing Staff”。
こちらはツインボーカルが煽りまくり&掛け合いまくりなモッシーなスタイルで、キャッチーさに振り切って畳みかけていく。
MC中のリラックスしたG-Rap調のBGMもバンドのカラーに合っており、ライブ全体の緩急にも上手く作用していた。
新曲でモッシュピットが即反応していた瞬間でも顕著だったが、このバンドは観る側が期待する展開を裏切らずそのままストレートに打ち出してくる良さがある。
マイクを完全にフロアに預けきったり、ガールズモッシュが炸裂するような場面なども見られ、そういったオーディエンスとの距離感やコミュニケーションのとり方はこの日も非常に長けていた。
ハードコアパンク、その表現は無限大
転換DJは”2yang”氏にバトンが渡り、変化球を織り交ぜながらハードコアやパンクにレゲエやヒップホップを重ねるスタイル。
本人からもにじみ出る、ドランク感、スケボー、ラスタやラガといった要素が、氏のサジ加減もあってスリリングな1本線で繋がっていく。
Minor ThreatやLeewayといったバンドの曲は世界中のライブ転換中にかけられているだろうが、こういったミックス具合は唯一無二だと思わせてくれる。
そしてそんな陽気な転換とは裏腹に、東京の覆面デスメタルビートダウン集団”DC”が登場。
すべてが過剰といいたくなるような容赦のない危険なスラムサウンドの絨毯爆撃で、合間のSEもドリルやグライムにトラップなど、古今東西で不穏な音楽の詰め合わせ状態。
極悪系ハードコアのデスメタル方向からの解釈は90年代の当時もあったアプローチだが、現代においてはこうなるのかといった発見もある。
ポケットに手を入れたまま気だるく歌うボーカルなど、ファンサービスの要素なども皆無。
バンド側が意図的に重苦しい空気でコントロールし、フロア側を苦しめていくかのような様子は、さながらサディスティックな癖が垣間見えるのであった。
しかしそれをも楽しむ空気が横たわっているのもこのイベントの特徴である。
そんな澱んだともいえる空気を一変させたのは、オリジナリティあふれる世界観の大阪”Masterpeace”。
こうして並ぶと他のバンドとの毛色の違いは明白で、メタリックなサウンドが続いた後の爽快感も特筆もの。
演奏隊のタイトさは群を抜いており、2ビートやブラストを交えながら爆走に次ぐ爆走な楽曲のオンパレードは、モッシーな音楽を期待してイベントに参加している者たちを良い意味で置いてけぼりにしていく。
ハードコアパンク、その表現は無限大であると体現して示していくかのようなステージは確かな存在感を放ち続け、イベントにとっても良いミックススパイスな位置づけとなった。
東京”Nine Percent”はそのメンバー構成や出で立ち、そして国籍多様なモッシュピットの様子も含め、さながら海外ゲストバンドのようなライブをみせる。
ローチューニングでダウナーな単弦リフや硬質なスラム感のある豪快なブレイクダウンパートが特徴的。
しかし時折みせるバウンス感あふれるノリなど、縦と横の緩急には独特なバランスと質感がある。
ボーカルの乗せやリズムワーク自体も軽やかで、引き連れてきたスタッフと楽器をスイッチしたりする場面なども見られ、全体的にラフで等身大な印象のステージングが印象的だった。
続いてSummer Bash Festには2年連続の出演となる”Tive”。
昨年のシーンを思い起こさせるメンバーの上裸率の高さと、上手Gt.ケンタの奇抜なヒョウ柄の衣装が一際目を引く。
ライブはTurnstileの「7」カバーから。
これは先日Tiveがサポートを務めた来日大阪公演で演奏されることのなかったイントロ代わりの名曲でもあり、まるであの日のエピローグのような形でスタートした。
そのまま最近のライブでのセットリストとは全く違った曲順で進めていくが、原曲に自ら手を加えて再構築している様子も見られ、フレッシュ感は見るたび失われていない。
オリジナリティあふれる楽曲群ながら、その個性が認められてきているのはフロアの反応を見て居れば一目瞭然である。
1年前からの成長をあらためて確認することができた。
大阪の大きなハードコアやパンクのイベントには驚くほど様々な人々が集う
Tiveとは同年代の東京”DOZEONE”が登場。
オーバーサイズの服装がよく似合い、キャラ立ちもよく見た目にも華がある彼らは、ここにきてBステージで1番の集客を集めた。
大きく弧を描くような腰から下に響くグルーヴと、半音ずつ音階が上下するようなリフを上手く駆使し、80〜90'sのNYHCアップデートを2024年のこの日本にてこれ以上ない形で表現していく。
特別なことをするわけではないのだが、絶妙なテンポチェンジなどメンバー同士の阿吽の呼吸がバチッと噛み合った満足度の高いパフォーマンス。
何の説明もなく突然プレイされたBilly Club Sandwichの「Suckerpunch」カバーもラフなスタイルにハマっていた。
Aステージの方では今回最も先鋭的なパフォーマンスを魅せた東京の”Negative Sun”。
ライブは長めのノイズから幕を開け、時おり強烈なストロボの照明が楽曲に連動していく。
Vo.Chifu氏の異様なテンションのボーカル、パワーバイオレンスやグラインドコア~ハードコアパンクを行き来する、なんとも形容しがたい音楽性。
いわゆるモッシュパートと解釈できるパートもあるにはあるが、全体的な印象としてメタリックなモッシュパートには意図的に力点を置いていないように見える。
エクスペリメンタルな要素も強く、霞みがかって混沌としているような様は、自分たちのステージング全てをコントロールすることは半ば放棄しているかのような感触があり、しかしそれらの一見バラバラな矢印が一転集中して爆発的に作用する瞬間もあるため、終始目が離せない緊張感を放っていた。
そしてNegative Sunからの流れはベストに近いように思えた大阪”Termination”。
これまでのバンドとはまた違った感触があり、メンバー全員のバックボーンが激しく交錯したような、独特なザラつきや冷たさを纏ったメタリックなグラインドコア~ハードコアパンクを叩きつける。
弦楽器隊のタイトさにフィジカル限界寸前のギリギリ感で攻めるNatsuroのドラムが絡みあい、そのスリリングな掛け合いが楽曲のBPM以上に体感速度を加速させていく。
たまにくるメタリックなモッシュパートの破壊力は凄まじく、ただそれも同工異曲とでもいうか、NYHCの文脈とは少し逸れたような魅力を感じさせてくれるから興味深い。
やや歳を重ねたオーディエンスからの歓声はこの日1番だったように思えたが、それはもしかするとTerminationというバンドの評価を的確に表している場面だったのかもしれない。
”DJ Shiga-Chang”は時おり日本語曲も交えながら初期パンクなどを中心としたセレクト。
若いキッズが多いとはいえここは大阪、大きなハードコアやパンクのイベントとなると驚くほど様々な年齢/ジャンルの人々が集う中で、おもちゃ箱から飛び出してくるような選曲は不思議なほどしっくりとくるから面白い。
お次は音出しの時点で厚みや太さのレベルの違いが感じられた”DIEDRO LOS DIABLOS”。
哀愁をはらんだメキシカンな楽曲がSEで流れると、赤の照明をバックに一瞬で只者ではないとわかる出で立ちのメンバーが出揃ってくる。
突き放すような曲展開は重苦しいがそれを突破する推進力に長けており、思わずフロア側が圧倒されてしまうかのような感触。単にオラついて威嚇するようなわけではない表現として、バンド全体から出てくる凄みは若手バンドになかなか出せるものではないだろう。
Vo.U.X.I氏のスタンドマイクの使い方や、下手側Gt.Kiyo氏のハーモニクスを駆使したギタ―ソロ高音のいななきなど、同時に色気のようなものまで感じさせてくるのも印象的だ。
数曲に1回程度の割合でくるオーソドックスなモッシュパートはフロアを確実に強打していき、ラストの仕上げとなる名曲「MURDER」では会場の隅々までピットを拡げきって見事に終了した。
イベントは佳境へ
Bステージでは大阪”Ferocious X”が登場。
今回のラインナップで最もストレートであり、かつ尖ったハードコアパンクのアクトともいえるだろう。
服装や音像など、一見一聴して他のバンドとは明らかな違いをみせながら良い意味で意に介さず、普段通り釘バットでフルスイングするようなライブを進めていく。
切り刻むようなノイジーなギター、渾然一体となって猛然と襲いかかるリズム隊、そこへ時おりフロアに飛び込みながら絶叫するVo.Hanochi氏が加わり、この日でも随一の突進力をみせる。
恐らくバンド名は知っているものの初見だというオーディエンスもいたであろうが、そういった者も巻き込みながらブレイクやキメのたびに大きな歓声が上がり、腕を振り回すようなスタイルではないナチュラルなモッシュピットが作られていく。
Ferocious XがSummer Bash FestのようにいわゆるNYHCなどをルーツとしたメタリックなハードコアバンドが並ぶイベントに出演することはとても有意義なことで、しかしそれが意外なように思えないようなフリーキーさをバンドが持ち合わせていることも含めて、様々なジャンルの橋渡しとなる尊い存在であることは間違いない。
続けざまに、今年はFerocious Xと同時期にアメリカツアーに行っていた横浜代表”Fight It Out”が出番を迎える。
グッと人数の増えたステージ脇の関係者たちを尻目に、いっさいがっさい薙ぎ倒していくような破壊力抜群のライブを展開。
2ビートやブラストビート、通常なら休憩パートになりそうなそれ以外のブリッジとなるパートでさえも、全てがモッシュピットに向けられているかのようだ。ローチューニングならではなキーの不安定ささえも味方につけてしまうような、生半可ではない緊張感あふれるパフォーマンスで、ここまでで1番の盛り上がりを見せる。
幕張でのサタニックカーニバルも記憶に新しいが、大きなステージでも普段の小箱と遜色のないゼロ距離感のステージングをすることは容易ではない。
その物理的な距離を埋めるほどの熱量がバンドに伴っていないと成り立たない、そんなことをあらためて示すかのようなライブだった。
Bステージでは福岡から”Evolnatas”。
歴戦の強者が集ったスキルフルな楽器隊がEvilなクロスオーバーサウンドをこれでもかと展開し、そこへお祭り男として名高いVo.Youth-K氏の真顔なステージングが上乗せされていく。
特にミミレミミでもGt.を務めるGENTAROW氏のギターワークは凄まじいものがあり、とんでもなく正確無比かつ荒々しさも兼ね備えた鋭角な刻みはもちろん、単音フレーズやソロでも薄くならない音圧など、ギター小僧も即KO間違いなしだっただろう。
刻みまくるスラッシーな勢い、基本中の基本であるストップ&ゴー、ブラストパートの加速感などなど、どれもが供給過多で、オフィシャルのバンド紹介文にもあった正にこぼれ寿司状態といったサウンド。
ムリヤリ食わせてくるかのようなスタイルに、ポジティブな意味でお腹もいっぱいである。
”DJ Holiday”氏はロックステディやレゲエを中心にゆったりとした選曲。
絶妙なルーディーさが荒くれ者たちで活気あふれるイベントの転換に丁度ハマっていく。氏のかけるDeterminations「Under My Skin」には、大変痺れるものがあった。
他の人間の目を気にしない=気にしてられないほどのカオス
そして遂にアメリカから”No Right”の出番となった。
日本での知名度はまだそれほど高くないものの、アップカミングな存在に期待は高まる。
若いキッズにはまず気付かれないであろう渋いCrowbarのカバーをイントロ代わりにスタート。
しかし既に様子見のオーディエンスたちも出音と演奏のタイトさには胸が高まっていたに違いない。
本編スタートといった感じで自身の曲をプレイし始めると、ファストなパートにやや長く引っ張ってからのブレイクダウンパート、ところどころにエフェクターの使い方も相まってインダストリアルな感触を混ぜていく。
これらに勘の良いキッズたちがいち早く反応し、前方からモッシュピットを拡げていった。
今回のセットリストに含んでいないとの噂もあったVision Of Disorder「Suffer」のカバーも無事炸裂し、これにはオールドキッズも歓喜。
初となる来日にMCで謝辞を述べるVo.のSierraはまだまだ初々しさやあどけなさが残った女性で、激しいパフォーマンスとのギャップもまた面白かった。
最後にバンド名を冠した「No Right」をプレイすると、曲後半のブレイクパートで遂にモッシュピットが完全に花開く形に。
オーディエンスのハートを掴んだ結果、ワンモアの声が上がり、そこでプレイしたばかりの「No Right」を再度フロアに叩きつけて終了。
来日初ライブとしても幸先の良いスタートとなった。
残すところあと2バンド。
トリ前として登場したのは横浜シティースキンヘッズ”Bayonets”。
漫談のようなMC?も交えながら、もはやリハーサルと本番の違いが分からないような空気感のサウンドチェック、次々に集まってくる上裸姿の男たち、ステージ脇にはおさまらないほどの仲間たち。
「はだか祭り」や「上裸祭り」などと呼ばれ、一部ではすっかり定着してしまった感のある横浜の奇祭を目当てに、やや年齢層高めのオーディエンスが駆けつけたところで本番がスタート。
この日はDr.が代打でSuper Structureなどでも叩いているPinkmosh氏だったが、そういったサプライズのようなものもあり普段以上にラフな雰囲気でライブは進んでいく。
「横浜から来た・・・Turnstileです」などといったお決まりともいえる内容のMCもご愛嬌、見渡すかぎり上裸だらけで肌色に染まっていくフロアにこれでもかと笑顔が溢れていく。
裏打ちでスカなリズムを取り入れたパーティーチューンや性急なビートのハードコアパンクナンバー、そして隣の知らない人とも肩を組んで歌いたくなるシンガロングナンバーなど、Bステージで裏ハイライトともいえる盛り上がりで彼らの持ち味をすべて出し切って終了。
そして大トリでイベント主催者でもある”Sand”が登場。
イベント前に公言していた通り、ライブ1曲目はIrate「Gone」カバーを当時のライブでプレイされていたガジェット警部のOP曲付きで再現スタート。
若いキッズたちにも人気のナンバーとあって、初っ端からフルスイングでピットに飛び込んでいく者たちも多数確認。
そしてカバー曲も前半で早々に切り上げ、そこからオリジナル曲を連発していく。
凶悪と極悪を絵に描いたようなスタイル、その表現を下支えするハイレベルな演奏隊と、獰猛すぎるMakoto氏のVo.、フロアは文字通りの阿鼻叫喚、地獄の空間へと化していく。
ステージ脇でただ見ているだけでも、身に危険が及びそうなほどに構えてしまうほどの鬼気迫るステージングは特筆もので、そういった感覚は他のジャンルも含めてなかなか味わえるものではない。
フロアも群を抜いたボルテージの高まりようで、前方に押し寄せるオーディエンスと、それを押し返すように無理やりこじ開けるようなモッシュピット、そこに老若男女や人種の壁もない。
なぜこんなに暴力的な音楽なのに、こんなにも笑顔の人が多いのだろうか。
もはやダイブやモッシュに、綺麗もへったくれもない。
しかしそのような他の人間の目を気にしない=気にしてられないほどのカオスは、もはや美しささえ覚えるほどであった。
長めのインターバルの後にワンモアでプレイされた初期曲「For Fellows Eyes」では、ここぞとばかりに年齢層高めのKids Till Deathな面々がピットインし、華々しくイベント本編が終了した。
名残惜しそうに最後までDJをするHoliday氏の姿や、ライブハウスの片付け時間になっても話に花が咲き、バーカウンターや会場上でまだまだ帰ろうとしないオーディエンスたちの姿も印象的。
終わってみれば夢中で一瞬の出来事のように思えるが、立っているだけでジンジンとする足の疲れが1日の長さを物語っていた。
主催から気の利いた一言もなければ、野外フェスのように最後は花火が打ちあがるような演出があるわけでもない。
感傷に浸る間もなく、バンドもオーディエンスも、それぞれのローカルの小さな規模のライブに戻っていくだけ。
ただ口には多く出さなくとも、特別な一日であることはあの場にいた全員が噛み締めていただろう。
そんなロマンティストの集いが、きっと皆大好きなんだろうと思うのだ。
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