INTERVIEW

YASUMASA HANDA “ONE2” INTERVIEW!!

特別無料公開中!

Interview by SUNEO

 

SATANIC CARNIVALでもおなじみのライブカメラマン“半田安政”によるセカンド写真集が発売!前作“ONE”から5年。2013年から2018年までの活動を凝縮した“音が聴こえる写真集”第二弾“ONE 2”の発売が決定したぞ。題字は、OVER ARM THROWのVo./Gt 菊池信也が担当し、発売される写真集には全てナンバリングが施されている。ピックも封入されるとか!?
SATANIC ENT.では、発売を記念して、インタビューを敢行。現在に至るまでの経緯や、今、思うこと。なかなか覗き込むことのできない“半田安政”の内側をお届けします!

 

このカッコいい音楽、このカッコいい人たちをもっと聴いて、見てほしい

--「"ONE2"」ワンツーって読むんですか?

半田安政(以下:H):ワンのツー、“の”入れてもらっていいですか?
 

--正式名称決めておかないと。ワンのツーでOKですか?
 

H:ワンのツーですかね。(笑)ワンのツー、テンポがいいなと。
 

--オーエヌイーツーではなくて?オネツー??
 

H:オネツー…、お熱?お熱!(笑)。お熱やばい(笑)。「ライブの熱量がこもってるんで」、とか言って(笑)
 

--さて、本題に入りましょうか。これは何年から何年にかけて撮影されたものをまとめていますか?
 

H:2013年から2018年の5年間です。
 

--その5年間を集約した枚数は、みなさんが写真集で確かめて欲しいと思いますが、だいたい何万回シャッターを切ったかって覚えていますか?
 

H:30万回くらいですかね…たぶん。
 

--それはカメラが壊れちゃうくらい?
 

H:まるっと機材を買い替えるくらいですね。
 

--買い換えました?
 

H:買い換えました。ローンが終わりません(笑)。
 

--ローンのためにこの写真集を買ってくれと(笑)。
 

H:来年の4月には終わるんですけど(笑)、、、48回払いって結構震えますよね。
 

--震える(笑)。ここに収録されているアーティスト名を教えて頂けますか?
 

H:えっと……、back number、COUNTRY YARD、Dizzy Sunfist、DRADNATS、dustbox、GOOD4NOTHING、HAWAIIAN6、HEY-SMITH、HOTSQUALL、Ken Yokoyama、locofrank、NAMBA69、Northern19、 OVER ARM THROW、RADIOTS、S.M.N.、SHANK、SiM、snatch、SPREAD、STOMPIN'BIRD、tricot、しけもくロッカーズ、松尾昭彦…ですね。
 

--多いですね。写真集ってドキュメンタリーで追っているものもあれば、その瞬間をまとめましたというものもありますが、“ONE2”はどちらかといえば、その瞬間をまとめましたという写真集かなと思いますが、自ら乗り込んだり、呼んでもらって撮ることが多いですか?
 

H:呼んでもらったり、このメンツでこの場所でこの日は何かあるぞと思ったら、撮りに行っていい?って言ってこっちから行ったり。東京だろうが、札幌だろうが、九州でも関係なく。SiMはツアーを一緒に回ったりもしてました。
 

--この写真集を見てると、自分で色々な現場に行ってるなーっていうのがよく分かる。なんでかっていうと、でかいフェス、例えばロッキンとかじゃなくて、これなんかBLAZE UP(SHANK主催@長崎のフェス)ですよね?今年場所が変わったけど、こんな僻地(神の島公園/失礼な表現をお詫びします)に行く人なんてそもそもいないし。GIANT LOOP FES(THE NO EAR主催/山梨のフェス)に行って第一線でやってるカメラマンも正直今はいないと思います。
 

H:だと思います(笑) 。
 

--カメラマンとバンドマンとの関係性もそうですし、立ち位置の違いもありますが、半田さんの場合、限りなくバンドマンに近い目線や立ち位置の中、関係性を築いているっていう印象です。距離感の作り方ってどうしてるのかな?と興味がある方も多いと思います。
 

H:作り方っていうか、いきなり全てをひっくり返すようなこと言いますけど、根本として、ライブ写真が撮りたいわけじゃないんですよ、僕(猛爆)。音楽が好きなだけで。そこにカメラがあったから的な。
写真は、中学の時に質屋でお年玉で買った一眼レフがあって、それで写真を撮り始めたんですが、高校生になったらHi-STANDARD、BRAHMANとか、AIR JAM2000、(AIR JAM)98のビデオとかをちょっと悪い奴らが見たり聴いたりし出して(笑)、2000年が高校二年生の青春ど真ん中で。ギターとかもやり始めて。
その後、専門学校で上京してきたんですが、専門学校に入るのがまず自分の中の目標になってしまっていて。地元は静岡なんですが、専門学校に行かせてもらって、東京に出てきたはいいけど、そこで目標というか、やりたいことが終わっちゃって。「写真って食えるんだろうか?」って。「食うぞ!」っていうより、「大変なんだろうな」って。そんな話ばっかり先生たちから聞かされるわけで。「カメラマンになるには実家の蔵ひとつなくすくらいじゃないと機材も高いし無理だぞ。バズーカ(みたいなレンズ)1発で100万円だからな」「ですよねー!」みたいな感じで(笑)。
その専門学校で同じクラスの女の子が、同じ静岡出身で、さらに聴いている音楽が近いことが分かって、最近のオススメのバンド誰かいる?って聞いたら「Hawaiian6」って教えてくれて。それが「SOULS」が出た頃だったので、早速CD買って「やべえ!」と思って。
その子との縁もあって、「What's going on?」ってイベントが原宿アストロホールで2003年の1月にあったんですが、チケットなんとかして行くことができて、そこでHawaiian6を初めて見ましたね。
その頃にはもうバンドの写真を撮ってて。そのきっかけは、2002年の12月くらいに、ESPに通ってる女の子と知り合ったところから始まってて。

--ナンパで知り合ったんですか?
 

H:いや、ナンパじゃなくて。なんだったんだろうなあ……。確かその子がマネジメント科みたいなのに行ってて、教材にさせてもらってるバンドがいて、「写真撮りに来る?」って言われて、「バンド好きだしなぁ」と思って写真撮らせてもらって、なんとなく「あ、これだな」と思って。
音楽が好きっていうのと、自分が写真を撮れるっていうところのクロスオーバーが“ライブフォトグラファー”だったっていうだけの話で。だからなろうと思ってなったわけじゃなくて、これだなと思っただけです。

--専門学校に入った時の話に戻ると、カメラマンとしてどこを目指すっていうのは、卒業するまでなかったってこと?
 

H:そこに通いつつなんか見つけられればなって。
そもそも飛行機が好きで、近所の航空自衛隊の航空ショーに行って写真を撮ったのがカメラを持った一番最初のきっかけなんです。“写ルンです”で撮ってたのが最初で、自分の目の前の景色を切り取って持って帰ってこれたのが嬉しかったんですね。
そして「もっと大きく撮りたいなぁ」と思って一眼レフ買って。専門学校卒業した後の進路として「飛行機のカメラマンは多分需要ないしなー」「どうにかなるんだろうか」って思いながらも勉強して課題を日々こなしていく中で、音楽の現場との出会いが降ってきたという感じです。

--元々自分が聴いていたものがそこにクロスオーバーしてきて、「じゃあ一緒にやっちゃえばいいじゃん!」みたいな。というか「一緒にやりたいな」というニュアンスですか?
 

H:うん……やりたいな、かな。…そうですね。

--「やるぞ!」っていうよりか、「これ、、、やっていきたいな」みたいなゆるいテンションだったんですかね。
 

H:まあ、ゆるいテンション……
 

--逆にそこから思いっきりギアが入った瞬間っていつだったんですか?
 

H:ないですね。
 

--いまだにない!?
 

H:はい(笑)。だって、バンドがいないと成り立たないわけじゃないですか、ライブカメラマンって。こっちがギア入れたところで、バンドと足並みがそろわなかったら空回りするだけなんですよ。ある意味、ギアを入れる必要がない。
 

--逆に言うと、撮る時は常にフラットだと。
 

H:そうですね。受け手なんでギアは前進も後進もしない、ニュートラルです(笑)。
 

--受け手発想なんですね。
 

H:だって、バンドがこうだよって提示しているところを、「いや、こうでしょ!」ってこっちが提示するもんじゃないと思うんですよ。そのバンドに適した切り取り方はあると思うんですけど。作り込むのとかはあんまり興味ないです。「ライブやってるよー!想いを鳴らしてるよー!!」っていうのを、どう切り取って、それをどれだけ純度が高い状態で「こうなんですよー!」って伝えられるか。
カメラマンを通してる時点でフィルターがかかっしまってる状態ではあるんですけど、できればそのフィルターをかけたくなかったり、むしろそれをブーストさせて「こうなんだよ!」って増幅して伝えてあげられるかっていう。だから「自分はこうなんだ」じゃなくて、バンドのかっこよさだったり言いたいことだったり、ストーリーをアウトプットさせるツールのひとつになりきる、というか。
ライブカメラマンなんてバンドがいなけりゃクソの役にも立たないんで。こっちがどれだけやる気があっても、バンドの雰囲気とか意向に合わないとやっぱそれは出せないと思うんですよね。
それが合致したらすごくいいと思うんですよ。Hi-STANDARDはTEPPEIさんがいて、BRAHMANは三吉ツカサがいて、Hawaiian6は塁さんがいて、とかみたいに。長くバンドと一緒にいて、それぞれの空気感に合わせてチームとしてやってきているのを見てると、なるほどそういうのもあるのかと思ったりしたので。

--純度の問題になってくるんですが、バンドが赤ですって言った時に、半田さんが言ったように無色透明のフィルターとして「赤なんです」って伝えられていたらいいんですが、最近ではだいたいそのカメラマンのカラーがついていて、だったら赤のカラーを持つカメラマンが撮ればいいのに、赤なんだって言っているバンドに対していきなり青っていうフィルターを持った人が撮って、その撮るカメラマンの「青じゃないですか?」というところにひきずられていってもOKっていう部分が結構増えてきていると思っていまして。
例えば、このカメラマンさんに撮ってほしいんですって若いバンドが言うのとか、それって君たちの実力では違くない?というか、身の丈に合ってないというか。時代に求められたことをしなきゃいけないけど、求められてるものに寄せすぎてて何かを見失ってるなっていう感覚もちょっとあったりしませんか。

 

H:……そうですね、それってたぶん「違和感」という言葉になると思うんですが、違和感って「ひっかかること」だと思うんですよ。SNSが発達してきて情報が流れるスピードがどんどん速くなってく中で、どれだけの違和感を使って引っかかって見てもらえるか、どれだけフックをきかせられるかっていうところでそうなってきている気もしますね。なのでそれは今の時代の結果、だと思いますね。
 

--あと、写真っていうものの使われ方がかなり変わってきたと思います。もともとは雑誌で、こうやって(手にとって見てもらえる状態で)写真集を出せればいいけど、昔は、基本は雑誌で使われることが大前提で、そうすると必要な枚数も少ないし、シャッター数的なものも決まっていたと思うんです。それが時代の変化で、デジタルとかSNSだとかWEBに写真が使われることが主になってきて、2010年を超えたあたりからそれが加速したなと感じています。
 

H:それはやはりTwitterの普及だと思うんですよね。それで言えば、今、ライブが終わったあと写真をバンドがUPして「photo by 〇〇」ってみんなやるようになったじゃないですか。あれやり始めたのってSiMと僕なんですよ、言ってみたら。
まぁそれがどうってわけじゃないし先駆者ヅラするつもりも全くないんですが、2015年のWE HATE COLD TOURで、北海道の道内のツアーが全部SOLD OUTしてたんですね。それを道内のバンドに言ったら、「いや、凄いことだよそれは」って言ってるわけですよ。そんなトピックが世の中に伝えられないのはもったいないと思って。で、マネージャーと話をして、そこからツアーに帯同してライブ毎にオフィシャルで1枚ずつ写真をUPするようにしました。あの当時はBRAHMANくらいしかそういう事をTwitterでやっているバンドを見掛けませんでした。
 

--そうですよね。北海道ツアーにどこかの媒体が帯同してることはありえないだろうし。
 

H:やっぱり、その“バンドが上がってほしい欲”というか…。自分が「この人たちカッコいい!」って思うから撮らせてもらっているところはすごい大きくて。「このカッコいい音楽、このカッコいい人たちをもっと聴いて、見てほしい」っていうのが僕の中にはあるんです。
 

一緒にいさせてもらったのはお客さんも一緒だし、「こうだったよね」っていうのを共有したかった

--一番初めはアーティストのためにと始まったものが、「とにかく世の中に伝えることのためにカメラマンを連れて行っている」みたいなことになってきてしまっているのかな、、、と思っています。
 

H:最近はそういう風になってしまっているのも見受けられますね。デイリーの結果に追われすぎちゃって、写真が消化される。撮っているほうも疲労・疲弊するし、ツアーって、バンドも日々過酷なロードで疲弊して来るわけじゃないですか。バンドが疲れてくると、絵的にも疲れてるライブになっちゃう。
単に「カッコいいだけの写真」はそんな時でもいくらでも撮れるし、こちらが作り込んで毎日調子いい写真は出せますし、やれるとは思うんですけど…。それは嘘というか、そこから僕は目を逸らせないんですよね。
見る側としては、疲れたところも、その前ピンピンだったところも、同じテーブルの上に「はいどうぞ」って見せられるわけだから、それは違うかなって。ありのままを見せていいんだけど、穴ができちゃうじゃないですか、Twitterって流れちゃうから。見逃すこともあるし、毎日見てる人もいるかもしれないけど、パッとまとめて見れないし。まとめてみればストーリーができるけど、流れてっちゃう情報だから、よくない時の写真をパッて見られて、「ふーん」って思われちゃう可能性が高いワケじゃないですか。
だとしたら、無理に帯同しない・させないで、ここぞって時に行って、バシッとかっこいい写真を撮ってそれを世に出したほうが効果的。だし、かっこいい、と思いますねぇ。
 

--演者もカメラマンも同じだと思いますが、自分たちがこうだっていうのを見せたいところに寄り添っていったり目指していくところから、求められることに応えるというところを、必ずどこかのタイミングで迎えると思っていまして、でもそれは寄せすぎてもダメだし、、、っていうところでいけば、写真っていうのはダイレクトに分かりやすいものだから、言い方が悪いけど「媚びてるな」っていう写真を見ないわけでもないんですよね(苦笑)。
 

H:でも、日本の音楽マーケット自体がみんなが欲してる写真を「正」としてるから、Twitterやinstagramの“いいね!”の数字がつかない(伸びない)。
SiMのMAHくんともツアーに帯同した時に話をしてて、写真をセレクトしてる時「この写真やばくない?」「やばいっすね!でも、、、伝わるかな…」「そうなんだよね…」「だったらこっちの写真ですね」「そうだねぇ」って言ってオフィシャルの写真を決めたりしたんですよ。もちろんバンドによって世に出す写真の雰囲気は違うんですが、例えばSiMで言えば、分かりやすく顔の見える写真ばかりじゃなく、曲の雰囲気の乗った写真を彼らと撮っていたつもりだったので。ブロマイド撮ってるわけじゃないんで…。求められればやりますけど、それなら僕はちょっとゴメンナサイ…みたいな。
 

--求められてる像と、自分たちが良しとしてる像とをどう分別して、出しどころをこっちも考えながら進めていかなきゃいけない。今までより考えなきゃいけない、感じさせなきゃいけないことが増えたと思うんですよね。
 

H:そうですね。僕、経歴が…、マキシマム ザ ホルモンのスタッフとしてミミカジルにいたこともあるので、バンドをどう見せようっていうところも考えながら撮ってるとこもあります。だから、さっきの話に戻ると、バンドを知ってもらいたい、よく見てもらいたい、カッコいいから聴いてもらいたい、じゃあどういう写真を世に出すべきか、っていうところもなんとなく考えて撮ったりするんです。
でも、基本は僕は受け手だからあまり作り込まない。フラットに、音を曲を感じたままに撮る。
 

--カメラマン半田としては、「作り込まない」っていうのは信条にしてますか?
 

H:いや。そういうわけじゃないですよ。
 

--あ、そうなんですね(笑)。まとめたかったのに(笑)。
 

H:作り込まないのを信条にしてるわけじゃなくて、なんだろう……もちろん、曲を知ってれば撮れる写真ってあるんで、そこで狙い撃ちはします。僕の中ではそれは“作り込み”の一種ではあるかなと。100ある会場で100同じ写真はほぼほぼ撮れないんで、じゃあ今日ここでどう撮れるか、っていうのを会場を見て考えて、「ああ、ここからああ撮れば、あの曲のあの時にかっこよく撮れるな」って撮ることはあります。それが僕の中の作り込みではありますね。そのくらいはやります、さすがに(笑)。
 

--それってその瞬間を切り取りたいからそこにいるっていう感覚ですよね。ここでこうなるって予測するのは、誰に教わったわけでなく、そこまでの関係値もあって、カメラマンの感性が働いてそう撮ろうとしている。それは意志なわけであって、作り込んでるということではないと、僕は思いますね。「君、そこで手を上げておいて!」ってなると演出になっちゃうけど(笑)。
あとは照明との兼ね合いも難しいと思うんですよ。最近カメラマンを連れていくのに照明スタッフを連れていかない現場も多くありますよね。

 

H:あぁーそうなんですか…そんな現場もあるんですね。
 

--「君ら誰に対してライブしてんの?」って思ってしまうこともあります。本来はライブはライブハウスに来てもらったお客さんに対して100%やって、こういう現場があるんですよって純度が高いものをカメラマンに切り取ってもらって世に出してもらって、「このやばい瞬間、みんな次来て体感したほうがいいよ」っていうものとしてライブ写真がある。それが最近ではもう何かが逆転してしまって……。
もちろん現地の照明さんを悪く言うわけじゃないけど、でも、知ってるバンドじゃないのにバーンとやってもらって……。しかし、ライブを「SHOW」として捉えた場合は、目の前にいる人にどのように接するかっていうのが大前提だけど、カメラマン、ひいては絵素材としてのものにかなり気持ちが寄りすぎてしまってるのかなと。そうすると、その実力に見合ったカメラマンがそこにいなくても、「撮る」っていうことが必要になってきてしまい、「お前、誰だよ!?」みたいなカメラマンがこの世の中にめちゃくちゃはびこることになって、すごい悲しいなって瞬間があったり。カメラマンがそのライブの一部になっている時があります。良くも悪くも、馴染んでればいいんですが、「お前、それ撮りたいからそこにいるの?」みたいな(苦笑)。
分かるけど、今この目の前のお客さんからしたらめっちゃ邪魔だよ、みたいな瞬間を結構見るんですよね。仕事で接するカメラマンでそういうのはほとんどないですが。むしろTEPPEIさんみたいにそれも込みでそこに入っていくっていうのは、ある種正解なんですが。

 

H:まあBBQ CHICKENSは(猛爆)。
 

--ああいうのは、逆に言うといいお手本で、あれは完成されたスタイルだと思ってます。そうではなくて、ちょっと肩揺らしてノリながら撮ってて、ステージ上にいる、みたいなのがたまに。。。消費されるがための写真を出すことに対してみんなが目を向けすぎてて、もっと大事なことがライブハウスの現場でちょっと失われてるんじゃないかなって、考えてしまうことも増えました。
 

H:一歩引いて言うと、不況のせいなんですよ。みんなお金がないじゃないですか。広告宣伝費みたいなもんなんですよ、カメラマンが。毎回広告打ててるようなもんだし、それを使う媒体はSNSだからタダだし。かつ、集まった素材はDVDなり、DVDに付ける冊子なり、新しいジャケやアー写に使える。その度にわざわざお金を使わなくても、撮りためたものが得られる。っていうところではカメラマンを連れていきたいっていうのはすごく分かる。
あとは、デジカメの普及っていうところで、写真が身近になったところはある。すごくいいことだと思うんですけど、「自分の写真を見てもらうことにどれだけ自分が喜べるか」、みたいな人が増えてしまったのは、写真っていうものの垣根が下がって、写真を見せることの敷居が簡単に跨げるようになった結果だと思うんですよね。我々のような先にやらせてもらってる人が、いい手本になれてないのかなぁっていう言い方をせざるを得ない。
写真をやってますっていう子たちがちゃんと学ぼうとしてくれればいいんですよ。人の写真を見る、撮ってる姿を見る、目で盗むっていうことをしてくれればいいんですけど、「半田さんの写真好きなんですよ!」「おぉ!ありがとう!写真集買ってくれた?」「持ってないんですよ!」みたいな(猛爆)。
僕の母校の写真の専門学校もそうなんですけど、入校者数が落ちてきているそうなんですよ。少子化もあると思うんですけど、一番の原因はデジカメの普及だと思うんですね。フィルムの時代で言えば、僕はフィルムも通ってきてるんですけど、やっぱりシャッタースピードとか絞りとか分かってないと撮れない。でも今はパシッて撮ってその場で確認して「ここもうちょっと……」って思ったら撮り直せちゃうんですよね。
それはそれで便利で素晴らしいことだとは思うんですけど、結果として、撮り直しがきいちゃうってところでは基礎知識がいらない。
まぁもちろん「別に基礎知識なんてなくてもいい写真が撮れればいいんだよ」とも思うし。「この写真撮ったんだ!すごいね!」って写真が撮れればいいんですけど、やっぱりライブにおいてはお客さんの邪魔にならないように極力務めることですかねぇ…僕自身常に存在自体邪魔だとは思っているので…。
さっきも言いましたけど、ライブカメラマンなんてバンドがいなければクソの役にも立たない。それを分かった上で、やらなきゃいけないって常日頃思ってます。
 

--難しいですよね……。
 

H:そう、すごく難しいんですよ。日本の音楽マーケットでは、誰が撮ったっていうところも重要だったりするんですよね。もちろん、ライブカメラマンだって、バンドの写真を撮ってるけど芸術的な写真を撮ってる自負はもちろんあってしかるべきなので、アーティストでもあるんです。でもやっぱり、バンド様々だと思っているので「俺が俺が」は僕はできないなぁと…。
とはいえ、誰が撮ったか、「あの人が撮ったんだ、じゃあ見てみよう」っていうのも、「あの人の写真すごい好きなんだよね」っていう理由だったら、全く申し分なく嬉しいことだとも思いますが。
 

--「あの人の写真好きなんだよね」っていうのも、本当の意味で言えるくらい写真を見てるのかと、僕は疑問に思ってしまうんですよね。仕事をする時って、PCの画面上でものを見て判断したりするけど、やっぱり焼いてもらったり、色見本で見るものは違うし、それがA3で見るかA4で見るか、もっと小さい何センチの小窓で見るかでそのテンションはだいぶ違うはずなのに、どれを切り取っても同じ感じ方。踏み込んで言えば、携帯の中のサイズが「正」とされてきてるから、価値観がどこにあるのか分かりづらくなってきてしまいますね。
 

H:というところでは、向き不向きだと思うんです。TwitterとかInstagramで流れてきたとき、「あ、この写真かっこいい」って分かりやすい写真を撮れないといけない時代なんですよ。だから呼ばれたバンドの色をプラスアルファで見てもらうために、レタッチや加工も必要だったりしますね。
 

--そう考えると、これ(写真集"ONE2")は物理的にSNSのタイムラインには流れないものにしたわけですよね。デジタルじゃなく、フィジカル(紙/形)だから。じゃあ写真集にする意義ってどう捉えていますか?
 

H:5年前に、それまでの10年間のひとまとめとして"ONE"を作ったんですけど、それは、自分がやってきた10年を改めて振り返りたかったのと、NOBの写真を売り物にして世に出したかったんですよ。
 

--“売り物にして”って言い方をちょっと変えなきゃいけないと思うんですが、売り物っていうと“商売”という見え方がするけど、お金を出してもほしいって思うものにしたかったってことですよね?
 

H:見てもらうものに対しての価値を見出したかった…んー違うな…。
 

--難しいところだと思います。いろんな人に見てほしいっていうと、インターネットや携帯が普及し、デジタルに落とし込む、モバイルやWEBサイトに落とし込むのはもちろんだと思うけど、残すっていうことは、僕らが扱っているのはデータのようでデータじゃないから、瞬間ってそういうもののなかでまたちょっと違う気がしていて。
 

H:ちゃんとお金を出して、あのバンドを知ってた人たちに価値あるものとして手元に持っておいてもらいたかった。だからNOBを入れて写真集を出したかった。ですかね!前回出したのはその2つの理由がでかいです。
 

--今回は?
 

H:前回は2013年に出したんですけど、それから5年撮ってればだいぶ写真もたまってきて。2000年にHi-STANDARDが止まって、Hawaiian6が出てきて、NOBも出てきて、locofrankも出てきて、僕の好きなメロディックシーンが湧き立ったんですね。その後、NOBが止まってしまって、dustboxとかOVER ARM THROWとかHOTSQUALLとかと知り合っていって。一緒にいさせてもらって見てきたそのシーンの移り変わりだったり景色って、すごくいい景色だったんです。一緒にいさせてもらったのはお客さんも一緒だし、「こうだったよね」っていうのを共有したかったところもあるんです。なので、前回からの続編ですね。この5年間の共有というか。「この瞬間よかったよね」っていうのを伝えたかった。
前作は、2011年に東日本大震災があって、東北ライブハウス大作戦とかで撮った写真が割と多かったんです。今作は、その後どうだったかという続編。分かりやすく“2”なんです。
あと、バンドマンの使用する機材の移り変わりも楽しめる(笑)。横山(健)さんのギターが全部グレッチだぞっていう(笑)。前回は全部助六なんですよ。ギターが違う。僕がギターキッズなんでこういうの凄く嬉しいんですよ。「ギター変わってる!」みたいな。
Hawaiian6を聴いたのがこのシーンを撮り始めたきっかけなので、今回掲載することにOKもらえたのは嬉しかったです。撮ってなかった時期があるんですね、Hawaiian6。実は10数年前に、横須賀かぼちゃ屋でバカスカとストロボたいてめっちゃ怒られたことがあって(汗)。
 

--ダメですよ、あんな狭いところでバチバチやったら!(笑)。
 

H:僕もその当時現場を知らないクソガキだったんで、撮りたい気持ちが先行したんでしょうね。もちろんそういう時期もありました。めっちゃ怒られました。「あぁ、もう二度と撮れないんだろうな……」と思ったんです。「また撮りに来てよ」とは言ってくれましたけど、行けるわけないじゃないですか。猛省しましたね。
で、時を経て、ロコダスト6(2013年)が集うようになって、僕もそこに行くようになって、だんだんまた距離が近くなって。そこでまたHawaiian6を撮るきっかけが生まれて。これに入ってるんですけど、dustboxのツアーにHawaiian6が出た時の郡山の打ち上げの時なんですけど、すごくいい夜で、(安野)勇太さんが色々話をしてくれて。ほんと怒られた時はまじ怖かったですからねぇ。
 

--それはみんなに怒られたんですか?
 

H:まずマネージャーさんから怒られて、「すみません」って。最後メンバーに頭を下げてから帰ろうと。畑野さんは「そう?分かんなかったわ、またな」、TORUさんは「全然いいっしょ」みたいな。最後、勇太さんが「な、お前」って。
いやもうボロクソ泣いて(笑)。だって、好きになったきっかけのバンドに迷惑をかけちゃったっていうところがやっぱり。怒られたことじゃなくて迷惑をかけたことにすごく申し訳なくて。
で、間が空いてまた撮らせてもらうようになって、すごくいい話をして嬉しかったっていう5年間が今回入っているという。
 

--一皮むけたと。いろんな意味で(笑)。
 

H:一皮むけたわけじゃないですよ。手術はしましたけど(笑)。今絶対求めたでしょ!(笑)まぁVICEのリンクは貼ってもらって(笑)。話を戻すと、、、ずっと音楽が好きなまんまできてるんで、単純に。
だから今回back numberも入れさせてもらったんですよ。あの人たちは根本がしっかりバンドマンで。この間、東京ドームのライブを撮りに行った時も、すごいバンドマンたる真っ直ぐなライブをしてて「この人たちはバンドマンなんだなぁ素敵だなぁ」って思いました。だから、好きだから入れさせてもらったんです。
バンドが、バンドマンが、音楽が好きな僕がかっこいいと思った写真集だから見てって。信用して、この人たちかっこいいから見て!っていう感じです。
すでにSNSとかで世に出た写真もあるんですけど、改めて見てもらいたかったり、24バンド入ってますけど、1バンドずつの写真の集まりって感じなんです。だから、ざっと見たら、「この写真、既視感ある」って思う写真もあるかもしれないけど、それはあって当たり前で避けられないんです。だってこのバンドのこの瞬間、いいから入れたっていうのもあるので。
 

--写真集のことを1ページ1ページあれこれ聞くのは正しいと思っていないので(笑)、手にした人がこのインタビューを読んで「ああ、こういうことだったのか」って答え合わせをしてもらうのがいいことだと思ってます。自己弁護ですが(笑)。最後、伝えたいことは??
 

H:やっぱり見てもらいたいんですよね、共有したいというか。なんで共有したいかっていうと、この人たちかっこいいじゃん、ねえ?。っていう気持ち。僕がライブカメラマンとして存在してるんじゃなくて、単純にバンドが好きな写真撮れる人が撮ってる写真みたいな(笑)。
 

--言ってしまったら、「"ONE2"- YASUMASA HANDA -」って半田さんの名前が入ってますが、別にYASUMASA HANDAが撮ってなくてもいいってことですよね?
 

H:まあそうですね。でも、「YASUMASA HANDA」じゃなくてもいいけど、「この人たちのかっこいいとこ、僕知ってるよ」っていうところでしょうか。
ここ数年何度(カメラマンを)辞めようと思ったか…今でも考えますよ辞め時。でも、、、なんで辞めなかったかというと…、他のカメラマンが撮る僕の好きなバンドマンの写真が「こうじゃないなぁ」って思ったりしたことですかね(笑)。だから辞められなかった。諦められきれなかった。受け取り方、撮り方はもちろんいろいろだとは思ってますけども。
これからも音楽とバンドマンに寄り添って生きていきたいと思っています。


 

[INFO]
[YASUMASA HANDA “ONE2”]

商品仕様:A4サイズ /168ページ /カラー/ 価格 2,500円(税別)

販売数 :1,111部

発売開始:2018年10月3日Showcase通販サイトにて販売開始

掲載バンド:
back number
COUNTRY YARD
Dizzy Sunfist
DRADNATS
dustbox
GOOD4NOTHING
HAWAIIAN6
HEY-SMITH
HOTSQUALL
Ken Yokoyama
locofrank
NAMBA69
Northern19
OVER ARM THROW
RADIOTS
S.M.N.
SHANK
SiM
snatch
SPREAD
STOMPIN' BIRD
tricot
しけもくロッカーズ
松尾昭彦
(アルファベット順・敬称略)

[YASUMASA HANDA “ONE2”発売記念写真展]

日時:2018年10月6日(土)~10月15日(月) 11:00-20:00 ※水曜定休日
会場:RR-COFFEE TEA BEER BOOKS- 2F(東京都世田谷区代田4−10−20)
美味しいコーヒーと共にお楽しみください。ご入場の際は1ドリンクオーダーをお願いします。
※写真集“ONE2”もこちらでお買い上げいただけます。