LIVE REPORT

TOTALFAT “Evolve + Infect TOUR 2019 FINAL” LIVE REPORT!!

Report by 山口智男
Photo by かわどう

 

2019.4.6
TOTALFAT “Evolve + Infect TOUR 2019 FINAL”
@Shimokitazawa GARDEN

 

おまえらと俺たちが最高のチームだってことを証明しようぜ!

スタンディングのフロアの最後列でスタンバイしていると、SEが流れ始め、隣でさっきまでスマホでサッカーの試合を見ていた、首にタオルを巻き、Tシャツおよび短パンという暴れる気満々の男子が突然、大声で“オ~オ~オ~”と歌い始めた。いや、その子だけじゃない。そこにいる全員が“オ~オ~オ~”と声を上げ、手を叩き、飛び跳ねながら、ステージに出てきたShun(Vo, Ba)、Jose(Vo, Gt)、Kuboty(Gt, Cho)、Bunta(Dr, Cho)――TOTALFATの4人を熱狂とともに迎える。

“19歳のお祝いに来てくれたお返しに全力で踊らせるから、しっかり返してくれよ。始めようか。やっちまおうぜ!”とJoseが暴れたくてウズウズしている客席に声をかけ、“来いよ!来いよ!”とShunが手で合図しながら、演奏になだれこんだ1曲目は今ツアーでずっと終盤に演奏していた「Overdrive」だ。大きな歓声と共に”オイ!オイ!オイ!オイ!”とイントロから声が上がる。そして、“歌え!”と言われる前からバンドと一緒に歌い始めていた観客のシンガロングは、“おまえらの番だぞ!”というJoseの掛け声とともにサビで一際大きな声に! 前のほうでは、すでにダイヴも始まっている。




 TOTALFATが毎年4月6日、結成日を記念して、開催しているアニヴァーサリー・ライヴ。今年は昨年10月3日にリリースした9thアルバム『Conscious+Practice』のリリース・ツアーのファイナルを兼ねていることもあって、半年に及ぶツアーを経てきたバンドは、まさにベスト・コンディションでステージに臨んでいたに違いない。彼らはこの日、『Conscious+Practice』の曲を軸に新旧の代表曲を織り交ぜながら、予定外の1曲を含む全27曲を、2時間ほぼノンストップで披露。そして、“ツアー中、見た顔があるぞ”とShunが言っていたことからも想像できるが、19周年を祝いに各地から集まってきたに違いない観客が体をぶつけあいながら声を上げ、バンドの熱演に応えたのだった。




“おまえらと俺たちが最高のチームだってことを証明しようぜ!”とこの日、Shunが言ったようにバンドと観客がぶつかりあいながら作り出した一体感と熱狂が印象づけたのは、TOTALFATのレパートリーは、ほぼ全曲、観客を巻き込む、いや、観客が参加せずにいられないアンセムであることと、周年イベントならではのアットホーム感だった。
 時折、観客の声援が荒っぽくなるのは、ご愛嬌。そこもTOTALFAT(のライヴ)ならではだと思うが、前述したように1曲目からずっと止まらないシンガロング(ってことは、みんな歌詞を記憶しているってことだ)からは、ファンにとってTOTALFATの曲がどれだけ大事なものかが窺えたし、楽曲の新旧の区別なく、フロアが盛り上がる光景は、これまでバンドとファンがどんなふうに関係を築いてきたのかを想像させるものだった。




 もっとも、そんなアットホーム感に満足するTOTALFATじゃない。
 序盤のスタートダッシュを締めくくるパーティー・ソング「夏のトカゲ」で、観客にタオルを振り回させた後、“今日の下北沢ヤバいね。ヤバいねっていうのは、いい感じって意味だから”と予想していた以上に熱い観客の思いを感じ取ったShunは、“バッチバッチにやっちゃおうぜ!スイッチが入っちゃった!”と宣言。そこから原点回帰をアピールした『Conscious+Practice』の曲をたたみかけると、それに応え、さらに盛り上がる客席に対して、“まだまだ足りない!”と言わんばかりにJoseとShunは最後まで発破をかけ続け、そして、観客もまた、“負けるかこの野郎!”とステージの4人――ベースをぶんぶんと唸らせ、Joseの歌に掛けあうShun、ドラムの連打で演奏を支えるBunta、テクニカルかつスピーディーなギター・ソロを閃かせるKuboty、そして、伸びやかなハイトーン・ヴォイスに熱を込めるJoseに向かっていった。




 アンコールに応え、ステージに戻ってきたとき、Joseが思い出したように言った“(今日は)いつものワンマンみたいにゆったりしたところを作ってない(笑)”という言葉からは、メンバーたちがどんな思いで、この日のセットリストを作ったかが窺えたが、“ちょっとやっちゃう?”と、Joseが言うゆったりしたところを求める観客のリクエストに応え、予定になかった「See You Later, Take Care」を、JoseとShunがハーモニーを重ねて披露したことも忘れずに記しておきたい。それもアニーヴァーサリー・ライヴならではのサプライズ(と言うか、ファン・サービス)だろう。




 “何も怖いことはありません。一番大事なメッセージです”と言いながら、本編最後を「Place to Try」で締めくくる前にShunは、“19周年がゴールでも何でもなくて、19周年を迎えたことを楽しんで、20年目、走り出したいと思います。かっこいい背中を見せていくので、これからも一緒にがんばっていきましょう”と語ったが、翌日、突然発表された、10月22日の新木場STUDIO COASTワンマン公演を最後にKubotyが脱退するという報告を聞いてから、思い返せば、その言葉は、言葉以上の意味を持ち始める。いや、その言葉だけじゃない。

 序盤、Shunが挨拶代わりに言った“19周年と言うより、20年目の幕開けにようこそ。最高な夜にしようぜ。みんなと一緒にスタートしたい”も、「Walls」の前に曲に込めた思いを語った“どんなことがあっても、俺たちは立ち止まらない。壁があっても関係ねえよ” も、今では、ああ、そういうことだったんだと思えはしないか?

 本当は、ファンが納得できるまで、もっともっと語りたかったんじゃないか。しかし、ライヴを純粋に楽しんでもらいたいと考えた彼らは、その思いを渾身の熱演に込めた。
 きっと、あの日、あの場所にいた誰もが今は、バンドが演奏に込めた思いを汲み取ろうとしているんじゃないか。もちろん、中にはバンドの新たな展開を受け入れられない人もいるだろう。3人になってTOTALFATは大丈夫なんだろうかと心配している人もいるだろう。そう思う人が出ることは、当然、メンバーたちも予想しているはずだが、彼らは生粋のパンク・パンドだ。多少、逆風が吹いたほうが持ち前の闘志も燃えるはずだ。

 



 前述した「See You Later, Take Care」を演奏した後、“しっとりと終わるわけがねえだろ!”(Shun)と、「DA NA NA」「Balance」「Room45」とたたみかけたバンドは、“最後1分、全員、全力で大爆発してください!”(Shun)とゴリゴリのハードコア・ナンバー「Title Holder」を、観客に挑むようにぶつけた。そこには闘志と覚悟が込められていたに違いない。
 TOTALFATがこれからどんなふうに戦っていくのかが楽しみになった。




[SETLIST]
01.Overdrive
02.Good Fight & Promise You
03.Just for What
04.Highway Part2
05.Life Like Movies
06.晴天
07.夏のトカゲ

08.Broken Bones
09.Fear of Change
10.Phoenix
11.Your Goddamn Song
12.Hello Daphnia!!
13.Livin' for The Future
14.宴の合図

15.ROCKER'S IN DA HOUSE!!
16.Visible
17.X-stream
18.Generations Ever Last
19.Walls
20.Seeds of Awakening
21.ONE FOR THE DREAMS

22.Place to Try

en01.See You Later,Take Care
en02.DA NA NA
en03.Balance
en04.Room45
en05.Title Holder



>>>TOTALFAT OFFICIAL HP