LIVE REPORT

TOTALFAT "Will Keep Marching" LIVE REPORT!!

Report by 荒金良介
Photo by Masaty 

 

2020.7.20
TOTALFAT “Will Keep Marching”
生配信ライヴ


 TOTALFATは昨年10月に15年間共に歩んできたKuboty(G)が脱退し、Jose(Vo/G)、Shun(Vo/B)、Bunta(Dr/Cho)は3ピースでバンドを続行する道を選んだ。今年1月には新体制として初の10thアルバム『MILESTONE』を発表し、これが文句ナシの素晴しさだった。ゆえにレコ発ツアーも楽しみにしていたが・・・初日の千葉LOOK公演(2月26日)のみ行い、中止を余儀なくされた。  7月20日、この日は無観客生配信ライヴ「Will Keep Marching」と銘打ち、久々にステージに立つ3人。タイトル名には「TOTALFATは止まらない!ファンと共に次へ進み続ける!」という意味が込められている。その言葉通り、どんな苦難も乗り越え、前進し続ける姿を多くのファンにアピールした。まずShunが姿を現すと、「ライヴハウスと言えば対バン」と意味深な言葉を発し、完全シークレットでBIGMAMAが登場するサプライズに多くの視聴者がどよめいた。

 そして満を持してTOTALFATがステージに立ち、Shunの切ない歌い出しから始まったのは「Give It All」である。これは新体制第一弾シングルとして配信リリースされたもので、「生まれ変われ ゼロからのstart」の歌詞もこの状況下で聴くと、また違う刺さり方をするから不思議だ。JoseとShunによるツイン・ヴォーカルの掛け合いも素晴らしく、鮮やかなスタート・ダッシュにこちらも必死に食らい付くだけ。


 「画面越しの皆さん、初っ端からパーティーしようぜ!」とJoseが呼びかけると、「PARTY PARTY」に突入。アゲアゲのパーティー・サウンドを浴びると、本当に眼前でライヴを体感しているような錯覚に陥る。「今日はお前ら一人ひとり全員がTOTALFATの最前列だ、バカヤロー!」とShunが叫び、視聴者の心根をがっちりと掴んでいた。「ALL AGES(Worth a Life)」で演奏の加速度を上げると、「家でサークル(モッシュ)」、「みんなで左回り」という視聴者コメントも飛び出し、ライヴハウスさながらの熱気はオンライン上でも伝わっているようだった。またBuntaの躍動感溢れるドラミングも抜群で、その様を頭上から捉えるカメラ・ワークにも興奮した。


 「My Game」を挟み、ここから夏モード全開のナンバーが続く。お祭り感満載の「夏のトカゲ」が始まるや、「全力でタオル振り回してる」、「ライヴ行きたい」と視聴者コメントも賑わっていた。

「かつてないほどにライヴとライヴの間が空いて、145日ぶりだっけ? 20年間やってて、こんなにライヴが空いたことなかったね。今日は特別な日になると思います。俺らのすべてを届ける!」とShunが力強く宣言した後、新曲「My Secret Summer」を披露。爽やかなコーラスを配したオシャレなテイストさえ感じさせる曲調で、野外で聴いても映えそうだった。その後に「Summer Frequence」に?ぎ、Joseのライトハンドによるギター・ソロにも耳目を惹き付けられた。

 中盤に差し掛かると、ゲストにBIGMAMAの東出真緒(Violin)を迎え、「晴天」をプレイ。ポジティヴなサウンドはヴァイオリンの音色でより一層増幅され、Shunと東出がステージ上でジャンプを決める場面も最高であった。


 ここで今日のタイトル名を冠したNEW EP『WILL KEEP MARCHING』(Tシャツ、トートバッグなどを含むBOXセット仕様)発表の告知もあり、そこにも収録されている「夜明けを待つ」をライヴ初披露。この曲は現在のコロナ禍の状況を受けて5月に配信リリースされたもので、ライヴキッズとの再会を願った内容である。ストレートなメロディ・ラインに乗せ、「何を奪われたとしてもこの灯火は消させない」の歌詞に胸を激しく突かれた。

 「俺たちバンドマン、ミュージシャンは常にあなたたちを支えるために言葉を吐いて、音楽を届けてます」とShunが言うと、「This Life」へ。エモーショナルな歌心を翼に雄大なスケール感を作り上げ、生きる意味を切実に問いかける歌詞に共感した人も多かったのだろう。「強く生きるぞ」、「泣いた」、「音楽の力」と書き込む視聴者コメントを眺めながら、バンドのメッセージはひとり一人の心に確実に届いていることを感じた。その流れでレゲエ調の「We're Gonna Make a Bridge」に移り、温かなヴァイブスを存分に振り撒いていく。


「楽しくてしょうがないわ!」とJoseが言うと、「始まる前にフルスイングで陽キャで行こうと話したじゃない? てめえで歌って、てめえでグッと来ちゃって、歌詞に。涙が出てくるよね、すいません!」とShunが口走り、その頬にはキラリと光るものが流れていた。それを拭うように「みんなで笑おうぜ!」とShunは元気一杯に言い放ち、「Smile Baby Smile」をプレイ。軽快なスカのリズムを伸び伸びと響かせると、最後は「Place to Try」で締め括る。「Forever 君はひとりじゃない」とありったけの感情を込めて歌い上げるJose。何度もライヴで聴いてきた楽曲にもかかわらず、またしても違う響きを帯びて伝わってきた。TOTALFATの音楽は立ち往生したり、八方塞がりの状況になったときに、希望の手を差し伸べてくれるものが多い。それはこの曲に限らず、である。


 今日の無観客生配信ライヴを観て、TOTALFATの音楽が持つ比類なきパワーに圧倒されてしまった。今年結成20周年を迎える彼らだって、これまで数え切れないほど多くの壁にぶち当たってきたはずだ。その苦境に対して、歯を食いしばって何度も立ち上がってきた痕跡が楽曲に刻まれているからこそ、ファンの心を揺さぶるのだろう。いつかあなたとライヴハウスで会える日まで、彼らの音は鳴り止まない。いままでも、これから先もずっと。

 

《ライヴ後のメンバー3人のコメント》

<Jose>
純粋に楽しすぎた。すぐ次のライブがやりたい。
演奏していて改めて素晴らしいドラマーとベーシストとバンドができているんだと実感した。
出会いに感謝、そしてTOTALFATを発見して応援してくれるスタッフやファンのみんなにありがとうを伝えたい。

<Shun>
ライブを実際にやるまで「配信ライブ=擬似ライブ」的な偏ったイメージを持っていたけど、そんなことは全くなかった。
距離は在れど確かに俺たちの演奏の先にはたくさんのお客さんがいて、彼らの視線や感情がバンドに伝わって、結果、俺たち3人だけで淡々とやったステージではなく、感情の渦巻く素晴らしい時間を「ライブ」で共有できた。
MCでも話したけど、バンドを取り巻くタイムラインは全てバラしになって、その気になればサボることも退化することも、止まることもできる状況の中、本能として追いかけるものを自分たちでつくってこの3人で走り続ける選択と行動ができていることが純粋に幸せです。やっぱり俺たちはバンドマン、ミュージシャンなんだって思った。
突然変異的に訪れたこのコロナの異常事態の中でも、パンクロックの強さを証明していきたいです。
配信だろうが何だろうが、今やれる事の可能性を追求して片っ端から行動していきたいと思いました。それがTOTALFATのポジティブ・メンタルの証だと皆に魅せていきます!

<Bunta>
チケット代を取って配信ライブをする事に関して、最初はそこまで価値がある物とは正直思ってなかったけど、生で自分達の演奏を聴かせられるっていう行為自体にすごい魅力を感じた。
145日間ライブをしなかった事なんて今まで一回もなかったから、気持ちは期末試験位の緊張感があったと思う。
その日に向かうまでの準備も沢山してたけど、本番始まってからはやるしか無いから3人とも間違いなく全力で演奏してたと思う。
配信ライブの良かった所は、すぐに自分達の演奏を確認できる事。普段から個々に動画を撮ってチェックしたりはしてたけど、どんなカメラアングルで抜かれてたかは、終わってみないと分からないのでそれが面白かった。
ライブはライブだし完璧な演奏も大切かもしれないけど、全力で演奏できる環境とそれをなるべくそのまま良い状態で配信できる様な、映像や音響、照明担当まで最高のチームで迎えたことも良かったと思う。
これからは、その時々で変わる環境にあう中での最善の状態で、自分達がみんなに届けられる事を色々考えながら、この時代の中で少しでも楽しめる場所を提供して行けたら良いなって思ってます!!とにかく楽しかった!!



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