ジ・エンプティ “革命 e.p.” INTERVIEW!!
ジ・エンプティが新作『革命 e.p.』をリリースした。タイトルの通り、「革命を起こしたい」という思いで作られた本作は、ジ・エンプティらしいピュアさやファンタジックな世界観は引き続き持ちつつも、バンドにとっての挑戦も含まれた1作に仕上がった。本作の制作について、メンバー4人に聞いた。
Text by Chie Kobayashi
Photo by Ruriko Inagaki
1本のライブの大切さを改めて実感
──SATANIC ENT.では約1年ぶりのインタビューとなります(https://satanic.jp/contents/699316)。1st EP『神様からの贈物 e.p.』のリリースやツアーを経て、バンドの状況やご自身たちの気持ちにあった変化を教えてください。
ハルモトヒナ(Vo) No Big Deal Recordsに所属してから最初のリリースだったので、いろんな人に祝福されながらいいツアーを回れたような気がします。同時に、いろんな人の目につくということも実感したので、ピシッとしなきゃなとも思いました。
トクナガシンノスケ(Gt) 俺は、関係者も含めて新しく出会う人が増えたなと思っていて。ライブ会場でもそうですし、誰かの友達で「今飲んでるからおいでよ」って声をかけてもらって前から好きだったバンドの人と絡めたり。
カワカミタイキ(Dr) 僕は、成長を感じる1年でした。お客さんも徐々に増えてきているし、メディアにも出させてもらって。楽しい1年でした。
──ご自身の成長も?
タイキ そうですね。今まで周りから褒められたことがなかったんですけど……。
ヒナ 最近めっちゃ言われるよな? バンドもですけど、「タイキの成長やばいな」ってよく言われます。
──その成長のきっかけはなんだったのでしょうか?
タイキ 自信を持てたことですかね。“俺のドラムはカッコいいんだ”って自信を持って叩けるようになった。やっぱり事務所に所属できたということが大きくて。「俺らはカッコいいから(事務所に)入れたんだ」って思ったら、自信がついて成長できているんだと思います。
クガケンノスケ(Ba) この1年ライブがめちゃくちゃあったんで、バンドとしての底力がすんごいつきました。僕らは福岡に住んでいるので、東京とかでライブをするときって、30分のライブのためにすごい時間をかけて行くんですよ。1本にかける気合いということも改めて考えるようになって。だからこそ本気でやれるというか。お客さんにも自分たちにも向き合った1年だったなと思います。
自主企画フェスを目指して始めた「宴 -EN-」
──「神様からの贈物 e.p.」ツアー、6月には東京・福岡にて「ロマンティックナイト」、9月には福岡にて「宴 -EN-」と自主企画イベントも精力的に開催されていましたね。
ヒナ はい。将来的な大きな目標として、地元・久留米で主催フェスを開催したいというのがあって。その1歩目として始めたのが「宴 -EN-」です。
シンノスケ ライブは全部大事だけど、特に「宴 -EN-」は失敗できないというプレッシャーがありましたね。ソールドアウトさせられなかったなとか、そういう成功だけじゃないという事実も、全部つながっていったらいいなと思っています。
──今回はWiennersとのツーマンでしたがいかがでしたか?
ヒナ めっちゃ楽しかったです。Wiennersにとってはアウェイな空気感だったはずなのに、全部ひっくり返していて。やっぱやべえなって思いました。
──ツーマンライブは、他のライブとはやはり心持ちは違う?
ヒナ 違いますね。
シンノスケ ならではの感じがあるよね。“1対1”という感じするもんね。タイマンみたいな。
ケンノスケ タイマンやからツーマン好きなんだ。
シンノスケ タイマン好きやもんね。
ケンノスケ タイマン好きやけん、ありがたい。
シンノスケ ツーマンするってことはイコールある程度の関係性もあって仲の良さもありつつも、ちょっとどこか「やってやるぜ」みたいな気持ちがある。それこそ、“隠れて拳を握っている”みたいな。
シンノスケの優しさが出ている「革命」
──今後の「宴 -EN-」も楽しみにしています。ここからは新作『革命 e.p.』について聞かせてください。前作はライブの定番曲を音源化したものでしたが、今作は全曲新曲?
ヒナ はい。
──どうやって作り始めたのでしょうか?
シンノスケ 「革命」という曲ができてマネージャーさんに聴かせたら「めっちゃいい!」と言われたので、これを基盤に作っていこうということになりました。
──では、核になったという「革命」から話を聞かせてください。この曲ができた背景を教えてください。
シンノスケ この曲は確かめっちゃ前に作っていたんですが、完成させるには何か足りんなと思ったまま数年経っていて。今回曲を作ろうと思ったときに、引っ張り出しました。でもどうやって作ったんだっけな? 革命を起こしたかったんでしょうね。
──子供目線で、絵本のようなわかりやすい歌詞で革命について歌っているのが面白いなと思ったのですが、子供目線にしたのはどうしてだったのか覚えていますか?
シンノスケ 一応、大人に対する反逆精神みたいなものも入っているんですが……大人のヘイトよりも、弱者たちが手をとって何かに向かって反逆するというところにフォーカスしたかったんだと思います。
──ほかの皆さんは、最初にこの曲を聴いたときはどう感じましたか?
ヒナ スタートからエンディングまで綺麗に揃っているというか……ちゃんと物語になっていて、1曲の重みがすごいなと思いました。構成はみんなでスタジオで相談して決めたんですが、結果的にすごくライブ映えする曲になったなと思います。
ケンノスケ 僕もすごくいいなと思いました。それこそ、僕も絵本みたいだなって。この曲が出たら、またバンドが良い方向に変わっていくんだろうなと思いました。
タイキ 僕は<鉄砲が小さく見えるほど>という歌詞がめっちゃ好きで。シンノスケの優しさがすごく出ていて、最初に聴いたときから、そこがバーンってきた。
シンノスケ 確かにそこは俺も、できた当初から気に入っています。この曲はもともと弾き語りで作ったので、歌詞に重きを置いていて。楽器が入って瞬発力が出るところとかはバンドに任せるくらいの気持ちでしたけど、確かに出したかったなと、出来上がったものを聴いて思いますね。
──<革命起こすのだ>と歌うのですが、その革命の起こし方が、みんなで手を繋いで、優しく起こそうと歌う世界観がジ・エンプティらしいなと思いました。「ジ・エンプティってどういうバンド?」と言われたら、「この曲みたいなバンド」と言えるような。
ヒナ めちゃめちゃ分かるっす。
シンノスケ 言われてみれば、初期に作っていた曲も、ちょっと子供っぽい歌詞だったりするんですよ。僕のイメージではバーンってきたTHE BLUE HEARTSもそんな感じがするんですよね。難しい言葉が少なくて、シンプルで。
ヒナ だからこそ伝わりやすい。
シンノスケ そうそう。
悩んでいる人の力に少しでもなれたら
──2曲目はヒナさんが作詞作曲を手掛けた「笑っておくれよ」です。
ヒナ この曲は遊びの1曲。僕らの曲で「バチコイ」という曲があるんですが、その曲のワンフレーズを入れたりして。
ケンノスケ この曲ハッピーですよね。僕ら、スカをちゃんと聴いてこなかったんですけど、やるとなったら意外とそれっぽくできてよかったです。
ヒナ カッティングの仕方とかをエンジニアさんに教えてもらいました。「本格的なスカはこうなんだけど」ということも教えてもらいつつ、僕らが“ガチスカ”をやるのも違うかなと思って、スカのエッセンスを入れつつ、ニュアンスは調節しました。
シンノスケ 友達のバンドがスカをライブでやって盛り上がっているところを見て、僕らのライブにも必要な要素なのかなと思って。そういう、ある意味戦略的に曲を作れたということも、1つの成長だなと思いました。
ヒナ そうそう、この曲のレコーディング、1発OKだったんですよ。“ファーストテイク”です(笑)。それも考えながら聴いてもらえたら。
──では3曲目「連れ出してやるぜ今夜」。この曲の作詞作曲はタイキさんですが、この曲はどのように?
タイキ 僕、悩んでいる人とか弱気な人の力に少しでもなれたらと思って音楽をやっているんです。僕自身がすごく弱い人間なので、気持ちがわかるから。だからそういう人に向けて「いつでも相談に乗るよ」という気持ちを曲にしました。
シンノスケ ジ・エンプティにとって新しいタイプの曲ですよね。ちょっと異色な感じがする。
ヒナ でもどこかジ・エンプティっぽさもある。
ケンノスケ ヒナが歌うとそうなるよね。
──とはいえ、歌詞も含めて、ちょっとゴリッとした感じはありますよね。
タイキ 初めて歌詞に「お酒」って出てきた(笑)。
シンノスケ 大人になったな〜(笑)。
ケンノスケ たぶん、レザージャケットやもんな(笑)。雨の中で……(としばし想像が続く)。
──曲としては、最後にポエトリーっぽいボーカルもありますが、これはどなたのアイデアですか?
タイキ 全部僕です。そこも、新しい感じを入れてみたいなと思ってポエトリーっぽくしました。
ヒナ 自分ではポエトリーに手を伸ばせていなかったんですけど、嫌だったわけではもちろんないので、面白いなと思って挑戦しました。でもライブで噛まないように練習しないとなと思っています(笑)。ポエトリー部分がというわけじゃないんですけど、この曲は「笑っておくれよ」とは逆で、歌うのにすごい時間がかかったんですよ。自分のものにするのに一番手間取って。
タイキ 一回録り終わったあと、次の日に「もう一回録り直したい」って言って、もう一回録ったよな?
ヒナ うん。すごく繊細な曲なので苦労して。でも2日目に録り直したらすんなりいけました。タイキもエンジニアさんもみんなで「これだ!」ってなって、エンジニアさんにハグされました(笑)。
──そして最後は「銀河高速に乗って」。この曲もヒナさんの作詞作曲です。「連れ出してやるぜ今夜」とは正反対と言ってもいいほど、ファンタジックな1曲ですね。
ヒナ はい。僕は普段曲を作るときに「このワードを使いたい」みたいなところから作り始めることってそんなにないんですけど、この曲は「箒星」という言葉が使いたいなと思ったところから始まったんです。「箒星」って僕の中では、遠くで光ってくれているとか、見守ってくれている星みたいなイメージだったんですけど、調べてみると、“不幸を呼ぶ星”とか“不吉の前兆”とも言われているらしくて。僕の周りで、一時期親戚が次々と病気とかで倒れていっちゃったんです。箒星のその意味を知ったときに、箒星をモチーフに、僕の思う幸せの形を書いてみようと思ったのがこの曲です。
──そもそも「箒星」を歌詞に入れたいと思ったのはどうしてだったのでしょう?
ヒナ 僕、Mr.Childrenが好きなんですけど、Mr.Childrenの曲の中に「箒星」という曲があるんです。それを聴いて「箒星ってどんな意味なんだろう」と思って調べたら、そのときの自分の感情とすごくマッチして。
シンノスケ この曲、歌詞の感じもメロディの感じもすごくヒナっぽいなと思いました。サウンド的には90年代のJ-POPっぽいサウンド感が合いそうだなと思って、そういう音作りをしたギターを入れたんですけど、それもすごくマッチしたなと個人的には思っています。ちょっと浮いていて銀河感のあるリフが弾けたなと。
ケンノスケ 俺は、他の曲のベースはなかなか作れなかったんですけど、この曲は一瞬でできました。あと、普通にこの曲いい曲だな〜って思います。
タイキ メロディに90年代っぽさがあって、ドラムもそれっぽく叩けたかなと思います。シンバルも銀河っぽくできたし、すごく綺麗にまとまったなと思います。
「カレーに納豆はちょっとどうかと思います」が聴こえるか?
──ここまで収録曲それぞれについて解説してもらいましたが、最後にどの曲でもいいので、“自分のここを聴いてほしい”というポイントをお一人ずつ教えてください。
シンノスケ じゃあ僕から。僕は「革命」の歌詞で、2番の<子供達は風を吹かす 飛ばされることも知らずに>というところがすごく気に入っています。自分たちのアクションをきっかけに風を吹かせるんですけど、子供がゆえ、自分たちが吹かせているつもりがなくて、風が吹いているという意味で。その風が向かい風になることもあるけど、時には追い風にもなるっていう。対比も表せたし、うまく書けたなと思って気に入っています。
ケンノスケ 俺は全部! 全部頑張ったので全部聴いてほしい。ベースは聴きづらいと思うんですけど、頑張って聴いてください!
シンノスケ 個人的には「銀河高速に乗って」の間奏のベース、めっちゃ好き!
ケンノスケ うれしい。それも聴いてください(笑)。
タイキ 僕も全曲ですけど……「笑っておくれよ」と「連れ出してやるぜ今夜」のドラムは簡単には叩けないと思うので。「叩けるんやったら、叩いてみろよ」って感じですね。これ、どっちもシングルペダルなんですよ。“男のシングルペダル”です!
ヒナ 「笑っておくれよ」の冒頭なんですけど、あそこは4人それぞれが何かを言っているので、聴き分けてみてほしいです。
シンノスケ 俺とケンノスケは漫才をしています。
ヒナ 僕は「カレーに納豆はちょっとどうかと思います」って言っていて、タイキは、ずっと「ぼーぼーぼー」って言葉じゃないものを発しています。
タイキ いや、俺、なんか言ったよ。でもなんだったか忘れたので、聴いてみてください(笑)。
──では『革命 e.p.』は、バンドにとってどんな1枚になったと思いますか?
ヒナ ライブハウスで革命を起こしたいという気持ちで作った1枚です。前作よりもライブ映えするというか……自分たちでも“本当にライブハウスで戦っていきたいんだろうな”って思える一枚になったので、早くライブで聴いてもらいたいです。
シンノスケ 音楽面で言うと、それぞれの技術も上がっているし、聴いている音楽の幅のどんどん広がっているので、クオリティが格段に上がったと思うんです。だからこそ今までやっていなかったこともできた気がするし、自信を持って、音楽性の幅を広げられた一枚になったなと思います。
──11月8日からは「革命ツアー2024」が始まります。どんなツアーにしたいですか?
ヒナ 今まで行ったことのない場所にも行けるので楽しみですね。それと、ファイナルは福岡のBEAT STATIONという、僕らにとってはちょっと挑戦になる大きな箱。このツアーが成功したら、来年もっとやばい1年になるんじゃないかなという、腕試しのツアーです。
シンノスケ ツアーって、ライブを日を重ねるたびに強くなっていく感じがあるので、またあのドキドキが味わえるのが楽しみです。
ケンノスケ 僕らと同世代のバンドと一緒に革命を起こそうというツアー。“一緒に”という気持ちもあるし、“負けてらんねぇ”みたいな気持ちもありますね。あとは……仙台のラーメン二郎がめっちゃおいしんで、仙台で二郎を食べるのが楽しみです。
タイキ 本当に各県で二郎は食べたいですね。ライブはもちろん楽しみですけど、ライブを頑張ったご褒美に、その土地の美味しいものを食べられたら幸せです。
ジ・エンプティ「革命 e.p.」
01. 革命
02. 笑っておくれよ
03. 連れ出してやるぜ今夜
04. 銀河高速に乗って
「革命ツアー2024」
2024年11月8日(金)千葉LOOK w/ サバシスター
2024年11月10日(日)仙台FLYING SON w/ 炙りなタウン、健やかなる子ら
2024年11月11日(月)新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE w/ 炙りなタウン、ミニマムジーク
2024年11月13日(水)静岡UMBER w/ Sunny Girl、Atomic Skipper
2024年11月14日(木)KYOTO MUSE w/ Sunny Girl、Brown Basket
2024年11月22日(金)高松TOONICE w/ the奥歯’s、Brown Basket
2024年11月23日(土)広島ALMIGHTY w/ the奥歯’s、Atomic Skipper
2024年11月28日(木)札幌SPiCE w/ THE BOYS&GIRLS、Bye-Bye-Handの方程式
2024年12月5日(木)心斎橋BRONZE w/ Wienners
2024年12月6日(金)名古屋 R.A.D w/ Arakezuri
2024年12月9日(月)下北沢SHELTER w/ アルステイク
2024年12月18日(水)福岡BEAT STATION w/ FOMARE