INTERVIEW

Who’s Next by SATANIC Editing Room Vol.20:鋭児

Photograph_Leo Kosaka, Text_Teneight

 

連載企画“Who’s Next”はSATANIC ENT.を編集するスタッフが、今現在気になっているけど、まだSATANIC ENT.ではピックアップしていない次世代のバンド・アーティストに会いに行き、ルーツや活動、それを取り巻くカルチャーなどを一方的に紹介するというシンプルかつ偏愛極まりない企画。第20回目は、東京のストリートで出会い結成され、国内のフェスに幾つも出演するなど、じわじわと頭角を現している鋭児が登場!

左から、及川千春(Gt.)、藤田聖史(Key)、市原太郎(Dr.)、菅原寛人(Ba.)、御厨響一(Vo.)

 

ボーカル響一との出会いでメンバーが再集結

 

ーまずバンド結成の経緯から教えていただけますか?

 

響一:2019年頃に渋谷のTSUTAYA前で、ラッパーのACEさんが渋谷サイファーをやっていて。そこでライブしていたラッパーがカッコよくて刺激的だったので、オレは負けじと飛び入りでラップしていたんです。その場にいたのがベースのヒロトでした。そこで繋がり彼からバンドに誘ってもらったんです。

 

寛人:僕は響一と出会った当時は、及川千春(Gt.)と藤田聖史(Key.)とバンドをやっていたんですが、ボーカルがいなかったので、自然消滅みたいな感じで活動していなかったですよ。ただ、そこで響一と出会って、活動を再開させる為にメンバーをもう1回呼び戻し、今の鋭児が結成されたんです。

 

響一:その後に、当時のドラムが辞めてしまい、市原太郎が加入し今の体制になりました。

 

 

ー響一さんが入った当初、どんな印象だったんですか?

 

寛人:やべえやつ来たなって。

 

聖史:あんまり出会ったことがないタイプで刺激的です。

 

響一:聖史がよく言うんです。音楽で出会ってなかったら絶対つるまないって(笑)。

 

ーそれが2019年くらいですか?

 

響一:そうですね。

 

聖史:楽曲をリリースし始めたのは、2020年になってからでした。

 

ー割と最近なんですね。

 

聖史:曲をリリースするまでが長かったです。

 

 

ーメンバーそれぞれの音楽のルーツはどこにありますか?

 

千春:もともとブルースが大好きで、深掘りしてよく聴いていたんです。そこから、ヒロトとかキヨシとか響一とかと出会って、みんなの好きな音楽を聴くようになって、JAMES BLAKEなど、いろいろ教えてもらっています。

 

寛人:僕はRed Hot Chili Peppersから入り、そこからD’Angeloを偶然聴いて、ブラックミュージックがすごく好きになっていきました。

 

聖史:高校のときにASIAN KUNG-FU GENERATIONを聴いて衝撃を受けていました。なので、最初は邦楽ロックでしたね。そこから、流行ってたRed Hot Chili Peppersとかを聴いて。だんだんUKロックやUKディスコを知り、洋楽ってこんな色々あるんだって思って、徐々にYouTubeでアメリカやUKのロックから、深いところをディグっていって。そこで、JAMES BLAKEやMount Kimbieなどのニッチなエレクトロに触れて、そこから打ち込みや、こんな機材があるんだって知っていきました。それが、ちょっとオタクな今の音楽性に繋がってるんだと思います。

 

響一:聖史は機材も家も全部自分で揃えていて。マジで音楽に対する想いが強いんだって感じました。

 

千春:それはすごく思うよね。

 

 

太郎:高校生のときはナンバガとバタ犬とチャットモンチーが大好きで聴いてました。大学生のときにバンドメンバーの影響でD'Angeloを知り、そこから海外の音楽に興味がわくようになりました。

 

響一:オレが学生の頃は、Rage Against the MachineやMUSEを聴いたりしていました。オレは超ミーハーで、高校のときはONE OK ROCKがめちゃ好きで。このバンドを結成してから、いろんな音楽を聴いていく流れができていきました。

 

聖史:それこそ、日本のロックでいうとSiMのライブとか学生時代に観に行ったりしていました。

 

寛人:オレもお母さんと一緒にCrossfaithとSuchmosの対バンとか観に行ってましたね。

 

響一:やばい対バンだね。

 

寛人:中学の頃、SiMのMAHさんの髪型真似して、生徒指導で坊主にさせられた思い出ありますよ(笑)。

 

 

ー幅広く聴いているんですね。では、作曲についてお聞きしてもいいですか?

 

聖史:作曲担当は、曲によって変わっています。

 

及川:みんなそれぞれがトラックを作るので、バンドとしての振り幅が広いんだと思います。それに、ジャムセッションもよくしています。誰かが曲ネタを持ってきて、とりあえずスタジオに入って、ジャム形式でやっていったり、聖史ん家に集まってトラックを固めていくパターンとかもあります。

 

ー作詞は響一さんですか?

 

響一:そうです。

 

ーリリックにはどんなメッセージを込めていますか?

 

響一:1stEPの「銀河」を作ったときは、世界の戦争が嫌いでそれに対してのメッセージを放っていたんですけど、最近では、身の回りに起こる出来事を元に書くようになってきました。ただ、ちょうどこの前、ドイツの友達とオンラインで話ている時に、未だに戦争と近い場所にいて、そういう人を間近で感じるとあんまり人ごとじゃないなって感じたんです。なので、そこに対するアプローチとか、鋭児発足当初の世界平和ってキーはズラしちゃいけないなって思いましたね。まあ、最終的に愛には勝てないんで。

 

ー世界平和を意識しているんですね。

 

響一:そうですね。

 

ー響一さんはラップもしてますが、なぜラップも入れているんですか?

 

響一:Rage Against the MachineのZack de la Rochaの影響が大きいですね。バンドサウンドにハイトーンでラップをしている彼が超かっこよくて。メロディに乗せるとメッセージが薄くなっちゃうけど、ラップは言いたいことを音楽に乗せてそのまま言葉を吐けるじゃないですか。それはすごいなって。こっちの方がメッセージを届けるには早いじゃんって思ったんですよね。

 

 

ー鋭児って楽曲のバリエーションが多いですよね?

 

千春:全員が作曲を担当していることも関係あるけど、鋭児の代表曲って「銀河」や「$uper $onic」だと思うんですけど、今の鋭児は音楽性を広げたくて、歪む音楽だけじゃないピースな楽曲も出しているんです。

 

響一:「$uper $onic」とか「Fire」を聴いてくれている人は『鋭児ってこういうバンドなんだ』って思われちゃうけど、実は振り幅は広いんですよね。

 

千春:名刺代わりになるような楽曲だけど、いろんな一面がある内のひとつとして捉えてもらえると良いですね。

 

ーよりジャンルに捉われないような音楽性なんですね。

 

千春:そうですね。みんな、純粋に音楽がしたくてバンドをやっていて。

 

寛人:今の状況に素直に曲作りをしていて。それが1番いいんじゃないかなって思っています。

 

一同:そうだね。

 

寛人:悪いときも良いときもあるし、歪みたいときは歪ませたり。

 

千春:それに、半分以上のライブがセットリスト決めないでやっていて。やりたい曲がある場合は、やりたい人がイメージする曲のフレーズを弾いたりして、あとは、みんなのやる気次第みたいな。そういうライブがすごく楽しくて。その方がお客さんともひとつになれますし。

 

響一:その方が説得力も強まるからね。

 

及川:そうだね。そのとき、その空間にあった音を響かせたい。自分達に嘘はつきたくないから。

 

 

国境をBREAK THE WALLできるようになりたい

 

ー1月25日にAmazonの企画HEATで新曲をリリースしましたね。

 

千春:Amazon Original HEATという企画に呼んでいただき、「PANORAMA WORLD」をリリースしました!

 

どのように作られたのですか?

 

響一:今回は聖史が最初からトラックメイキングした楽曲で、結構ジャズが効いていると思います。あとはスタジオでみんなで録音しました。

 

ーリリックはどんな内容になっているんですか?

 

響一:色恋について書きました。瞬間の激情ですね。オレの名前は、響くに一で響一って書くんですけど、D’ERLANGERって日本のロックバンドのギターの一郎さんとボーカルのKyoさんから文字を取って、響一になんです。その由来のバンドの楽曲「LA VIE EN ROSE」って曲名を、一郎さんが脊椎に彫ってるんですよ。これは、バラ色の人生って意味みたいで。あ、なるほど。この人にとっては女性がキーワードなんだなって思ったんです。これを知ったことをキッカケにこの曲のリリックは作りました。

 

ー色恋について、リリックで書かれることが多いんですね。

 

響一:いつまでも色恋で終わるのも違うなってとこも思うんですが、オレの美学として歌の素晴らしさ曲の素晴らしさは、一瞬の感情だったり、そういうところにトリップするための3~4分だって考えなので、それは残したいなって。

 

 

ーありがとうございます。それ以外では活動予定はありますか?

 

寛人:Amazonの企画とは別に、3曲収録されたEPを2月24日にリリースしました。全4曲とも、いつでも聴けるような心地良い楽曲になっているんで、リリースがすごく楽しみですね。

 

聖史:また鋭児の印象が変わりそうな楽曲になると思います。

 

他の3曲とも鋭児としては新しい曲調へ攻めてる楽曲なんですか?

 

響一:どうだろうか。でも優しさが増えたと思います。普段から怒りのマインドが溢れているわけではないので、それが如実に音楽性にも出てくるんじゃないかと思います。

 

ー次のEPで今の鋭児のマインドが顕著に表れているんですね。

 

千春:そうですね。昔はよく怒りをエネルギーに弾いていた気がするんですけど、お客さんにパワーをお裾分けって気持ちで激しいのをやるときは別として、今は心に余裕があるからそれが表れているかもね。

 

 

ー鋭児はジャンルレスな動きをするバンドだと思うのですが、どんなバンドマンと繋がりがあるんですか?

 

響一:結構いろんな先輩や後輩バンドが見にきてくれます。04 Limited SazabysのGENさんがライブ観にきてくれたこともありましたし、先日はZepp OsakaでのライブにSUPER BEAVERの龍くん(渋谷龍太)に呼んでもらいました。Amazon Musicの企画ではALIのLEOさんに呼んでもらいました。

 

ーそうなんですね。

 

響一:個人的にはRIZEのJESSEさんにも良くしてもらっていて。以前フェスの会場で会ったときは、親父がJESSEさんの父親のCharさんからもらったギターをオレが売っちゃった話をJESSEさんにして、『すいません!』って謝ったら、『大丈夫!大丈夫!そんなことあるよ!』って。あのときは太陽に見えたよ(笑)。

 

寛人:親父は怒らなかったの?

 

響一:めちゃくちゃ怒られたよ。

 

一同:あはは(笑)。

 

響一:そりゃ怒るよな。昔はそういうことばっかりしてきちゃったから、これからは精算していかないとね。

 

千春:響一はそんな一面もあるんですけど、繋がりをすごく大切にするんです。

 

響一:ライブをするといろんな人に会えるんです。オレが最近思ったのが、いろんな人に会って自分の手の届く範囲をわきまえつつ、来てくれた方との繋がりや縁をすごく大事にしたいなって。

 

千春:そこは響一がめちゃしっかりやってるので見習ってます。

 

響一:表立って出るのはオレかもしれないけど、及川が本当に鋭児の大黒柱なんで。

 

千春:みんなに助けられてますね。

 

ーリーダー的な存在で言うと?

 

千春:みんなリーダーって感じで、いろんな種類のリーダーが集まっているバンドですね。

 

響一:て、言えるところですよね(笑)。でも、個が集まっていいチームになってきていると思います。

 

 

ーでは、最後にそれぞれの今後の目標をお聞きできますか?

 

千春:僕は、海外進出一択ですね。

 

寛人:以前、King Gnuのライブを観に行ったときに、東京ドームに来るのに3年かかったって言っていて。じゃあ僕らは3年以内にアメリカのマディソン・スクエア・ガーデンとかでライブできるようになっていたいですね。

 

聖史:寛人と一緒で、この前のKing Gnuを観て、オレらもこれをやりたいって刺激を受けました。もちろん海外には行きたいですし、僕らの音楽を知らない人が聞いたらどんなリアクションするのか楽しみですね。

 

太郎:同じく色んなフェスに出たいし、海外も行って視野を広げたいです。

 

響一:King Gnuが東京ドームで5万人集めるのって純粋にすごいことだと思ったので、それは感化されたし、常田大希さんが本当に好きだから、鋭児も5万人を東京ドームで集められるようなバンドになりたいし、あとは寛人が言ったマディソン・スクエア・ガーデンとかグラストンベリー・フェスティバルとかも出てみたいし。まあ国境をBREAK THE WALLできるようになりたいですね。凝り固まっちゃうから、人に対しても寛容でありたいし、でも自分のこだわりも持ち続けていたいし。オレ自身、このバンドで成長していきたいなって思っています。

 

千春:あとは自主企画のワンマンを予定しています。先日終了した2月26日が東京・TOKIO TOKYOに続き、3月21日に大阪・梅田シャングリラです。昨年はライブの本数を増やし、さまざまなことをインプットして、スキルも格段に上げてきました。それをこのライブでアプトプットした新曲と併せてお客さんに提示したいと思っているので、楽しみにしていてください。

 

 

 

鋭児『Are You Experienced?』

2023/3/21(火・祝) 大阪・梅田シャングリラ

Open 17:00 Start 17:30

Door:4000YEN + 1DRINK

 

 

NEW EP 「HUMAN」2月24日発売

【Tracks】
1.PANORAMA WORLD

2.HUMAN

3.超新星

4.0423

 

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