G-FREAK FACTORY “HAZE” INTERVIEW!!
G-FREAK FACTORYがフルアルバム『HAZE』をリリースした。バンドにとって4年ぶりのフルアルバムとなった本作は、コロナ禍から制作を始めたといい、移り変わる世の中に対しての茂木洋晃(Vo)の迷いや答えの出なさも素直に綴られた1作となった。本作について茂木に話を聞いた。
Text by Chie Kobayashi
Photo by Yuta Kato
コロナ禍で得た新しい感覚も連れていきたいと思った
──4年ぶりのフルアルバムが完成しましたが、完成した今の率直な気持ちを教えてください。
「できたんだな」っていう気持ちが大きいかな。できねえと思ってたから。
──どうしてできないと思っていたんですか?
リリックにかなり苦労したんだよね。コロナ前とコロナ禍、コロナ後って感覚が全然違って。「この言葉を使っても、今の世の中じゃ響かない」とか「コロナ禍である程度答え出ちゃってるな」とか。そう思ったら使えるリリックが全然なくて、リリックのかけらたちを一回全部捨てたの。
──えぇ!
「カッコいいリリックもいっぱいあるし、誰も言葉にしてなかった言葉もたくさんあるぞ」って思ってたんだけど……。変わっちまった世の中、変わっちまった人に対して、「これから先どうする」っていう歌詞を言葉を届けるには全然それじゃ足りなかった。それは初めての感覚だった。
──歌いたいことが変わっているということでしょうか?
うーん、まだ定まっていないっていう感じかな。どこに向かって行ったらいいのかがわからないでしょ、今って。世の中は明るいか暗いかで言ったら圧倒的に暗い。その中でちっちゃな灯火のような、懐中電灯ようなものを作れたらいいなと思ってたんだけど、その中で俺の生き方の正解みたいなものが、正直まだ出ていなくて。でも出ていないものをリリックにしていけばいいと思った。
──“答えが出ていない”とか“探している”ということを歌おうと。
そうそう。この状況を楽しむためにはどうしたらいいんだろうっていうところで、今はまだふわふわしているかな。
──1曲目「YAMA」の<変わらなければ老いてくだけ 変わり続けたらただブレるだけ>という歌詞にもその想いは現れていますよね。
やっぱり今の社会を知った上で今生きている人の……例えば葛藤とかフラストレーションみたいなものと向き合っていきたいと思っているから、時代背景というものはすげえ重要で。今までのG-FREAK FACTORY は「このままじゃダメだぞ、日本!」「目を覚まそうぜ!」っていう一点張りだったんだけど、今歌うべきはそういうことじゃないなって。もっと身近なことを歌うべきだなと思った。G-FREAK FACTORYはそうあるべきだと、他のメンバーがどう思っているかはわからないけど、少なくとも俺はそう思ってる。
──サウンド面も変わったというか、柔軟にいろいろ試しているように感じました。その変化は、どのようなことの現れなのでしょうか?
キーボードが早い段階で入るようになったんだよね。それまでは完全に最後のオーバーダブだったんだけど、キーボードという百人力が手前から入ってくれることによって、アレンジ面ですごく変わったかな。
──早めに入ってもらいたいという話をしたんですか?
「これはキーボードと一緒に膨らませていったほうが良くなるんじゃないか」っていう曲があったりして。聞こえて届いたもん勝ちだなって思うようになった。もちろんそれぞれこだわりはあるんだけど、だからこそ、その中の譲り合いができるようになったというか。
──バンドの空気感みたいなのが変わってきているのでしょうか?
うーん、やっぱりコロナ禍を経てみんなのマインドが変わったんだよね。それまではずっと走っていて、ただ筋肉がついていくだけだった。もちろんそれはそれで望むところだったんだけど、コロナ禍で一息ついて、山の中腹でおにぎりなんか食べながら一回周りを見渡してみたら「なんか全然違う景色になってるな」って。それまで本当にバンドしかやってこなかったから知らなかった景色や感覚がそこにあって。その新しい感覚も、これからも連れていきたいなと思った。そうしないと、あの時期がただの空白になっちゃうから。あの時期に得た感覚は絶対にこれからの楽曲に反映させていきたいって思ってる。
──ちょっと視野が広がったというか。
そうそう。前は目をつぶって走ってたんだけど、今は目を開いて走っている感じがして。スピード感を意識するよりも目を開けて走ることを意識しようって。そこがすごく変わったところな気がする。
──目を開けて走るようになって、面白いですか? 本当は目をつぶって猛スピードでも走りたい?
どうだろうな。実際、立ち止まっている時間はもちろんないんだけど。でも前よりも人間らしくいられているような気はする。“気がする”だけだけど。でもコロナ禍から弾き語りとかも始めたしさ。弾き語りをやると、お客さんの気持ちがちょっとわかってきた気がするし。地元のライブハウスが潰れちゃったり、友達のバンドからメンバーが抜けちゃったりさ。G-FREAK FACTORYだっていつどうなるかわからない。そういう中でアルバムで今を刻めるというのはすごくうれしいことだなと思う。
YouTubeで歌詞の書き方を調べた
──ここからは収録曲について聞かせてください。まずは3曲目「voice」。この曲はアルバムの楽曲の中で最初に着手した楽曲だということですが、どのようなところからできた曲なのでしょうか?
ツアーで北海道に行ったときにカメラマンと車に乗っていて、その車内ではアコースティックオルタネイティブなサウンドが流れていて。北海道の大地を見ながらそれを聞いていたら「お、良さそう」と思って。あんまりじっくりその曲を聴くと、その曲に寄ってっちゃうと思ったからあんまり聞かないようにして、その感覚だけ持ってその日の夜にホテルで書きました。
──この曲ができたことでアルバムの全景が見えた?
いや。できたときはこれが表題曲になるとは思っていなくて。新曲として7〜8曲あるうちの1曲、後ろのほうにこういう曲があってもいいよねくらいの感じで作ったんだけど、あまりにもテイクとミックスが良くなっちゃって。出来上がっていく過程で「これいい曲だね?」ってどんどんなっていった。
──アコースティックサウンドの優しい曲が最初にできたことで、いつもとは違う手触りのアルバムにしようという方向性のようなものが決まったのかとてっきり。
あー、それも確かにちょっとあるかな。コロナでお休みを強いられてただじゃ起き上がらないよと思っていた。その間に何があったの?っていうのを1つでもこのアルバムに入れないといけないとは思っていたから、そういう意味ではアコースティックサウンドが入るということはすごくいいことだなと思った。
──ただ、それがリード曲になるとは思っていなかったと。
そうそう。それはまた別の話。すっげえ自然とできたね。
──メンバーの皆さんの反応はいかがでしたか?
「なんて難しい曲を作ったんだ」って感じでしたよ(笑)。
──手触りの違うものを表現しないといけないわけですもんね。
うん。でもいつも思うことだけど、やっぱりうちのバンドメンバーは本当にすげえなって思った。そう思えるのは幸せなことだよね。拙いデモから二度三度化けてさ。……で、そこに極上の詞が乗ればいいんだけど、詞は全部捨てちまったから……。
──この曲も歌詞は後から?
そう。もう今回は本当に全部最後。あまりに歌詞書けなくて、YouTubeで歌詞の書き方調べたもん。
──20年以上バンドをやっている方が!(笑)
「どうやって書いてたんだっけな」って。
──YouTubeで調べた結果は参考になりましたか?
割り切れたね。動画の中で「世の中の楽曲の9割は曲先だ」って、その人は豪語していて。「へえ、じゃあこの作り方でいいんだ」って思った。
──では、そこから「voice」の歌詞はどのようにヒントを得て書き進めていったのでしょうか?
まず、決して明るくはないなと。それが最初に決まって。俺が住んでいる部屋はログハウスみたいな部屋なんだけど、陽が当たらないの。天窓からしか陽が入らなくて。ずっとその部屋にいるとどんどん閉鎖的な気持ちになるのね。「これはまずいな」と思ったんだけど、この曲は決して明るくはないなと思っていたから、この部屋の感覚を連れていきたい、この部屋のことを書こうと思って書き始めて。
──でも部屋のことに完結しなかったと。
うん。さすがにそれだけじゃ曲にならないなと思って今度はホテルで缶詰になっていたんだけど、それでも全然書けなくて。そんなときに、ROTTENGRAFFTYのN∀OKIが群馬にいきなり現れたの。俺は「今、歌詞書かなきゃいけないから」って言ったんだけど、「大丈夫だよ、6時間かかるところ、俺に会ったら20分で終わる。だから今から来い」って言われて(笑)。結局、飯食って終わったんだけど、そこで「困ったら英語にすればええやん」とか、そういう楽観的な意見ももらったりして。北海道でインスピレーションを受けたにも関わらず、すごく狭いところを書こうとしていたことに気づいて「これじゃダメだ」と思って気持ちを広げて完成させました。
めちゃくちゃな曲を作ろうと思ってできた「WHO UNCONTROL」
──5曲目「WHO UNCONTROL」はパンキッシュなパートからジャズやダブなど様々なジャンルが1曲に。このアイデアはどこからきたものなのでしょう?
めちゃくちゃな曲を作ろうと思って。というのも、Leoというご機嫌なドラマーが入ったのに、ずっとそのレオイズムみたいなものを割と殺しちゃっていたなということに気づいて。だから、Leoに「BPM、いくつまでいける?」って聞いて。「ツービートだったら200くらいですね」って言われたから、「じゃあ204で」って。
──限界をちょっと超えて(笑)。
そうそう。そこから始まったのがこの曲。もともとNOFXの、突拍子もなく場面が変わっていく感じとかが好きなんだけど、そういえばそういう遊びのある曲って、G-FREAK FACTORYにはなかったから。ジャズパートに関しても、原田と、うちのキーボード(多畠幸良)がジャズっぽいことをやったら相性いいだろうなというのは、どこかで考えていたことだったからぶっこんでみた。
──Leoさんの限界を越えるBPMといい、突然のジャズパートといい、全員に無茶振りしたんですね。
そうだね(笑)。
──実験的に作ってみたということでしたが、出来上がってみていかがですか?
このアルバムの制作はコロナ禍から始まってるんだけど、コロナ禍でまともなツアーができなかったから、あんまり遊びのある曲が作れなかったんだよね。それまでは、エースで4番みたいな、「EVEN」「ダディ・ダーリン」「Fire」みたいなアルバムを引っ張っていく曲があって、それを中心にほかの曲をどうしていくかという感じだったんだけど、「Dandy Lion」はコロナ禍でまともにツアーもできなかったから、あんまり体に入れられなかったし、ブラッシュアップもできなくて。だから今回のアルバム制作はエースで4番がいない状態から始まって。二割八分三厘のバッターを9人そろえなきゃいけないみたいな感じだったのね。
──それはなかなかきついですね。
でしょ。3割超えで打てるやつがいて、絶対的なエースがいて、残りでどれだけ遊ぶか、みたいな感じで作りたかったんだけど、今回はそれができなかったから、「WHO UNCONTROL」では唯一遊べたかなと。ジャズわかんねえのに「ジャズ入れるのどう?」みたいな。DTMじゃ作れないからスタジオであわせて「こうかな?」「ここだな」って言い合いながら作っていったんだよね。そういう遊びができてよかった。
──ライブでやったらまた違う面白さがありそうですしね。
……ライブでできんのかな?(笑) ライブでどう育っていくのかも想像つかないけど面白そうだな。
──7曲目「ある日の夕べ」歌謡曲のような親しみさのある楽曲ですね。
うん。この曲は“どこまで寄り添えるのか”みたいなところのチャレンジだった。
──そのテーマはどこから?
「EVEN」で“もしも〜だったら”というのを歌ってきたんだけど、「〜だったら、じゃなくて、“こうなったらこうしようぜ”がこの歳で書けたらいいな」と思っていて。
──「EVEN」のアンサーソング的な立ち位置なんですね。
メンバーと「『EVEN』の続きを書こうよ。そうならなくてもいいからさ」って言って作り始めた。モチーフがあれば向かえるし。でも実はこの曲が一番苦労して。リリックもだし、原田も一番苦労したって言ってた。
──頂いた資料によると、原田さんは「ノリが難しかった」そうですね。
ノリもそうだし、今までやってきて手に入れたと思っている手法だからこそ、なおのこと今まで通りじゃダメだっていう難しさがあって。“ザG-FREAK FACTORY”じゃダメだろうと。
──今までのG-FREAK FACTORYとの戦いのような。
そうだね。
──歌詞は、G-FREAK FACTORYらしい優しい歌詞ですが、優しさの角度がいつもとは違うように感じました。歌詞も苦労したとのことですが、書き上げてみていかがですか?
このチャンネルが一番気楽にさらけ出せるはずなんだけど、一番難しくて。この曲は、異性でも同性でもいいけど誰か一人、特定のパーソナルに向けて書きたいなと思ったの。今までは“みんな”に向けて書いていて、誰か一人に向けて書くということをしたことがなかったから。ただ、その特定のパーソナルが思い浮かばなくて。
──誰か曲を贈りたい対象がいて、誰かに向けた歌詞を書こうと思ったわけではなかったんですね。
そうそう。いたらもっと早く歌詞書けてるよ(笑)。世界の平和よりも、今あるものをどれだけ深く濃く見れるか、みたいなマインドにコロナのときになったの。今はまた違うんだけど。だけど、そのときのマインドを残しておきたくて、特定のパーソナルに向けた歌詞を書いてみた。今回のこのマインドを持って、今のマインドをかぶせていったらすげえいいものができる気がしているよ。
G-FREAK FACTORYのメンバーは楽器で表現することに長けてる
──そしてラストナンバーは「巡-meguru-」。インストゥルメンタルですが、これはどういった思いから生まれたものなのでしょうか?
この曲は春夏秋冬というテーマで投げたんだけど……そもそもライブの冒頭にやるジャムを作らないかというとこから始まったの。春は春を、夏は夏を、という感じでシーズンごとに変えようという話をしていたら、じゃあ4曲の組曲にしたいって話になって。そしたら春夏秋冬をぶっちぎったものができた(笑)。でも普段、俺が曲のベースを持っていってそれにアレンジをしていくという形のメンバーが、自我を出してきた瞬間だからいいよなって思って。
──G-FREAK FACTORYのライブは必ずセッションから始まりますもんね。
そうそう。うちのメンバーって暗いんですよ。陰キャなの。だから、楽器で表現するということに長けているんだと思う。たとえばROTTENGRAFFTYとか10-FEETとか西のバンドってすげえ圧倒されるじゃん。でもうちのメンバーは言葉巧みに何かをやるタイプじゃない。だからこそ、うちに秘めたものが出てくる瞬間って、すっげぇいいものが出てくるんだよね。そうやって曲を作っていくのが今はすごく楽しい。
──このアルバムに「HAZE」というタイトルを付けた理由を教えてください。
もやの中にいるんだけど、ただ山頂は見えているという意味で。決して明るくはないし、ピカっとひらけているわけでもない。ただ山頂は見えている。そういう意味を持たせたくてつけました。
──そのもがいている最中を切り取った作品だと。
そうね。この先もきっともがくんだろうし。いつか霧が全部晴れたら、今度は裸の山をジャケットにしたアルバムも作れたらいいよね。「抜けたんすね!」っていう。
──それも楽しみですね。でも、もがいている最中を作品にするというのも、音楽の意味、アルバムの意味ですよね。
本当だよね。「あのとき、こうやって笑っていたんだ」って思い出せる写真のアルバムも同じ意味だと思うし。
──10月からは『HAZE』を携えたツアーが始まります。どんなツアーにしたいですか?
収録曲の「HARVEST」は、ライブPAが担当してくれて。じわじわくる重さを作ってくれたのね。そういった意味でもすごくやりがいのある曲が手に入ったなという感覚があって。だからこの曲がライブでもちゃんと完成するとまた『HAZE』というアルバムの聞こえ方は変わってくるんじゃないかなと思う。他の曲も含めて今回のアルバムはどんなふうに化けるのか、楽しみだな。
G-FREAK FACTORY 「HAZE」
01. YAMA
02. HARVEST
03. voice
04. アメイロ
05. WHO UNCONTROL
06. RED EYE BLUES
07. ある日の夕べ
08. STAY ON YOU
09. ALL FOR SMILE
10. Dandy Lion
11. Parallel Number
12. 巡-meguru-
G-FREAK FACTORY "HAZE" TOUR 2024-2025
2024年10月19日(土)千葉・千葉LOOK
2024年10月20日(日)栃木・HEAVEN'S ROCK宇都宮VJ-2
2024年11月2日(土)鹿児島・鹿児島CAPARVO HALL
2024年11月3日(日)福岡・小倉FUSE
2024年11月16日(土)兵庫・神戸太陽と虎
2024年11月17日(日)滋賀・滋賀B-FLAT
2024年11月30日(土)青森・弘前KEEP THE BEAT
2024年12月1日(日)秋田・秋田CLUB SWINDLE
2024年12月7日(土)三重・松坂M'AXA
2024年12月8日(日)岐阜・柳ヶ瀬ants
2025年1月18日(土)福岡・福岡BEAT STATION
2025年1月19日(日)広島・広島LIVE VANQUISH
2025年1月25日(土)宮城・仙台Rensa
2025年1月26日(日)山形・山形ミュージック昭和セッション
2025年2月1日(土)京都・KYOTO MUSE
2025年2月2日(日)石川・金沢AZ
2025年2月8日(土)静岡・静岡UMBER
2025年2月9日(日)愛知・名古屋DIAMOND HALL
2025年2月15日(土)岩手・盛岡CLUB CHANGE WAVE
2025年2月16日(日)宮城・石巻BLUE RESISTANCE
2025年2月23日(日)群馬・高崎芸術劇場 スタジオシアター
2025年2月24日(月・祝)群馬・高崎芸術劇場 スタジオシアター
2025年3月2日(日)福島・郡山Hip-Shot Japan
2025年3月8日(土)茨城・水戸LIGHT HOUSE
2025年3月9日(日)神奈川・F.A.D YOKOHAMA
2025年3月20日(木・祝)北海道・函館club COCOA
2025年3月22日(土)北海道・札幌PENNY LANE24
2025年3月23日(日)北海道・苫小牧ELLCUBE
2025年3月30日(日)新潟・新潟LOTS
2025年4月5日(土)大阪・GORILLA HALL OSAKA
2025年4月6日(日)香川・高松MONSTER
2025年4月12日(土)長野・長野CLUB JUNK BOX
2025年4月13日(日)山梨・甲府KAZOO HALL
2025年4月19日(土)山口・周南RISING HALL
2025年4月20日(日)岡山・岡山CRAZY MAMA KINGDOM
2025年5月17日(土)東京・Zepp DiverCity(TOKYO) ※ワンマンライブ