INTERVIEW

山嵐 “スペースフラワー” INTERVIEW!! ~前編~

Interview by ヤコウリュウジ

純粋にオレたちしかできないモノを本気でやる、そう改めて腹をくくった山嵐はやっぱり凄かった。2019年に全曲リレコーディングしたベストアルバム『極上音楽集』を発表したものの、オリジナルアルバムとしては『RED ROCK』以来、実に9年ぶりとなる新作『スペースフラワー』は多彩な表情を持つ会心作になっている。今回、KOJIMAと武史にたっぷりと語ってもらったこともあり、まずは前編として新作へのビジョンやその過程、メッセージ性の変化、結成30周年への意識、新作の序盤から連打されるハンマーを振り回すようなナンバーについてお届けしたい。
 

――山嵐って、2年に1枚ぐらいのスパンで何かしらの作品をずっと発表してきてましたよね。

武史(Ba):そんなイメージがあったんですけど、気づいたら7〜8年出してないんじゃないか、となって。

KOJIMA(Vo):曲がいっぱいあるんで、昔の曲を掘り起こしてライヴするだけでもフレッシュな時間だったんですよ。

武史:そうそう。

 

――『極上音楽集』でそれまでの自分たちと向き合って、掘り返したくなったところも?

武史:そうっすね。KAIが入ってから向き合った曲も多かったし、そういう意味では掘り返してやろうか、って。

KOJIMA:振り返れば、『極上音楽集』の後、そのままのペースで新作をすぐ出そうという話もあったんですよ。ただ、ちょうどコロナ禍に入ってしまって。曲自体は結構作ったけど、全部洗い流しちゃいましたね。

――そうなるとこの新作へ向き合い始めたのはいつぐらいになるんですか?

武史:今、メンバーが2人休んでるんですけど、そのタイミングで「ここはちょっと見せてやらねえとな」みたいな。

KOJIMA:逆にスイッチを入れた、っていう。

武史:いつでも戻ってきやすい状態を作っておきたいな、というのもあって。

 

――そうなると、3年前ぐらいになるんですかね。

武史:ちょうど、それぐらいになるのかな。

 

――2026年は結成30周年になりますけど、そこに間に合わせたかったという意識は?

武史:そこは全然ないっすね(笑)。申し訳ないぐらい、何周年とか自分たち的には興味がなくて。

 

――『RED ROCK』は20周年のタイミングでしたけど、まったく意識しなかったというお話でした。

KOJIMA:未だに(周年には)興味がないっすね(笑)。

武史:何かを祝う立場ではないっていうか。挑戦者の気持ちでいるし、そこまで考えられる余裕もないんですよ。

 

――イメージとしてはもうそういうバンドなんですけどね。言っても、日本におけるミクスチャーロックのオリジネーターじゃないですか。

武史:でも、自分たちが思ってる(立ち位置は)違うんですよ。この新作は周年をまったく無視して、ルーキーのつもりで作ったんで。

 

――そうなると、『極上音楽集』がひとつの区切りになって、また新たに考えることが出てきたような。

KOJIMA:そうだと思います。一旦、整理したというか。

武史: (考えが)まとまってきたのはここ2年ぐらいかな。話し合って話し合って、方向性を決めて。

KOJIMA:今まででいちばん話し合いながら進めましたね。

 

――そこでどういった話題が出てきましたか?

KOJIMA:本気で振り絞ろう、みたいな話はしてて。

武史:うん、本気で作った感じっすね、久しぶりに(笑)。

 

――まあ、オリジナルアルバムとしては9年ぶりですからね。

武史:何だろう……感覚的に1st、2ndは無我夢中でやってて。でも、そこから見失うというか、余計なことも考え出すじゃないですか。金のこととか、音楽で食っていこうとか。そうなると、音楽がピュアじゃなくなっていくし。

 

――振り返ってみれば、っていう。

武史:そうなんですけど、自分たちの中ではずっとあったっすね。1st、2ndを超えなきゃいけないっていう、雑念みたいなのが。でも、それを全部取り払って、純粋にオレたちしかできないモノを本気でやろうよ、って。それがデカいテーマになりました。

 

――山嵐って、フルアルバム毎に異なる魅力があるじゃないですか。

武史:結構違うっすね、何か。

 

――でも、ちゃんと山嵐感はずっとあって。今回の新作はそうやって広げてきた枝葉が全部幹になって、それらをギュッとまとめた印象があります。

KOJIMA:ホントにそうだと思いますね。もっとこうやってみたい、というのはあるから、集大成ではないっすけど、現時点でやれるモノを本気でやったから。

――アプローチの幅を広げると軸がブレる怖さも出てきたりしました?

KOJIMA:いや、もうないっすね。

武史:散々ブラしてきたんで(笑)。

 

――そんなこともないでしょうけど(笑)。

武史:これまでいろんなジャンルに挑戦してきたから、それをいかに活かせるか、って。

KOJIMA:で、何となく「これはブレるぞ」って感じたときは早めに軌道修正して。

武史:「これ、またライヴでやんないんじゃない?」って話になるんですよ(笑)。

 

――曲としてダメだから、っていうわけでもないんですよね?

武史:そうそう。いかに自分たちにハマるか、自信を持って世に出せるか、みたいな。

 

――しかしながら、いろんなタイプの曲が入った作品になりましたよね。ミクスチャーロックの代名詞的なガツンと食らわせる曲はもちろん、フロウやラップのキレを見せつけるヒップホップ色が強い曲もあり、歌をガッツリと聴かせる曲もあり。感触としては目指してたモノができた感もありますか?

武史:あぁ……100%じゃないですけどね、作り終わると次に向かっちゃうんで。

 

――そこはバンドマンの性ですよね。

武史:ただ、次へ向かえるということはひとつ納得したからだろうし。

KOJIMA:全体的なところだと、いつ以来だろう、っていうぐらい納得いくモノができたな、っていう気持ちが強いですね。

武史:今回、モチベーションをメンバー全員で合わせたんですよ。今までは人数が多いから、上がってるヤツもいれば下がってるヤツもいて。全員が全員、前を向くのは無理だと思ってたんです。それぞれの生活やサイクルもあるわけだし。たまたま、ギターとドラムが今ちょっと休んでるから、余計に一致団結しないと……そうできなかったら、休憩が必要かもしれない、というのも感じて。今までになく、ひとつになろう、って話たりもしましたね。

KOJIMA:一旦、集中して作ってみて、出来上がった作品がピンとこなかったら休もうか、と。

 

――休むという選択肢もあったんですか?

武史:自分たちが想定する目標に届かなかったら、(活動の)方向性を変えたかもしれないです。もう、ホントに最後のつもりでやろうよ、って。

 

――いい作品ができたから、こうやって話せるけど、という。

武史:やめるとかはないんですけど、どうしようか、みたいなことは言ってましたね。

――あと、山嵐の発するメッセージって「オレは行くぞ!」とか「よっしゃ、行くぞ!」って号令をかけるようなイメージがあったんです。でも、新作では手を差し伸べたり、大丈夫なんだと語りかけたり、ベクトルとして前向きなのは一緒なんですけど、アプローチの種類が増えたように感じて。

KOJIMA:それは単純にこう、人間的な年齢だったりとか、暮らしの変化でそうなっていきますよね。なるべくリアルでいたい、っていうのはもちろんあって。その中で人を応援する側にまわる年齢でもあるわけじゃないですか。そこで自然に使う言葉の変化は出てくるし。

武史:等身大でやるのがいちばんいいと思ってて。人に優しい方が絶対にいいなっていうのもあるから。

 

――ロックバンドとして強がるパターンもあるじゃないですか。虚勢を張るとまではいかなくとも胸を張って「どうだ!」って見せつけるような。

武史:でも、そうやって胸を張るより背中で見せないと。やっぱ、そういう方がカッコいいな、って。

KOJIMA:それにずっと続けてくつもりなんで、何かそのマッチョイズムみたいなのが、ここからもっと歳を重ねていくとイタくなってくるんですよ(笑)。そこに対する怖さっていうのもありますね。

 

――とは言え、新作に込めたメッセージはリアルに感じてることなんですよね。

KOJIMA:そうですね。(年齢的に)言わなきゃいけない、とは思ってないし。

 

――新作のオープニングナンバーである「アカイウミ」とか、イントロから極悪でヘヴィさで攻めてて、活力をフルスイングで注入するみたいな曲ですけど、《君の背中押すだけ 「できる」と言いたいだけ》というフレーズが飛び込んでくるじゃないですか。新作を象徴するところでもあるな、と感じたりして。

KOJIMA:自分の中では重たい音、尖った音に対する言葉の使い方って、むっちゃくちゃ大切で。そこでホントに海外のメタルのリリックみたく、骸骨の山を蹴散らして、みたいなことを書くのもエンターテイメントとしてはアリなんですけど、そこに自分が入っていくと考えたら何か辛くなっちゃうんです。

 

――いち個人とかけ離れたキャラクターでやるなら、それはそれで面白さがあるけど、っていう。

武史:エンタメとしてね。

KOJIMA:エンターテイメントとリアルは混ぜちゃいけない、っていうか。

 

――「アカイウミ」は1曲目としてすんなり決まったんですか?

武史:割と先頭の方に立つ曲だな、っていうイメージで作ってて。山嵐感というか、イメージ通りの曲を作りたいな、と。

――新作ではいろんなアプローチの曲がありますけど、こういったヘヴィでパワー感のある曲が山嵐の真骨頂みたいな気持ちもありますか?

武史:ありますけど、そうじゃない部分も今まで出してきてるんで。ここだけじゃなく、もう自分たちの好きなことで勝負したい、とも思ってますね。だから、新作も「スペースフラワー」をタイトルに持ってきたし。等身大の自分がやってるモノを上手く昇華して出せれば、と。そういうのを含めてミクスチャーだろうし。

 

――1曲にいろんなことを詰め込むのもミクスチャーでしょうけど、ひとつのバンドがいろんなことをできるのもミクスチャーですよね。

武史:そうっすね。それが武器かな、とも思うし。

 

――「スペースフラワー」は中盤に位置し、新たなアプローチが施された曲ですけど、そこへ入りやすくする為に「アカイウミ」から始まる3曲はガツガツと畳み掛けたようなところも?

武史:そうっすね。

KOJIMA:(曲順を)並べるときに、やっぱこれがいいんじゃないか、と。

武史:(イメージ通りの)山嵐からどんどん変化していって、みたいな。

 

――「DIXI」もド迫力ですが、こんなに荒々しい《大丈夫 It’s OK》って初めて聴いたかもしれないです(笑)。

武史:ハハハハ(笑)。

 

――語りかけてくれる優しい言葉なのに、とんでもないパンチ力で放ってくるな、って。

KOJIMA そういう矛盾とかも狙ってますね。

 

――終盤の《Who's the KING?》はDog Eat Dogも連想しました。

KOJIMA:あぁ、僕の中でもそうですね。

 

――山嵐はそういった想像が膨らむ言葉選びも上手いなと思ってて。この「DIXI」では《PC原人》(※89年に発売されたアクションゲームのタイトル)みたいなキャッチーなワードも入ってきたり。

武史:ゲームのワードを入れるのは「BOXER'S ROAD」(※『ボクサーズロード』という同名のゲームが95年に発売)のころからずっと変わってないですね。

 

――このへんのユーモアセンスって、凄く山嵐っぽいなと感じます。

KOJIMA:そういうのを忍ばせておいて自分を緩めたいんですよ。どんどん締まってきちゃうから。

武史:それこそ、「DIXI」ってタイトルは子供のころに「デュクシ」とか「デュキシ」とか言いながらパンチしたりするじゃないですか。そっから取ってて。

 

――あっ、そうなんですか!?

武史:そうそう(笑)。

KOJIMA:そういうアイデアのストックが武史にはあるんですよ(笑)。

 


「スペースフラワー」
2025.12.24 RELEASE / 品番 : CBR-140 / 価格 : ¥3,000(tax in)
1.アカイウミ
2.DIXI
3.嵐山山
4.忍とエイリアン
5.スペースフラワー
6.涅槃
7.109
8.Yoroi
9.桜梅桃李
10.愛軌道
11.川沿い

スペースフラワー Tour 
1/9(金) 千葉LOOK
1/11(日) 水戸LIGHT HOUSE
1/12(祝月) 仙台MACANA
2/14(土) 岡山IMAGE
2/15(日) 広島SIX ONE LIVE STAR
2/21(土) 名古屋JAMMIN’
2/22(日) 大阪ANIMA
3/8(日) 横浜F.A.D
3/20(祝金) 札幌BESSIE HALL
3/21(土) 旭川CASINO DRIVE
4/11(土) 高松DIME
4/12(日) 松山Double Studio RED
5/1(金) 神奈川 善行Z
5/2(土) 浜松窓枠
5/24(日) 京都MUSE
6/27(土) 長野JUNKBOX
6/28(日) 新潟GOLDEN PIGS RED
7/11(土) 熊本Django
7/12(日) 福岡CB
8/1(土) 山口周南RISE
8/2(日) 神戸太陽と虎
9/5(土) 盛岡Club Change Wave
9/6(日) 秋田SWINDLE
10/11(日) 大阪梅田QUATTORO
10/12(祝月) 名古屋BOTTOMLINE
11/21(土)恵比寿LIQUIDROOM

OFFICIAL HP:https://yamaarashi.asia