INTERVIEW

Who's Next by SATANIC Editing Room Vol.23:lilbesh ramko

SATANIC ENT.を編集するスタッフが気になるバンドをピックアップする連載企画"Who's Next”。次の時代を担うアーティストの考え方を紹介してきた。23回目は来たる10月29日の『SATANIC PARTY 2023』に出演するアーティスト/プロデューサーのlilbesh ramko。8月にリリースされた1stアルバム『終末collection』も実にカッコいい! どんな音楽を奏でているのかをインタビュー!

Photography - Yuta Kato, Edit&Text - Ryo Tajima(DMRT)
 

ネットに音楽をアップしたら反応が続々と

ーllilbesh ramkoさん、はじめまして。いきなりなんですけど、ramko(ラム子)というのはアニメが由来なんだとか?
 

llilbesh ramko:そうです。『ゆるゆり』というアニメが好きでそれに出てくるキャラクターが「西京極ラム子」というペンネームで活動しているんですけど、そこから拝借しました。
 

ーとなると、音楽自体もアニメからの影響は強いですか? 「ichigo100%」などの曲名からも窺える点ではあるのですが。
 

llilbesh ramko:直近でリリースしたアルバム『終末collection』を制作していたときはあまり意識していないんですけど、やっぱりもともと好きなカルチャーとしてアニメがあるので楽曲の節々にそういうものが表れているのかもしれないです。自覚はないんですけど、たしかによく言われますね。
 

ーあ、そうだったんですね。ではアニメっぽいというのはちょっと違う?
 

llilbesh ramko:そうですね、アニメを音楽に昇華しようと考えているわけではないです。ただ、もともとチップチューン(ファミコンなどのレトロゲームの効果音やBGMを使った音楽)も好きですし、ゲームのサントラも聴いてきたので自分の中でしっくりきて気持ちが落ち着くのがアニメ、ゲーム寄りの音楽だったりするので、本当に無意識のうちにって感じなんですよ。
 

ーなるほど。アルバム『終末collection』の話も後ほどお伺いするとして、まずはramkoさん自身について教えていただきたいと思います。音楽を始めたのはいつ頃どういうきっかけでしたか?
 

llilbesh ramko:今から2年半ほど前19歳で音楽を始めました。当時大学1年生でした。もともとHIPHOPが好きで高校の頃に友達とサイファーしてたりしたんですよ。で、その頃から自分でビートメイクして遊んだりしていたんです。

 

ー趣味的な感じでビート作ったりしていたわけですね。

llilbesh ramko:
そうです。ずっと趣味でビートを作っていて、なんとなくボーカルを入れてサウンドクラウドにアップしてみたのが始まりですね。何か明確なきっかけがあったわけじゃなくて自然な流れでした。
 

ーネットにオリジナル曲をアップしてから何か反応がありましたか?
 

llilbesh ramko:あったんですよ。あるときを境に急に再生数が増え始めたりして、だんだんとライブに誘われるようになっていったんです。いきなりDMとかでイベントのお誘いがあって。最初にライブをやったのが2021年3月に長野でやって、東京初ライブは3ヶ月後の6月、渋谷のR LOUNGEでした。最初にライブに誘われたときはびっくりしましたよ。僕にとってライブすることはすごく垣根の高いものでしたし、自分でも出れるのかな? って気持ちがあったので。だから今、こうして『SATANIC PARTY 2023』に誘ってもらえたのはすごく嬉しいです。
 

ーおお、急転直下って感じですね。にしても、そう考えるとramkoさんが音楽を始めてライブをするようになったのって、思いっきりコロナ禍の真っ最中だったんですね。その辺りの世相からの影響もありましたか?
 

llilbesh ramko:めちゃくちゃ大きかったと思います。パンデミックになったのが高校3年生で登校したのが4ヶ月に1回とかだったんですよ。ちょうど受験期だったしちょうどいいやって感じだったんですけど、家に篭っていても全然勉強する気にはなれなくて。集中できないタイプなんで。


ーええ、家にいてもしんどい時期でした。
 

llilbesh ramko:それでずっと音楽を聴いて、みたいなのがすごく多かったのでコロナ禍で活動をスタートさせたことが今の制作の土台なっているとすごく思います。最初はiPhone1台でガレージバンドで作曲していて、今はPCでエイブルトン(Ableton Live、DTMのソフトウェア)を使うようになりました。

ルーツにあるのは90’sのHIPHOPなど

ーiPhoneで音楽を作っていたというのもビックリです。最初にHIPHOPが好きだというお話がありましたが、HIPHOPなど音楽に目覚めたきっかけとなるアーティストは誰でしたか?
 

llilbesh ramko:小学6年生のときにSALUさんの「TO COME INTO THIS WORLD feat. 鋼田テフロン」をYouTubeで聴いて、それでめっちゃカッコいいなって。大好きになりましたね。あとはスチャダラとか。


ーえっ、ramkoさんの世代でスチャダラパーですか?
 

llilbesh ramko:お父さんが好きでドライブに行くときにかけたりしていたんですよね。ちゃんと聴くようになったのはSALUさんにハマってからでした。あとは、ウータン・クランやネイティブ・タンとか、U.S.のHIPHOPが好きでした。


ーええ〜!? めっちゃ黄金期のHIPHOPじゃないですか。めっちゃ渋いですね、年齢を疑いますよ!
 

llilbesh ramko:それで中学生になったくらいでハードトラップにめっちゃハマっていきました。本格的に音楽にのめり込んでいったのはその辺りからでしたね。

 

ーそういったハードトラップなどとの出会いはクラブなどの現場だったんですか? 遊んでいるうちに音楽が好きになっていったとか。
 

llilbesh ramko:いや、僕はまったくそういうことをしていなくて。逆にライブに出演するようになってからクラブに足を踏み入れるようになったんですよ。それまではネットでディグっていたんです。


ーいろいろと話がスピーディに進んでいって今があるような感じがします。ライブをするようになって2年以上が経ったわけですが、どこかホーム的なクラブはあったりしますか?
 

llilbesh ramko:よくライブをするのは渋谷のCIRCUS TOKYOや阿佐ヶ谷DRIFTです。特に阿佐ヶ谷DRIFTは僕の音楽人生の中でもわりと存在が大きいです。

https://linkco.re/fvX0cUYd

やっているのはコロナ禍以降に生まれた独自の音楽

 

ーでは、最近リリースされたアルバム『終末collection』ですが、どんなテーマが込められているか教えていただけますか?
 

llilbesh ramko:制作を始めたのは今年の6月後半頃からで、最近のちょっと閉鎖的な気持ちと、同時に存在するいろんな人と仲良くしたいと思う相反する気持ちの葛藤を表現しています。キーになったのが『OMORI』というゲームとの出会いでした。そのゲームに衝撃を受けて、そこから着想を得てアルバムのイメージを膨らませていったんです。自分の世界が自分の中で終わるっていうイメージで作っていきました。


ーアルバムを通して聴くと物語性があって曲順も練られているように感じたのですがいかがでしょう?
 

llilbesh ramko:そこはめっちゃ考えました。『OMORI』以外にも『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』という映画からも影響を受けた作品でもあって。それが3部構成なんですよね。1本の映画の中でパートが切り替わっていくという作りで、曲順だったりアルバムの構成はそこを意識しています。


ーこうしてアルバムを通しで聴くとメロディラインやトラック、シンセなどの使い方から、昨今のハイパーポップが連想されますが、そこに対して思うことはありますか?
 

llilbesh ramko:それは嬉しいですね。僕から見るとハイパーポップってジャンルではなく現象だと思っていて、そのムーブメントはすごく面白いですよね。聴いたことのない音がいっぱい生まれているじゃないですか。だから自分がそう思われるのは光栄です。それに、ハイパーポップを作ってきた100 gecsなどのアーティストには実際に影響も受けているし、すごく好きですから。


ー仰る通り、ハイパーポップはジャンルではなく現代の現象という気がしますよね。
 

llilbesh ramko:はい。この2、3年で一気に増えた感じがすると思うんですけど、そこもコロナ禍が影響しているんじゃないかと思うんですよね。家に篭っている間に、それでも音楽を作りたいって考えるようになった人が自分でネットのチュートリアルを調べたりしながら独自のスタイルを模索して何かクセになるミクスチャーなサウンドになっていったと個人的に感じるんです。言わば、現代が生んだ音楽で、それが世界的に盛り上がっているのは僕としてもすごく嬉しいですね。

※この日、lilbesh ramkoさんが着ていたのはTERIYAKI BOYZ®の2009年のツアースタッフTシャツ!


ーちなみにサタニックとの繋がりは何かありますか?
 

llilbesh ramko:今年の『SATANIC CARNIVAL』のジングルをUztamaさんが制作していて、その兼ね合いで声を入れさせていただいたんですよ。


ーそうだったんですか! 現場にも来られたんですか?
 

llilbesh ramko:はい! メッセで楽しませてもらったんですけど、クラブとは全然違っていてすごく衝撃を受けました。あんな一体感は見たことないです。


ー好きなバンドはいましたか?

 

llilbesh ramko:マキシマム ザ ホルモンが小学生の頃からめっちゃ好きなんですよ。だから自分の声が入ったジングルでバンドが登場したときは泣きそうになっちゃいました(笑)。

 

ー今回のサタパでもramkoさんにとって新しい出会いがあったらいいなと思います。今後、どんな風に活動していきたいと思いますか?

 

llilbesh ramko:『バビフェス』という自主企画イベントをやっているんですけど、すごくホームパーティ感があるような良い雰囲気があって、このイベントも大事にしていきたいです。そんな風にまずは自分が楽しいと思うことをやり続けていけたら嬉しいですね。あとは『終末collection』もそう考えて作っていたんですけど、誰かを救えるような音楽を作っていきたいと思います。

lilbesh ramko https://www.instagram.com/lilbeshramko/

 

Who's Next by SATANIC Editing Room

Vol.22 RiL
Vol.21 Jam Fuzz Kid
Vol.20 鋭児
Vol.19 HIKAGE
Vol.18 ank
Vol.17 Stellarleap
Vol.16 Made in Me.
Vol.15 Falling Asleep
Vol.14 Jason Andrew
Vol.13 Earthists.
Vol.12 Prompts
Vol.11 Some Life
Vol.10 IRIE BOYS
Vol.09 Graupel
Vol.08 See You Smile
Vol.07 Honest
Vol.06 FUNNY THINK
Vol.05 Sable Hills
Vol.04 CrowsAlive
Vol.03 Paledusk
Vol.02 HOTVOX
Vol.01 mildrage