CULTURE

THE CRAFTMAN SATANIC CONNECTION Vol.01 Jun Yoshizaki from LIVE HOUSE FEVER

SATANIC ENT.はライブハウスから生まれるシーンを紹介するメディア。では、ライブハウスではバンドやアーティスト以外にどんな人が働いているんだろう? ライブハウスの店長さんやスタッフさんはどんな経緯を経て、そこで働いてるんだろう? 言わば"ライブ職人さんたち"に、そんな疑問をストレートに投げつけまくるのが本企画"THE CRAFTMAN SATANIC CONNECTION"! 登場するのはPA、照明、バンドのマネージャーさんやレコーディングエンジニア、ライブハウスシーンを取り巻く人を徹底追求!

記念すべき第1回目は新代田のライブハウス、FEVERで働くPA、吉崎順さん。彼は同時にMEANINGのGt&VoのYOKKUNとして活躍している。さて、吉崎順さん、アナタは一体どんな仕事をしている何者ですかっ???  

INTERVIEW

卒業後にライブハウスで働きたくて上京

ーお名前とお仕事を教えてください。
吉崎順(以下、吉崎):吉崎順と申します。34歳です。僕は新代田FEVERというライブハウスでPAをやっているんですが、レコーディングもやっていたりするのでサウンドエンジニアという職業になります。

ー良いお名前ですね。順の由来は?
吉崎:それ、PAという職業の説明に関係ありますかね…。親父がスミユキっていって純粋の”純”に”幸”って書くんですよ。その”純”から”ジュン”をとったらしいんですよね。で、漢字がそのうちの親父と同じ漢字の”ジュン”だとあんまり良くないと。画数みたいなもんがあったようで、なんか順番の”順”で真面目に生きるとか、なんかそんな思い入れがあったみたいです。

ー順さん、出身地は?
吉崎:鹿児島の喜入町です。石油基地があるんですけど。1回『あぶない刑事』が撮影に来たんですよ。

ーなんと! タカとユージが!?
吉崎:そう。『あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE』で。好きなんですよ、あぶない刑事シリーズ。

ーハンパねぇ! ところで前々から思っていたんですけど、PAって何の略なんですか?
吉崎:ちょっとイメージしにくいと思うんですけど"Public Addres"の頭文字でPA。大衆に伝達するって和訳ですね。つまりバンドの音をライブハウスにいる皆さんに伝える、という意味です。

ーいつから新代田FEVERでPAをやっているんですか?
吉崎:たしか9年か…10年くらいやってるかもしれませんね。新代田FEVERは、今年オープン10周年を迎えて3月から11年目に突入するんですけど、最初の1年は別のライブハウスに勤務していたんです。渋谷にあった乙とDESEOの方に。最初は新代田FEVERが人手不足でお手伝い的な感じでいて。



ー新代田FEVERにお手伝いに呼ばれたのは、どんな経緯で?
吉崎:それはMEANINGですね。バンド経由でSTOMPIN' BIRDのスタッフさんと繋がって仲良くしてもらって。その頃は色んなライブハウスでPAをやってみたいって気持ちもあったんで、それがキッカケなのかな。



ーそっか、吉崎さんはMEANINGのギターですもんね。
吉崎:そうですよ。MEANINGのメンバーです、私は。バンドは2004年にスタートして今に至るわけですけど、最初はMEANINGのPAでしたからね。2005年くらいに加入したんです。今も楽しくバンドをやっていますよ。

ーPAの道に入った理由は?
吉崎:僕、PAの専門学校に行っていて。卒業後にライブハウスで働きたくて上京してきたんですよ。

ー学校通ってたんすか! 最初に働いたのが渋谷のDESEO/乙ですか?
吉崎:いや、TaU KITCHEN(タウキッチン)っていう渋谷のライブハウス。そこも、もう無くなっちゃったんですけどね。まぁ、いきなりPAなんてやらせてもらえないから最初はドリンクカウンターに立ったり照明やったりしつつ。

ーそもそも、なんでPAの専門学校に行ったんですか?
吉崎:もともと機材を扱うのが好きな子供だったんですよ。音を録音できるってことが楽しかったんですよね。最初は独学でレコーディングを学び始めて、だんだんのめり込んで。マイクとミキサーも使い方もわからず、とりあえず買って、家で自分の声や外の音を録音したりして。PA卓に触る機会が増えてきてから、どんどん楽しくなって。



ーすごい子供っすね。
吉崎:音響機材とか、家にコンポとかあるじゃないですか。ああいうのもスピーカーを変えたりとか。それが初期衝動。高校の頃とか学園祭とかでライブを自分たちでやるときにPAっていう役割があるんだなって知って。その辺から興味を惹かれていったわけです。

ーははぁ。どんな中高生時代を送っていたんですか? 鹿児島で。
吉崎:うち、ゲームがいっぱいあったんで「アイツん家いけばゲームできるぜ」的な溜まり場になっていましたね。でも、ゲームで釣ってるようなもんですからね。いざってときには周りに人がいないような、そんな子供でしたよ。

ー当時アツかったゲームは?
吉崎:やっぱ『ストリートファイター』かな。今でもやっているけど。

ースト2ね。オレもやっていましたよ。初めての恋人ができたのもその頃ですか?
吉崎:そうですね、高校の最後らへん。当時は女の子が苦手で、あんまり話がしたことがない子にとりあえず告ったんですよ。小倉優子に似ていて顔がタイプだった。当時、ゆうこりんが超好きだったんで。



ー会話も無しでいきなり求愛しますかね、普通。
吉崎:ま、普通じゃ無いんでしょうけど。ぶっ込んでったら『付き合ってみたいです』みたいになって。

ー予想外過ぎるでしょ、その展開。じゃあ、その初恋人との1番のエピソードは?
吉崎:車でドライブデートしたいと思って免許合宿に行ったんですよ。頑張って免許取得して「よーし、今日はドライブだ!」っていう当日、集合したタイミングで『やっぱ好きじゃないかも』って言われてフラれました。

ー仕方ないですね。恋の始まりが急過ぎましたから終わりもスコールのように突然に。
吉崎:そう。

ーどれくらい続いたんですか?
吉崎:半年もいっていないくらいじゃないですか?

ー順さんが童貞を捨てたのは?
吉崎:え、いや、だからその子ですね。はい。そこからちょっと乱れちゃった。



ーどう乱れたんですか? 怒られない程度に性癖を教えてください。
吉崎:まぁ、なんでしょうね。そのーア○ルの方を発掘していますね。なんか門の方……門の方をまんま攻められるのはすごい好きかなっていう。

ーあ、攻められる側?
吉崎:そうですね。やっぱ門入りはすごい嬉しいですね。

ーどこまでの門入りを目指してるんですか?
吉崎:入り過ぎてもなーっていうのはあるんで。ガタガタになってもPAできないじゃないですか。だからジャックダニエルの瓶くらいじゃないですか?

ーえぇ~四角い瓶ですよ。なかなかに闇が深くて引きました。
吉崎:いや、言えっていうから! ただの冗談ですよ。ノッてあげたんですよ。

PAはライブハウスで誰よりも楽しく音楽を聴ける



ーまぁいいですけど…。じゃあ、PAさんという仕事の醍醐味、楽しい部分について教えてください。
吉崎:PAがいる場所って基本的にライブハウスの中心にあって、バンドの演奏をそこで聴けるんです。1番ダイレクトに音を感じられる場所が、そのPAブースだったりするんですよ。だから、誰よりもバンドのファン的な気持ちでライブを見れるし、ある意味、特等席ですよね、そこで自分の気持ちいいポイントで音を出せたりするっていうのは贅沢だし、最高に楽しいですよ。自分が演奏を見ながら「もっと、この部分が聴きたいな」っていうのを実践できるし、同じバンドのライブも毎回一緒なライブなんて存在しないから「今日はどうやってお客さんに届けようかな」って考えたり。もちろんバンドが目指す音を実現させることを第一に考えつつ、自分の好みも入れながら、お客さんのこともコントロールしながらのバランスをとっていく感じというか。そのライブハウスで誰よりも楽しく音を聴けてるのかなって。

ーなるほどー。じゃあライブ中にバランスを取ったりすることもある?
吉崎:うん、しますね。例えばですけど、バンドのボーカルが喉の調子が悪い時だってあるわけじゃないですか。今日は声がでにくいのかなって自分が感じたら、それをお客さんに気づかせないように、他の楽器で上手いことバランスをとって馴染むようにしたりとか。バンドがより良く見えるように調整もします。

ー繊細な作業ですね。まさに職人。順さんのPAにおけるこだわりは?
吉崎:そうですね。オレ、学生の頃は頻繁にライブハウスに通っている人じゃなかったんですよ。むしろ大人になって働き始めてから、このシーンを知った方で。

ー時間があればストリートファイターしてたわけですもんね。
吉崎:いや、行ったことはあったんだけど、ライブハウスによっては爆音過ぎて。で、オレは音のデカさに興奮することがなかったんですよ。「音デカい! すげぇ!」よりも「うわ、耳痛いしもう嫌だ」っていう。そんな体験があったから、ライブハウス慣れしていない人にもストレスなく、純粋にいいなって聴いてもらえるようなバランス感は心掛けていますね。迫力もありつつ、音楽としてちゃんと聴けるように。もちろん激しく攻めないといけないときもあるし、バンドの意向もあるんだけど、ちゃんとお客さんが聴ける音を作らなきゃなってことは考えているかなぁ…。



ー順さんがPAをやっていて1番テンションが上がったエピソードは?
吉崎:スラスラ(SLIGHT SLAPPERS)のワンマンライブっすね。確かリハのときだったんだけど、メンバーが「今日の音、すごくいいよ! 演りやすい!」って言ってくれたの。

ーつまりステージの中音が聴きやすい、ハコの鳴りが良い、自分たちが演奏しやすいって意味ですよね。モニター(ステージ最前に置かれている機材。バンドの音をステージに返す役割がある)のバランスが非常に良いという。
吉崎:そうそう。褒めてくれたのがすごく嬉しかったし、ワンマンってことでオレも気合充分だったんだけど、いざライブ本番がスタートした瞬間にモニター全部投げたの、フロアに(笑)。『ええーー! あんなに言ってくれてたのに!!』みたいな。それが1番テンション上がりましたね。PAとして上がっていいのかわかんないですけどね。ライブ後に機材が壊れていないかチェックしなくちゃいけないですし。

ーちなみに、順さんの初期衝動と言える音楽は?
吉崎:1番最初はガンズ(Guns N' Roses、ガンズ・アンド・ローゼズ)とかボン・ジョヴィ(Bon Jovi)、ディープパープル(Deep Purple)。洋楽のハードロックですね、今でも好き。中でもナインインチネイルズ(Nine Inch Nails)は昔から聴いていて今でも大好き。ライブを観に行ったことがあるんですけど本当に音がすごくて。鳥肌モノでした。照明へのこだわりも半端なかったんで。

ーその体験がPAを志すキッカケにもなった?
吉崎:そうかも。そのライブを見たのが高校くらいだったし。



ーじゃあ、自分を物や動物に例えるとすれば何?
吉崎:さっきから急なんだよなぁ…。なんだろうな…。トイレットペーパーみたいなモノですかね。

ーその心は?
吉崎:皆さんの排泄物をすべて僕が受け止めて、そのまま綺麗に水の中にスパーンと持っていきますよ、と。もう、それはすごく綺麗に拭き取りますよ。それはPAに関してもそうです。音楽という名のクリエイション、表現を僕が受け止めて綺麗にします。

ーそれで門入りの発掘作業も進められているんですね。
吉崎:そう、全部繋がっています。

ー趣味は?
吉崎:強いて言うならウーバーイーツっすかね。でも、お酒は好きですよ。

ーほぅ。好きなお酒は? やっぱりジャックダニエルですか?
吉崎:ジャックダニエルは全然飲まないです。手っ取り早く酔える氷結ストロングですかね。今のところ。

ーそこは繋がらない、と。
吉崎:うん。あんなもん入るわけないじゃん。

 

独学でも何歳からでも音楽好きならPAになれるはず



ーところで、PAになるのって何か資格とかいるんですか?
吉崎:どういうPAさんになりたいかにはよるけど、基本的には資格はいらないです。音楽好きであれば大丈夫。それが資格になります。

ー実際どうやったらPAさんになれるんですか?
吉崎:僕もどうすればなれるんだろう? って思っていましたからね。それで専門学校に通うことになったんですけど、1番重要なのは、音を出せる仲間が作れるかどうかですね。僕の場合は学校で仲間にも恵まれて、友人のバンドを呼んで自分たちでイベントをやったりしつつ、そのときに機材に触れた経験が大きかった気がします。でも、思えば専門学校に行かなくても。なんか楽しいことをやろうよってことを仲間うちで話して、バンドを呼んで面白いことをやりつつ音響機材に触れていたら、なれるものかもしれません。いきなりライブハウスに行って『やらせてください』って頼むのも1つの手段だし。まぁ、なかなかそこで受け入れてくれるライブハウスも少ないんでしょうけど、キッカケは自分たちで楽しいことをやりたいって思いを抱いたうえで、それを実践していくことだと思います。音楽イベントには必ず必要になるのがPAや照明とかのスタッフだから。

ー独学でもなれるものですか?
吉崎:全然いけますよ。今もそうですけど失敗を繰り返しながら学んでいくものなんで。たくさん勉強しなくちゃなれないものでもないしね。PAのやっていることって難しく思われがちだけど、実はシンプルなことだから独学でも本気でやればできると思います。

ーPAになるための年齢制限は?
吉崎:全然ないんじゃないですか? 自分で音のイメージとかがあるんだったら年齢なんて関係ないじゃないですか。それにPAがやっている音作りって正解がないものですからね。聴く人によって良し悪しがわかれてくるものだし決まりがない。その人の感覚が重視される仕事なんで、何歳になってもなれるしできると思いますよ。

ー最後に、好物は?
吉崎:寿司。

ーこの企画は数珠繋ぎにライブハウスのシーンにいる人を紹介してもらって繋いでもらう企画です。次の人を紹介してくれませんか?
吉崎:では、ネクストは僕の乙時代の後輩でもある照明の藤川なおみを! 様々なバンドを担当していてバリバリ頑張っています!

ーありがとうございました!




"THE CRAFTMAN SATANIC CONNECTION"第1回目、いかがだったでしょうか。第2回目もお楽しみに!
そして、吉崎順さんが勤務するライブハウス、新代田FEVERでは昨今の新型コロナによるライブ公演延期などへの対策としてYouTubeの課金性システムの利用を提案している。この機能を使うためには、①1000人以上のチャンネル登録数 ②4000時間の再生回数 が必要だ。まずは下記のチャンネル登録を!


LIVEHOUSEFEVER(YouTubeチャンネル)




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