INTERVIEW

Who’s Next by SATANIC Editing Room Vol.24:Maki

SATANIC ENT.の編集スタッフが気になるバンドをピックアップする連載企画"Who's Next”。今回は名古屋発3ピースロックバンド・Makiを紹介する。叙情的な歌詞と感情をむき出しにした演奏で見るものを揺さぶり、今や全国区となりつつあるMaki。彼らに、バンドの現在地、そして10月4日にリリースしたばかりの3rdミニアルバム「Toy box」について聞いた。

Text by Chie Kobayashi
Photo by Ruriko Inagaki
 

家にギターがあった3人

──SATANIC ENT.初登場ということで、皆さんの音楽的ルーツ・音楽遍歴から教えてください。

 

山本響(Vo, Ba) 僕は学生時代サッカー部だったんですけど、怪我をして「もうサッカーはダメぽ……」ってなって(笑)。弟がギターをやっていて、親父も音楽関係の仕事をしていたので、そのときにちょっとバンドに興味を持ちました。で、親父に「FREEDOM NAGOYA」に連れて行ってもらったりして、マンションでできる楽器はベースかなと思ってベースを始めました。
 

 

──そのとき聴いていたのはどういった音楽だったんですか?

 

山本 最初に親父に「これから反抗期が来るからこれを聴きなさい」ってNirvanaのCDを渡されて。そこからRed Hot Chili Peppersとかマキシマム ザ ホルモンとかラップコア系のバンドを聴くようになりました。ライブに行くようになってからはEGG BRAINが一番影響を受けたかな。

 

──兄弟の影響で楽器を始める人は多いですが、弟が先にやっているのは珍しいですね。

 

山本 そうですね。弟は今もバンドをやっています。

 

──本当に音楽一家なんですね。

 

山本 ……になってしまいましたね。親父の思惑通りだと思います(笑)。

 

佳大(Gt, Cho) 僕の音楽の入りはポルノグラフィティ。親がずっと聴いていて。僕は「鋼の錬金術師」が大好きだったんですけど、アニメの最初のオープニングテーマがポルノグラフィティの「メリッサ」なんですよ。それで親が運転している車から「メリッサ」が流れてきて「あ、この曲知ってる!」となったところから、ポルノグラフィティを聴くようになりました。で、お父さんがたまに家でギターを弾いていたので、そこから僕もギターを始めて。中学に入って、友達から「ギターをやるんだったら」とRADWIMPSを勧められて、そこからバンドというものを聴くようになり。高校では[Champagne](現・[Alexandros])とかBIGMAMAといった当時のUK.PROJECTのバンドを聴くようになって、どんどんインディーズバンドを深掘りしていきました。

 

──バンドを組みたいというのも、そのあたりから思うように?

 

佳大 「これを見てバンドを組みたいと思った」みたいなことはないんですけど、ライブを見たり、バンドの曲を聴いたりしていく中で、「いつかバンドを組むんだろうな」と思っていました。最初にMakiを組むためにメンバーを集めてくれた前のドラマーは高校のときに一緒にやっていたドラムなんですが、本当に自然にという感じですね。

 

まっち(Dr, Cho) 僕は中学生のときに吹奏楽部でパーカッションをずっとやっていて。初めてライブハウスに行ったのも中学生のときです。おかんがthe pillows好きで、「行ってみる?」って。そこで「バンドってカッコいいな」と思って、ドラムできるし高校ではバンドやりたいなと思うようになりました。でもそのときは趣味としてという感じで、音楽で食っていこうみたいなことは思っていませんでした。でも高校2年生くらいのときに見に行ったドレスコーズのライブが圧倒的で。最前列で見ていたんですが、周りが「ワーッ」って盛り上がっている中、僕は口開けて見とれちゃって。で、帰り道に「俺、バンドマンになろう」と決めました。

 

──皆さん、ご両親の影響なんですね。

 

まっち 確かに。あと、うちはお姉ちゃんが中学のときに吹奏楽部でパーカッションをやっていたので、そもそも僕が吹奏楽部に入ったのもお姉ちゃんの影響かもしれないです。ちなみにお姉ちゃんは、「音楽は趣味だ」と言ってドラムはやめちゃったんですけど、画家になりました(笑)。
 


ライブハウス文化を残すという使命

──Makiとしては活動を始めて7年が経ちました。特にここ数年は人気・知名度ともに上がり、全国区のバンドとなりましたが、バンドとして何か変えたことがあるのでしょうか? それとも実直に続けてきた結果?

 

山本 特に何か切り替えたりとかしたっけ?

 

佳大 してないと思う。

 

まっち 「こういうことをしていこう」というよりは、いろいろなバンドと対バンして、カッコいいと思う人たちからいろいろなものを盗みまくってきた結果、こうなったみたいな感じはあります。

 

山本 そうだね。

 

──バンドの状況や潮目が変わったなと思うターニングポイントはありますか?

 

佳大 バンドとして何かということではないですけど、コロナ禍でライブをし続けた結果、コロナが落ち着いたら「あ、何か変わってるな」という感じはしましたね。「こんなに人来てたっけ?」「こんな盛り上がったっけ」みたいな。規制がなくなったら、前より盛り上がっていた、みたいな。

 

山本 そうね。

 

──それこそMakiはコロナ禍でも止まらずにライブをしていたバンドの1つですが、コロナ禍はどのような気持ちでライブをしていたのでしょう?

 

山本 ひたすらに必死でした。

 

まっち やるしかないし、求めてくれている人もいるので、がむしゃらにやっていましたけど……どこまでいっても100パーセント楽しめない感じはありました。でもやるしかない、みたいな感じが当時はすごく嫌でした。

 

山本 うん、大変でした。お客さんとのやりとりもできないから、漫談みたいなのはうまくなったかもなぁ。

 

──ライブの見せ方や作り方を変えたりも?

 

佳大 そこは変わらなかったですね。基本的にストレートでドンって感じ。

 

山本 とりあえずライブハウスに足を運ぶことが大事かなっていう感じでしたね。周りのバンドがいろいろな選択をしていく中で、自分らが選んだのが、とにかくライブをしまくる、各地のライブハウスに顔を見せにいくっていう。

 

──止まらずにライブをすることを選択したのはどうしてだったのでしょうか?

 

山本 俺らぐらいしかできんのじゃね?って思っていたので。メジャーのバンドはたぶんすげー厳しかったと思うんですよ。だったらインディーズで動きやすい俺らが動くことで、ライブハウスの文化みたいなものをちゃんと残していかないとなって。まぁ勝手に気負い過ぎて、それで疲れちゃったときもあったんですけど。

 

──使命感のような。

 

山本 でしたね。もう「やんなきゃやんなきゃ」って感じで、目がバッキバキでした。

 

──先ほど、コロナ禍の規制がなくなったときにその盛り上がりに驚いたというお話がありましたが、では、その状況を前にして、皆さんの気持ちの変化は?

 

山本 どうなんですかね。どんなライブに出てもいつも通りやることをやるだけ、という感じなので。さっきターニングポイントという話がありましたけど、それこそ2年後くらいにターニングポイントが来るんじゃないかなという気はしていますね。今のところはいつも通り、必死にがんばっているだけです。


「Makiの曲を作らなきゃ」に捉われなくなった

──そんな中で新作『Toy box』が完成しました。聴かせていただいて、今までとちょっと雰囲気が違うというか、曲の振り幅の広さを感じる1枚だと思いましたが、ご自身としては手応えはいかがですか?

山本 自分が作りたい曲を作って、1枚のCDにしたらごちゃごちゃになったっていう感じで。でもいろいろ挑戦もできたし、自信がついたアルバムになったかなと思います。お客さんにどう受け入れられるか、ライブでどうなるかはわからないですけど、自分の声と歌があって、この2人の演奏があれば、どんな曲を作っても大丈夫だという自信がつきました。

 

──楽曲の振り幅みたいなところは意図的に?

 

山本 そうですね。今までは「Makiの曲を作らなきゃ」と思っていたところがあって。「Makiってこういうバンドだよね」って。それはそれで良かったんですけど、そろそろ自分のルーツになるような音楽とか普段自分が聴いているような音楽の要素も取り入れて作りたいなと思って。そしたらこんな感じになったっていう感じです。

 

佳大 最初、デモが送られてきたときは、今までの自分たちだったら想像つかないような曲もあったので、「これをやって大丈夫なのかな」と思ったんですけど、いざレコーディングしてみて、出来上がったものを聴いてみたら「あ、意外といけるな」と思いました。

 

まっち 以前から、響と「こういう曲欲しいね」「ああいう曲欲しいね」という話はしていて。ただ、さっき響が言ったように「Makiの曲を作らなきゃ」みたいな考えがあったこともあって、今回の『Toy box』に入っているような、今までの曲とは違う雰囲気のものをうまくMakiに落とし込めなかったんです。でも今回改めて挑戦してみたら、ちゃんとMakiに落とし込めるようになっていて。それは響の曲の作り方もそうですし、この3人でやってきたものがレベルアップしたからなのかなと思います。

 

──自分たちの中で“Maki像”が確立されたんでしょうね。

 

山本 あー、そうですね。本当にそうだと思います。


「Toy box」は家でしか見せないダル着姿

──そんなバラエティ豊かな『Toy box』から、特に「この曲のここを聴いてほしい」というポイントをお一人ずつ教えてください。

 

山本 どれも聴いてほしいですけど、俺は「Toy box」が一番好きで。このアルバムの核になる曲だし、どんなことを歌っているのか、歌詞までしっかり聴いてほしいです。たぶん歌詞カードを見なくても歌詞が入ってくると思うんで。どの曲も自分のことを書いていますけど、この曲は特に一番本音に近いというか……家でしか見せないダル着姿っていうか。赤裸々すぎるかなと思うくらい、自分の欲望とか今思っていることをうまく投影できた曲なので、今俺が何を考えているのか、聴いてもらいたいです。それに対して、同意してくれるのか、反論するのか、それも気になります。


 

──<いつも僕の行く先は面白くなる>と言えるのが素敵だなと思いました。

 

山本 ありがとうございます。なんか自信満々ですよね。

 

──はい。というか、今作は歌詞だけでいうと全曲自信満々というか、希望を感じる内容ですよね。モチベーションが高いのかなという印象を受けました。

 

山本 そうですね。昔は明るい歌詞全然書けなかったんで。

 

まっち 卑屈だったもんな

 

山本 うん、めちゃくちゃ卑屈だった。最近はいろんな人に「人間性も変わってきたね」「明るくなったよね」って言われますし。

 

──ご自身の中でもその変化には気付いている?

 

山本 気付きましたね。人と話すとき、確かに笑いながらしゃべれるようになったなって。昔は本当に尖りに尖って卑屈で。触れてくる人全員に対して、一回棘を刺すみたいな感じだったので。

 

──その変化はどうして起きたのでしょうか? バンドの状況の変化に伴って?

 

山本 まあ、そうですね。バンドの状況もありますし。あとは単純に年を取って考え方が変わったんだと思います。以前は自分のことを人に理解してもらおうとし過ぎていて。「俺のことわかんないやつは嫌いだ」と思っていた。でも今は、俺のことをわかってもわかんなくてもどっちでもいい。自分がやりたいと思うことをできたら俺はそれで満足で、それを好いてくれたり嫌ったりっていうのは、好きにしてくださいって思えるようになった。いい意味でも悪い意味でも、他人からの評価に揺れなくなりました。だからより自由に曲が書けるようになったのかなと思いますし、それこそ「Makiってこうだよね」みたいなものにも捉われなくなったのかなと思います。

 

──変な話、「尖っていた頃のMakiが好きだった」みたいに言われる不安みたいなものはないですか?

 

山本 全然ないっすね。そういうことを言われても不安にならなくなりました。「昔の俺も、俺だからいいよ」みたいな。

 

──すごくヘルシーですね。

 

山本 はい。日常生活からストレスも全然感じなくなりました。

 

──そのお話を聞くと、今作の振り幅の広さにも納得がいきます。

 

山本 ありがとうございます。


「お前、こんなん弾けたんか」

──では佳大さん、まっちさんの「この曲のここを聴いてほしい」というポイントをお願いします。

 

佳大 じゃあ……「ホームタウン」のギターソロで。

 

 

まっち 今回頑張ったもんね。

 

佳大 うん、珍しくピロピロしたよね。

 

まっち レコーディングのときに「お前、こんなん弾けたんか」って言ったもん(笑)。

 

──いつもは出ないフレーズが出たのはどうしてだったのでしょうか?

 

佳大 何でなんだろう。「この感じだったらこれかな」みたいな。全部感覚で作っちゃうんですよね。チョーキングで入ったら、そこからアルペジオを組み合わせて……そしたらなんか目立つソロが出来たなっていう。

 

──それもやっぱり「Makiの曲を作らなきゃ」という考えから解放された結果なのかもしれないですね。

 

佳大 それはあるかもしれないですね。前だったら、単音は使わなかったかも。

 

山本 「No.11」のギターソロも良いよね。

 

まっち あれもめっちゃいい! 渋い!

 

佳大 あれは、どれだけ手を抜けるかって感じだったな(笑)。頑張った!

 

山本 頭空っぽにして?

 

佳大 そう。

 

まっち そういう曲だもんな。僕が聴いてほしいところはドラムソロとかいろいろあるんですけど……せっかくひさしぶりにCDで出すので、普段とは違う聴き方をしてほしいなと思っていて。普段は音質とかを意識して聴くことってあまりないと思うんですけど、せっかくCDデッキを使って聴くのであれば、もし設備があれば、コンポとか大きいスピーカーとかで聴いてみてほしい。曲によって音作りや楽器も変えているので。そういうところも楽しめるのがCDとかアナログ盤の良さ。ぜひ環境がある人は大きな音で聴いてもらえると臨場感も味わってもらえるんじゃないかな。


 
 

「かましてくれる?」「任せてください!」

──今作はサブスクでは3曲配信、CDでは全曲聴くことができますが、CDにこだわっている理由は?

 

山本 自分が音楽に夢中になっていた頃って、タワレコでCDを買って、あの黄色い袋を持って地下鉄に乗って「早く聴きたいな」と思いながら家に帰っていた。あの頃の気持ちを味わってもらいたいんですよね。あとは学校の友達とかに「これめっちゃ良かったから聴いて」って貸して……もちろんサブスクでパッと勧められる良さもありますけど、CDを貸して、帰ってくるまでの感想を待っているドキドキ感っていいじゃないですか。貸して帰ってくるまでのドキドキ感。帰ってこない可能性もあるんですけど、「良かったから他のやつに貸しといたわ」って(笑)。

 

まっち それも素敵だもんね。それこそ今回は特典として、3曲入りのCD「Present box」を付けたんですよ。サブスク配信されている3曲が聴けるCDです。

 

山本 CDショップに挨拶まわりに行かせてもらったときとかに、俺らのことを知っている人と知らない人が一緒にCDショップに来ていることもよくあって。そういうときに活用してほしい。「何のCD買ったの?」「Maki」「聴いたことない」「あ、じゃあこれ聴いてみて」って、その場で渡せるから。


 
──そしてMakiは10月29日に開催される「SATANIC PARTY」に初出演が決まりました。当日はどのようなライブをしたいと思っていますか?

 

山本 誘ってもらったときの電話で「Makiはどのジャンルでもいけると思うんだけど、かましてくれる?」って聞かれて「任せてください!」と言ったんで……かまします! 俺らってメンツ的にやっぱ浮いてるっちゃ浮いてるんかな?

 

佳大 まぁまぁ浮いてると思う。新しいメンツが発表されるたびに「あ、そっちのすごいバンド出るね」って思うもん。

 

山本 まぁ、浮いてるなら覚えてもらいやすいってことで。頑張ります!

 

まっち いろいろなジャンルの中で戦うって、僕たちとしても今後必要になってくると思うんです。今回はそれを試されていると思うので、かますしかないっていう感じですね。

 

佳大 はい、かましてきます!


 

 


Maki「Toy box」

1. opening
2. 風
3. No.11
4. Toy box
5. pulse
6. 揺れる
7. ホームタウン
8. world's end


Maki Tour 2023-'24「清老頭」

2023年10月27日(金)千葉県 千葉LOOK 
<出演者>
Maki / KUZIRA

2023年11月3日(金・祝)静岡県 UMBER
<出演者>
Maki / プッシュプルポット

2023年11月17日(金)大阪府 OSAKA MUSE
<出演者>
Maki ※ワンマンライブ

2023年11月21日(火)茨城県 mito LIGHT HOUSE
<出演者>
Maki / シンガーズハイ

2023年11月23日(木・祝)宮城県 ROCKATERIA 
<出演者>
Maki / FOMARE

2023年11月24日(金)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
<出演者>
Maki / FOMARE
2023年12月1日(金)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎 
<出演者>
Maki / 四星球

2023年12月3日(日)広島県 HIROSHIMA 4.14
<出演者>
Maki / Age Factory

2023年12月23日(土)愛知県 NAGOYA CLUB QUATTRO
<出演者>
Maki ※ワンマンライブ

2024年1月6日(土)京都府 KYOTO MUSE
<出演者>
Maki / TETORA

2024年1月7日(日)香川県 高松TOONICE
<出演者>
Maki / Blue Mash

2024年1月14日(日)福岡県 BEAT STATION
<出演者>
Maki / ammo

2024年1月21日(日)東京都 Zepp Shinjuku
<出演者>
Maki ※ワンマンライブ

>>Maki official website

 

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