LIVE REPORT

TOTALFAT "再会" LIVE REPORT!!

Report by 山口智男
Photo by Taka”nekoze_photo”

 

2020.10.26
TOTALFAT “再会”@Zepp Tokyo


  いつも以上に熱い、そしてエモいライブだった。
そもそもTOTALFATは熱い奴らだ。ワンマン・ライブという形では、実に8か月ぶりにタイトル通りファンと再会を果たしたんだから、そういうライブになるのはあたりまえと言えば、あたりまえではあるけれど、1曲目に選んだ「Give It All」で《今日がスタートって 戦い抜く くらいに生きていければ》と歌ったようにこの日のライブが単に、久しぶりに有観客ライブができてうれしいということだけで終わらずに、結果、大勢のファンと新たな一歩を踏み出した記念すべきマイルストーンになったことがとても重要だ。  このレポートではこの日、彼らがどんなふうに新たな一歩を踏み出したのかお伝えしたいと思うが、まずは「ただいま! そしておかえり! 楽しんでいきましょう。よろしく!」というJose(Vo/Gt)の第一声からなだれこんだ「Give It All」でいきなり観客の興奮が頂点に達したことを忘れずに記しておきたい。要するにバンドもファンもこの日が来ることを心待ちにしていたということだ。

そして、バンドはイスがあるにもかかわらず開演前から総立ちになっていたフロアに早速、「声を出せなくてもおまえらの心の中はもうパーティーが始まってんだろ!」(Jose)と「PARTY PARTY」を投下。すると「どんな状況でもパーティーやりたい奴が集まってきてんだろ? さあ、ゼップ!」とJoseが発破をかけるまでもなく、それまで手拍子でバンドに応えていた観客たちがそれぞれの場所で2ステップをはじめ、思い思いのダンスに興じ始める。


「どんどん行こうぜ!」とShun(Vo/Ba)が声を上げ、バンドは「Phoenix」「宴の合図」とたたみかけるように繋げていった。気づけば観客全員が踊り狂っている! そんな光景を目の当たりにして、これ以上ない最高のスタートダッシュをキメることができたと手応えを感じたのだろう。
「俺たちは今、ライブをやってるぜ!」と快哉を叫んだShunにJoseが続く。

「熱量がハンパない!」
 ここでShunが当日券も含め、チケットがソールドアウトになったことを報告すると、観客が盛大な拍手を返す。そんな中、「600人がTOTALFATと一緒に前に進もうと決めてくれたわけだから、みんなが出せない分、俺らが声を出す。出せないところまで出すから今日1日よろしくお願いします。ここにあっていいのは、歓びの感情だけだ」とShunが改めて、この日のライブにかける思いを語る。

そこからの中盤は、前に踏み出そうという思いを伝えるため、7月21日にリリースしたEP『WILL KEEP MARCHING』から「Marching For Freedom」「My Secret Summer」を披露。さらに今年1月にリリースした目下の最新アルバム『MILESTONE』収録の「My Game」と繋げ、「仲間を紹介してもいいですか」とTOTALFATのファンにはお馴染みのレゲエDEE-JAY、J-REXXXを呼びこんで、「Delight!!」「We’re Gonna Make a Bridge」を一緒に歌う。レゲエのヨコノリのビートがピースフルな盛り上がりを作ったところで、ShunとBunta(Dr)が言ったのが――。


「モッシュはできないけど、(音が)クリアに聴こえるのは、今の時代の楽しみ方だよ。全然、引き算になっていない」(Shun)
「いつもよりみんなのことが見えるよね」(Bunta)
 この日、ステージに立つにあたって、たとえどんなことになったとしても、ライブ開催のガイドラインに沿って声を出せない、モッシュもできない半分のキャパの観客の前で最後まで精一杯、演奏するという覚悟は決めていたとは思うが、8曲を演奏した段階で、メンバーたちは大きな手応えを感じ始めていたようだ。それを物語るのが、「何も怖くない。できることを楽しめばいい。それが俺たちの前への進み方だ」というShunの一言だった。

 ところで、8か月ぶりの有観客ライブだから、ぜひ配信もしてほしいという声も少なからずあったという。それにもかかわらず、敢えて配信しなかったのは、Shun曰く「ライブハウスに来ることを大事にしたかった」からだそうだ。

「これからライブもどんどんやっていくと思う。そんな未来を作るための始まりだから、スタートだけは、たとえ(観客の入りが)パラパラでもやりたかった」(Shun)
その言葉からはコロナ禍が終息する前にライブを開催することに対する若干の不安が読み取れるが、それが杞憂だったことも、ガイドラインに沿ったライブでも全然盛り上がれると確信できたこともすでに書いた通り。フタを開けてみれば、これだけ大勢のファンが会場に足を運んだのだ。

「これが一番見たかった幸せな景色です」と言ったShunの満面の笑みとともにオールディーズ調が新鮮な「Smile Baby Smile」で始めた後半戦も、LOW IQ 01にテレビ電話をかけてから、音源では彼が客演しているアイリッシュ調の「Welcome to Our Neighborhood」に繋げるというサプライズをはじめ、前半戦以上に見どころ満載のセトリを楽しませた。忌野清志郎の「世界中の人に自慢したいよ」のカバーは原曲のプライベートなラブソングに込めた「ライブハウスを愛してくれる人たちや、どんな状況でも集まってくれる人たちを誇りに思う。自慢したい」というメッセージが胸を打つ。名曲というのは、こうして歌い継がれていくのであるが、続く「World of Glory」でバンドと観客が繰り広げた手拍子のコール&レスポンスもまた、大きな見どころだった。

 どんどん難易度を増していく手拍子のリズムにしっかりと応える観客に気を良くしたメンバーたちからは「今度、フェスで万人、何千人の前でトライしてみる?(笑)」という言葉も飛び出したが、「この景色が最高です。ホールじゃなけど、(フロアが)ぐちゃぐちゃになってないっていうのもいいね。TOTALFATの音楽に意外に合ってるよ」と改めて、ここまでのライブを振り返ったBuntaの言葉からメンバーたちに新たな気づきが訪れる。


「自分たちの良さが最大限に出せないと判断した時は椅子ありのホールのライブを断ったこともあったけど、断る理由がなくなったね。ここから考え方を改めよう」(Shun)
「いかにこの状況で沸点を上げられるか」(Bunta)
「それが音楽だからね。モッシュに頼らないバンドを、3人で作っていきたいね。いろいろなことに挑戦したい。不安はない。これだけついてきてくれる人がいるんだから」(Shun)
 バンドマンはコロナ禍なんかに負けやしない。少なくとも3月以降の困難な状況に立ち向かいながら、いくつも新たな可能性を見出してきたTOTALFATなら絶対、大丈夫だ。

 演奏を一気に沸点にまで持っていった「Show Me Your Courage」から、「コロナがなかったらなんて、たらればの話はやめよう。今、俺らがここにいることがすべてだ。別れ道で進むことを選んだんだ。一緒に行こう」(Shun)と繋げた「マイルストーン」は、TOTALFATが3人になった時の新たな決意を歌ったものだが、この日、決意の意味が変わった。

 曲に込めた思いが時間とともに更新され、曲の魅力が色褪せないような曲を名曲と言うなら、「マイルストーン」もそうだが、「夏のトカゲ」と有観客でのライブ初披露をこの日まで取っておいたという「夜明け待つ」でラストスパートをかけるように盛り上げ、最後の最後に披露した「Place to Try」もまさにそう。

「20周年がコロナでぶっとんだ。(20周年をきっかけに気持ちも新たに)もう20年やろうぜって考えてたけど、そんな先のことはもうどうでもいい。俺たちは俺たちの曲と1本1本のライブを大事にしていきます」  そんな新たな決意を語りながら、ライブができことに加え、ファンのみんなに会える歓びに感極まったShunは思わず涙ぐみながら言ったのだった。

「10年近く前に書いたけど、今日、本当の意味でリアルになると思う。一歩一歩、一緒に歩いていきましょう。全員で行くぞ!」
 筆者はTOTALFATのライブを見るたび、《何も怖くなんてないんだ》と歌う「Place to Try」に勇気づけられてきたが、この日、リモートシンガロング大作戦!と掲げ、あらかじめファンから募集したシンガロングを同期で重ねながら演奏した、このアンセムに勇気づけられたのは観客もさることながら、メンバー自身もそうだったんじゃないか。

 涙ぐみながらの大団円もエモくていい。しかし、さすがにTOTALFATには似合わない……というわけで、来年1月に毎年恒例の対バン・イベント、PUNISHER’S NIGHT 2021を東名阪で開催することと、新しい音源を近々リリースすることを発表したバンドはアンコールに「モアモアハッピーエンドになれる」とShunが言った「晴天」と「Good Fight & Promise You」をダメ押しで披露。


「戦っていこうぜ。倒れた奴がいたらひっぱってやろうぜ。全員で行こうぜ!」とShunが訴えかけた「Good Fight & Promise You」では眩い照明の中、もう一度、ファンのシンガロングの声が会場中に鳴り響いた。

 これまでと同じライブができないなら、新しいやり方を考えて、盛り上げていけばいい。それがコロナ時代のバンドマンの戦い方だ。この日、TOTALFATはそれを見事に証明してみせたのだ。

[SETLIST]
01. Give It All
02.PARTY PARTY
03.Phoenix
04. 宴の合図

05.Marching For Freedom
06.My Secret Summer
07.My Game
08.Delight!! feat. J-REXXX
09.We're Gonna Make a Bridge feat. J-REXXX

10.Smile Baby Smile
11.Welcome to Our Neighborhood
12.世界中の人に自慢したいよ
13.World of Glory

14.Show Me Your Courage
15.マイルストーン
16.夏のトカゲ
17.夜明け待つ

18.Place to Try

en01.晴天
en02.Good Fight & Promise You


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PUNISHER’S NIGHT 2021

2021年
1月23日(土)渋谷CLUB QUATTRO
1月30日(土)名古屋CLUB QUATTRO
1月31日(日)梅田CLUB QUATTRO

OPEN 17:00 / START 18:00
TICKET ¥4,200 + 1drink

<イープラスプレオーダー1次先行受付中>
11月3日(火祝)12:00~11月9日(月)23:59
http://eplus.jp/totalfat/
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