CULTURE

THE CRAFTMAN SATANIC CONNECTION Vol.15:Kenichi Shiihashi

SATANIC ENT.はライブハウスから生まれるシーンを紹介するメディア。では、ライブハウスではバンドやアーティスト以外にどんな人が働いているんだろう? ライブハウスの店長さんやスタッフさんはどんな経緯を経て、そこで働いているんだろう? 言わば"ライブ職人さんたち"に、そんな疑問をストレートに投げつけまくるのが本企画"THE CRAFTMAN SATANIC CONNECTION"! 登場するのはPA、照明、バンドのマネージャーさんやレコーディングエンジニア、ライブハウスシーンを取り巻く人を徹底追求!
第15回目は、前回の小坂充さんからバトンを繋いで、Dizzy Sunfistをはじめ、パンクレーベルCAFFEINE BOMB RECORDSでマネージャーを務める椎橋健一さんのお話を聞きます!

Photography & Text - Yuta Kato, Edit - Ryo Tajima(DMRT)

 

Job - Artist Management

 

ライブを観れば一緒に頑張りたいと思わさせられる


ーまずはどのようにマネージャーを目指していったのか、お伺いしたいです。


椎橋:もともと友人の影響で音楽を聴き始め、X JAPANやLUNA SEAが大好きでした。高校時代には周囲もHi-STANDARDやBRAHMANを聴いていて、10代の頃から頻繁にライブハウスに通っていましたね。大学時代にとあるバンドのメンバーと親しくなり、そのバンドの運転や物販を手伝うようになりました。今振り返ると、それがマネージャーになるきっかけになった出来事だったかもしれません。そのバンドに同行して所属事務所に伺うことがあったのですが、そこで当時の事務所の社長に「音楽に携わる仕事がしたいです」と話したところ、「じゃ、うちでやってみたら」と、トントン拍子に卒業後の進路が決まったような感じでした。

 

ーそこからマネージャーとしてのキャリアがスタートしたと。

 

椎橋:そうですね、右も左も分からない状態から1,000本ノックみたいな感じで始まって、ただただ大変でした。担当だったバンドは当時30代でキャリアもあって、僕は23歳の新人。何を言われても「はい」と返事をして、必死で食らいつくしかなかったです。先輩方も怖いし、怒られるし、とにかく辞めたかった記憶です(笑)。それでもライブを観たらやっぱり頑張ろうと思えたんで続けてこれたんだと思います。

 

ーその当時、椎橋さんに仕事を教えてくれた師匠のような方もいましたか?

 

椎橋:最初の会社はBOØWYというバンドのマネージャーが作った会社で、いわゆるメジャーシーンを主戦場とする会社でした。その方に仕事のイロハを教わりましたね。マネージャーは決まった仕事内容やマニュアルもないですし、担当するバンドによってまったく関わり方も異なります。今自分が続けられているのも、関わってるバンドにたまたま自分のやり方が合っているだけで、バンドが変わればうまくいくかどうかはわからないです。そういう意味では常に手探りなんですよ。具体的な業務内容は変わらないんですけどね。基本的にはスケジュール管理、メンバーのケア、あとはライブ制作を行っています。

 

ーつまり、Dizzy Sunfistをはじめ、CAFFEINE BOMB RECORDS所属のバンドメンバーなど、常にアーティストとコミュニケーションを取ることが業務であると。椎橋さん自身は、どのような思いでアーティストと関わってらっしゃるんですか?

 

椎橋:Dizzy Sunfistに関しては、彼女たちが持っている意見や意志があるので、そこに対してプラスになれるような動きをしたいと思っています。職業柄メンバーから連絡が来れば、いつ何時でも仕事のスイッチを入れて対応しますね。マネジメントを担当して8年が経つので、当然お互いに腹が立つ出来事も起きたりしますけど(笑)。やっぱりライブを観れば「一緒に頑張りたい」って思わされるんです。彼女たちに関しては、ここぞという所で必ずキメてくれるので、僕も励まされていますね。


 

椎橋:その他、レーベル所属のアーティストは、関わらせていただく以上、より大きくなっていってほしいという思いがあるので、尻を叩くようなイメージで接していますね。Dizzy Sunfistと一緒にやってきて経験したこともたくさんあるので、そこで感じた感想を素直に伝えるようにしています。ーーとはいえ、僕の意見が100パーセント正解ではないので、「あくまで個人的な意見として」メンバーに伝える感じですね。アーティストから自分がどう見えているかはわかりませんが、大袈裟にいえば家族みたいに思ってもらえていたら嬉しいですね。

 

ーちなみにですが、椎橋さんはマネージャー業とは別に個人イベンターとしても活動されてらっしゃるんですよね?

 

椎橋:そうですね。イベントはあくまで趣味ですが、CAFFEINE BOMB RECORDSに所属する前から続けていて13年ほどやっています。下北沢SHELTERで店長をやっている義村が、まだF.A.D YOKOHAMAで働いていた頃に一緒にスタートさせて、友達のバンドを呼んでイベントをしたのが最初でした。それが『POPCORN』というイベントです。

 

究極的に非現実的な場所=ライブハウス

ー本業がマネージャーで趣味でイベンター。常に音楽業界と関わり、ライブハウスにいらっしゃると思うのですが椎橋さんにとってライブハウスとはどんな場所ですか?

 

椎橋:究極の非現実的な場所だと思います。だって人が人の上に乗ることなんて普段ないじゃないですか。人の肌や汗が電車とかで触れるとなんか嫌ですよね。でもそれがライブハウスだったら許せちゃうところがあるというか。犯罪以外は大体のことを受け入れてくれる場所で、そこが自分の性格にハマったんでしょうね。本当に最高の場所です。

 

ー今後の活動についてもお伺いしたいです。椎橋さんのように音楽業界でマネージャーをやりたいという下の世代や後継者は、育ってきている現状でしょうか?

 

椎橋:それがいないんですよね。ときおり志を持った若い子と出会うこともありますが、1年後にはいなくなってしまってることが多く……。ただ、どうでしょうね。「マネージャーをやりたいです」って相談されたら「絶対やめといたほうがいい」と答えるかもしれません(笑)。だって大企業とかと比べたら給料が良いわけではないし拘束時間もかなり長いので。それに、僕から「やめておいた方がいい」と言われて諦めるぐらいなら、最初からやらないほうがいい。ガッツのある子は自然と自分から動いていて、10年後には確実に成長してこの業界を支えていると思います。そういう人が増えてくれたらいいですね。

 

ーこの職業を目指すうえで必要なスキルや能力は何ですか?

 

椎橋:レスポンスの速さと挨拶。この2つがあれば大丈夫だと思います。未だにマネージャー業を「完璧に出来てる」と思えたことはないのですが、この2つは常に心がけてますね。ただ、現場でスキルを体得していうのが1番の近道だと思うので本気でマネージャーを目指してる方がいるなら、ライブハウスに通って、バンドと知り合って、一緒に生活して叩き上げられるのが1番いいと思います。

 

ー最後に、椎橋さんの今後の目標を教えてください。


椎橋:バンドと企んでいることは色々ありますが、それは僕の口からは言えないので(笑)。まぁ新しいバンドとも出会いたいですし、CAFFEINE BOMB RECORDSのみんなで上へ向かっていきたいです。あとは、PIZZA OF DEATHの○○○さんみたいになって裏でシーンを牛耳るようなフィクサー的大物になりたいです。ここ太字で書いておいてください。


ー🫡

椎橋健一
http://www.caffeinebombrecords.com/(CAFFEINE BOMB RECORDS)

 

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