LIVE REPORT

NOISEMAKER “NOISEMANIA PREMIUM HALL TOUR” LIVE REPORT!!

Report by 山口智男
Photo by Takashi Konuma

2021.11.2
NOISEMAKER - “NOISEMANIA PREMIUM HALL TOUR” -
@東京国際フォーラム

 この日、3階席まである東京国際フォーラム ホールCという、らしくない会場で、普段やらないような演出も交えながら挑んだライブは、NOISEMAKERにとってエポックメイキングと言えるものになった。もっとも、いきなり『らしくない』と書いたようにNOISEMAKERはライブハウスを主戦場としてきたバンドだ。だから、後述するように彼ら自身、これを目標にしていたわけではないと思う。しかしながらその挑戦がバンドの来歴を書いた時に太字になるぐらい大きな成果を残したのだから、彼らが今年6月30日にリリースした配信シングル「APEX」のタイトルに倣って、ここでは1つの頂点を究めたと言っておきたい。

 今回、バンドがツアー・タイトルに掲げている「NOISEMANIA」とは、ファンならご存じの通り、リリース・ツアーやフェスではやらない曲を中心にセットリストを組むファン感謝という意味合いも持つ毎年恒例のツアーである。5年目となる今回は8月~9月に全国各地を回った計17本に追加公演の名古屋と札幌が加えられ、あれ、東京と大阪は?と誰もが思っていたところに「PREMIUM HALL TOUR」と題された11月2日の東京・東京国際フォーラム ホールC公演と11月23日の大阪・森ノ宮ピロティホール公演が発表され、ファンを歓ばせると同時に、『もしかしたら、えっ、NOISEMAKERがホール・ツアー?』と驚かせたのかもしれない。

  今回、初めてホール・ツアーに挑んだ動機と理由を、AG(Vo)はこの日、序盤の3曲――「Change My Life」「THIS IS ME」「SADVENTURES」で、たとえホールだろうと観客を楽しませることはできると見事に証明した直後、こんなふうに語った。

「声出し禁止。モッシュもダイブも禁止。(ライブハウスでも)イスがなきゃダメ。だったら、ホール・ツアーできるんじゃないかって逆転の発想でチャレンジしました。(コロナ禍の)2年間、ツアーができず、ライブができずってバンドもいるけど、俺たちはただ指をくわえていたわけじゃない。ひたすら動き続け作り続け、描き続けてきたバンドのありったけ、今日はとくと食らっとけ東京!」

 締めくくりの「くらってくれ!」は、逆転の発想でチャレンジしたこの日のライブももちろんだが、この2年間、必死に動きつづけてきたという矜持も含め、「ここに込めた自分たちの思いを!」ということなんだと思う。

 オープニングからエンディングまでずっとステージの背景のビジョンに、曲ごとにさまざまな映像を映しながらという演出は、AGとHIDE(Gt)がアートのシーンでも活動しているNOISEMAKERならではと思ったが、開演と同時に観客を驚かせたのは、ステージのセットだったはず。横並びに置かれた4つの小さなステージの上に上手からHIDE、AG、UTA(Dr)、YU-KI(Ba)がそれぞれに立ち、曲によってはエネルギッシュにステージを左右に動き回るAG以外はそこから動かないという演出はライブハウスとの差別化を極端に表現したものだったのか、それともいわゆるソーシャル・ディスタンスを皮肉ったものだったのか。

 もっとも、だからってバンドの演奏がいつもと変わるわけじゃない。

「どこだろうと、あなたたちと俺たちがいれば、やることは変わらない。がっつりかかってきください!」とAGも言っていたようにバンドは1曲目から、声を出せない観客の代わりにYU-KIをはじめメンバーたちがシンガロングの声を上げながら熱演を繰り広げていったし、観客もそんなバンドに対して、声を出す以外のあらゆる方法を使って、自分たちの興奮や熱狂を返していった。

 「Change My Life」をはじめ、タテノリの激しいロック・ナンバーでは全員がその場で飛び跳ね、ホールの床が揺れた。R&B調の「Dharma Light」ではファルセットで歌うAGのリクエストに応え、全員が腕を横に振った。そして、「NAME」のブレイクダウン・パートでは全員が頭がもげるんじゃないかってくらいの勢いでヘッドバンギングした。

そんな光景を見ながら、終始、客席を煽ったAGも「2階、3階見えてるぜ! 見えてるぜ! 見えてるぜ!」などと声をかけつづけた。

「音以上のものを届けるぜ。届いているか? この渦巻いている感情が見えるか? 体は暴れられないけど、感情は暴れている。次の次元に行こうぜ。おまえらと!」(AG)

 「YayYayYayYayYayYayYayYay」を演奏する前にAGが言った、そんな言葉がもしかしたら、この日のテーマだったのかもしれない。HIDEがハード・ロッキンなリフを轟音で鳴らした「YayYayYayYayYayYayYayYay」から繋げた「BETTER DAYS」では8人編成のゴスペル・クワイヤを、UTAがドラムを打ち鳴らした「One Day」、前述した「Dharma Light」を挟んでからの「Silence」では、6人編成の(マーチング・バンドの)ドラム・ラインを、そして、「APEX」では4人のダンサーを迎え、その3曲が持つ高揚感をいつもとは違う、それこそこの日ならではのやり方で際立たせ、観客に見せつけたのだった。

 実は「APEX」のリリース直後のインタビューで、筆者はメンバーからホール・ツアーを行って、そこではストリングスを迎えるなど、いつもと違う演出をしようと考えていると聞いていたのだが、その後、多くのバンドがすでにやっているストリングスではありきたりだと考え、演出を変えたのか、それともネタバレを避けるため、筆者にはとりあえずストリングスと言葉を濁したのか、いずれにせよ、それぞれの曲調に合ったクワイヤ、ドラム・ライン、ダンサーを迎えた演出の効果は、そこで印象づけた自分たちのアートに対するこだわりを含め、ストリングスとの共演では得られなかっただろう。

 心の中で思わず快哉を叫んだ。

「この2年間、ツアー、ライブができなかったけど、やっと帰ってこられました」

 追加公演、そして「PREMIUM HALL TOUR」も含め、「NOISEMANIA 2021」を無事に開催できた歓びを噛みしめるように語ったAGは続けて「俺たちだけじゃない。みんなが戦っていたと思います。(NOISEMAKER主催の)KITAKAZE ROCK FESTIVALは2回中止に追いこまれたけど、来年は絶対にやってやるからな! 最後の最後まで手を伸ばせば、届くんだよ。最後っていうのは死んだ時のことだ!」と宣言。そして、バンドは前述したように4人のダンサーを迎え、「APEX」を演奏したのだが、そこには自分たちだけにとどまらず、AGが言った、戦っているすべての人たちを鼓舞したいという思いが込められていたに違いない。いや、それを言ったら、メジャー・レーベルを離れたあと、自ら立ち上げたレーベル PLATINUM SHOESからリリースした楽曲だけで、ほぼ作ったこの日のセットリストにも持ち前の不屈の闘志が込められていたと思う。

 その思いは「おまえらに翼を授ける」(AG)と言った次の「Wings」にも込められていたと思うが、その「Wings」ではゲストのJesse(RIZE、The BONEZ)がステージに飛び出してきた勢いのままラップを加え、クライマックスに向かうライブの流れをぐっと加速させた。

「あっという間です。次で最後です。初めてチャレンジしたホール・ツアー、忘れられない日になりました。この一歩を余裕で超えて、また、みんなと別の世界を見に行きます!」

 そうこの日の手応えを語ったAGが「生きると言うこと!」と叫ぶ。ラスト・ナンバーは「To live is」。

「生きると言うこと。誰かを、何かを愛するということ。おまえらが見ているもの、おまえらが聴いているもの、大切にしているもの、手放したくないもの、その全部が人生そのものだ!」

AGによるスポークンワードからなだれこんだバンドの演奏が作るアンセミックな空気が、そこにいる全員の人生を肯定し、そして全員の未来を祝福した。

 AGが語ったところによると、今回のホール・ツアーはコロナ禍という試練が与えてくれた、ある意味、ギフトだと考えていたバンドは、ホール・ツアーに挑戦したことで、今一度、自分たちの原点がライブハウスであることを認識したらしい。そして、ホール・ツアーの手応えとともに、「ぱんぱんのライブハウスに帰ったとき、これまでとは違う景色が見えるような気がする」と語ったAGは、「ぐちゃぐちゃのライブハウスで会いたい」と客席に語りかけ、ステージを降りる前にもダメ押しで「またライブハウスに帰って来いよ!」と言った。

 つまり、あくまでもホールでのライブは、バンドにとっても、ファンにとってもPREMIUM=ボーナスであって、今後、積極的にやるつもりはないということだと思うのだが、それじゃあ、あまりにももったいない。NOISEMAKERがやっている楽曲は、けっしてライブハウスだけで映えるものではないと以前から筆者は思っていたが、今回のホール・ツアーでそれが証明されたんだから、PREMIUMという位置づけでもいい、いつか、さらにスケールアップした形でまた挑戦してほしい。

「忘れられない日になりました」「(ぐちゃぐっちゃになるライブハウスとは違って)みんなの顔が見えて、気持ちいい。音も気持ちいい」

 バンドを代表して、AGが語ったように、この日、そんなふうに感じたのならぜひ――と、もしかしたら、ないものねだりかもしれない願望を最後に記しておきたい。

 

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