LIVE REPORT

G-FREAK FACTORY Pre “山人音楽祭2019 Day1” LIVE REPORT!!

Report by 小林千絵
Photo by 赤城ステージ:HayachiN
榛名ステージ:半田安政
妙義ステージ:タマイシンゴ

 

2019.9.21
G-FREAK FACTORY Pre“山人音楽祭2019”Day1
@ヤマダグリーンドーム前橋


2012年から3年連続で行われた「GUNMA ROCK FESTIVAL」は、1年の休止を経て、2016年より「山人音楽祭」と名前を変えて再スタートした。「GUNMA ROCK FESTIVAL」が3年で打ち切りになってしまったことから、オーガナイザーのG-FREAK FACTORYには“3年のジンクス”がまとわりついてたという。
「山人音楽祭」の改名後、多くのオーディエンスが笑顔もしくは感激の涙を流しながら見守るステージで、茂木洋晃(Vo)は「来年できる保証はない」と言い続けてきた。もちろんそれは「山人音楽祭」に限った話ではなく、バンド活動だってそう、ファンが観に行くことだってそう。だけどG-FREAK FACTORYは身を以て体験したからこそ、「山人音楽祭」が4年連続開催できた喜びは大きい。しかも台風の影響で全国のフェスやイベントが中止を選ばざるを得なかった今年は特に、“雨バンド”と呼ばれてきた彼らの不安は想像を超えていただろうと思う。しかし蓋を開けてみれば、降水確率90パーセントという予報をひっくり返して、雨粒さえ落とさずに、2日間の祭の幕が開いた。

期待に胸を膨らませた観客を、最初にヤマダグリーンドーム前橋で迎え入れたのは、高崎頼政太鼓による躍動感あふれるパフォーマンス。胸の高まりを盛り上げるような節奏に、「ああ、今年も『山人音楽祭』が始まるんだな」とうずうずする。群馬県のラッパー・NAIKA MCと茂木による注意喚起を経て、観客の期待が最高潮に高まったところに赤城ステージのトップバッターとして現れたのは四星球。「『山人音楽祭』改め『山人体育祭』を開催します」とのアナウンスから、“誰が最初に定位置に着けるか競争”でステージに登場した4人は、自身の楽曲「運動会やりたい」でエア大縄跳びやYMCA対決など、ユニークな競技で会場の一体感を生み出していく。また「京都大作戦」のマッサージエリアで茂木と隣り合った際にできたという新曲「リンパリンパ」を披露して笑いを誘った。しかし彼らは笑いだけではなく、「玉入れならぬ魂入れ」と言い「クラーク博士と僕」をまさに魂を込めて歌い上げたり、「茂木さんみたいな平和についてのMCはできないんですが」と前置きしつつも「笑いは国境を越えると思います」と熱弁し「Mr.Cosmo」をパフォーマンスしたりと、熱量あふれるライブで観客の胸を打った。




榛名ステージをlocofrankが狼煙とばかりに「START」で幕を開けたあと、赤城ステージには打首獄門同好会が登場。彼らはうまい棒のフレーバーを叫ぶ「デリシャスティック」でライブをスタートさせると、「オッケー 山人 遊ぼうぜ!」というコールを織り交ぜた「こどものねごと」でフロアを盛り上げていく。大澤敦史(Vo, G)が、今年の夏はフェスに向けて夏の歌を作っていたと明かすも、この日は朝から肌寒い1日に。それを受けて変更したという冬の歌「布団の中から出たくない」で場内を一気に冬のテンションに持っていく。かと思えば「おじさんばっかり映るより猫の英語ばっかり写っていてもいいんじゃないか」との発案から披露された「猫の惑星」では、VJシステムに激しいサウンドと相対する愛くるしい猫の映像が映し出され、フロアからは感嘆の声が漏れた。




四星球、打首獄門同好会と続いたコミカルなモードを一転させたのはHAWAIIAN6。彼らは「楽しい昼が始まるぞ」とHATANO(Dr)が焚きつけたのを合図に「Burn」「MAGIC」などパンキッシュなナンバーを連発する。HATANOはG-FREAK FACTORYやサンボマスターなどと自らを並べて「ビジュアル系バンド」と呼んで笑いを誘いつつも、G-FREAK FACTORYに対して「出会ってから20年近く経つけど、今が1番幸せそう」と話し、「A LOVE SONG」を贈った。また「いつも通り、いつも以上にやるだけ」と告げる彼らは、台風15号による千葉などの被害に触れ「俺たちは音楽を俺たちなりに信じてる」との言葉に思いを乗せ「RAINBOW, RAINBOW」「I BELIEVE」などでハッピーな空間を生み出した。彼らのあと、榛名ステージに出演したSPARK!!SOUND!!SHOW!!のアクトも印象的だった。彼らはG-FREAK FACTORYとの面識はほぼなかったが今回声がかかったという。バンド主催のフェスだからといって、馴れ合いな関係性だけで成り立っていることではないということを、改めて思い知らされた。もちろんスサシはG-FREAK FACTORYファンをも唸らせる、グルーヴィなクレイジーなライブを見せてくれた。




竹原ピストルはギター1本で登場し、空気をがらりと変える。「ゆっくり聴いてください。竹原ピストルです」とあいさつすると、そのまま「おーい!おーい!!」へとなだれ込む。アコースティックギター1本と、ボーカリスト1人。ミニマムな編成から紡がれる「おーい!おーい!!」という歌声は音の大きさを飛び越えて、聴く者の心にまっすぐに届く。「歌の中で街が変わってきちゃって恐縮なのですが」と断ってから始まった「LIVE IN 和歌山」では「薬づけでも生きろ」というサビが胸を打ち、「Amazing Grace」では賛美歌「アメイジング・グレイス」のメロディに乗せたポエムが優しく響く。G-FREAK FACTORYから贈られた竹原ピストルと名前の入っただるまを掲げると「これ、涙が出るほどうれしかった」と、顔をくしゃくしゃにして笑う竹原。最後に「マイウェイ」を肉声で力強く歌い上げ、大事そうにだるまを抱えてステージをあとにした。

続くはHAWAIIAN6同様、G-FREAK FACTORYと付き合いの長いHEY-SMITHが赤城ステージへ。猪狩秀平(G, Vo)は序盤からギターの弦を切ってしまうというアガりっぷり。ギターの弦を張り直す間、猪狩、YUJI(B, Vo)、満(Sax)は二股をかけているとかいないとか、元カノが結婚したとか相変わらずそんな話に花を咲かせる一方、「群馬に縁もゆかりもなかったのに、縁もゆかりもできまくってもうたもんなー」とG-FREAK FACTORYへの感謝を、彼ららしい言葉で伝えると、G-FREAK FACTORYと群馬のファンに「The First Love Song」を贈る。縁もゆかりもできまくった群馬だからか、演奏はいつも以上にキレキレで「真剣にやってんねん! マジになってや!」とオーディエンスを煽り続け「Dandadan」や「Endless Sorrow」を連投して観客を目いっぱい踊らせた。




シンプルでありながら圧巻のパフォーマンスを見せていたのはザ・クロマニヨンズ。登場するなり「突撃ロック」「エルビス(仮)」とソリッドなロックンロールで場内のボルテージを引き上げていく。「ギリギリガガンガン」では「今日は最高!」と歌い、「生きる」の前には「ぶっ飛ばしていくだけ!」と声を上げる。演奏だけでなく、彼らが伝えるメッセージもいたってシンプル。シンプルなものほど伝えるのは難しかったりするものだけれど、ザ・クロマニヨンズは小林勝(B)と桐田勝治(Dr)が繰り出すどっしりとしたリズム、真島昌利(G)が高らかに鳴らすギター、そして甲本ヒロト(Vo)が全身から発するボーカルを頼りにまっすぐに伝えてくる。11曲の間、MCはたった1回。「ここまで最高! このあとも最高!」。そう言うと新曲「クレーンゲーム」や、ファンが拳で答えた「ナンバーワン野郎!」などを続け、“最高”なままライブを終えた。




サンボマスターは山口隆(Vo, G)による「お前ら全員、地球で一番踊りまくってみろ」との一言を起爆剤に「青春狂騒曲」「ミラクルをキミとおこしたいんです」と疾走感あふれるナンバーで観客を踊らせていく。また山口は「クロマニヨンズのあとでもギターめちゃめちゃうまいんですけど!」と自賛しながら自らのテンションを引き上げていった。彼らは「山人に呼んでもらったからには俺にはやらなきゃいけないことがあって。あんたの命と、令和に間に合わなかった命、そのどっちにもアイラブユーって言うことです」「俺たちはおめえらの呪いを終わらせにきた」と、矢継ぎ早に優しい言葉をかけながら、そのメッセージを込めた楽曲を力強く演奏していく。そんな3人の熱量はものすごい勢いで会場を満たし、まるでワンマンライブに来たかのような充足感だった。




榛名ステージの最後に登場したのは「山人音楽祭」初出場の群馬出身のバンド・Ivy to Fraudulent Game。彼らはこの日出演していた多くのアーティストのように声を荒げたりすることなく、静かに闘志を燃やしていく。しかしながら演奏は徐々に熱を帯び、「blue blue blue」では寺口宣明(G, Vo)が感情を吐き出すかのようにシャウトし、大島知起(G)はステージに倒れ込む。静と動を使い分けて観客を魅了した彼らは、「(G-FREAK FACTORYに)気付いてもらえたんだなあって。みんなに気付いてもらえて本当によかった」と頬を緩ませ、叙情的なライブで榛名ステージを締めくくった。




赤城ステージにはいよいよG-FREAK FACTORYの登場。原田季征(G)、吉橋伸之(B)、渡部“PxOxN”寛之(Dr)、そして高崎頼政太鼓による生命力あふれるインストゥルメンタルで期待を最高潮まで誘ったところで、茂木がゆっくりとステージへと進む。彼は「生きてたか? おい、山人! 最後の1枠、地元のビジュアル系バンド。残りわずかだ、生きて帰れよ」と言葉を重ね、バンドは早くも「日はまだ高く」を投下。さっそく会場にすさまじい一体感を生み出した。茂木は「山人音楽祭」について「このフェスは町おこしのためにやっているわけではありません」と断り、「化け物みたいなミュージシャンたちと、この世界でどれだけ燃やせるか」だと熱弁。その最後を担う自身たちのステージで、さらに“燃やせる”ためにと、バンドはさらにエネルギッシュにパフォーマンスをする。「Too oLD To KNoW」では茂木がフロアに進み、ファンに支えられながら歌唱。サビでは茂木の周りのファンはもちろん、スタンド席エリア後方のファンまでもが、拳を突き上げながら歌っていた。



そんなドームを見渡し、茂木はうれしそうに噛み締めたあと「お前らが見てるのは、ローカルバンド史上最高傑作、G-FREAK FACTORYです。よろしく」と言い放った。「GOOD OLD SHINY DAYS」「EVEN」の2曲を披露したアンコールの最後には「今日もカッコよくてすいません!」と笑いながらも胸を張り、「俺たちが群馬のG-FREAK FACTORYだ!」と改めて宣言して、初日の幕を下ろした。




本編、「Too oLD To KNoW」の最後に「でも二度と無駄な血は流すな」のフレーズをドーム中の観客が大きな声で歌ったあと、茂木はつぶやくように「お前ら、ライブ観に来たんじゃなくて、しに来たんだな」と言った。そうだ、G-FREAK FACTORYのライブは、ただ観ているだけではなく、茂木の言葉に共感したり、もしくは反対だと声をあげたり、いずれにしても参加せずにはいられないのだ。1人ひとりが意志を持って拳を突き上げている。だからドームいっぱいに生命力が宿るのだ。そんなことを改めて教えてくれた瞬間だった。






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