G-FREAK FACTORY "HAZE" TOUR 2024-2025 LIVE REPORT!!
Report by Chie Kobayashi
Photo by 上坂和也
2025.5.17
G-FREAK FACTORY "HAZE" TOUR 2024-2025@ Zepp DiverCity
G-FREAK FACTORYがライブツアー「G-FREAK FACTORY "HAZE" TOUR 2024-2025」の最終公演を5月17日に東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にて行った。このツアーは昨年9月にリリースしたフルアルバム『HAZE』を携えて行われたもの。昨年10月から、およそ8ヶ月かけてバンドはゆっくりと、そして着実に全36公演を行った。
『HAZE』は、バンドにとって4年ぶりのフルアルバム。コロナ禍から制作を始めた本作には、コロナ禍以前から着手していた楽曲、コロナ禍で作った楽曲、そして現在と、移りゆく世界と、その変化に迷う茂木洋晃(Vo)の思いが素直に詰め込まれた1枚だ。コロナ禍にインタビューさせてもらった茂木は、何度も「何を書いていいのかわからなかった」と話していた。そんな茂木が、この『HAZE』というアルバムを持って、どのようにステージに立つのか、正直想像がつかなかった。そして、どこか少し不安でもあった。
しかし、実際にバンドメンバーと共にステージに立つ茂木を見て、その不安は杞憂だったことがわかった。
サポートメンバーの多畠幸良(Key)による鍵盤の旋律を先頭に、ジャムセッションでライブは幕を開けた。そして茂木の登場とともに1曲目に繰り出されたのは「アメイロ」。2023年にリリースされたこの曲は、決して勢いのある楽曲ではない。葛藤や迷いを歌った憂いのある楽曲。しかし、ライブの1曲目にしてZepp DiverCityは大合唱に包まれた。そのままアルバムの1曲目「YAMA」へ進むと、バンドの演奏もソリッドになり、<変わらなければ老いてくだけ 変わり続けたらただブレるだけ><行こうぜもっと>と鋭いメッセージと共に、フロアも一層熱を帯びる。思えば、『HAZE』のリリースに際し行ったインタビューで茂木は「今までのG-FREAK FACTORY は『このままじゃダメだぞ、日本!』『目を覚まそうぜ!』っていう一点張りだったんだけど、今歌うべきはそういうことじゃないなって。もっと身近なことを歌うべきだなと思った」と話していた(https://satanic.jp/contents/846566)。身近なことを歌うべきだというモードになった彼らの音楽やライブは、しっかりとリスナーに寄り添い、彼らの生活に根付いている。モッシュやダイブよりも、大合唱のほうが多かったこの日のフロアを見て、そう感じた。
「この曲がZepp DiverCityでできるって、出来上がったときに想像したんだよね」とうれしそうに茂木が話した「ある日の夕べ」もまた、茂木の変化が現れている1曲。もともとは「EVEN」のアンサーソングを作ろうというところから着手した楽曲だというが、これまでは“みんな”に向けて曲を書いてきたが、この曲では“誰か一人”に向けた曲にしたかったそう(その特定のパーソナルが思い浮かばなくて作詞は難航したそうだが)。その結果、この曲もまた、リスナーがきっと自分に向けた曲だと受け取ったり、もしくは大切な人へ自分から送るような気持ちで受け取ったりしているのだろう。イントロから歓声が上がっていた。
そして「走りすぎた時代の弱者たち」とフロアを指差し自分たちの曲として届けた「voice」、さらに真っ赤なライトが警告のように緊迫感を生み出した「RED EYE BLUES」と、どんどん音はディープになり、メッセージは深く心を突き刺していく。さらに疾走感あふれるギターリフが爽やかな「STAY ON YOU」に乗せ「それでも期待する? まっさらな未来に?」と問いかける。こうしてG-FREAK FACTORYの音楽は、自身や社会と向き合うきっかけをくれる。
「終わっちまう寂しさと、自分たちだけで立つ贅沢と、みんなが祝福しに来てくれるという、なんともふわふわした気持ち」「山人音楽祭とも、他のツアーのファイナルともまた違うファイナルになっている」と素直な心境を口にした茂木。G-FREAK FACTORYは2021年に、「VINTAGE」のツアーファイナルでも、ここZepp DiverCityでライブを行っている。ただ、当時はフロアにイスが並び、声も出せない状態でのライブだった。当時を回想して茂木は「嘘みたいだけど、あれも本当だったんだ」と寂しそうに口にした。
コロナ禍で制作した「Dandy Lion」を優しく歌い上げたあと、コロナ禍にバンドをやっていることに対する葛藤や苦しさを語った茂木。そして一息おくと「このバンドはあそこで一回死んでます。だからもう何も怖くねえ! ここから先、また咲いていこうっていう曲。だから得た、収穫」。そう力強く告げて「HARVEST」を届ける。豊潤な演奏に乗せ、<無くした分だけ手に入れたんだね>と歌う同曲が、温かく場内を包み込んだ。
そして、ふと「バンドっつーのはモチベーションが命でさ」と語り始める。「そのモチベーションみたいなものが、ごねるときがあるんだよ。でもそのときにさ、ステージにいる誰かが燃えててくれるから。一番の敵は自分の中の弱さなんです。甘さなんです。だけど、俺の中で一番のライバルはステージに一緒に立っている、これだけ楽器の上手な、カッコいいメンバーなんです。こいつらが出せる音に負けない歌を出せるかが勝負なんです。ずっとそうやってきた」と誇らしげにメンバーを見渡すと、自信に満ちた音で「Fire」を届けた。
アンコールでは茂木が、群馬出身の元サッカー日本代表の細貝萌に向けて作った「Parallel Number」を披露。自身と細貝を重ね合わせて作ったという同曲を、茂木は細貝本人が着用していたユニフォームを身につけ熱唱した。強い思いが会場に充満する中で最後に届けられたのは「日はまだ高く」。会場にいる子供をステージに上げ、未来を感じさせるエンディングで「 "HAZE" TOUR 2024-2025」の幕を閉じた。
茂木が「一番のライバル」だと言ったG-FREAK FACTORYメンバー。今回のツアーが「人生で一番ツアーだった」と言うLeo(Dr)、フロアからの声を受けて、指ハートを飛ばしまくる原田季征(Gt)と、この日のステージでは彼らの巧みな演奏力やエナジーのみならず、素顔も垣間見えた。そして吉橋“yossy”伸之(Ba)は、「意味を持たせていた」という今回のツアーについて説明してくれた。2019年に開催した「FLARE / Fire」ツアーのファイナルはShibuya TSUTAYA O-EAST、その次の「VINTAGE」のツアーファイナルはZepp DiverCityと、バンドは階段を少しずつ登っていたところだった。しかし、コロナ禍に突入してしまった。yossyいわく「完全燃焼しきれなかった」。だから2024年の「RED EYE BLUES」ツアーのファイナルは再びO-EASTで行い、そして今回のツアーファイナルでZepp DiverCityを実施した。そして今回はフルキャパシティで、かつソールドアウト。「これで完全に乗り越えた。だからもっと上に行くためにこれからやっていく」。yossyはそう宣言した。茂木もまた、2年後のG-FREAK FACTORY結成30周年には何かを企んでいると話していた。「もう何も怖くない」と高らかに声を上げた今のG-FREAK FACTORYは<行こうぜもっと>なのだ。