INTERVIEW

Wienners “GAKI” INTERVIEW!!

Text by Chie Kobayashi


Wiennersが1月15日に新曲「GAKI」をリリースした。ハードコアサウンドをEDMと融合させた、Wiennersらしいデジタルパンクチューンだ。玉屋2060%が日本のハードコアで一番カッコいいと思う音源を聴いているうちに、沸々と湧き上がった制作意欲から純粋に作り上げたという同曲について、そしてバンドとしての確信を手に入れたという2024年について、玉屋2060%にたっぷりと話を聞いた。

 

居場所が見つかった2024年

──まずは2024年の振り返りから聞かせてください。昨年5月には玉屋2060%主催イベント「玉屋祭2024」を開催されました。玉屋さんが楽曲提供してきたアーティストを招いたライブでしたが、このイベントをあのタイミングで開催したのはどうしてだったのでしょうか?

アイデア自体は結構前からあったんですが、作家としての自分を前に打ち出すということに消極的だったんです。なんていうんですかね……言い方が難しいんですが、作家をしているのは仮の姿で、あくまでもWiennersありき。バンドをしていなかったらたぶん作家もしていなかったので。自分の中でそういう感覚があったので、作家をメインとして見られるのが嫌だったんです。でもバンドに対して、今は自信を持って「今、いい感じだ」って言えるようになってきて。今だったら、こういうイベントをやってみたいなと思って開催しました。自分のなかで納得いくバンド活動ができているというのも大きかったですね。

──バンドに対しての自信を感じられているということですが、どういったところからそれを感じているのでしょうか?

作りたい曲を作って、それを披露して、ある程度評価していただけるようになったから。大無視をくらうことはなくなったなっていう感じですかね。あとは、気持ちよくライブができているのが大きいのかな。ちゃんと広がっているなという手応えがあるんですよね。

──その手応えは、今までとは違うんですか?

そうですね。特に去年は本当に広がっているのを感じました。フロアの熱量が、思っているようなものになっているというか。今までよりも熱量が一段上がっているように感じました。わかりやすく言うと、パンク、ハードコアのお客さんにもちゃんと届いていることを実感したことが大きくて。今まで意識的にそういうバンドと一緒にやっていなかったわけではないですけど、わざわざ一緒にやることなかったんですよね。だけど、ここ最近は積極的にやるようになって。そうなると、お客さんも「Wiennersってこうやって楽しむのね」ってわかってくれて。単純に言えば、モッシュ・ダイブありで楽しむのが楽しいバンドなんだって。それが伝わっていったのが去年だったのかなと思います。逆に言うと、楽しみ方をも提示しないと楽しんでもらえないんだな、ということも痛感しました。でも、だから「シーン」とか「カテゴライズ」というものがあるんだなと思いました。

──パンク、ハードコアのバンドと積極的に対バンをしてこなかったというのは、積極的に対バンをしなくてもパンク、ハードコア好きのリスナーに届いてほしかったという気持ちの表れだと思うのですが、逆に対バンをすればちゃんと届くんだという、道が見えたということでもあったのではないでしょうか?

そうですね。「居場所はここだったんだ」っていうのがわかりやすくなったのかなとは思います。今までは良くも悪くも、どのシーンにも属していなくて。いや、「良くも悪くも」じゃなくて「悪く」かな。お客さんは本当はWiennersのことをどう見ていいのかわからなかったんだろうなって、パンク、ハードコアのバンドとやるようになってお客さんの姿を見て痛感しました。

──居場所を変えただけで、自分たちの楽曲やライブを変えたわけではないじゃないですか。それも、自信になったのではないでしょうか?

それはめっちゃあります。そっちのシーンの人たちには最近Wiennersを知ったという人も多くて。だから10年以上やっていますけど、4、5年目の顔をしてやっています(笑)。

 

──あと、2024年の印象としてWiennersはツーマンライブが多かった印象があるのですが、そこは意図的だったのでしょうか?

言われてみれば確かにそうですね。でも意図的ではないです。でも、それもやっぱりわかりやすく「このバンドとツーマンをやっているのがなんとなく見えるな」みたいに認知してもらえるようになったからなのかな。バンドや、イベントを組む人が「Wiennersだったら一緒にやってもいいじゃん」って思ってくれたからなのかなと思います。

──2024年はWiennersにとって、客観的に自分たちの立ち位置が見えた1年だったのかなと、お話を伺って思いました。

そうですね。客観的にも、自分たち的にも、収まる場所が見つかってきたのかなと思います。というか、それが見つかって、ちょっとずつ目に見えて結果として出始めたのが2024年だったのかも。「TREASURE」(2022年リリース)を出したときくらいに、明確にシーンというものを意識したんですよ。それまで僕はパンクが大好きだからこそ、あえて距離を取っていたところがあって。好きだからこそ、簡単には「パンク」と名乗りたくないみたいな気持ちがあったけど、そんなことも言ってらんないなって。とにかく勘違いされてもいいから、そういうシーンに出ていこうと思った。その結果が少しずつ見えてきたのが去年だったのかなって。

 

音楽をすることが楽しくなった

──なるほど。ちなみにここまで私が感じた昨年のWiennersについてお話を伺ってきましたが、玉屋さんとしては、2024年はWiennersにとってどんな1年だったと思いますか?

自由度が増したかなと思います。単純に一昨年ドラムのKOZOが脱退して3人になったから、そこでバンドとしても自由度を高くしようという意識もあったし、それこそ「パンクパンク」って話をしてきましたけど、俺らは別にパンクだけが好きなわけじゃない。“パンク”や“バンド”をやっているというよりは、“音楽”をやっている感じなので、そこの自由度が高くなっているのかなと思います。「別にギター弾かなくても良くない?」みたいな。

──そう思えたのは、自分たちの居場所がわかったからみたいなところもあるんでしょうか。

それはめっちゃあると思います。居場所や軸がなくていろんなことをやっていたら、マジで何をやっているのかわからない存在になっていたと思うんですけど、“このカテゴライズにいる人たちが、いろんなことをやりますよ”っていうのが、聞いている人にもわかりやすくなったことが大きいのかなと思います。

──本当に動きやすくなってきているんですね。

むちゃくちゃそうですね。あと、個人としても自分の表現したいものを表現することがストレスなくできるようになっていて。バンドもそうだし、作家としても仕事もそうだし。なんか……5、6年前って曲も思うように作れなかったし、一生スランプみたいな状態で、ずっとキツかったんです。そのとき、HAWAIIAN6のYUTAさんに「これ楽しくなるんですかね? YUTAさんは今楽しいですか?」って聞いたことがあって。そしたら「めっちゃ楽しいよ。もうちょっとしたらマジで楽しくなるし、曲作りも楽になるよ」って言われて。そのときは「マジっすか、想像できないですね」と言っていたんですけど……本当にそうなりました。

 

──肩の力が抜けた、とかなんですか?

当時、その意味をずっと考えていて。「いいものを作ることを諦めるから楽になる」っていう意味なのかなって思っていたんですよ。だけど全然そういうことじゃなかった。自分が何者なのかが少しずつわかってきて、だからこそ表現することが簡単になったというか。「自分が表現したかったことってこういうことだったんだ!」って。

──なるほど。

あとは、ある意味で欲がなくなったということもあると思っていて。それはどういうことかって言うと「いいものを作りたい」という欲はむちゃくちゃあるし、その熱量は10代の頃から変わっていない。だけど「自分をよく見せたい」とか「取り繕わなきゃ」みたいな気持ちはどんどんなくなっていくんですよ。虚勢を張ることがどんどんなくなっていって、そうすると、本当に表現したいものが自分でもすごくよく見えてくる。今まではたぶん「俺はこうだから、こういうものを作らないとカッコよくない」とか「こんなものを作ったらダサいんだ」っていう虚勢にがんじがらめにされて、核の部分が自分でもよく見えなくなっていた。でもだんだん「これは虚勢を張るために防御として思っていたことだったんだ」っていうものが見えてきて、いらない部分がポロポロ剥がれて。そしたら自分が本当に表現したいことが見えてきて、曲を作ることが楽になった。YUTAさんが言っていたのはこういうことだったんだってすごく思いました。

──今、同じような状況にいるアーティストにとってはすごく希望ですね。

「頑張っていたら、楽になるよ」ということは言いたいですね。あと、僕は運が良かったっていうのもあると思う。その状態で箸にも棒にもかからず卑屈になっていってしまう人もいっぱいいると思うので。自分がそうならなかったのはありがたいし、ラッキーだったなって思います。

──音楽家ではない私も、同世代の人間として背中を押された気がします。

それは良かった。実際、何にしても言えることだと思うんですよ。人生において、ちゃんと生きていればそういうふうになっていくっていうか。だからちゃんと生きないといけないなと思う。よくいるじゃないですか、20代が一番楽しいと思っていたけど、30代になったらもっと楽しくって、40代、50代になったらさらに楽しい、みたいな人。そういう生き方をしている人って、楽しいと思うことに貪欲だし、自分の好きなものに対しても貪欲なので、そういう生き方をしていると、そういう人生になるんだろうなって思う。だから好きなものがあるってめっちゃ幸せですよね。超ありがとうございますって感じ。

 

趣味のように作り始めた「GAKI」

──素敵な気づきをありがとうございます。ここからは新曲「GAKI」について聞かせてください。パンク、ハードコアのシーンに居場所を見つけたというお話を聞くと、この曲調も納得です。というのも、ここまでのハードコア要素って、もちろん玉屋さんは内包していましたが、あえてWiennersでは出さないようにしていたのかなと思っていたんです。

そうですね。それこそ、好きだからこそパンク、ハードコアに振り切った曲は、作るときに邪念がどうしても出てしまって。好きだから「こんなんじゃ軽いな」と思っちゃったり、造形が深いアピールをしたくなっちゃったりして。それって、いい曲を作るというのとは別軸じゃないですか。そういうものがすごく邪魔をして、今までずっと作れなかったんです。でも「GAKI」に関しては、そういうものを一切考えずに作ることができた。

──そうなんですね。

EXCLAIMというバンドのコンプリートディスコグラフィー「1998-2003DISCOGRAPHY 感極まる絶叫」があるんですが、その頭7曲くらいが、最初の7インチの音源なんですね。俺、そのアルバムが日本のハードコアのアルバムの中で一番カッコいい音のハードコア音源だと思っていて。それをひさしぶりに聴いて、「うわ、やっぱカッコいい!」と思って。リリースするとかそういうことは考えずに、ただ「こういうのにEDMとかダブステップとかあわせたら超カッコよさそう!」「こういうものを作ってみたい!」っていう気持ちで、ほとんど趣味で作ったのが、この「GAKI」なんです。もし「Wiennersでハードコアの曲作ってみたい」とかそういう気持ちで作っていたら、ここまでポップになっていなかったと思う。本当に思うがままに、何も考えずに自分から出てきたものを羅列したらこの曲になったみたいな感じなので、すごく純粋なものだなと思います。

──リリースのつもりはなく作った曲だったとのことですが、それを実際Wiennersの曲としてリリースすることになったのはどういう経緯ですか?

単純に、メンバーに聴いてもらったら「これ出そうよ」ってなって、チームのみんなにも「なんでWiennersでやらないんですか」って言われて。「あ、やっていいんだ」って思いました。自分のなかではちょっと落書きをしていただけみたいな感覚だったので、それを「みんなに見てもらおうよ」って急に言われたみたいな感覚で。でも落書きって、自分の描きたいものしか描かないめちゃくちゃ純粋なものだから、それを出そうよってみんなが言ってくれたのはめちゃくちゃうれしかったし、邪念がないものは伝わるんだなって思いました。

──曲と詞、先にできたのは曲ですか?

はい。曲ができてから、「ガキ」っていうワードが出てきて。そこから「ガキの使いじゃねえぞ」っていう、なんていうか……イキってる中学生みたいなことを言いたいなと思った。声変わりもしてないくせに叫んでるみたいな、その感じがいいなと思って。その中学生はむちゃくちゃカッコつけて言ってるんですけど、俺からみたら「かわいいな、お前」みたいな。本気だからこそ面白く見えてしまうという滑稽さや純粋さって、どこかハードコアにも通ずると思っていて。だから自分のなかでたぶんハードコアに「ガキ」というワードがしっくりきて、この歌詞になったのかなと思います。

 

──演奏面ではいかがでしたか? 玉屋さんと∴560∵さんはハードコアがルーツにあると思いますが、アサミサエさんは?

通ってないんですよ。その感じも面白いんですよね。何も知らないでやっているから。

──アサミサエさんには、例えばEXCLAIMなどハードコアの音源を聴いてもらって「こうやってほしい」みたいなことは説明したんですか?

さっき伝えた「中学生がギャンギャン吠えてる感じ」というのは伝えました。「弱い犬ほどよく吠えるみたいな必死さを出してほしい」と。でもそれだけで、「ハードコアっぽく歌ってほしい」とかそういうことは一切言わなかったです。とにかく、ずっこけ感が欲しいんだよねっていうことだけです。ハードコアを知っている人が作ったら、そりゃ知っているものになるじゃないですか。それはそれで素晴らしいと思うけど、そうじゃない人が作る違和感が欲しいなと、常に思っているので。

──なるほど。では∴560∵さんとはどのような会話を?

∴560∵に関しては、それこそEXCLAIMのアルバムの話もして。「俺は日本のハードコアであれが一番カッコよく表現できてるアルバムだと思う」って言ったら「めっちゃわかる。マジでそうだよね」って話になって。そこから音の潰れ方と、歪み方と、でもリフは不思議と聞こえる感じがカッコいいよねみたいな話をして。もうそれだけでオッケーっていうか。「だからこうしたいよね」っていう話はしなくても「あれ、むっちゃかっこいいよね」って話ができれば、もうわかるっしょって。

──ハードコアをめちゃくちゃ理解している玉屋さん、∴560∵さんと、何がなにやらわからないアサミサエさんというメンバーで作るハードコアこそがWiennersらしさになるんですね。

そうです、そうです。

──そのなかで玉屋さんは演奏する上で、もしくは歌う上で、意識したことはありますか?

この曲はハードコアの曲を聞いて「こういうものを作りたい」と思って作り始めたものではありますけど、実際に歌うときにはハードコアを歌っている気持ちはなくて。それよりも、どうやったらこのガキっぽいダサさが出せるかということを考えていましたね。歌詞を詰めるときも、ダサさや滑稽さをいかに出せるかということを考えて。そっちに夢中でしたね。

 

実験成功!

──すごくピュアなところから生まれた「GAKI」ですが、出来上がってみていかがですか?

本当に作りたいものを作ったので、当たり前ですが、満足しています。音的にもここ数年ずっと自分が好きで聴いているようなEDMとかダブステップを、ハードコアに乗っけたいなっていう、実験みたいな気持ちで作った曲でもあって。この曲ではギターとワウシンセが掛け合いになっているんですけど、ずっと「どうやったらEDM的なワウシンセとギターが共存できるんだろう」と考えていたので、こうやったら共存できるんだっていうことがわかって。実験成功みたいな気持ちもありますね。

──実験成功ということは、今後の楽曲制作にも変化が生まれそうですね。

そうですね。この方法だったら、今までやりたくてもできなかったことも全然できるじゃんっと思って。できないけどやりたかったことっていっぱいあるから、これからはできるわって思いますね。

──ここにきて、また新たな手法を手に入れたんですね。

これも、楽しくなっている要素の一つなんだろうなと思います。やっぱり、技術とか知識をつけることってすごく大事だなと思っていて。例えば自分の気持ちを表現するときに、言葉を知っていれば知っているだけ詳細に伝えられますよね。それと同じで、自分の好きなものを表現するときに、技術をたくさん持っていたほうがそりゃ伝わるし、楽しいよなって。これまでに作った曲で、でも技術がなくてうまくいかなかった曲っていくつもあるんですけど、今だったらできると思う。そういう意味でも、音楽をするということが、どんどん楽しくなっているなという感覚はありますね。

──「GAKI」のリリースから始まる2025年ですが、バンドとしてどんな1年にしたいですか?

どうなんだろうなぁ。2年前くらいに出した「TOP SPEED」という曲で、“なるようになるし、なるようにしかならない”ということを歌詞にしたんですけど、マジでそう思っていて。荒波の中で無理にもがいたり息継ぎしようとしたりしても無駄じゃないですか。それに乗っていったほうがいいし、もしそこで沈んだらそれまでだなくらいに思っていたほうが面白くなる気がする。だから今年も、とことん流れに身を任せますっていう感じですね。

──楽しみにしています。最後に、玉屋さんが今年、個人的にやってみたいことや試してみたいと思っていることがあれば教えてください。

毎年言っているんですけど、スカイダイビング。叶うなら、成層圏くらいからのスカイダイビングをやってみたいですね。

──ミュージックビデオの撮影とかであっても良さそうですよね。

確かにMVの企画だったら現実味あるかも。去年、インドに行ったら「TOKYO HOLI」っていう曲ができたし、そうやってアクションを起こせば、ちゃんと曲になるんだなっていうことが最近だんだんわかったんですよ。だからこれからも、玉屋2060%という、こいつをいろんなところに連れ出して、いろいろ経験させていきたいなと思っています。

 

ニューシングル「GAKI」配信中

http://Wienners.lnk.to/GAKI


Wienners「GAKI TOUR 2025」

2/1(土) 千葉LOOK
※ONE MAN

2/2(日) Spotify O-Crest
w / 超能力戦士ドリアン

2/6(木) 神戸太陽と虎
w / バックドロップシンデレラ

2/8(土) 広島ALMIGHTY
w / 炙りなタウン

2/9(日) 福岡LIVE HOUSE Queblick
w / 炙りなタウン

2/11(火) 静岡UMBER
w / TOTALFAT

2/14(金) 仙台LIVE HOUSE enn 2nd
w / dustbox

2/16(日) 札幌KLUB COUNTER ACTION
w / dustbox

2/21(金) 水戸LIGHT HOUSE
w / TENDOUJI

2/27(木) 名古屋Electric Lady Land
w / KANA-BOON

3/1(土) 梅田Shangri-La
w / ネクライトーキー

3/5(水) 恵比寿LIQUIDROOM
w / ヤバイTシャツ屋さん


チケット発売中
チケットぴあ https://w.pia.jp/t/wienners-gaki-tour/
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