Who’s Next by SATANIC Editing Room Vol.42:moreru
ハードコア、グラインドコア、ノイズ、そして歌謡曲。あらゆる爆音を飲み込みながら歩み続けるmoreru。今年8月にシングル「詩人に口無し」をリリースし、10月21日には渋谷WWWでのワンマンを開催。そんなmoreruから、夢咲みちる(Vo)、Dex(Dr)、岩本雪斗(Key/Noise)の3人にインタビュー。ワンマン準備で一睡もしていない夢咲の口から飛び出したのは、バンドの話と、そこに裏付けされる思想。用意した質問はほぼ吹っ飛んだが、それこそmoreru。SATANIC PARTY 2026にどんなカオスを生み出してくれるのか楽しみでならない。
Interview&Text by Ryo Tajima(DMRT)
Photo by Ryota Matsumoto

L to R_岩本雪斗(Key/Noise)、夢咲みちる(Vo)、Dex(Dr)
バンドで一旗あげるって気持ちでした
──SATANIC ENT.初インタビューです! まずは自己紹介をお願いします。
夢咲みちる(以下、夢咲) ボーカルで、曲のデモを持ってきて、作詞も全部しています。……って言うとすごい偉そうに聞こえるけど。言っちゃいけないかもしれないけど、僕はmoreruのペ○スですね。
──いきなり飛ばしますね。
Dex ドラムと絶叫をやってます。レコーディングもドラム以外は自分で、ミックスとマスタリングもほぼ自分がやってます。
岩本 ノイズと、サンプラーと、シンセと、ボーカルと、イラストもやってます。
──結成は2018年ですよね。どのようにmoreruが始まったんですか?
夢咲 “音アカ”(音楽アカウント)なる存在っているじゃないですか。私たちは、それの第一世代というか。そこで繋がってバンドが始まったんです。当時は教養主義的な側面がまだあって、(音楽に)詳しいヤツが一番偉かったんです。今は逆に、タイムラインの潮目にどう乗っかるか、その乗っかり方だけが形式化された音アカが蔓延していますよね。多分あれは、かつての僕なんだと思う。まぁ、そういうのを見ると、とっととバンドをやったらいいのにって思うんですけど。
Dex 俺は熊本出身で、当時は全日制の高校に入ったけど全然通ってなかったんです。地元でもバンドはやってたけど、みんな大学に行くまでのモラトリアム的なノリだったんです。そんな中で、自分はちゃんとバンドをやりたかったから、周りで1番一緒にやってみたいと思ったみちるに、ツイートで「東京行ったら一緒にやろう」って。
夢咲 僕も、バンドをやるために高校を中退してるんですよ。高校やめて、バンドで一旗あげるような気持ちでしたね。80年代のバンドも同じようなことを言うと思うんですけど、まさにそれでした。
──仰る通りです。まさにバンドをやるべくして、夢咲さんとDexさんは東京で集まったわけですね。
夢咲 でも、友達が全然いないから、ブッキングライブからでした。本当にゼロからのスタートだったんです。17、18歳でノルマを払うお金なんてないから、「ノルマ取りません」みたいなライブハウスを片っ端から調べて全部にメールして、返信があったとこに出る。お客さんも数人とか。今思えば底辺みたいなことをやっていたのかもしれないですけど、でも、ちゃんとやってきたんだよっていう。
──岩本さんは2023年加入ですね。
岩本 はい。2019年に、四谷アウトブレイクで7日間泊まり込みでやったイベント『7日間に及ぶ激痛』の最後の日に初めてライブを観て、moreruが存在する限りどんなバンドをやっても意味ないと分かったので、その時に加入することにしました。

ノイズは俺にもできると思った
──では、3人の音楽的ルーツを教えていただけますか? 夢咲さんはPig DestroyerやBrutal Truthが好きだったと、どこかの記事で読んだのですが。
夢咲 元をたどると80年代のサブカルチャーです。父親があぶらだこを知ってて、家に『木盤』だけあった。そこから80年代パンク、非常階段、ザ・ゲロゲリゲゲゲ、Merzbow、灰野敬二を聴くようになり「ノイズは作曲能力がない俺にもできる」と思ってノイズを始めたんです。そこからエクストリームを追い求めてグラインドコアに行って、17歳くらいでピンときたのが激情ハードコア。killieとか。激情って、いろんなものの“接続詞”なんですよ。グラインドコアと歌謡曲をつなげる接続詞だったりするから。そういう意味で好きでしたしルーツだと思います。
Dex 逆に俺は90年代がルーツで、NirvanaやSoundgardenなどのグランジから、Eyehategod、Crowbarとかに行って「遅いメタル、マジ最高」みたいな。バリトンギターの弦を張ってチューニングをBまで下げて1人で弾いたりしていました。もう一軸がボカロですね。
岩本 自分はDSの太鼓の達人に入っていたクープランの墓です。あとは、お笑いと動物。最近は虫が好きです。
──虫……。ちなみにmoreruのマーチャンダイズのデザインなどを描かれていると思うのですが、アートワークを作る時はどういうことを考えているんですか?
岩本 人間が不幸に、動物が幸せになるように願っています。

どこのシーンにも属していないから自分たちで切り開く
──moreruはトゥルーパンクを標榜していたりもしますよね。そこについて改めて教えていただけますか?
Dex 僕らがやっている音楽に明確なジャンルがない中で、みちるが言い出したのが“トゥルーパンク”。メタルもハードコアもしっくりこない僕らにとっては、逆にどこのシーンにも属してないのがいいんですよね。ただ、居場所が見つけられてないってことでもあるから、自分たちで切り開いていかないとって思っています。
──たしかにmoreruの楽曲はメタルでもハードコアでもない。爆音やノイズの中で、歌謡曲のようなメロディが耳に残ります。
夢咲 歌謡曲がめっちゃ好きなんで。おニャン子以降の下品なメロディみたいなものに対する、圧倒的なフェティッシュがあるんです。それをいかに露悪的にやるか。日本の70年代、80年代以降の何かが、自分の中に肉として存在してしまっているんです。日本に生まれたこと自体に、愛憎入り混じった感覚もすごくあって。そこからの表現ですね。これを読んでいるみんなも、自分が日本人であることが一体どういうことで何なのか、もっと考えた方がいいと思う。
軽音楽じゃなくて音楽をやっている
──SATANIC PARTYでは、moreruを知らない人もたくさん観に来ると思います。今回のサタパで楽しみにしていることはありますか?
夢咲 こんなこと絶対言っちゃダメだと思うけど、あえて言います。別に俺、SATANIC PARTY的なものとはまったく相容れないと思っているんですよ。
──そう思うのはわかります。
夢咲 80年代パンクの、なんか老害的な意見に聞こえるかもしれないんですけど、ダイブの文化がわかんないんですよ。モッシュは痛みが伴うし、祭りの瞬間に全ての法が反転するような世界観だと思う。でもダイブはなんなんだ? って。
Dex ダイブは本当に面白いと思う。まぁ、別にやってもいいんですけどね。僕らにはルールもないし、強制もしないから。
夢咲 偉そうに聞こえるかもしれないけど、俺は軽音楽じゃなくて、“音楽”をやってると思っているんです。非人格から表現されて生まれたもの自体と、お客さんとの間にしかない関係がそこにある。でも、例えばMCで「盛り上がってますか!」って問いかけた瞬間に、完全に人格が出てきちゃうでしょ。そこで興醒めしてしまう。だから根本的に考え方が違う。こう見えても、少なくとも自分はアートをやっていると思っているので。逆に俺らも受け入れられないと思っている。だから相容れないもの同士どうなるのか、ですね。

本当にパンクの力しか信じていない
──10月21日に渋谷WWWでワンマン「wwwを切断してニヒリズムの向こう側へ」が開催されました。U-20はチケット無料でしたね。ここには特別なこだわりはありますか? ※インタビューはワンマン開催直前に実施しました。
夢咲 10代にお金を払わせることは、倫理的に間違っていると思うんです。なぜなら、10代は本当にお金がないから。それで無料にしています。そもそもチケット代も2,000円なので。本当は、前年の確定申告みたいなデータを持ってきて、所得の何パーセントがチケット代、みたいな“パーセンテージ制”にしたいんですよ。
──累進課税的な(笑)。そのようなワンマンを開催することで、実際に会場に来たユースは新たな音楽と文化に触れられるわけですから、本当にすごいと思います。
Dex moreruは、いろんなところと接続しやすい音楽だと思うんです。本当に素朴な気持ちですけど、ファンがmoreruから他の音楽に興味を持って、ブラックメタルでもハードコアでも歌謡曲でも、そういうところに接続していったらいいなって素直に思います。
夢咲 俺も10代のときに観たConvergeとNeurosisの来日公演がすごく印象的で。そこで観たENDONは衝撃だったんですよ。これが日本で体験できるエクストリーム・ミュージックの一番先っぽなんだなって思った。聴くのでも観るのでも読むのでもいいけど、とにかく行くとこまで行かないと話にならない。そういう感覚を10代には持ってほしいんです。そうしたら友達になれるし、いいバンドがこの世界に生まれるんだから。基本的には、もう本当にパンクの力しか信じていないですから。
──今年の8月末に「詩人に口無し」がリリースされましたが、今はどういうモードですか?
夢咲 今、アルバムを作ってます。明確にコンセプトアルバムを意識してて、1回曲を作るのをやめて、日本史と世界史を勉強してるんです。来年くらいに出せたらいいな。ロックの歴史の名盤100枚に入りたいくらいの気持ちで作ろうと思ってるんで。
──楽しみにしています。アルバムが完成したら、またお話を聞かせてください!
INFORMATION
SATANIC PARTY 2026
2026年11月1日(日)東京・Spotify O-EAST
開場13:00/開演13:30
moreru出演:20:30〜(RIGHT STAGE)
