INTERVIEW

Who’s Next by SATANIC Editing Room Vol.26: carabina

SATANIC ENT.の編集スタッフが気になるバンドをピックアップする連載企画"Who's Next”。今回は「AIR JAM 2012」でのHi-STANDARDを見た衝撃から石巻で結成されたという3ピースロックバンド・carabina。ドラマチックな楽曲、熱くハートフルなライブで、各地のライブ好きを魅了している彼らが今、鳴らしたい音とは。

Text by Chie Kobayashi
Photo by Ruriko Inagaki

 

「AIR JAM 2012」で初めて知ったHi-STANDARD

──carabinaは「AIR JAM 2012」での Hi-STANDARD に魅了され、2013年 宮城県石巻市にて前身バンドを結成したということですが、そもそも皆さんが「AIR JAM 2012」に行くことになった経緯から教えてください。

 

Yuta (Gt, Cho) 「AIR JAM 2012」を見に行ったのは俺なんですけど、親父の会社が宮城の水産業の会社で、AIR JAMに出店することになって。その手伝いに行ったんです。でもそのときHi-STANDARDも知らなくて。「AIR JAM 2012」で初めて見たHi-STANDARDに衝撃を受けて。帰ってきてからKokiに教えました。

 
 

Koki (Ba, Vo) MONGOL800とかASIAN KUNG-FU GENERATIONを楽しみに行っていたはずなのに、その感想じゃなくて「ハイスタっていうバンドがさ〜」っていうところから始まりましたからね。

 

──Yutaさんはハイスタのライブのどのようなところに衝撃を受けたのでしょうか?

 

Yuta ステージから離れた飲食ブース前のスクリーンで見ていたんですけど、ライブもカッコよかったし、何よりもお客さんとの一体感がすごくて。その光景に感動しました。

 

Koki  そもそも俺とYutaが幼稚園からの幼馴染で。家も500メートル圏内くらい。だから小さい頃からずっと一緒で、土日はいつもYutaの家で音楽を聴いて……みたいな感じで過ごしていたんです。小学生の頃はエアロスミスとかを聴いていましたね。

 

Yuki (Dr, Cho)   小学生でエアロスミスって英才教育やん!(笑)

 

──エアロスミスを聴くようになったきっかけは?

 

Yuta  たぶん親父のきっかけですね。

 

──Yutaさんのお父さんの?

 

Koki うちの親父の影響もあると思います。子供の頃、俺がインフルエンザで寝込んでいるときに、「これ見とけ」ってVHSを渡されたんですが、それがエアロスミスの「Dude」っていう曲のミュージックビデオで(笑)。そのあたりから僕自身も音楽が好きになりました。

 

Yuta  それで、中学生のときに俺が「AIR JAM」に行って。帰ってきてから2人で地元の「ヴィレッジヴァンガード」行って、ハイスタのグッズ買ったり、ライブ映像見たりして、そこからハイスタのコピバンを始めて……というのがバンド結成の経緯です。

 


誕生日プレゼントは前身バンドのデモ音源

──Yukiさんが入ったのはどういった経緯だったのでしょうか?

 

Yuki 僕は大学で二人と一緒になりました。友達伝いでまずYutaと友達になって、そこからKokiも含めて一緒に遊ぶようになった。僕はマーチングバンドで打楽器をやっていたことはあるんですが、ロックバンドは全然聴いていなくて。最初はバンドは関係なく、普通に3人でよく遊んでいただけでした。ただ、ドラムもできるから、本当に遊びでたまにスタジオに入ったりもしていて。バンドを組んだきっかけは、大学2年のときの僕の誕生日。僕の誕生日にYutaが誕生日プレゼントという形で、carabinaの前身バンドのデモ音源をくれたんです。「覚えてきて」って。そこからですね。たぶん僕、「このバンドに入る」とか言ってないんですよ。デモの曲を覚えてスタジオ入って、友達だから一緒にいたら気付いたらバンドメンバーになっていたみたいな。

 
 

Koki 確かに。

 

Yuki  そもそも僕はライブハウスも二人と仲良くなって連れて行ってもらいましたから。

 

──KokiさんとYutaさんは大学でドラマーを探そうと思っていたんですか?

 

Koki  うーん……「大学でもバンドやれたらいいな」くらいの感覚ではいましたけど、やらないだろうなと思っていました。それこそたまにYutaとスタジオ入って遊べたらいいなくらいで。

 

──変な話、遊び感覚で始まった3人のcarabinaだと思いますが、大学を卒業した今も、仕事をしながらバンド活動を続けているのはどうしてなのでしょうか? 就職を機に活動を終えるという選択肢もあったと思うのですが、曲を作ったり、ライブをしていくなかで、バンドとしての手応えや、何か覚悟が決まるきっかけみたいなものはあったのでしょうか?

 

Yuki 僕としては「バンドやろうよ」で集まった仲間じゃないからかなと思いますね。本当にただの友達から始まって、遊びの延長戦でそのままバンドを始めて……みたいな感じだったから、辞める辞めないという考えはあまりなくて。だんだん生活の一部として当たり前になっていった。もちろんバンドとして売れたいとか、大きくなりたいという気持ちもありますけど、3人で続けているということに意義があるという感じですね。

 

Koki ちょうど就活のタイミングがコロナ禍だったんですよ。だから周りに辞めていくバンドも多かった。だから「ここで辞めるのはなんか違うな」って思ったんですよね。それこそYukiも言ったように辞める理由がなかったし。社会人だけどバンドを続けられるというのを俺らが提示するのもアリなんじゃないかなと思いました。海外のバンドとかって、結構社会人やりながらすげえ楽しそうにバンドやっているじゃないですか。たまに日本にツアーしに来たりして。俺らもそういう感じでいいんじゃない?と思って、一回とりあえずみんな就職しようかという流れでしたね。 

 

Yuta 一応、ライブのために土日は休める仕事にしようっていうのだけ3人で固めて。

 

Yuki 借金がどうとか、お金がないからという理由で潰れていくバンドもたくさん見てきたので、そういうのを見ると、バンドを続けるためなら仕事しながらでもいいかなとも思いますね。


自分たちの人間性を音楽に乗せる

──carabinaの音楽性についても聞かせてください。バンドのルーツとしてはHi-STANDARDということですが、carabinaは日本語詞です。そこはどういった理由があったのでしょうか?

 

Koki 英語詞にしちゃったらハイスタのモノマネになっちゃうと思ったから。あとは俺が英語がめちゃくちゃ下手だし、わからな過ぎて。わからない言葉を歌詞にするのは違うなと思いました。

 

──ということは、最初は日本語のメロディックパンク、というところから始まったんですね。

 

Koki  はい。最初は「ハイスタ大好きキッズのやるメロディックパンク」っていう感じだったんですけど、最近変わってきて。自分らがどういう人間かというのを出すようになったというか。どういう音楽をしたら、お客さんが素直に受け止めてくれるかということを考えるようになって。Yukiが入ったことによってJ-POPの要素も入ってきたと思うし、今は、自分らの色をどうやって出すかを考えるようになりましたね。

 

Yuki それこそ僕が誕生日のときにもらった前身バンドのデモは、日本語の曲が1曲しかなくて。あとは全部英語詞でした。

 

Koki  確かに。曲調も全然違いましたね。もっとオルタナティブな感じというか。

 

Yuta  ニルバーナも好きなので、そういう感じでしたね。でも「Good bye.」ができてから、「Good bye.」を軸にというか。バンドの路線が決まっていった感じがします。

 

──「Good bye.」で自分たちのやりたいことがわかった?

 

Yuta そうですね。

 

──先ほどKokiさんが「自分たちがどういう人間かというのを出すようになった」とおっしゃっていましたが、carabinaの魅力の一つに、Kokiさんの作るドラマチックな歌詞があると思います。歌詞のインスピレーションとしてはどういったところから?

 

Koki  わー、歌詞を評価されるの、めっちゃうれしいなぁ。ありがとうございます! 歌詞のインスピレーションは完全に実体験ですね。自分が生活している中で思ったことを、直接的じゃなく書くようにしていて。映画や本から感じたことを自分なりに自分の言葉にしています。

 
 

──特に影響を受けている映画や本を挙げるなら? 

 

Koki 映画だったら「アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜」。めっちゃおしゃれで「あんな生活最高だな」と。本だったら……三浦しをんとか太宰治かな。映画、本、漫画が大好きで。なんなら音楽よりそっちのほうが好きかもしれない(笑)。

 

Yuki 大学生のときに出会って、一緒に過ごすようになって思ったのが「めちゃくちゃ本読むな」でした。 いつもリュックに、大学の教材とは別に本が3〜4冊入っていて。歌詞はそこから来ているんだろうなと勝手に思っていました。


「めっちゃ売れたいんです」

──carabinaは9月に新シングル「No boys, No cry」をリリースしました。収録曲のうち「BOY」は配信リリースもされていますが、この曲はどういったところからできたのでしょうか?

Yuta  carabinaを知らない人たちにも知ってもらいたい、聴いてもらいたいなと思って、ちょっとわかりやすく……じゃないですけど。

 

──確かにキャッチーですよね。

 

Yuta そこは意識して作りました。わかりやすくて、疾走感があって。そこはKokiも意識して歌詞も書いてくれたと思います。

 

──carabinaを知らない人にも知ってもらえるようなキャッチーな曲を作ろうと思ったのはどうしてだったのでしょうか?

 

Koki めっちゃ売れたいんです。俺ら、自分たちの曲にめっちゃ自信あるんですよ。Yutaが作ってくれるオケも最高だし、自分の歌詞も自信あるから、もっとみんなに知ってもらえたらいいのになって。ライブに来てくれるお客さんも「歌詞に救われました」と言ってくれるんで、俺らの曲が広まったら、そのぶん救える人も増えるんじゃないかなって。そのためにはまず知ってもらわないといけない。その窓口として、キャッチーでわかりやすいものを作ろうという話になりました。この曲を気に入ってもらって、深堀りしてもらったら、キャッチーじゃない曲もあるし、俺らの本当に伝えたいこともわかってもらえたらうれしいなって。

 

──逆にいうと、現状には悔しさが?

 

Koki  同じ年くらいとか年下のバンドがフェスとか出始めて「クソ」って思っていて。だから今回サタパに出演が決まってめっちゃチャンスだなって思ったし、このビッグウェーブを逃したくないなと思いました。


去年のサタパは悔しさで楽しめなかった

──では改めて、今年の「SATANIC PARTY」の出演が決まったときの気持ちを教えてください。

 

Koki  正直、ちょっと泣いたっすね。去年のサタパは友達がめっちゃ出てたんですよ。JasonAndrewとかNESTとか、FUNNY THINKとか。だからめっちゃ悔しくて。去年もフロアにいたんですけど、悔しくて全然楽しめなくて。バカみたいに酒飲んじゃって、べろべろで帰りましたから。

 

──そんな「SATANIC PARTY」に今年は出演しますが、どのようなライブにしたいですか?

 

Koki  どんなライブにしたいかな。ちょっとまだふわふわしてるんですよね。でも男っぽさみたいなのはちゃんと出していきたいですね。いつものハートフルな感じもしっかり出しつつ。名だたるカッコいい先輩たちの中でも「自分が一番カッコいい」という気持ちを持ってやりたいなと思います。

 

Yuki 愛が伝わればいいかな。音楽に対してもそうだし、ライブハウスに対しても、イベントに対しても、ピザオブデスに対しても。

 

Koki めっちゃワクワクするよな!

 


 

──今回のサタパに限らず、carabinaがライブで大切にしていることや、ライブをするうえで意識していることはありますか?

 

Koki メンバーそれぞれあると思うんですけど、俺は一体感を作りたい。そのためにお客さんそれぞれの目を見て歌いたい。で、うまく言葉にできないんですけど……その場を1つの球体にしたい。

 

Yuta  ハイスタのStayGoldのロゴみたいな?

 

Koki  そうそう!

 

Yuta 楽しむのは第一で、それをみんなで共有したいですね。Kokiの歌詞に込めた想いやそのときの感情は、絶対に声とか音に出ていると思うから、そういうのが全部伝わってほしいし、お客さんからも返ってきてほしい。そういうライブができるのが一番理想的だなと思って、まずは“伝える”ようにしています。

 

Yuki  ライブハウスにはいろんな境遇の人がいるじゃないですか。仕事で何かあったとか、学校で何かあったとか。僕たちは日本語で、意味をちゃんと考えてもらえるような曲を作っているので、そういう何かを抱えている人たちが、何かを感じてくれるようなライブができたらいいなと思っています。歌詞を聴いてでもいいし、男らしい僕たちのライブでも、ライブから生まれる一体感でもなんでもいいから、ライブを体感して味わって、そのときそのときでいろいろなことを考えてもらいたい。わかりやすいところでいうと、10-FEETのライブを見ると、TAKUMAさんのMCやバンドの演奏を聴いて「俺はこうだな」って思うことって絶対あると思うんです。そういうものを僕たちのライブでも感じてもらいたいなと最近は特に思うようになりました。

 

──お話を伺って、最近、バンドとして自分たちと向き合った瞬間というか、3人で話し合うみたいな場面があったのかなと思ったのですが。

 

Koki ありましたね。「なんで俺バンドやってるんだっけ?」と思った瞬間があって。音楽はすごく好きだし、音を鳴らしているのも好きだし、お客さんが「ワーッ」と盛り上がっているのを見るのも好きだけど、なんかもっと伝えたい芯の部分があったはずだよな、俺、って。そういうところをもっと見せてもいいのかなって思ったんです。自分の考えとか、思想を伝えていくのがロックバンドなんじゃねえの?と思って。そこからですね、自分らのライブとかスタイルに対して嘘偽りなく、真正面からできるようになったのは。そこからサタパにも誘ってもらえたし、運気が良くなりました(笑)。言霊ってあるんすね!

 

──バンドとしての向く方向が定まると、音とかライブに出ますからね。ではそんなcarabinaの今後の展望としては……売れたい?

 

Koki  売れたいっすね!

 

Yuki 売れるってことは、聴いてくれる人が増えるじゃないですか。carabinaの歌詞を読んでライブを見て、何か感じてもらいたいし、それをいろんな人に届けたい。だから売れたいんです!


 

https://carabina.ryzm.jp/
https://twitter.com/carabina_band
https://www.instagram.com/carabina_official
 

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