INTERVIEW

SATANIC CARNIVAL 2025開催直前 茂木洋晃(G-FREAK FACTORY)× クニタケ ヒロキ(THE FOREVER YOUNG)crosstalk

いよいよ今週末に迫った「SATANIC CARNIVAL 2025」。開催に際して、茂木洋晃(G-FREAK FACTORYの)とクニタケヒロキ(THE FOREVER YOUNG)の対談をお届けする。群馬に住み、群馬で主催イベント「山人音楽祭」を開催するG-FREAK FACTORYと、福岡県の久留米市での日々を歌うTHE FOREVER YOUNG。地元に根を張ったバンドのリアルとは。


Text by Chie Kobayashi
Photo by Yuta Kato
 

地元で活動していることが間違っていないと証明したい

──今回はローカルを背負っているバンドの対談として、お二人に来ていただきました。お二人が地元を背負っているという自覚を持ち始めたのっていつ頃ですか?

茂木 いつなんだろうな。そもそも「背負ってる」って言うのはちょっとおこがましくて。自分で勝手に背負っていくもんだと思ってるんで。

クニタケ わかります。

茂木 俺はアメリカから帰ってきてバンドを始めたんだけど、「今から東京出てバンドをやってもしょうがねえな」って思って。群馬でやっていくことのほうが近道だと思ったんだよね。

──単純に近道だったから?

茂木 うん。あとは、群馬でできないやつが東京に出てもできるわけがないと思ってたし。アメリカ人って自分のルーツ、生まれた土地をみんな誇りに思っていて、すごく大事にしているんだよね。ロサンゼルスの人はみんなドジャースのキャップをかぶっていたりして。

クニタケ あー、日本だとタイガースとかホークスとかですかね。

茂木 そうそう。そのローカリズムを誇りに思うアメリカにいたときに、逆に日本人であるというアイデンティティを否定される場面もあって。だからこそ、俺は何かをやるとしたら群馬でやろうと決めていた。近道だと思った割には遠回りになったりもしたんだけど、結局ここまで長くやっていることを考えると正解だったかなって思う。

──今でこそ、みんなバンドの出身地やルーツを名乗るようになりましたけど、昔からそうだったわけじゃないように感じていて。

クニタケ そう思います。俺が最初にG-FREAK FACTORYを見たのは、20年前くらいだったんですけど。

茂木 お客さんとして?

クニタケ はい。そのときも「群馬、G-FREAK FACTORY」って言いよったのを覚えています。そのときはあんまりローカルを背負うみたいな文化がなかったぶん、G-FREAK FACTORYの印象はやっぱり強かったですね。

茂木 夢みたいなものもあったのかも。例えばアメリカって局地的に、現象のように音楽が発生していったわけじゃん? グランジがわかりやすい例で。ニルヴァーナを筆頭に、ソニック・ユースも出てきて、シアトルからアメリカを染めていった感じがあった。ヒップホップも、GO WESTで。2Pacとか、みんな東から西に金儲けに来てるみたいな。そういう、土地と音楽がリンクしているのがアメリカ。これを日本でできんじゃねえのかなと思ったの。結局できなかったけど。

 

 

──THE FOREVER YOUNGも当初から「from久留米」と謳っていますが、そこにはどのような想いがあるのでしょうか。

クニタケ 俺らも背負っているつもりは特になくて。でも俺らが久留米で活動することによって、地元でお世話になった先輩とかが間違っていなかったという証明がしたいっていう気持ちはあります。地元でライブハウスを借りて活動してた俺らに対して、「もっとオープンマインドでいないと!」みたいに言って東京に出て行ったやつがみんな東京に行った途端に解散するみたいなことが多くて。だから、背負っているというよりかは、「地元で根を張って活動していることは間違っていないって証明したい」という気持ちなのかなと思います。

茂木 地元にいるって、リアルなんだよな。東京に出てくると、リアルよりも夢のほうが大きくなる。だけど、結局現実に追われて、東京に行ったけどバイトして終わったみたいなことっていっぱい聞くんだ。

クニタケ 「他にやりたいことが見つかった」とか。

茂木 そうそう。でもバンドをやめることがいいことだとしたら、それは良かったんじゃないかとも思うけど。

 

地元で鳴らしているやつがいるだけでうれしい

茂木 現象って、得てしてローカルから起こると思うの。例えば奈良にLOSTAGEがいて、そこにAge Factoryみたいなバケモンが出てくるみたいなさ。LOSTAGEがいなかったら、たぶんAge Factoryはああいうバンドにはなっていなかったと思うんだよね。全然違うことをやっていたとしても、DNAレベルで染み込んでいるはず。そう考えたらローカルってめちゃめちゃ面白いなっていうのは感じる。だけど群馬ってライブハウス事情があんまりよくなくて。多くのバンドが上京して解散したり、東京に行って負けて帰ってくるっていうのがずっと続いていたんだけど。そのなかでFOMAREっていうバンドは一番いいときに群馬に帰ってきたんだよね。どんな事情があったかは知らないけど。でもそういう一つのストーリーがあれば、そこから現象が起こるから。

──久留米のシーンはどんな感じですか?

クニタケ 久留米はやっとつながり始めた感じですかね。久留米って、ライブハウスが1つしかないんです。久留米ウエポンっていう。そこは月に2〜3本しかライブが入らないのに、俺たちがライブするところがなくならないように守ってくれる店長がいるんですけど。それこそ、俺らの上は10歳上くらいのバンドくらいしかいなくて。もう周りがみんなが解散しちゃって。久留米でちゃんと活動しているバンドの一番年上が俺らになったと気づいてからは、ブッキングでも何でも、久留米でライブをするやつをとりあえず片っ端から見ようと思って。久留米でバンドをやってくれるだけでうれしいし。コピバンでもいいから、長く続けてくれたらうれしいなと思って。

茂木 そうね。俺らもスタジオで隣になったバンドに声かけたりする。

クニタケ めっちゃいいですよね。

茂木 うん。地元で鳴らしているやつがいるだけでうれしいから。そのうえ、俺らのことを知ってくれていたらなおさらうれしいし。

クニタケ そうそう。そうやっていろんなバンドを見ていたときに出会ったのがジ・エンプティっていうバンドで。めちゃくちゃ下手くそだったんですけど、1曲だけ、俺、ベロベロになりながら号泣してしまった曲があって。「やばい、CD欲しい」って話しかけにいってからずっと仲良いです。そうやって、今はちょっと久留米のシーンの土台ができてきた感じなのかな。俺らのコピーバンドだけじゃなくて、ジ・エンプティのコピーバンドも出てきて。これを崩さないようにしないといけないなって思っているところですね。ここから面白いことできたらいいなって。

 


ローカルに根付いているからこそ生まれるもの

──楽曲において、その土地だから生まれているものはあると思いますか? 例えば群馬のバンドには「風」というタイトルの曲が多いなと思って、以前聞いてみたことがあるんですが、群馬には「赤城おろし」と呼ばれる強い風が吹くからだと言われたことがあって、なるほどと思ったんです。

茂木 あー、群馬は海がないし、山を目印に生きているくらい。群馬に住んでいたら、風とか自然って避けて通れないものだから、自然と出てくるんじゃないかな。やっぱり俺らが海を歌ったらおかしいもんね。

──レゲエも取り入れているG-FREAK FACTORYとしては、海を歌いたくなることもあるんじゃないですか?

茂木 もう諦めた。「夏だ、海だ、レゲエだ」みたいな謳い文句があるくらいだからさ、海を知らなきゃって思って挑戦してみたこともあるんだけど……やっぱり海を知っているやつらの曲からは海を感じるけど、俺らはうまくできなくて。そこに挑戦してブレていくより、今あるものを歌ったほうがいいなって思って。

クニタケ 久留米は、いい感じに田舎で、おいしいご飯屋さんがあるとかはあるけど……俺が地元にいることで曲に反映されているなと思うのは別の点ですね。地元にいるから、この歳になっても、小学校からの友達が近くにおったりして。あとはお盆とか正月に友達が帰ってきたりする。で、そんな友達と朝まで飲んどったら、仕事の愚痴を聞きながら2人で泣いたりして。俺は「そいつが喜んでくれたらいい」みたいな気持ちで曲を書くんですよ。そういう中高生が書くような友達の曲を書きやすい環境にいるっていうのが、今も久留米に住んどって良かったなって思うことですね。しかも俺はすぐ「これ、お前の曲やけんね」って聞かせるんですよ。で、朝方のコンビニの前で泣いて。そういうのが俺のモチベーションにもなるし、強みかなって思います。

──逆に、バンドをしていくなかで、地元に住んでいるからこそやローカルに根付いているからこそ不便なことや難しいなと思うことはありますか?

クニタケ 距離ですね。

茂木 お前らはそうだよな。あとはSHANKとかもそうだけど。

クニタケ 現実的な問題として距離はどうしても。だけど、その移動中に考えることもあるし、いいときもありますけどね。

──東京から近い茂木さんはいかがですか?

茂木 コロナ禍のときだね。コロナ禍で山人音楽祭やライブをやったんだけど、万が一そこでクラスターが起こったら、この土地を追われる可能性があるなって思った。それは俺だけじゃなくて、メンバーの家族とかさ。子供がいるやつは、そいつが学校でいじめられるかもしれないとか、そこまで考えちゃって。それは田舎だからこそなんだけど、ローカルを大事にしたつもりが、ローカルに対して迷惑をかけることになるかもしれないっていう感覚になったね。東京だったらやり逃げできちゃうもんね。

クニタケ 似たようなことは久留米でも感じましたね。

茂木 そうだろ? ローカルって、全部が現実なんだよね。めちゃくちゃ盛り上がったライブをした翌日には、近所のおばちゃんとの会話をしてさ。東京にいたら、モチベーションは保てるけど、夢で終わる可能性もある。だけど俺らは次の日には現実が始まっているから。それを逆手にとって、生活からしか出ないものを音楽に変えようって考えるようにはしているけど。

クニタケ それは俺もコロナ禍で思いました。ライブができないぶん、自分の趣味に没頭する時間は持てたけど、あまりにも生活の中にいすぎて「このままでもいいんじゃないか」「もう就職してもいいのかな」とか思っちゃうんですよ。「いや、やっぱ音楽せんとな」って思えたからよかったですけど、そういう感覚が生活の中には潜んでいるなと思いました。なんか「よしよし」ってしてくれるけど、そのまま足を引っ張ってくるみたいな。


自分の生まれたところを否定したくない

──そんな中で、G-FREAK FACTORYは「山人音楽祭」を開催するなど、2組ともさらにローカルに根付く活動をしていますが、それはどうしてなのでしょうか?

茂木 何でなんだろうな? でも、自分の生まれたところを否定したくないっていう気持ちが大きいのかな。群馬ってバカにされることが多くてコンプレックスになっている人も多いんだけど、そんな群馬の人たちが群馬に誇りをちゃんと持てるようになってほしい。例えば、親戚が集まるときのおもてなし料理が寿司だったりするのね。“海なし県”なのに。だけど本当は自分たちでは当たり前で気づかない山のもののおいしさに気づくといいなって思うわけ。実際、フェスをやるようになってから、群馬の山菜を改めて食べてみたりしているんだけど。

クニタケ 今の茂木さんの「地元を否定したくない」っていう言葉にグッときましたし、そうだよなって思いました。ライブで地方に行くと「うちの県はめっちゃ田舎で」って説明されることがあるんですけど、俺、その県のラーメンとか居酒屋とか行くんですよ。だから、「うまいラーメン屋とかしっぽり飲めるめっちゃいい居酒屋あるやん」って、地元を否定する人に対して思うんですよ。それは久留米もそうで。もし「久留米は田舎やけん」って言う人がいたら「いい居酒屋も、いい洋服屋もあるじゃないですか」って言いたい。そうやって自分の好きなもの、友達の好きなものをいろんな人にわかってもらいたいっていう、単純にその気持ちなんだと思うんですよね。みんなが「俺の地元が一番いい」って思えるようになったらいいなって。

茂木 いいよね。話が少しそれるけど、税金も自分の街に落ちていったほうがいいと思うし、全部ドメスティックでやれたほうがいいと思うんだよね。そういう意味で言うと、地元で張っているバンドに対バンで勝てるわけないなっていつも思う。

クニタケ それ、めっちゃ思います。

茂木 それこそさっき言った生活の話じゃないけど、その街の現実の中でやっているやつらに、ちょこっと来た俺らが勝てるわけない。逆に言うと、俺は群馬で負ける気がしないし、負けたと思ってもいけないと思っている。

クニタケ そうですよね。

茂木 例えばTHE FOREVER YOUNGと四国でツーマンをやってソールドアウトしましたっていうライブもいいけど、せっかく四国に行くんだったら地元のバンドに挑んでいきたい。そのほうが面白いと思うんだよね。

クニタケ めっちゃわかります。さらに言うなら、俺は地元のバンドと2回対バンしたい。1回一緒にライブをやって、そのあと乾杯して、どういうやつらなのかを知って、そいつらの地元の友達とかにも会って。2回目はそいつらの前でどういうライブをするのかを見たい。俺そういうの見て泣いちゃうんですよね。盛岡のFUNNY THINKと、大船渡で対バンしたとき、大船渡はメンバーの地元だから親御さんが見に来ていて。それを見て俺が泣いちゃいましたから(笑)。

茂木 街を知るには人を知ることからだもんな。

クニタケ そうですね。

 
 

──今後、ご自身の地元でやっていきたいことはありますか?

茂木 俺はシーンを作るとかそういうことには興味がなくて。というのも、シーンって、作るものじゃなくて勝手にできていくものだと思うから。だからそのために何か政治的なことをするみたいなことはまったく考えていないんだけど、G-FREAK FACTORYとしてチャレンジしたいなと思っていることがあって。その内容は言えないんだけど、それが実現できたら、群馬だけじゃなくて、地方でくすぶっているやつらに「ここまで来れるんだよ」っていうのを見せられるかなって。

──背中で見せていくと。

茂木 うん。

クニタケ 俺は、背中で見せつつ、地元のバンドと近い距離でいたいなと思っています。飲みに行くタイミングがあれば飲みに行くし、相談も乗るし。背中で見せるというよりも「一緒に行こうぜ」って言えるバンドとして久留米に居続けたいなと思っています。地元のホールでライブをするのも、その一つではあります。

──そんな地元を代表する2組ですが、今年の「SATANIC CARNIVAL」に出演するということで、最後にSATANIC CARNIVALへの意気込みを聞かせてください。

クニタケ ぐちゃぐちゃになれる環境だと思うので、一人でも多くのやつをかっさらいたいなと思います。

茂木 毎年いろんなバンドが出てくる中で、今年もまだ選んでいただけているっていうのはすごく名誉なことだし、簡単なことではないっていうのもわかっているつもり。音楽好きなやつしかいないフェスだから、火の玉になりてぇなって思うけど……普段のライブと変わらないかな。狙ってよそゆきのライブをするつもりもないし。プロモーションにならなくて申し訳ないんだけど、いつも通りのライブをします。

 



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