Who’s Next by SATANIC Editing Room Vol.41:May Forth
SATANIC ENT.の編集スタッフが気になるバンドをピックアップする連載企画"Who's Next”。今回ピックアップするのは、今年のSATANIC PARTYにも出演するMay Forth。名古屋のロマンティックパンクバンドがどのように結成されたのか、現在どんなモードなのか、カンタ・デ・ラ・ロッチャ(Gt, Vo)とニジロウ(Dr)に話を聞いた。
Interview&Text by Chie Kobayashi
Photo by photo by zenta
この生活が楽しいから本気でやる
──まずはMay Forthの結成経緯を教えてください。
カンタ 大学1〜2年の頃、サークルのライブに出るために大学の同級生3人で結成しました。「売れてやるぞ」というテンションでもなく、学園祭で楽しくやれればいいくらいの感じで。オリジナル曲ができたので大学生の記念にCDにしようとレコーディングしたら、それがCDショップで扱ってもらえるようになって。そこから面白くなって僕はスイッチが入ったのですが、他のメンバーは普通に就職。その後メンバーの出入りを繰り返して、今はサポートベーシストを入れて、ニジロウと2人でやっています。
──ニジロウさんはどういう経緯で加入したんですか?
ニジロウ 前のベーシストが福岡の先輩で。ちょうどMay Forthがドラムを探しているときに、僕がサポートしていたバンドのライブを見てくれて、「ツービート叩けるじゃん」と声をかけてくれました。それが2024年の10月頃ですね。
──当時、May Forthにはどんな印象を持っていましたか?
ニジロウ 3枚目のアルバム『Germination』を「とりあえず聴いてみて」と送ってもらったんですが、1曲目の「新しい国」を聴いた瞬間に「やります」と言いました。曲がカッコよすぎて。人柄もバンドのこともレーベルのことも知らない状態で、本当に曲の力で決めました。
──メンバーの入れ替わりが続いても、カンタさんがMay Forthを続けられる原動力は何なのでしょうか?
カンタ 人生で、何かに熱中している時間を長くしたいんです。ダラダラしていたくない。昔はそれがギターで、今はライブハウスやバンド。これを辞めたら、他に熱中できるものはないので。メンバーがいてもいなくても、売れても売れなくても、バンドのことはいつも考えています。だから誰かが抜けても「こいつとやれたらうれしいけど、いなくなってもバンドをやるしかない」と思うだけなんです。
──ニジロウさんはいかがですか?
ニジロウ 僕はこの生活が楽しいからですね。1カ月のうち家に帰れるのは1週間くらい。同じメンバーとずっと同じ飯を食って、同じ酒を飲んで、同じ景色を見て、同じ出来事を共有する。それが楽しくてしょうがないんです。「売れたい」というよりも、この生活をずっと続けて、このまま死ねたらいいなって思っています。
カンタ 学生の頃の「こいつ親友で、ずっと一緒にいて楽しい」っていうのを、ずっとやっている感じです。それでお金を稼いで、ご飯を食べて、やることをやって、めっちゃ遊ぶ。バンド以外にやりたいことがないし、これが一番楽しい。だから本気でやるんです。

発表会に出たくて始めたピアノ、幼なじみの姿がカッコよかったドラム
──お二人の音楽遍歴も教えてください。幼少期に聴いていた音楽や、楽器を始めたきっかけなどは?
カンタ 4歳くらいのとき、姉のピアノの発表会を見て「俺も出たい」とピアノを始めました。でもピアノ自体は嫌いでした(笑)。だから中学に入るときに辞めました。その代わりというか、テレビで布袋寅泰さんを見てエレキギターを始めたら、もうのめり込んじゃって。ピアノで音楽の知識があったので、すんなり弾けるようになりました。
──ギターを始める前はどんな音楽を聴いていたのでしょうか?
カンタ いきものがかりやB'z、あと親が洋楽やブルースが好きだったので、ジェームズ・ブラウンやB.B.キングとか。家にあるCDをずっと聴いていました。ギターを始めた頃はエリック・クラプトン。高校、大学くらいでWANIMAや04 Limited Sazabysなど日本のバンドを聴き始めました。
──バンドに惹かれたきっかけは?
カンタ 大学に入って、ENTHやBACK LIFTなどのライブに行くようになって、モッシュやダイブがあるライブハウスの世界を知りました。ギターは好きだけど、ハイテクなプレイができるわけじゃない。だけど「バンドなら俺にもできるかも」って思っちゃって。今思えば、BACK LIFTもENTHもEVERLONGもすごく難しいことをしているんですけど、当時は「ここなら一花咲かせられるかもしれない」とバンドマンを目指すことにしました。
──ニジロウさんの遍歴は?
ニジロウ 両親がすごく音楽好きで、車ではスチャダラパー、TOKYO No.1 SOUL SET、電気グルーヴ、斉藤和義、ウルフルズなどが流れていて、フェスにも小さい頃から毎年連れて行ってもらっていました。ドラムを始めたのは小学5年生のとき。父の友達がドラムの先生をしていて見学に行ったら、そこに通っていた幼なじみがゲスの極み乙女の難しい曲を普通に叩いていたんです。それを見て「うわ、すごい!」って思って始めました。だけど半年くらい経った頃にその先生が飛んじゃって(笑)。教えてくれる人がいなくなったので、中学では吹奏楽部に入ってひたすら基礎練をしていました。
──バンドはいつ始めたのでしょう?
ニジロウ 高校です。その頃ONE OK ROCKにハマっていたので、バンドをやりたかったんですが、高校には軽音楽部もなければ、学祭でバンドがライブをする風習もなかった。だけど、どうしてもやりたくて、同じクラスの子たちにギターやベースを持たせて、歌がうまいやつを連れてきてバンドを組みました。地元の久留米にはスタジオがほとんどなくて、僕以外はみんな初心者。月1で1時間かけてスタジオに通って、同じ4曲を3年間練習し続けました。その頃「学祭じゃなく本気でバンドがやりたい」とも思っていたので、地元に1つしかないスタジオのオーナーに相談して、大学生のバンドに入りました。ライブハウスに通い始めたのもその頃です。
──ちなみに練習し続けた4曲というのはオリジナルですか? コピー?
ニジロウ コピーで、ねぐせ。とKANA-BOONとWurtSとマカロニえんぴつです。
カンタ ねぐせ。、普通に友達なんだけど。
ニジロウ そう。May Forthになってねぐせ。の企画に呼んでもらったとき、高校のときのコピバンのメンバーに、ステージ袖からの動画を送りました(笑)。

「この曲とこの曲が実はつながっていて……」
──May Forthは歌詞の世界観が特徴的ですよね。初めて聴いたとき、名古屋のTHE BOOGIE JACKのようだなと勝手に重ねてしまいました。曲作りでカンタさんが影響を受けたものはありますか。
カンタ 曲は青春パンク、メロディック(パンク)にもろに影響を受けています。青春パンクは子どもも大人も誰が聴いても聴きやすいし、構造がすごくシンプル。それこそ「俺でも作れる」と思えた。ボーカルの声や歌詞、世界観がバンドの持ち味になるという構造も分かりやすくて。
──そのうえで熱量も生み出しやすいですし。
カンタ そうです。歌詞はPK shampoo、竹原ピストルさんから大きな影響を受けています。宇宙や月みたいな巨大なものと、隣にいる女の子への自分の心情という超近いもの、その対比が面白いなと思うんです。THE BOOGIE JACKもそうですよね。「クレーターストーリー」とか。“隣で寝ている君”と“遠くの月”の対比が気持ちいい。それって日本人的な感覚だと思うし、そういうものを僕も表現したいと思っています。
──ニジロウさんは、カンタさんの作る曲の魅力をどう感じていますか。
ニジロウ カンタの曲って、世界観がつながっているものが多いんですよ。「この曲とこの曲は同じ世界線で、これはその後の話」みたいに。それをカンタが説明してくれるわけじゃなくて、「どう受け取るかはあなた次第」という投げ方なんです。僕はそこが好きで。小説が好きなので、物語を読んでいるような感覚になれるMay Forthの曲にすごく魅力を感じます。
──曲同士がつながっているということですが、たとえば『スター・ウォーズ』のような作品から影響を受けていたり?
カンタ 影響を受けたのは『クラウド アトラス』という映画です。6つのストーリーで構成されていて、時系列はバラバラなんですが、最後まで見るとようやく全部がつながる。それが面白くて、May Forthの曲作りにも生きていると思います。それを長い時間をかけてやっている感じです。1stアルバムの続きを次の作品に入れたりしている。そうすると過去作も聴きたくなるし、ライブではアルバムの収録順に関係なく、つながる曲を続けて聴けたりもする。楽しみ方が無限に広がると思うので。
──曲単位だけでなく、音楽体験としてMay Forthを楽しんでほしいと。
カンタ そうです。ライブを良くするために音源をリリースしている感覚なので「この曲がつながったらみんなぶち上がるんじゃないか」って。ただ最近は複雑にしすぎて全然理解されていないので、もうちょっとライトにしないとなと思っています。難しくしすぎました(笑)。

最新のモードを反映させた2nd EP『Grandioso』
──9月にリリースされた2nd EP『Grandioso』についても聞かせてください。今のMay Forthのモードが反映された作品だと思いますが、どのような思いで作ったのでしょうか?
カンタ 基本はできるだけシンプルに作りたいんですけど、それだと限界がくるし、似た曲ばかりになっちゃう。だから、今まで使ってこなかったコード進行や展開、リフも取り入れたいんです。ただ、一気にやると「May Forthどうした!?」ってなるので、変化を少しずつ小出しにしていこうと思っていて。今作はその一発目という感じです。未発表曲も含めて6曲作った中から4曲を選びました。バラードも速い曲もあって、May Forthの雰囲気が伝わるバランスのいいEPになったと思います。
──ちょうど変わり始めているタイミングなんですね。
カンタ そうです。そこにちょうどベースの脱退が重なって。前のベースはパンク系で、ルート弾き中心のスタイルだったんです。でもメンバーが変わるので、ベースをどんどん動かして、今までできなかった表現にも挑戦できる。脱退をプラスに捉えて、進化しようと思いました。
──『Grandioso』の収録曲で特に気に入っている曲を教えてください。
カンタ 「黄金町」です。ずっと思っていたことを、ちゃんと歌詞にできたので。あと「燕疾走」。これは2年くらい前に出した「通り雨に攫われて」の続編みたいな曲。マイナー調の曲はこれまで『通り雨に攫われて』しかなかったので、もう1曲できたことでライブも組み立てやすくなりました。キーになる曲だと思います。
ニジロウ 僕も「燕疾走」は好きですね。あとは「彼方満天」。この曲、ドラムが楽しいんです。今までの曲はエイトビート中心で、フィルインもできるだけ分かりやすくして、複雑なフレーズはあまり使ってなかった。だけど「彼方満天」ではやりたかったフレーズができているし、ライブでのお客さんのリアクションも大きくて。要は……「楽しい」ってだけです(笑)。
──リード曲「光の歌」をお二人とも挙げなかったのが意外です。
カンタ 好きなんですけど、作ったのが一瞬だったので、制作時の記憶があまりないんです(笑)。アルバムやEPを作るときは必ず一気に作る曲を入れるんですけど、それがリード曲になりがちで。作り込んだ曲には作り込んだ良さが、3、4時間で一気に作った曲にはまた別の良さがある。「光の歌」はレコーディング前日から作り始めて、当日の朝に出来上がった曲なんです。それをレーベルの社長に「光の歌が一番いい」と言われて「マジか」って思いました(笑)。
ニジロウ 一番時間かかってないのに(笑)。
SATANIC PARTYでは大きい声とでけえ音を出す!
──May Forthは11月1日開催の今年の「SATANIC PARTY」に出演します。出演が決まったときの気持ちを教えてください。
カンタ 「サタニック」という名前がついたイベントに出られることに興奮しましたし、メンツを見て「ここでどうやって戦っていこうか」とワクワクしています。
──May Forthは、ホームに見えて意外とアウェイなんじゃないかという気もしますね。
カンタ 本当にそう。やり方次第では食われちゃうし、やり方次第では食えちゃう。
──楽しみですね。「SATANIC PARTY」にはどのように挑みたいと思っていますか?
カンタ 今はサポートメンバーを入れている状態だし、単純なクオリティでは先輩方のほうが上だと思うので、逆にこういう状況のバンドだから出せるガッツやきらめきを大事にしたいです。大きい声を出して、一生懸命やります。このスタンスは俺らにしか取れないと思うんです。
──「大きい声を出す」っていいですね。ニジロウさんはどうでしょうか?
ニジロウ でけえ音出します!(笑)あとは無理に戦おうとせず、いつも通りでいたいです。
カンタ 僕らはダイブ・モッシュ禁止のイベントや、女性のお客さんが多くて拳を挙げるようなイベントにもよく出ているんですが、「SATANIC PARTY」みたいなイベントにも混ぜてもらえる。そこが面白いところだと思うので、そういうバンドにしかできない動きをしようと思います。
ニジロウ あとは「SATANIC CARNIVAL」を目指したい!
カンタ そうだね!
ニジロウ 「SATANIC CARNIVAL」はずっとカッコいいイベントだと思っていて、憧れのフェスなんです。だからまずSATANIC PARTYでぶちかまして、インパクトを残して、いつか「CARNIVALに出て」と言われるまで頑張ります!

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