INTERVIEW

Who's Next by SATANIC Editing Room Vol.25:Stain hung over

SATANIC ENT.を編集するスタッフが気になるバンドをピックアップする連載企画"Who's Next”。次の時代を担うアーティストの考え方を紹介していきたい。今回は10月29日の『SATANIC PARTY 2023』でオープニングアクトを担当してくれるStain hung over。フロム 酒田hope、現在は新宿ACBが拠点。メロディック界の新星をインタビュー!

Photography - Taio Konishi, Edit&Text - Ryo Tajima(DMRT)
 
 

L to R_トビ、しゅり

酒田hopeで知ったパンクの魅力をバンドへ

ーこのインタビューではStain hung overがどんなメロディックハードコアパンクバンドなのかを伝えたいと思っています。まず、結成や成り立ちについて教えてもらえますか?

 

トビ:Stain hung overは3ピースのメロディックハードコアパンクバンドで、高校の軽音部で知り合った面々で結成しました。しゅりは2個上の先輩で、英詞の高速メロディックハードコアパンクをやりたいと思って僕から声をかけたんですよ。こういう曲をやりたいっていうオリジナル曲を持っていって。それで、2019年3月に初ライブを地元の山形でやって活動をスタートさせました。

 

ー英詞の高速メロディックハードコアパンクというと、どんなバンドがルーツにあるんですか?

 

トビ:いっぱいあるんですけど、部活でコピーバンドをやっていた頃はKUZIRA、Track’sといった少し年上のバンドの楽曲でした。あとは10-FEETだったり、このシーンを作ってきた先輩方の曲もコピーしていましたね。そこからだんだんとオリジナル曲を増やしていったんです。特にKUZIRAやTrack’sの活躍はすごく親近感を持って見ていて、『いつかは自分も……』と思っていました。

 

ー20代前半のお2人にとって、ライブハウスではメロディックハードコアパンクだけではなく、メタルコアなどのラウドやハードコア、R&BやHIPHOPも鳴っていたと思います。その中でメロディックハードコアパンクを選んだきっかけは何かありますか?

 

しゅり:僕ら、地元のホームとしているライブハウスが酒田hopeなんですけど、そのライブハウスにあるカルチャーがメロディックハードコアパンクだとか、そっち寄りだったんですよね。店長がFRIDAYZというバンドのボーカルですし、自然とそっちの音楽をやるようになっていったんです。

 

ーそれはローカルマナーというか。特別な感じがしていいですね。では、そういった日本のメロディックハードコアパンクのサウンドがStain hung overに反映されているということになりますか?

 

トビ:そうですね、あとはNOFXをはじめとするFat Wreck Chordsなどのバンドはもちろん聴いてきて影響を受けましたね。先輩からBRAHMANやlocofrankを教えてもらって聴き込んだり、酒田MUSIC FACTORYというライブハウスにはdustboxやTOTALFATがツアーで来てくれたりしていたんで、そこでライブを通してこの音楽のカッコよさを実感していきましたね。地方で田舎の割にライブハウスがちゃんとあって、バンドがツアーで来てくれていたから、僕らもやってみようと思うようになったんですよ。

 

人生を狂わされたDEAD POP FESTiVAL

ーライブハウスの存在が大きかったと。しゅりさんはいかがですか? 同じくU.S.のメロディックなどを聴いてきた感じですか?

 

しゅり:僕は逆に日本のライブキッズって感じでしたね。振り返ってみると、たしか2016年だったと思うんですけど『DEAD POP FESTiVAL』で価値観をひっくり返されたタイプなんですよ。それが高校2年生の頃で。SiMから始まりいろんなバンドを聴いていったというキッズ時代でした。

 

ー『DEAD POP FESTiVAL』を経て、SiMが呼ぶバンドなどを聴き込む中で、1番刺さったバンドはなんでしたか?

 

しゅり:SHANKには食らいまくりましたね。あとはCOUNTRY YARDだとか、この辺りのバンドは今もルーツとして明確にあります。あのときのデッドポップでMAHさんが「次はお前らの番だ」的なMCをされていたと思うんですけど、それで「あっ、オレだ! オレの番だーーー!」と勘違いをしたまま今に至ります(笑)。

 

ーその勘違いがないと誰もバンドを長くやろうとは思わないわけなんで重要だと思います。しかし、振り返ると、Stain hung overが本格的な活動をスタートさせた頃は、コロナ禍真っ只中だったわけですね。

 

トビ:そうなんですよ。なんならコロナ禍があったから上京することにしましたからね。ようやくデモを出して、全国の人に聴いてもらえる環境を整えたにも関わらずライブができない、と。バンドがやりたくて始めたのにやりたいことが全然できない2年間だったんです。

 

しゅり:コロナに対する対応って地域ごとに違っていたと思うんですけど田舎ですからね。やっぱりバンドマンやライブに対する風当たりも強かったんです。

 

トビ:そうこうしているうちに、しゅりさんも就職するタイミングが訪れていたし、もう自分たちの音楽を止めないためにも上京しようと。それでライブをしようって話をして1年前に東京に来ました。そうでないと何もしないまま、何も成し遂げられないままで終わってしまいそうな気がしたんです。

 

ーなるほど。実際にトビさんは新宿ACBでも働いているわけですし、Stain hung overと言えば新宿ACBのイメージが強いです。都内にもたくさんのハコがありますが、ACBを選んだ理由は何かありますか?

 

トビ:上京前に1回ライブをやらせてもらったことがあるんですけど、それが衝撃だったんです。見たことがないお客さんが来てライブや音楽で評価をしてくれる! って。地元では集客も限界があるし、顔見知りしか来ないですからね。

 

しゅり:友達が知り合いを連れてきてくれることもありますけど、すぐに全員知り合いになっちゃうんで。それも何度も誘わないとその友達すら来てくれないんですよ。だから、僕らみたいな無名のバンドが初めて東京でライブをするってときに10人でもお客さんが来てくれるなんて事態が衝撃でしかなかったんです。

 

トビ:中には物販を買ってくれて「待っていたんですよ」なんて声をかけてくれる人もいて、それだけでもバンドをやりたい、もっとライブしたいって思えましたね。それにメロディックの聖地でもありますから。仕事もさせてもらって感謝しかないです。

 

メロディックのシーンを自分たちの手で盛り上げたい

ーたしかに新宿ACBは完全にメロディックの登竜門的な老舗ライブハウスですよね。では、Stain hung overは今ライブをしまくる時期、ということになりますか?

 

トビ:そうです! リリースした楽曲はサブスクに上がっている曲で、それをライブで披露しまっくている時期になります。

 

ーライブをする中で一緒によくライブをするバンドと言えば誰になりますか? Stain hung overのシーンというか。

 

トビ:付き合いの長さを抜きにして、マインド的な部分も含めて近くて一緒のライブが多いと思うのはHONESTやTOYSNAILなどですね。お互いのホームに呼び合ったり、頑張っていこうって話をよくします。まずはメロディックの近しい音楽性や考え方を持ったバンドと、ちゃんと自分たちのシーンを作っていければと考えていますね。

 

ー10月29日の『SATANIC PARTY 2023』ではオープニングアクトとしての登場になります。何か楽しみなことはありますか?

 

しゅり:Age Factoryが楽しみですね。2019年の10月に当時、トビが音楽部の部長だったときに、学校の文化祭にお誘いしてゲストとして出演してもらったんですよ。そのときのライブもすさまじかったですし、色々とお話してもらった記憶が強く残っていて。

 

トビ:すごいですよね。文化祭でめっちゃ好きなバンドとしてAge Factoryにオファーをした学生が数年を経てO.Aですけど一緒のステージに立っている、しかもサタニックのイベントで、っていうのは僕らとしても1つのドラマを感じるんですよ。

 

ーいい話ですね、そういうことがあるからバンドは楽しいですね。

 

トビ:あとは僕らとしても最大規模のキャパでライブさせていただくことになるので、しっかりとかます準備を整えていきたいと思います。

 

ー最後に、今後Stain hung overとしてやりたいことを教えてくれますか?

 

トビ:僕ら、上京して2ヶ月めに自主でレコ発イベントをやって、そこから3ヶ月に1回くらいのペースで企画を打っているんですね。そのペースを崩さずに企画を大きくしていきたいという気持ちがあります。

 

ー聴いてきた憧れの先輩であるKUZIRAも企画に呼べるようにならないといけないですね。

 

トビ:もうKUZIRAには上京以降、本当にお世話になっていまして。『Pacific Tour 2022-2023』  でもO.Aで呼んでいただいたり、考え方にも影響を受ける部分が大きいんです。やっぱりメロディックを盛り上げたいという気持ちは自分にもあるし、先輩方の背中を見ながら、自分たちもしっかりとやっていきたいと思います。

 

しゅり:僕らバンドを通してたくさんのエピソードがあって、ドラマがたくさんあるんですよ。何なら上京編までで映画を作れるくらいだし、今後のことを考えていくとハリーポッター級になっていくと思うんです。そこでいくと、今はまだ『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』くらいな感じだと思うので、たくさんドラマを作りながらやっていきたいと思います。

 

ー4作めですね。ハリー・ポッター目線で考えると先は長いですねぇ。

 

トビ:しゅりが言うように、ただ田舎のメロディックハードコアパンクバンドが上京してきてライブをやっているってだけじゃないことは自負しています。覚悟と気合を入れて音楽中心の生活をしていますし、自分の手で何かを成し遂げてやろうって気持ちでいるので、僕らがどんなライブをして活動をしていくのか、少しでも多くの人に『SATANIC PARTY 2023』を介して知ってほしいと思います。
 

Stain hung over https://twitter.com/stain_hung_over
 

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