INTERVIEW

Who’s Next by SATANIC Editing Room Vol.13: Earthists.

photograph by Yuki Ohashi text by Teneight



連載企画"Who's Next"はSATANIC ENT.を編集するスタッフが、今現在気になっているけど、まだSATANIC ENT.ではピックアップしていない次世代のバンド・アーティストに会いに行き、ルーツや活動、それを取り巻くカルチャーなどを一方的に紹介するというシンプルかつ偏愛極まりない企画。第13回目はDjentなどをルーツに、メロディアスで破壊的なサウンドを生み出す4ピースバンドのEarthists.。


Left to Right:Yuya(Dr.)、Yui(Vo.)、Yuto(Gt.)、Shugo(Ba.)


 

アンチカルトをテーマに



ーまず、バンド結成の経緯は?


Yui:最初は、すでに脱退したYutaってやつと2人でプログレッシブメタルコアやDjentといったテクニカルなバンドをやりたいねって意気投合して結成をしたんです。そのあと、めちゃくちゃ変態で凄い上手いベーシストがそういえば友達にいたなってなって、それがShugoだったんですが、すぐに誘って加入してもらいました。そこからVictim of DeceptionのDr.のKumaoを誘って。それがオリジナルメンバーでバンドの始まりですね。

ー結成当初から残っているのは、YuiさんとSyugoさんのお二人なんですね。

Yui:そうですね。でもそのあとすぐにGt.のYutoとDr.のYuyaが加入して、今のメンバーのままずっと一緒に活動しています。



ーでは、メンバーそれぞれのルーツとなっている音楽は?

Yui:僕は、高校の時にDIR EN GREYの『UROBOROS』というアルバムを聴いたのが、この音楽シーンに入るきっかけですね。あとはマキシマム ザ ホルモン、Pay money To my Painの3つが自分のルーツですかね。

Shugo:僕は音楽自体のルーツでいうと、2歳くらいからヤマハ音楽教室とかで、歌って踊るやつをやっていて。ギターとかサックスとかも聴いて触ったりしていたんですけど、あまりメタルとか激しいのは自分から行こうと思って触れていなくて。ただ、地元の図書館にいろんなCDがおいてあるコーナーで、勉強のために聴こうと思って見つけたDream Theaterってバンドを、曲が長くて音もいっぱいあって面白いと思って聴き始めたのがキッカケですかね。あとはそれこそ、DIR EN GREYとかMUCCが好きで。



Yui:え、歌って踊ってたの?

一同:(笑)。

Yui:そこが凄くて話が入ってこなかった。



Yuya:高校の時はSuicide SilenceやHi-STANDARDにMEANINGとかを聴いていました。

ー系統はバラバラだったんですね。

Yuto:僕もかぶるんですけど、激しい音楽の入り口はマキシマム ザ ホルモンでした。それよりも以前に、音楽のカッコ良さに気づかせてくれたのは、L’Arc~en~Cielでしたね。それと、今は僕が楽曲の骨組みを作ったりしているんですけど、音楽を作ることのルーツだとしたら、結構70年代とか80年代とかの、爽やか系のプログレッシブ・ロックがルーツですね。結構マイナーですけど、Porcupine Treeもギターボーカルの人をめちゃくちゃ参考にしていたりします。



ーなるほど。では、作詞は誰が行っているんですか?

Yui:僕が中心となってやっています。でも最近はその境界線がうやむやになってきて、フレーズの一部分をYutoにつくってもらうこともあります。それに、メロディやリズムを重視する時も、Yutoにつくってもらったり。逆にYutoが作ってきた編曲とかを半分破壊するようなアレンジをしたりもしますし、Yutoがその意気を汲んでくれて作るってこともあります。

Yuto:最初はコンポーザーだけで完結させて、あとは各楽器隊がアレンジを加えてたんですけど、今は、メンバー同士で一緒にいる機会も増えて、その時々で柔軟に対応できるようになってきました。

ー歌詞にはどんなメッセージを込めているんですか?

Yui:最初は社会的で大きな枠組みの中で起こる漠然とした事象を歌詞にしていたんですけど、それからだんだん内向的で、自身の考えや思考に対する歌詞に変わっていきました。あと、いろんな意味でのアンチカルティックっていうのは、自分で歌詞を書く上では意識していてます。それは、盲信的になることへの懐疑ってことが自分の中でのテーマになっていて。YutoはYutoで全然違うようなエッセンスを持っていて。超Earthists.オタクみたいな人が聴いたら、違う人が書いたのかなって分かるかもしれないですね。

Shugo:俺は分からない(笑)。

Yuto:僕は自分自身が見たものや経験したものが中心になっています。それは、結構Yuiと違うところかなって思っています。

ーでは作曲は?

Yui:Yutoがベースを作って、そこに僕の希望を加えたり修正をしてもらって作っていきます。

ー最近ですと、7月にリリースした「HOME」はどうなんでしょうか?

Yui:「HOME」はそれこそYutoが本格的に歌詞もメロディも舵をとって作った曲で。Yutoが持ってきた弾き語りから始めるイントロはすごいフックがあったし、サビのメロディも歌詞も僕がイジらずにそのまま採用して、凄まじいスピード感の中で作った楽曲ですね。



ーそうなんですね!

Yui:下北沢Flowers LoftのDJイベントに遊びに行った時に、爆音でOASISが流れてきて。結構酔っ払ってたのもあって、『めちゃハンパねーじゃん!』って、凄くぶち上がって、速攻メンバーのグループラインに、『漢弾き語り。OASIS直系。次の曲はそれでいっちゃうっしょ。長さは3分きっかりで』って送って。それと、その当時流行っていたOne DirectionをなぜかSpotifyのシャッフルで聴いていたのもあって、一つのフレーズを何回も繰りかえし使うような方法を、自分たちの楽曲のエッセンスとして入れてみました。



ー確かにそれまでの曲とテイストが違う気もします。今まで作ってきた楽曲の各パートで、思い入れのある曲とかそのフレーズってありますか?

Yui:俺は「Sunblood」の1サビ後のYutoのフレーズが終わったあと、ダッダッダって刻みに対してシャウトがユニゾンしてる部分が、これぞDjent!これぞメタルコア!だと思っていて。あともう一つは、「Resonating Light」の再録Ver.「RESONATING LIGHT 2.0」の最後のギターソロのツエッテーデデゥーってみんなユニゾンしているキメ。Yutoにもここは、キメを入れて欲しいってお願いをしてやってもらいました。

ー擬音語よく使いますね(笑)。

Shugo:僕は曲のどこが好きというよりかは、自分の思考的な部分なのですが、昔からテクニカルデスメタル的なことをやっていて。ユニゾンしたり速弾きをしていました。でも「Purge Me」以降は、ボトムのグルーブ感の美しさを意識するようになっていきました。だから昔の曲と最近の曲とで、テイストは違うんですけど、それぞれ違う良さがあって。昔の曲でいうと「Footprints」のサビ前までのスラッピングのフレーズとか、複雑だけどそう聴こえないかっこよさ。でもやっぱり弾くと難しいよね?って部分を、気持ちよく弾けた時の快感もありますし。最近の「Sunblood」や「HOME」では、一番下のルートの音しか弾いてないんですが、全体のサウンドの一番下に自分がいて、自分が全体をコントロールしてる感覚。後は君たちが好きにやりなさいって感じも楽しいなって思っています。

Yuya:「Suicidal Temple」って曲の、イントロからのドラムの入りが、パワー系のサウンドで、叩いていて一番体にしっくりくるところかな。あとは、まあ楽なので。なにも考えなくても叩けるし、体が勝手に動くイメージで。

一同:(笑)。



Yuto:「Sunblood」の一番最後の大サビのところは、MIXで埋もれちゃってるんですけど、後ろはオーケストラとかストリングスなどが入っていて。個人的にはそこが一番時間をかけて作ったフレーズでもありますし、楽曲をより華やかにしているパートなので、お気に入りですね。

ーメロディには、こだわっている部分はありますか?

Yui:サビのメロは、ほとんど俺が考えていて、フックをすごく大事にしているんです。聴いたときに一発で鼻歌を歌えちゃうくらいのキャッチーさと、鼻歌で歌うと気持ちいい音域みたいなものを、鼻歌を歌いながら作っています。あとは、サビで印象的なリードギターが鳴ってることが多いんで、そこをかわしながら独立したメロディを注意して作っていますね。上がってきたデモを聴いた時に、ファーストインプレッションで頭に浮かんだメロディをその場でiPhoneで録音してそのまま採用したりもします。

ー結構メロディが頭に残りますよね。

Yui:そうですね。ただ、それをやってると、意識してないけどものすごいパクリみたいになる時があるんです。「Sunblood」も意識してないけど、『天体観測のメロディじゃん』ってツイッターに書かれていて。

一同:(笑)。

Yui:『あ、ほんとだ!天体観測じゃん~!』みたいな(笑)。なので、J POPのエッセンスが多いかもしれないです。


 

完全に原曲越え。それくらいの気迫。



ー10/27にデジタルでもリリースされた「BIRTH」のEPについてお聞きしたいのですが、カバー曲「Fade Away」で、意識したことは?

Yui:構成の前半は原曲リスペクトであまり大きくはアレンジせず、後半でどんどんEarthists.的なエッセンスの濃度を強めていく。そんなサプライズ的な展開のレイヤーを意識しました。1番のサビが終わった後、GraupelのSotaがFeat.で入ってるんですが、原曲の方「Fade Away」って語りのバースがあるじゃないですか。そこをTGI直系の大ぶりかつ重心の低い硬めの刻みにまるまる変えてシャウトしてもらって。ラスサビのメロディに関してはせっかくのカバーなんだから、パンチ重視で振り切っちゃって大団円を演出したくて。ハイトーンのメロディックシャウトを極限まで出してカタルシスすら感じさせるエモーショナルなメロディにしました。

Shugo:劇場版Earthists.みたいな。これくらい振り切った方が、結果良かったなって思える良い出来になっています。

ー手応えはありますか?

Yui:完全に最強で原曲越え(笑)。それくらいの気迫です。



ーでは新曲の「Overvision」はどうなんですか?

Yui:「BIRTH」EPに収録されている新曲「Overvision」は、GraupelとSable HillsとのスプリットEPであるということを踏まえて、じゃあそこにいる自分たちの音楽性の意味を考えた時に、自分たちの持ち味であるグルーヴィーなサウンドや多様なシーケンスを今まで以上にリッチに使用してサビもこんな時代だからこそ一体感のあるものを、お客さんやライブ中の景色を想像して作りました。

Yuto:限られた時間の中での制作だったのですが、今までにないスピード感で作っていて。こういうSplitをやること自体初めてだったのもあり、どちらも作曲にめちゃくちゃ力が入りましたね。

Yui:「Overvision」は、普段行っている様なデモが上がってきてから色々な要素を削って引き算をする時間すらもなかったので、基本的にアレンジは全部足し算で。Yutoの作った楽曲に俺のボーカルを加えてさらにそこに様々な要素を加えているんです。そこに、吉田兄弟召喚しようってイメージで三味線のサウンドも使ったりしています。

Shugo:三味線じゃないよね?

Yui:え、吉田兄弟じゃない?

Shugo:中国の琴系のサウンドです。

Yui:ちがった。吉田兄弟だと思ってた。。。でもマジでやばいです。



ーそもそも、なぜ引き算をしているんですか?

Yui:もともと俺が4-5分とかの長い曲を繰り返し聴けないタイプで。そういう要素の多い曲って1曲で2曲分作れるじゃんって考えちゃったりもして。先に3分ぐらいにしたいなって分数を決めちゃえば後は削るだけなので。あとは、長いイントロもあまり好きじゃないから、イントロも結構削りがち。

Shugo:削ったからといって薄味ではないですね。

Yui:確かにそうだね。
 

デカい箱でライブをしてネクストレベルへ





ー今回のEP「BIRTH」は、Crystal LakeのYDさんが主催ですが、YDさんとはどのような関係なんですか?

Yui:YDさんとは、すげえいっぱい飲んだりするんですけど、その中でも自分がバンドでどうしたいかとか、ヴィジョンを話したりもするし、じゃあ実際に今しないといけない事や立ち回りの部分とかも、YDさんに相談に乗っていただくこともあります。今後大きな動きをしていくにあたって、どうすればいいか話をしていく中で、この3バンドでEPを出して、でかい箱でライブをやってネクストレベルへの意識改革をしていこうって話をいただいて、形になりました。

ーでは、お世話になっている先輩もYDさんなんですね。

Yui:僕はそうですね。完全に。

ー今回、渋谷のライブハウスGARRETにて撮影をしていますが、Earthists.にとってここはどんな場所なんですか?

Yui:CYCLONやGARRETは自分たちと繋がりが濃い場所です。初ライブはCYCLONだったんですけど、その後自分たちでイベントをし始めたのはGARRETでした。去年の6月に最初の緊急事態宣言が明けたくらいの時期で、一番みんなが警戒している頃に、有観客ライブをやったんです。2メートルの感覚をあけて椅子を並べて、ステージのフロントにはフィルムを張って。ライブをすることに対してセンシティブで、名前とかを出したら叩かれるかもしれないくらいの時期だったんですけど、その当時店長のSEIKIさんに相談したら、すぐに『やろう!』って言ってくれて。どういう座組みか、ガイドラインも決まってない状況で挑戦させてくれたのも、このライブハウスだったので、自分たちがいろんな挑戦をしてきた場所って意味では、GARRETは特別な場所だなって感じですね。困ったらSEIKIさんに連絡してます(笑)。

Shugo:だいたい節目はここで何かしていますね。

Yui:そうだね。ホントに大切なライブをやっていたのは、ここだね。



ーでは、最後に今後のEarthists.としての目標は?

Yui:バンドの総括でいうと、まず来年は自分たちのコアファンをもっと増やしていきたいですね。そして、Earthists.は海外指向性が強いプレイングをしてきたんですけど、自分たちのいる日本って場所をもっと大切にしていきたいなってすごく強く思っています。日本でなかなかブレイクしないことへの逃げる口実にもなっていたので、ちゃんと自分たちで見つめて、俺たちは日本のバンドだっていうのをちゃんと納得して海外に打ち出していきたいですね。

Yuto:僕たちは、ルーツ的にもエッセンス的にも多様なことをやっている方だと思うので、来てくれるお客さんの数はもちろんのこと、ライブ数も音源も、もっと増やしてジャンルの垣根を超えていきたいですね。



Yuya:俺の夢は宝くじを当てることです。

一同:(笑)。

Shugo:バンド自体はこうしたいっていうのはYuiくんがいってくれたのが最重要で大事だし、彼の舵取りとYuiとYutoが曲を作って我々が調理したらいい感じなるっていうのは信頼も自信もあるので、自分がEarthisits.のベーシストであるっていうことをもちろんこれからも大事にしていきたいです。この前Graupelのサポートで大阪と名古屋に付いていったんですけど、久しぶりに違うバンドでいつもと違う曲を弾くのが楽しくて。で、結構Earthists.をやっていても、最近はベースを褒めてもらえることも多くなってきて。なので、もっといろんなところでベースを弾いて、そこで培ったものをEarthists.でフィードバッグしたり、なんなら他の楽器も練習してどこかで披露したいですし、歌も上手くなりたいと思っています。

Yui:最後に個人の目標としては、自分でクラフトビールの醸造会社をやっているんですけど、それを始めてからバンドへの意欲もギアもさらに上がって。どっちも精神性は共通していて、去年はコロナ禍でクリエイティブなことしたいなって思って、今自分自身が出来ることに対して、どれくらいのことができるだろうとか、能動的なやる気に満ち溢れています。もう完全にやばいです。パーン!って。モチベーションがかなり高くてバンドやメンバーとの状態も過去最高にいいので、この炎を絶やさずに行けるところまで行ききりたいなって思っています。


 

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