Who’s Next by SATANIC Editing Room Vol.27:ジ・エンプティ
SATANIC ENT.の編集スタッフが気になるバンドをピックアップする連載企画"Who's Next”。今回は福岡県久留米市出身の青春ロックバンド、ジ・エンプティを紹介する。地元の先輩バンド・THE FOREVER YOUNGのツアーゲストのほか、04 Limited Sazabysの対バン検討中のポストに返信したことからメンバーの目に留まり「Harvest tour 2022」に出演するなど、その名を一気に広めているジ・エンプティ。中学時代からの友人同士で結成したという彼らのこれまでについて、そして最新作である1st EP「神様からの贈物 e.p.」について話を聞いた。
Text by Chie Kobayashi
Photo by Ruriko Inagaki
「筑水高校に三銃士がおる」
──ジ・エンプティは中学時代の友達同士で結成されたそうですが、結成の経緯から教えてください。
トクナガシンノスケ(Gt) ベースのケンノスケと俺が同じ中学で、ボーカルのヒナとドラムのタイキが同じ中学で。タイキとケンノスケと俺が同じ高校に上がったんです。そこの部活動紹介のときに、軽音楽部のかわいい女の子が演奏しよって。当時俺らは楽器に興味はなかったんですが、その女の子に会いに軽音楽部に行ったんです。
クガケンノスケ(Ba) タイキが惚れちゃって。
カワカミタイキ(Dr) 3年生の女の先輩が弾き語りをしていて、本当にその人を見に行っただけだったんですけど、行ったら「入ってよ」って言われてそのまま……。
シンノスケ 半ば脅しやったよね(笑)。で、そこからタイキの恋の話が始まるんですけど(笑)。
タイキ いや、長くなるけん……(笑)。
──ではその話は今回は温存しておきましょう(笑)。楽器に興味がないまま軽音楽部に入った3人は、その後バンドを始めた?
タイキ はい。文化祭で演奏することが決まっていたので、「一緒に入ったけん、3人でやるか」ってなって、3人でコピバンから始めました。
ケンノスケ RADWIMPSとかELLEGARDEN、SIX LOUNGEのコピーをしてましたね。最初、自分はまだベースじゃなくてギターで、シンノスケがベースボーカルでした。
シンノスケ でもケンノスケがギター下手すぎて、「もう俺が弾く」って(笑)。
ケンノスケ 自分はバンドができれば何でもよかったので、すぐにベースに変わったんですが、そしたら「ベース楽しい!」ってなって。そこから、ボーカルも入れたいねという話になって。
シンノスケ ヒナは友達やったから、みんなでカラオケに行った時に「ヒナ、歌うまいよね! あいつ入れようぜ」って話になって。でもヒナは部活に入っていて忙しかったから、大学生になってから入ってもらいました。
──最初はバンドに興味がなかった皆さんですが、いざ始めてみたら楽しかった?
ケンノスケ 楽しかった!
シンノスケ 人前でキャーキャー言われるの楽しいけんね。なんかモテてる気がして。実際、僕文化祭で歌って彼女できたんですよ。
ハルモトヒナ(Vo) すごかったですよ。僕は隣の高校だったんですけど、噂が回ってくるんですよ、「筑水高校に三銃士がおる」って。
──「モテたくてバンドを始めたけど、実際はモテなかったです」みたいなエピソードはよく聞きますけど、皆さんは本当にモテたんですね。
ケンノスケ まぁバンド組む前からモテとったっす(笑)。
タイキ 元々モテとった人がバンドしたらもっとモテるよねって(笑)。
シンノスケ あの頃はよかったよね……(笑)。
「みんなで歌える曲がやりたい」が始まり
──それまで楽器に興味がなかったとのことですが、皆さんの音楽遍歴を教えてください。
ケンノスケ 自分はバンドを組む前からBUMP OF CHICKENがめっちゃ好きで。お兄ちゃんがカラオケで「天体観測」を歌っていて「バンドってこういうものなんだ!」って知って、そこからYouTubeでミュージックビデオとかライブ映像を見て、どんどんハマっていきました。
──3人のなかでは一番バンドを聴いていたのがケンノスケさんだった?
ケンノスケ いや、タイキだと思います。Green Dayとか海外のバンドめっちゃ知っとったよね?
タイキ お父さんがGreen Dayとかレッチリ(Red Hot Chili Peppers)とかを車の中でかけていたので、その頃からバンドを聴いていましたね。その後、中学生でONE OK ROCKにハマって、銀杏BOYZやMy Hair is Badなどいろいろ聴くようになっていきました。
ヒナ 僕はずっとMr.Childrenが好きです。家の車の中でずっと流れとったけん、ずっとMr.Childrenを聴いていて。これからも永遠に愛しています。
シンノスケ 僕もBUMP OF CHICKENが初めて好きになったバンドですね。そのあとBIGBANGも好きになって。高校生になってからは吉田拓郎にハマって、フォークソングを聴くようになって、そこから派生してあいみょんも好きになって。同じようにOasisを好きになって、マカロニえんぴつも好きになりました。
──そんな皆さんがジ・エンプティとしてオリジナル曲を作るようになったのはいつ頃ですか?
シンノスケ 高校3年生くらいの頃ですね。
──バンドとしてどういう音楽をやっていこうという話を?
ケンノスケ 自分たちがしたいことをしよったっていう感じよな?
タイキ うん。
シンノスケ 覚えてないと思うけど、俺が自分の作りたいものを作りよったらタイキが「みんなで歌う曲をやりたいよね」って言ったんよね。だからたぶんタイキの中では、その頃からジ・エンプティの主軸は決まっとったと思う。
タイキ そもそも最初は、ONE OK ROCKの影響で英詞だったんですよ。だけど、みんなで歌いたいと思って日本語にした気がします。
「神様からの贈物 e.p.」で特に聴いてほしいのは
──昨年にはTHE FOREVER YOUNGのツアーや04 Limited Sazabysのツアーに出演し、知名度がさらに広がりました。今のバンドの状況は、どう捉えていますか?
シンノスケ レーベルの所属も決まって(No Big Deal Records)、1stEPも出して、バンドのフェーズ2が始まったという感覚ですね。
ケンノスケ スピード感を上げていきたいよね。ずっと何かを仕掛けていたいし。
──まさに今、お話に出たように12月6日に1stEP「神様からの贈物 e.p.」がリリースされました。本作はライブの定番曲を音源化した作品ですが、音源化するにあたって意識したことはありますか?
ヒナ 「思い出は甘いままで」は絶対に音源にしたかったよね。
シンノスケ あー、そうね。この曲は僕が作詞作曲をしたんですけど、今まで作った曲の中で一番好きな曲で。
ケンノスケ 俺の母ちゃんも好き!
シンノスケ マジで!? 自分の中でナンバーワンの曲で、これをみんなに聴かせたときに「めっちゃいい!」って言われたから、口には出していなかったけど、たぶん今回EPを作ることが決まったときに、この曲をレコーディングするのはみんなの心の中で決まっていたんじゃないかなと思います。
ヒナ うん、この曲を軸にして収録曲が決まっていったのかなと思います。
──せっかくなので、収録曲の中で特に好きな曲や、「ここを聴いてほしい」というポイントをお一人ずつ教えてください。
ケンノスケ 2曲目の「さよなら涙」ですね。これは今年の春くらいに、シンノスケの家に遊びにいったときに「今、こんな曲あるんだ」って聴かせてもらった曲で。そのときは今と違ってゆっくりした曲だったんですよ。
シンノスケ 「YON FES」に行った時に、全体的にツービートの曲が多くて、もしかして「さよなら涙」もツービートにしたらいいかもなと思って。
ケンノスケ それを聞いたら、この曲のベースのフレーズが一瞬で出来上がって。だからこの曲の、特に入りのベースは聴いてほしいです。でも一番好きな曲は「思い出は甘いままで」です(笑)。
シンノスケ そっちかい!(笑)
タイキ 僕も「さよなら涙」は聴いてほしいですね。それまでツービートの曲がなくて、初めてツービートにしたので、大変でした。やったことないフレーズも結構入っているし。難しかったし、時間もかかりましたけど、好きです。
ヒナ 僕は「思い出は甘いままで」ですね。4曲とも歌っていて気持ちよかったんですけど、この曲が一番自分の声質に合っているなと思って。ハモの広がり方とか、音程取るの難しくてすごく苦労したんですけど、録り終わってから聞いてみたら「俺の声いいな」と思いました。
シンノスケ 僕は「思い出は甘いままで」のギターソロ。めちゃくちゃ良くできたんで、聴いてもらいたいです。
自分たちにとっての贈り物であり、ファンへの贈り物でもある
──歌詞はどなたが書かれているのでしょうか?
シンノスケ ケンノスケ以外の3人が曲を作るのですが、歌詞は最初に作った人が書いています。
──ではせっかくなので、1曲ずつ作詞した方に楽曲の解説や、曲ができた背景の説明をお願いしても良いでしょうか?
ヒナ はい。まず1曲目「神様からの贈物」は僕です。昨日まで一緒に遊んでいた子が、次の日も元気ってわけではないじゃないですか。そんなときに、ふと「あの場所に行けば会えるかな」と思い出すという曲です。
──「神様からの贈物」というタイトルはEPのタイトルにもなっていますが、これにはどういった想いが込められているのでしょうか?
ヒナ レーベルに所属して、EPを出せるということは僕たちにとって贈り物ですし、僕らを好きな人からしたら、このEPが贈り物になるんかなって。そういう思いで、これをEPのタイトルにしました。
──「さよなら涙」はシンノスケさんが作詞作曲ですよね。
シンノスケ はい、僕が作詞作曲しました。頭の中でむっちゃ泣きよる女の子を想像して、その子のことを書いたんですが、前向きな内容をネガティブな言葉で書けて。無意識ではあったんですけど、好きな感じの歌詞になりました。
ヒナ 「あいつの唄」は僕です。これは大学の友達のことを歌った曲です。写真をやっている子で、写真のことになると急に学校を休んでどこかに撮りに行っちゃうんですけど、授業とか課題は全然できなくて。でもそれってすごいことやなって思って。その子は結局留年しちゃったんですけど、本当に好きなことだけを突き詰めているその子に向けて「そのままでいいんじゃない?」という気持ちを書きました。僕の身近にそういう人がいるってことは、きっとライブハウスに来ている人の中にもそういう人がいるんじゃないかなと思って。いろんな人に当てはめて聴いてもらえたらいいなと思いますね。
──最後の「思い出は甘いままで」もシンノスケさんです。
シンノスケ 僕の母親がフランスのアンティークショップを営んでいて。高校3年生のときに一緒に買い付けでフランスに行ったんです。そのときに、この歌詞の冒頭にあるように、パリの街を歩いていたら、まるい窓から女の子がぴょこって顔を出していて。それを書き留めておいて、膨らませたのがこの曲です。僕、男性が女性っぽい歌詞を歌ったり、女性が「僕」と歌ったり、さっきも前向きなことをネガティブな言葉で書いたと言いましたけど、そういう逆の表現を組み合わせるのがなぜか好きで。THE BLUE HEARTSの歌詞にある<ヒマラヤほどの消しゴム>(「1000のバイオリン」)の歌詞とかもそう。それがこの曲でもうまく表現できたなと思って気に入っています。
──改めて1stEPが完成して、どのような気持ちでしたか?
ヒナ これまで3作出してきましたけど、一番自信を持って出せる作品になったので、たくさんの人に聴いてもらいたいですね。ワクワクしています。
ケンノスケ めちゃくちゃカッコいい作品ができました。マジで最高。バンドできてうれしいです。ジ・エンプティ、ベースさせてくれてありがとうございます!
一同 あはは(笑)。
ケンノスケ ……ってぐらいの気持ちです。ほんとに良すぎて。
シンノスケ 僕たちの大事な曲たちをよろしくお願いします!
福岡県久留米市フロムWEST POINT、ジ・エンプティ
──先ほど、第二のフェーズに入ったところだという話もありましたが、バンドの今後の目標を教えてください。
シンノスケ 俺は04 Limited Sazabysがやっていることが好きで。自分たちのフェスをやったり、日本武道館でライブをやったり、でもYouTubeで茶番っぽい動画を上げたり。FOMAREとかもそうですよね。そういう、型にはまらず好きなことをやっていくバンドになりたいですね。
ケンノスケ 自分たちがやりたいと思ったことをどんどんやっていくバンドになりたいよね!
ヒナ あとは、ずっと愛されるバンドでありたいですね。
──フェスという話もありましたが、ジ・エンプティは福岡県久留米市出身です。地元への特別な想いもあるのでしょうか?
ヒナ はい、あります。ライブの冒頭に僕が「福岡県久留米市、フロムWEST POINT」って言うんですけど、WEST POINTというのは僕たちが久留米でお世話になっていたスタジオ。そこのオーナーさんが、いろんな人に「久留米でいいバンド出てきたよ」と言ってくれていて、すごく期待もしてくれているんです。だから最終的には久留米でフェスが主催できたらいいなと思っています。それはずっと目標として掲げていたいですね。
「神様からの贈物 e.p.」
1. 神様からの贈物
2. さよなら涙
3. あいつの唄
4. 思い出は甘いままで
https://theempty.lnk.to/kamisama
神様からの贈物ツアー 2023
12/18 (月)下北沢 SHELTER w/ ammo、Sunny Girl
12/22 (金) 栄 R.A.D w/ 炙りなタウン、UNFAIR RULE
12/23 (土) 心斎橋 BRONZE w/ アルステイク、Brown Basket
12/25 (月) 福岡 Queblick ※ONEMAN 公演
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