LIVE REPORT

FACT IS LIFE TOUR 2025 at 豊洲PIT 2025.9.15 Live Report!!

Photo by nekoze
Text by Ryo Tajima

 

FACT IS LIFE TOUR 2025 at 豊洲PIT 2025.9.15

最期にやってやってんだから感謝しろよ!


これから“解散”を控えているバンドが行う最期の全国ツアーともなればだ。どうしたって湿っぽくなるというか、どこか心残りになるような空気感がフロアに広がるだろう、なんて想像しちゃうじゃないですか。2025年9月15日豊洲PITは、FACTの東京ラスト場所。前日、9月14日からの2デイズで行われた。そんなわけで、新豊洲駅に向かう道中ですでに名残惜しさマックス。エモみを覚えながら、多分ライブで演奏されないであろう初期の名盤『The fine day never last』を聴きながら地下鉄に乗って震えていた。『このアルバムを買ったのは、たしか下北沢ERAの物販だったなぁ』などと過去に思いを馳せながら。(この手前勝手な伏線はライブ序盤で早々に回収されることになる)

さて、そんな名残惜しさや物悲しさなんてものは1ミリのカケラもなく、むしろ爽快で楽し過ぎたFACTのライブ。6月にスタートした『FACT IS LIFE TOUR 2025』から3ヶ月空いているにも関わらず。ーーというか、そもそも10年のブランクなど微塵も感じさせない熟練ツアーバンドによる怒涛のパンクロックショウ70分フルコースに食らいまくった。

フロアから「解散しないで~」と大ヤジが飛んでくると「うるせぇ! 俺にはやるべきバンドがあるんだよ!」といった熱いKazuki節が飛び交ったり、“解散”をキーワードに、残すところあとわずかしかないFACTのライブを全力で楽しもう! といった空気が豊洲PITいっぱいに満ちていた。

にしても……行った人は全員思っているはずだけど、セットリスト、ヤバすぎじゃなかった?? FACTの歴史を辿るような流れになるのかなと思っていたし実際にそうだったけど、アルバム『FACT』以前の初期曲をあんなにやってくれるとは思いもよらなかった。

ライブは、Hiroの「いっちゃおうぜ!」からアンセム「slip of the Lip」でスタート。フロアの四方八方からステージ目掛けてクラウドサーフが発生するのは当然。そこから「los angels 」、「purple eyes」、「the shadow of envy」の3連チャンで、まずは古参がひと興奮なりける。刻みまくったギターリフが高速で展開しながら、ボーカルのメロディアスなリフレインが乗る、この感じ。まさにFACT節! FACTの真骨頂!

最初のMCで、Hiroは対バン相手のHEY-SMITHへ感謝の言葉を述べ、「すげー昔の曲をやっていい?」という言葉から、「start from here」。前述の1stミニアルバム1曲目だ。この1曲が実に革新的で当時のキッズはみな揃ってFACTに頭を垂れたのである。その後は信じられないことに「Deviation」、「Manic」と続いた。この2曲は、ですな。2005年にNature LivingというエモロックバンドとFACTはスプリットEPをリリースしていて、そこに収録されている楽曲だ。ブラストビートを基調としたハードでヘヴィ極まりない2曲で『エモバンドとのスプリットなのになぜ!?』と、ちょい引くほど攻撃的。多分、FACTの全楽曲の中でも異色のアプローチを体感できる2曲だと思う。次曲は「error」でフロアが大揺れする。

この後のMCではフロアと和気藹々としたライブハウスの会話が続き、「昔の曲やったんだけど、どんだけ知ってんの?(Hiro)」。「(FACTが)ようやくやべー曲持ってるって気づいたでしょ。まだまだいっぱいあるけど、もう解散すっから!(Kazuki)」。といった掛け合いに大ヤジと笑い声。不思議な祝福ムードというか、こんなフロアの空気を作り上げられるのはFACTだけだろう。Hiroの口から、「start from here」のメインVo は、当初Tomohiroが担当していたことなどのもエピソードも話された。

この後のブロックはAdam加入後のターン。2015年リリースのアルバム『KTHEAT』、2014年『WITNESS』からの選曲でミドルテンポな踊れるターンに突入。

その後の後半戦へ向かう前のMCも印象的だった。フロアからの、ドラムスティックをくれ! というヤジを巡ってひとしきり話し、「こんな適当にMCするバンドを好きでいてくれてありがとうございます(笑)。(FACTを)始めた頃から誰もしゃべることができなくてMCというものに難しさを感じていたんですけど、こんな感じでよかったんだね(Hiro)」とひと言。そこに拍手。メンバーは各々「そうそう。2010年頃、MCについて悩んでたなー……」と口にする。

MCのバトンを渡されたAdamは「今日、初めてFACTを見る人いる?(Adam)」とフロアに問いかけ、「力を貸してくれますか!?」と、アンセム「FOSS」に。お馴染み、ダッチワイフ人形がフロアに投げ込まれ、あの光景に。HEY-SMITHのメンバーが持ち込みながらダイブするなんてシーンもあって、完全にパーティムードだ。
さぁ、ここからはライブ終盤。2012年リリースのアルバム『burundanga』の選曲を経て、再び『WITNESS』に戻り、ツアー各地でも終盤に歌われている「sunset」へ続く。曲中にHiroは18、19歳の頃に始めたFACTというバンドが、こんな風にはなるとは想像もつかなかった、とFACTの過去を振り返り、オーディエンスに向け、「ずっとFACTってバンドがあったってことを伝えてくれ!」と笑顔で呼びかけた。最後は約束の「a fact of life」で終演。

Kazukiは終盤のMCで「最期に(FACTを)やってやってんだ! 感謝しろよ!」と言っていたが、まさにそう。『REDLINE ALL THE FINAL』での1回で終了することなく、こうしてツアーをやってくれて正式なお別れができること、心からありがてぇと思います。

FACTの歴史を辿るライブから感じたことは、楽曲のフレッシュさと絶対的なオリジナリティだ。ポストハードコア、スクリーモ、オルタナパンク、プログレハードコア。2000年代初頭、メロディックパンクの新たな可能性を求めたバンドたちは様々なサウンドを生み出した。その後のラウドシーンに続くミクスチャーサウンドが各国で生まれ、次の時代の旗手は誰になるのかとシーンが活気を帯びていた。
当時、シーンの中心はアメリカで、極東に住む日本のバンドはニッチな存在だった。そんな中で、独自のやり方を貫き『Warped Tour』に乗り込んで、パンク・ラウドのシーンのど真ん中を悠々と練り歩くFACTの姿は、同じ日本人として、大変誇らしかった。部屋で1人、ハードコアやらThriceやRufio、ThursdayやFinchを聴いているキッズからしたら胸がすくような気持ちになった。

そのようにして歩んだFACTの軌跡は明らかに他と違うカルチャーを作り上げた。FACTというカルチャーはどんな姿であったのか。その最終地点が、2025年10月5日、幕張メッセ9-11番ホールで開催される『ROCK-O-RAMA-THE END』で示される。
10年目の答え合わせである。


SET LIST
slip of the Lip
los angels
purple eyes
the shadow of envy
start from here
Deviation
Manic
error
the way down
worm
drag
ape
FOSS
tonight
eighty six
disclosure
miles away
sunset
a fact of life

ROCK-O-RAMA-THE END
幕張メッセ 国際展示場 9-11ホール
2025年10月5日(日)
open 10:30 / start 12:00 ※終演予定21時頃
リストバンド交換時間:8:00~
先行物販:8:30~

https://rock-o-rama-theend.com/