INTERVIEW

SATANIC PARTY 2025開催直前対談:山本響(Maki)×辻出凌吾(RAINCOVER)

10月26日に渋谷Spotify O-EASTにて開催される「SATANIC PARTY 2025」。さまざまな出演者の中で、日本語詞で心を震わせるのがMakiとRAINCOVERだ。TRUST RECORDS所属、日本語詞と、共通点の多い2組に、互いの魅力や自身の楽曲について語り合ってもらった。

Text by Chie Kobayashi
Photo by イノコシゼンタ、翼、Toshinari tani

 

練習するより機材車でしゃべってるほうがいいライブができる!?

──MakiとRAINCOVERは同じTRUST RECORDS所属ですが、お二人は普段からよく話す関係性ですか?

辻出凌吾(RAINCOVER) いや。Makiのツアーの高松公演に出させてもらったときに、打ち上げでがっつり話しましたけど、それくらいですかね。

山本響(Maki) そうだね。

──では、今日はせっかくの機会なのでいろいろと話していただければと思います。まずお互いのバンドの印象を教えてください。

辻出 対バンしたとき、お客さんが「Makiのボーカルになっても全曲歌えるんちゃうかな」って思うくらいみんなが歌っていたのが衝撃的でした。それも日本語詞の良さでありますよね。あとは、うちのドラムがMakiのファンやったんで、めちゃくちゃはしゃいでいて良かったです。

山本 うれしかったですね。RAINCOVERは、知り合いのバンドがよく対バンをしていたこともあって、対バンするまでは、京都を守っているバンドという印象で。僕らのツアーに出てもらって、自分たちの生まれた街やバンドが始まった街を大事にしているバンドだとより強く思いました。

──そう感じたのはどういったところからなのでしょうか?

山本 言葉の節々からもですし、ステージに立っているときの堂々さ加減というか。うちのバンドは結構ちゃらんぽらんな感じなので、それに比べて堂々しているというか、どっしり構えているというか。ドタバタしていなくて、しっかり自分たちの持ってるものが見えるライブだなと思いました。

辻出 偉そうにしてるだけです(笑)。それでいうと、バンドってメンバー同士でよく目を合わせるバンドもいれば、ほぼ合わせないバンドもいますけど、Makiは目は合わせずにお客さんを見ているんだけど、横に目がついてるんかなって思うくらいのぴったり感があって。バンドのアンサンブルもそうやし、「ここで3人でガーッといくぞ」みたいな瞬間がびたびたに揃っていて。それはキャリアの長さや場数もあるやろうけど、そもそもめちゃめちゃ3人とも仲良しなんやろうなって思いました。全然ちゃらんぽらんじゃないです!

──息がぴったり合っているというのは、どういうところから来ているんだと思いますか?

山本 うーん、場数もそうですけど、3人で一緒に飯を食いに行った回数とか一緒にパチンコを打ちに行った回数とか、そういうところからだと思います。そもそもバンドの始まりが、ドロップアウトした3人がたまたま集まった感じなので、人間性が合っているのかなと思いますね。

──RAINCOVERはそのあたり、何か意識していることはあるのでしょうか?

辻出 僕、練習するより機材車でしゃべってるほうがいいライブになると思うんですよ。「ムカつく先輩がおった」とか「ムカつくことがあった」ということがあったら、東京から京都までの5時間ずっと悪口言うてるみたいな。

山本 あはは(笑)。

辻出 そもそもRAINCOVERのルールとして、“生活を全員で共有する”というものがあって。「今、彼女と別れそうやねん」とか「今、家でこういう問題が起こってて」とか。それがわかると、ライブの日に元気がないなと思っても「それが原因か」と思えるし。そういう心の共有みたいなものがしれっとルールになってみんな話すようになっています。

──そのルールは、何かきっかけがあってできたものなんですか?

辻出 京都のGATTACAの店長さんに「どうやったら対バンに勝てるライブができるようになるんですかね」って相談したら、F.I.Bがそれをやっていたと教えてくれたんです。そのアドバイスを聞いてやっているうちに暗黙のルールになっていきました。実際、やり始めてからライブも良くなったと思います。


 
──「練習するよりも機材車で話すほうがライブが良くなる」という考え方、山本さんはわかりますか?

山本 それが全てかと言われたらわからないですが、それはあると思います。なんでも話せた方が繋がっている感じはしますし。もちろん疲れて寝ていることもありますけど、僕らも機材車の中で起きているときは「何食うか」とか「この前失恋してさ〜」とかそういう話もするし、そういう時間はすごく大事だなと思います。


気がついたら口ずさんでいたMaki、4ピースで成り立つRAINCOVER

──お互いの楽曲の魅力はどのように感じていますか?

辻出 Makiの曲は一度聴いたら口ずさめるなと思いますね。僕は、“耳に残る”と“なんか覚えてまう”って違うと思っていて。別に良い歌メロではないけど耳に残ってしまう歌ってあると思うんですよ。ピコ太郎の「PPAP」とか。

山本 あぁ、わかりやすい。

辻出 Makiの曲は、そういう“耳に残る”じゃなくて、“気がついたら口ずさんでいた”みたいな感じ。それがお客さんの歌いたくなる気持ちにつながっているんだろうなと思います。そういう、良い歌が多いイメージです。すみません、上からで。

山本 いやいや、うれしい。

──口ずさみたくなるメロディというのは意識しているところ?

山本 意識していないわけじゃないとは思います。キャッチーであった方がいい……とまでは思わないですけど、自分が好きな歌のメロディだったり、耳に残っているものってキャッチーなものが多かったので、そこが自分の作る曲にも表れているのかなと思います。

──ある程度、自然と出てきているものなんですね。

山本 だと思いますね。必然的にというか。

──RAINCOVERの楽曲の印象はどのようなものでしょうか?

山本 僕、4ピースバンドって「このリードギターいるかな?」って思う瞬間がたまにあるんですけど、RAINCOVERにはその瞬間がまったくなくて。4人がいて成り立つものだなと思うし、なおかつ歌が前に出てきてキャッチーなところもあれば、ギターが前に出てエッジの効いた瞬間もあってすごいカッコいいなと思って、参考にもさせてもらっています。

辻出 ありがとうございます。

山本 すみません、上からで(笑)。

──サウンドのバランス感は、RAINCOVERとしては意識していることなのでしょうか?

辻出 いや……全員楽譜も読めへんし、パソコンでの曲作りもできなくて。全員でスタジオに入らないと曲作れへんくて。歌をつけるときに僕が「そのギター、邪魔やし、やめて」って言うから、ギターのコウタが俺に気をつかってくれているだけです(笑)。メンバーが頑張ってくれています。


ポケットに入れやすい言葉を選ぶ

──2組とも歌詞が日本語という共通点があります。それこそSATANIC PARTYの出演アーティストに日本語詞を歌うバンドは少ないですが、日本語を歌う魅力や面白さはどのようなところに感じていますか?

山本 魅力か〜……母国語ということですかね。そもそも僕は英語が全然できないし。Makiとしては、自分たちが聴いてきた音楽は歌謡曲やJ-POPだったから、メロディも含めて聴き慣れているというのが大きいかもしれない。日本語だと聴いてすぐに何を歌っているかわかるし。

辻出 心斎橋でライブをしていると、結構、飛び込みで海外の旅行者がライブに遊びにきてくれるんですよ。そのときに英語日本語関係なく、いい音楽はいい音楽として楽しんでくれているので、音楽に言語は関係ないんやろうなって思うこともあるし。自分も海外のアーティストの曲を聴くときも、英語の意味がわからなくても、歌や曲の表情で「悲しいこと歌ってるんやろうな」ってわかったりするし。

──そんななかで、お二人は歌詞を書かれていますが、言葉選びなど歌詞を書く上で意識していることや、影響を受けているものはありますか? 安直ですが、本を読むとか、辞書をいつも見ているとか。

山本 本を読んだり、映画を見たりはしますけど、それよりも、歌詞として選ぶ言葉はできるだけ日常的に使われるものがいいなということは思っていますね。難しすぎると自分っぽくないと言うか。昔の自分らの曲を聴いていても、ちょっと着飾っちゃったなって思うことがあったりして。今はできるだけ、ポケットに入れやすい感じの言葉にするようにしています。

──昔は曲名を小説のタイトルから取っていたりしていましたよね。

山本 はい。それはそれでいいなと思っているし、当時の自分の等身大ではあるんですけど、今の自分ではないと思うというか。年齢を重ねるなかで考え方や生活は変わるので、それにあわせて今は今の言葉の選び方をしています。

──日常的に使う言葉を使おう、使いたいと思うようになったきっかけやタイミングは何かあるのでしょうか?

山本 些細なことなんですけど、飲み会とかで話すときに出てくるようなことが自分の等身大なんじゃないかなってふと気づいたことがあったんですよね。気づいたというか、立ち返ったというか。それをうまく歌詞に落とし込めたらいいなって思って。大喜利とか謎かけとかって、同じ言葉なのに違う意味になったりすることを利用するじゃないですか。そういうのを見ていて、難しい言葉じゃなくて、簡単な言葉でも面白い使い方ができそうだなと思ったこともあって。気づいたときは「俺、天才かも」って思いましたけど、今は、むしろそれに悩まされています(笑)。

──特に、「天才かも」って思った楽曲やお気に入りの歌詞が書けたと思う曲を挙げるなら?

山本 個人的に好いているのは「Lucky」です。「つまらない上司を殴っちゃおう 悲しんでる友達とキスしよう」というフランクな歌詞なんですけど、そのあとに「空はずっと雨模様 明日には洗濯物を干そう」って希望もあって。4行で納得いく歌詞に仕上げられたし、身近にある希望に気づく感じもあって、すごく自分の性に合っている曲だなと思います。


辻出 僕はすごくネガティブな人間で、全部卑屈に捉えるし、斜に構えているんですけど、すごく落ち込んだときに曲ができます。うれしいことがあったり、友達が結婚したとかではできなくて、たとえば友達が遠くにいっちゃうとかのほうが曲ができるタイプ。基本的には部屋に閉じこもって、ひとりぼっちで何の情報も入れずに歌詞を書いているので、卑屈で根暗な歌詞が多いと思います。メンバーからも「歌詞めっちゃ暗いよな」って言われます。でもロックバンドを好きな人、ライブハウスに来る人って、ハッピーな気持ちの人は少ないと思っているんで、「俺もみんなと同じくらい毎日嫌な気持ちで過ごしているよ」みたいな気持ちですね。だからライブで歌うとき、当時の感情を思い出して泣きそうになったりするし。ただ……自分は一番近くにいる友達がいいと言ってくれる曲を書こうと思って書いていて。「観に来てくれるみんなに届けばいいな」というのはあまり思っていないかもしれないです。友達にいい曲やなって言ってもらえる歌が、どんどん広がっていけばいいなって思っている。

──その感情を表現するための言葉選びでは、何か意識していることはありますか?

辻出 ほんまにないかもしれない。僕、本も読まへんしなぁ。でも、一つ自慢していいですか? 僕、ずっと現代国語のテストで100点取ってたんですよ。だから本読まなくていいんやと思います(笑)。

──きっと、思うままに書くということが大事なことなんですね。

辻出 そうなんだと思います。

──辻出さんは、ご自身の曲の中で特に歌詞がうまく書けたなと思う曲は何ですか?

辻出 「Face」。小学3年生のときから飼っていた犬が死んだときの歌なんですが、「これはラブソングですか?」って聞かれることが多くて。僕はあまり恋愛をたくさんするタイプではないので、失恋ソングが書けなかったんですけど、失恋ソングと死別の曲って似ているんやって気づいたのがこの曲です。僕は、母親がトリマーをやっていて歳を取った犬を看取ることも結構あったから、犬の死をかなり見てきたんです。もちろん悲しみのレベルは人によって違うけど、日常からぽっかり、あったはずのピースがなくなってしまうという悲しみは、失恋と死別で同じ線上にあるんかもしれへんなって、「Face」を書いて気付けた。だから「Face」以降は、死別や人とのお別れをラブソングっぽく聞こえるように書いてみようと考えてみることもできるようになった。RAINCOVERのこれからに繋がるきっかけになった曲やなと思います。

Face by RAINCOVER | TuneCore Japan

 

サタパには、東京とOasisに染まった体で挑む&お客さんに甘えずに

──先ほど、辻出さんが「友達にいいと言ってもらえる曲を書く感覚で曲を書いている」と言っていましたが、山本さんは何かのために書いているという感覚はありますか?

山本 僕も身近な人が多いですかね。友達だったり。それこそさっき話した「Lucky」は仕事での鬱憤が溜まっている友達の話を聞いて書いたものだし、「sea you letter」という曲は、うちのじいちゃんが亡くなったときに書いたもの。自分の身の回りに起きたことや、身の回りの人に向けて書くことが多いですね。

──そういう個人的なものが、聴いた人にとっては自分の曲になっていきますもんね。

山本 そうだとうれしいなと思って書いていますね。でも自分の感情が迸りまくっているときは自分のことしか詰め込んでいなくて自分勝手さを感じるときもあります。

──それでもいいということですよね。

山本 そうですね。バンドは自分がやりたくてやっていることなので。お客さんにどうなってほしいというよりは、自分が一番納得できる形を追い求めたいなと思っています。

──最後に、「SATANIC PARTY」への意気込みをお願いします。

山本 僕、前日Oasisのライブに行くんですよ。しかも23日に府中で弾き語りのライブがあるので、そこからずっと東京にいるので、東京とOasisに染まっていると思います。当日Oasisのカバーだけになったらすみません(笑)。

──Makiの曲もやってもらえると……(笑)。

山本 そうですね(笑)。とにかく良いマインドでできると思います。

──RAINCOVERは初のSATANIC PARTYです。

辻出 最近、慕っているとある先輩に「お前らお客さん増えてきて、お客さんに甘えたライブしてんちゃう?」って怒られたところなんですよ。なので、フロアはガラガラやと思って、思い切り、体がちぎれるくらいのライブをしようと思っています。あとはMakiと一緒にやるのも、それこそ高松以来だと思うので楽しみです。

山本 そうだね。

※SATANIC PARTY前日のOasisのライブに行くと話していましたが、このインタビューの2時間後に、前日ではなくSATANIC PARTY当日に開催されるチケットを持っていることが判明しました



”SATANIC PARTY” 2025

日程:2025年10月26日(日)
会場:渋谷Spotify O-EAST
時間:開場13:00 / 開演13:30
前売り ¥5,980- / 餓鬼割 ¥3,980- + 1 Drink / 電子チケットのみ
https://w.pia.jp/t/satanicparty-2025/

出演:ENTH / FOMARE / 花冷え。 / Launcher No.8 / Maki / ONIONRING / RAINCOVER / ReVERSE BOYZ / SHE’ll SLEEP / SPARK!!SOUND!!SHOW!! / Thermostud / TIVE / View From The Soyuz / WORSTRASH

https://satanicparty.com/



>>Maki official website
>>RAINCOVER official website