INTERVIEW

山嵐 “スペースフラワー” INTERVIEW!! ~後編~

Interview by ヤコウリュウジ

日本におけるミクスチャーロックのオリジネーターが進化しつづけた結果、山嵐がジャンルに分別できないロックモンスターとなっていることを知らしめるに違いない新作『スペースフラワー』が完成した。後編では、タイトル曲「スペースフラワー」はもちろんのこと、山嵐らしいユーモア溢れる言葉選びが冴え渡る楽曲や最後を締めくくる人生讃歌「川沿い」等に加え、新作が完成した今の心境や未来像についてKOJIMAと武史に話してもらった。

 

――「嵐山山」は山嵐だからこそのお祭りソングというか。日本の祭りを連想するアレンジがありつつ、狼煙を上げるような力強さがあります。

KOJIMA:ギリギリですよね、これ(笑)。

武史:古いけど……ギリギリ大丈夫なのか、みたいな(笑)。

 

――でも、ちゃんとギリギリでカッコいいになってる曲ですよね。

KOJIMA:そういう遊び方が楽しいんだと思うんですよね、自分たちがやっていく上で。

武史:もう、「ギリどっちなの、これ?」みたいな。

 

――そういった流れがありつつ、中盤にタイトル曲「スペースフラワー」があります。不思議な浮遊感の中でしっかりビートが効いていて。行ったことはないですけど、宇宙でダンスしたらこんな気持ちになるのかな、みたく感じました。

武史:おっしゃる通り、宇宙で花が咲いてるってイメージにないじゃないですか。そういう感覚を投影したんですよ。

 

――そこからKOJIMAさんはどうやってリリックを?

KOJIMA:武史からデモをもらったとき、たしか「スペースフラワー」って仮タイトルはついてて。それを見たとき、星座が思い浮かんだんです。で、メンバーを星になぞらえて、休憩してるヤツもいるし、いろんなところにいて、それが山嵐っていう星座になってる、と。(星と星との距離が)結構遠いところにもあるね、みたいなことも思いつつ、その寂しさを含めて輝いていないといけないし。そこから、自分が遠くで輝いてるメンバーに会いに行きたくなっちゃったけど、そうなると形が変わって従来の星座ではなくなっちゃう。地球から見てる人がそれで大騒ぎしてる、っていうストーリーを描いたんですよ。

 

――あぁ、なるほど。

KOJIMA:でも、自分が言った根底のストーリーなんて別に関係なく、各々が受け取ってもらえればいいし。スペースという響きから感じるモノもそれぞれあると思うんで。

 

――ライヴだと心地よさが倍増する予感もあります。

武史:結構、リハにも入ってるんですけど、だいぶいい感じだと思いますね。

 

――サウンド的なところだと「涅槃」も興味深くて。歌モノに分類される曲っちゃ曲だと思うんですけど。

KOJIMA:そうですね。

武史:唯一、「涅槃」だけ休んでるメンバーも叩いて弾いてるんですよ。

――ちょっとニューウェーブ感もあり、また新しく面白いニュアンスだな、と。

武史:そうっすね。リリックも凄く好きで。

KOJIMA:(リリックの)テーマはわかりやすくそのまんまなんですけど、武史からデモをもらったときは全然出てこなくて。でも、サビの《我が誰だかそれがわかる日》っていうラインが降りてきた瞬間があって、これいいじゃん、と思ったから、それをテーマにしましたね。適材適所というか、自分のできることはやって、自分ができないことに対してやってくれる人に感謝する。そういうのを含めて、誰にでも伝わると思うし。

 

――そこから飛び込んでくる「109」は凄く鮮烈でして。この位置、良すぎるなと思いましたよ。

武史:一見ね、ギャルっぽいんですよね、「109」ってタイトルだから。

 

――このタイトルはどういった理由があるんですか?

武史:BPMっすね(笑)。

KOJIMA:絶妙じゃないですか、109のBPMって(笑)。

 

――「DIXI」もそうですけど、遊び心でタイトルをつけちゃうのも山嵐っぽいですよね。

武史:名前のセンスがギリギリ下手っす(笑)。

KOJIMA:ハハハハ(笑)。

 

――いやいや、下手ってことはないと思いますよ(笑)。キャッチーだったり、何か気になる言葉がついてることが多いから。

武史:直感で思ったことを口にしてやってるだけなんですけどね。

KOJIMA:あと、重たい曲のタイトルほど、カッコつけられないというか。面白い方がいいんですよね、何か。

 

――言い方はあれですけど、イキってる感じになるような。

KOJIMA:で、そういうキャラを背負いたくない(笑)。

武史:どストレートなタイトルもあったりするんですけど、「PRIDE」とか。でも、「ザ ガンガン ゴンゴン」とか、そういうのもあったりするんで(笑)。

 

――たしかに……「嵐山山」だって何かおかしいですからね(笑)。

武史:そう、何かおかしい(笑)。それも最初、「嵐山」にしようとしたけど、違うなとなって。「山嵐山」……いや、違うな、「嵐山山」……これだ、と。

――実際、「嵐山山」ってめっちゃ語感がいいですよね。思わす口に出したくなる音になってて。

KOJIMA:いろいろ話してて、「嵐山山」が飛んできたときは「それだ!」ってなりましたからね。

 

――「109」は気持ちいいフロウとリズムで揺れる中、サビの《同じような毎日に飽きちゃってんじゃないかい/ふと思った だけだろうな》というメロディーがパッと飛び込んできて。鮮やかだなと思ったんですけど、ここは自然とこうなったんですか?

KOJIMA:この曲はオガちゃん(YUYA OGAWA/G)なんですけど。

武史:何かもう、この曲がいちばんミクスチャーっていうのか、90年代のザ・ミクスチャー感にオガちゃんがこだわってて。オレはちょいちょい変えようとしたんですけど(笑)、「これはどストレートなミクスチャーロックでやりたい」って言ってて。だから、サビもメロっぽく、っていう。

 

――また、メッセージとして「Yoroi」は新作を象徴する曲にもなるのかな、と。

武史:「Yoroi」はリリック先行で作ってて。

KOJIMA:このリリック自体、たぶん7、8年ぐらい前に書いてて。当時も(メンバーに)聴かせてるとは思うんですけど、もう1回聴いてもらって。

武史:ちょうど今の時期にハマったというか。

 

――転ぼうが何を仕様が見捨てねえぞ、という心意気を感じました。冒頭の「鎧は胸にあり」ってところは上杉謙信の言葉を引用してるんですよね。

武史:あっ、そうなんすか?(笑)

KOJIMA:あそこはKAI(Maschine)がつけてきたんですよね。

 

――どんな意味があるとか、聞いたりもしないんですか?

武史:曲を作る上での前提、こういうことを言おう、とか、ああいう風にしよう、っていうのは凄い話し合いますけど、できてからのモノに対してはリスナーのように聞いてて。後から何度も聴いて、自分で想像を膨らましていく、というか。

 

――その「鎧は胸にあり」の後、「いつまでそこにいるんだよ。こっちこいよ」って呼びかけも入ってますよね。

KOJIMA:あれはSATOSHI(Vo)が差し込んできたんですよ。

 

――何かピンときて、アドリブでやったような。

KOJIMA:それに近い感じだと思います。

 

――そういうアドリブみたいなのって、結構あるんですか?

武史:さっき、作る前は凄い話し合うって言いましたけど、その話がまとまったら何も言わないようにしてて。全部でそうやっちゃうと個人個人で大切にしたい部分が出せなかったりするし、あとは自由に、って。

KOJIMA:強烈な問題がなければ一旦OKにして、後で考えよう、みたいなこともありますけどね。

 

――その人の個性が活きて、曲としての世界観が壊れなければいい、みたいな。

武史:そうっすね。

 

――最後に《時は待ってねぇんだよ》という呼びかけるリリックもありますよね。人生って、やるか・やらないか、じゃなくて、やるしかなかったりもしますよね。

武史:まあ、そうっすね。やらない、っていう選択肢もそれはそれであると思うんですけど、やった方が絶対にいいし。

KOJIMA:引きこもっちゃう問題とか、そういうことについてもちょっと書いてるんですけど、学校に行かなかったとしてもソイツが特殊的に何かの道を目指していれば今の時代、何とかなる可能性があるじゃないですか。

 

――しかも、30年もやってるバンドからこういうメッセージが発せられてるから余計に喰らうところもあって。

KOJIMA:まあ、身を持って経験してきましたからね。

 

――もちろん、寄り道っぽくても最終的にいいモノが出せれば、それはそれで無駄じゃなかったとは思うんですけど。

武史:そこは結構ポイントで。無駄な、苦しんだ時間があるから、そこへ辿り着けることもあるし。だから、そういう意味ではやらないっていう選択肢もアリではある。そこを経て、っていうこともありますからね。

 

――そして、やっぱり気になるのが最後を締めくくる「川沿い」です。

武史:いいっすよね、「川沿い」。

 

――ポエトリーラップ的なアプローチで自分自身に贈る人生讃歌のようにも聴こえました。

KOJIMA:そうですね。この曲は自分がギターとキーボードのコードから作ったんですけど、それを(メンバーが)「すげえいいじゃん!」って言ってくれたところからスタートして、当たり前のバラードにしない、というのをテーマに据えました。武史を中心に、どう広げていこうか、っていうのをやったんですけど、凄くいい雰囲気になりましたね。

武史:ライヴだと相当パンチある感じになるんじゃないかな、って。

 

――普通、スローナンバーだと安らぎが生まれると思うんですけど、この曲は安らぎと同時にほのかな興奮も誘ってくれます。火を灯すような感覚になるというか。

武史:SATOSHIのリリックとかも、彼は長い間、解体の仕事をやってるんで、本当にリアルなワークソングだろうし。そういう生活をしてる人もたくさんいるじゃないですか。

KOJIMA:僕もリアルな生活をリリックで書いてるんですけど、SATOSHIがそこに寄った感じにしちゃうとちょっと違うんじゃない、っていう話もして。

 

――結構なディスカッションがあったんですね。

KOJIMA:一時期、SATOSHIが迷いまくってたんですよ。

武史:この(曲の)雰囲気のまま、KOJIMAに寄せるんじゃなくて、SATOSHIが思うリアルを考えよう、ってオレも一緒にやったりもして。

KOJIMA:で、いいところに着地しました。

武史:ただ、出来上がったとき、SATOSHIがオレに対して「これ、いいでしょ?」って言ってきて(笑)。

――ハハハハ(笑)。でも、めっちゃSATOSHIさんらしいエピソードですね。

武史:そうそう(笑)。

KOJIMA:それがSATOSHI!(笑)

 

――SATOSHIさんは山嵐のアイコン的イメージというか、キャッチーな部分を持ってる人ですよね。

武史:それは間違いないっすね。彼がいないと山嵐はできないし。

 

――では、この新作を振り返ってみて、どんな印象を持ちますか?

武史:最後の章っていうわけじゃないんですけど、次のフェーズの入口にはなったかな、というのはありますね。ここからまた、オレらのワールドが見せられる、そういう意味では自信にもなったし。

 

――バンドとして新章を始められた感覚もあるんですね。

武史:そうっすね。そういう意味では自分たちも楽しみたいし、いちばん得意とする音楽で応援できる、元気にする、そうやって人の力になれるのかな、って。

KOJIMA:僕もほぼ同じ気持ちですけど、誰かを応援したい、っていう気持ちが増えてきてて。今回、いろんなジャンルの曲がありますけど、そのどれかでいいから「私はこの曲が好きです」みたくフィットしてくれればいいなと思ってますね。

 

――1月9日の千葉LOOKを皮切りに1年近く続くリリースツアーも始まりますが、この間もいろんなライヴが入ってきそうですし、バンドとしてより強靭になっていく予感もします。

武史:どんどんライヴしたいっすね。30周年だからデカいことをやる、みたいなのは何も考えてないんですけど。

KOJIMA:ある程度、コンスタントに曲を録れる環境にいて、しっかり計画も考えて、ツアー中に見えてきたパワーを次の曲にちゃんと落とし込めるみたいなことができれば、どんどん広がっていくのかな。

 

――新作から話はズレちゃうんですけど、同世代でずっと止まらずにバンドを続けてる人たちってあんまりいないですよね。

武史:やっぱ、減ってきますよね。ただ、他所を見てる余裕はないっていうのも正直なところなんですけど……続けられてることにまず感謝してるし。こんなおじさんでもこうやって音楽の話をしてるが最高だし。

 

――ファンもずっと続けてくれることを願ってますよ。YouTubeにMVをアップすれば、バーっとコメントもつくわけじゃないですか。

武史:嬉しいっすよね。

KOJIMA:めちゃくちゃ嬉しいっすよ。

 

――SNSをちょっと見ただけでも「久しぶりにライヴへ行こうと思ってる」みたいなコメントがいくつもあって。

武史:「直接、目には見えてない支えてくれてる人たちがいっぱいいて、そこに対しての感謝も凄くあるんですよ。だから、続けられてるのかな、っていうか。そういう応援してくれてる人たちを少しでも元気づけていきたいですね。




 


「スペースフラワー」
2025.12.24 RELEASE / 品番 : CBR-140 / 価格 : ¥3,000(tax in)
1.アカイウミ
2.DIXI
3.嵐山山
4.忍とエイリアン
5.スペースフラワー
6.涅槃
7.109
8.Yoroi
9.桜梅桃李
10.愛軌道
11.川沿い

スペースフラワー Tour 
1/9(金) 千葉LOOK
1/11(日) 水戸LIGHT HOUSE
1/12(祝月) 仙台MACANA
2/14(土) 岡山IMAGE
2/15(日) 広島SIX ONE LIVE STAR
2/21(土) 名古屋JAMMIN’
2/22(日) 大阪ANIMA
3/8(日) 横浜F.A.D
3/20(祝金) 札幌BESSIE HALL
3/21(土) 旭川CASINO DRIVE
4/11(土) 高松DIME
4/12(日) 松山Double Studio RED
5/1(金) 神奈川 善行Z
5/2(土) 浜松窓枠
5/24(日) 京都MUSE
6/27(土) 長野JUNKBOX
6/28(日) 新潟GOLDEN PIGS RED
7/11(土) 熊本Django
7/12(日) 福岡CB
8/1(土) 山口周南RISE
8/2(日) 神戸太陽と虎
9/5(土) 盛岡Club Change Wave
9/6(日) 秋田SWINDLE
10/11(日) 大阪梅田QUATTORO
10/12(祝月) 名古屋BOTTOMLINE
11/21(土)恵比寿LIQUIDROOM

OFFICIAL HP:https://yamaarashi.asia