LIVE REPORT

TOTALFAT 21st Anniversary "BETTER LUCK NEXT YEAR" LIVE REPORT!!

Report by Tomoo Yamaguchi
Photo by かわどう

 

2021.4.6
TOTALFAT 21st Anniversary "BETTER LUCK NEXT YEAR" @渋谷WWW X


「めちゃめちゃ入っているじゃないですか。ありがとう! みんなの前でライブやるのは今年初です。どれだけやれるのか、みんなも俺らにしっかり見せてください!」
「さあ行こうぜ!」
 そんなJose(Vo/Gt)とShun(Vo/Ba)の言葉から始まった毎年恒例の周年記念ライブ。20周年のアニバーサリー・イヤーだった昨年、思うように活動できなかった分、本当なら今年こそは観客とともに盛り上がろうと考えていたに違いない。しかし、結局のところ、入場者数を制限した上で、ソーシャル・ディスタンスを保ちながら、観客はマスクをしたまま声を出さない、モッシュもダイブもしないという新型コロナウイルス感染拡大防止のガイドラインに沿った形での開催となった。

 もちろん、バンドと観客が望むような形でのライブにならなかったことは、現地に足を運ぶことができず、配信ライブを観て、このレポートを書かなければならなくなってしまったことも含め残念だったと思う。しかし、結果、一向に先が見えないコロナ禍の中で苦境に立たされるたび、TOTALFATの不屈の闘志と音楽に取り組む情熱が日増しに強いものになってきたことを印象づけることができたことを考えれば、決して良かったとは言えないまでもライブを開催した意味は大いにあったと思うし、根っからのパンク・バンドである彼らがそのパンク・スピリットを燃やす姿に勇気づけられたという人も多かったはずだ。

1曲目は「Give It All」しかありえなかったんじゃないか。《今日がスタートって》と歌うこの曲でライブになだれこんだバンドがその「Give It All」から「21周年(記念のライブ)始めます!」というShunの言葉とともに繋げたのが必殺のパーティ・チューン「夏のトカゲ」。えっ、序盤からいきなり?とちょっと面食らっていると、Bunta(Dr/Cho)が鳴らす祭りのリズムに合わせ、「さあ、やっちゃおうか?」とJoseが恒例のタオル回しを観客にリクエスト。「みんなで換気しませんか? それ!それ!それ! 換気!換気!換気!」と時節に合わせた盛り上げ方のアレンジに思わずニヤリとさせられた。ウィットに富んでいると言うか、皮肉がきいていると言うか、転んでもただじゃ起きない向こう意気が感じられると言うか。そんな思いをしっかりと受け止めた観客たちがぐるぐるとタオルを振り回す壮観な景色が目の前に広がった。


 この日、TOTALFATが1時間半の熱演の中で披露したのは、計19曲の新旧のレパートリー。曲が進むにつれ、配信ライブを観ている観客たちが神セトリ、セトリギガ盛とコメントしはじめたが、21年間を振り返るという気持ちはメンバーたちにはなかったようだ。

 ライブの始まりで、《今日がスタートって》と歌ったように、そして、序盤のMCで「今までのライブを追い求めるのはやめよう。ここから俺らが作っていく。みんなで一緒に探していくライブにしたい。21周年だけど、21年分忘れてここに立っている」とShunが言ったように、この日、バンドが考えていたのは、コロナ禍の中で、どれだけこれからを期待させる自分たちを見せられるかということだったに違いない。


 「Marching For Freedom」「夜明け待つ」「My Game」「Get Up Thrill Seekers」と曲を繋げ、一息入れたタイミングで、ライブが開催できるかわからない状況にもかかわらず、この日のチケットがソールドアウトになったことに感謝の気持ちを述べてから、「周年(の記念ライブ)に集まってくれる人がいることが宝だと思いました」と語ったShunを、「そろそろ泣くんじゃないの?(笑)」と冷やかしたJoseにShunが返した言葉が「涙は涸れた」だった。
「泣いて伝わる誠意には限界がある。涙を堪えてでも伝えるものがこのバンドにはあるんだから、(今日は)No涙でゴールしたい」
 昨年10月、Zepp Tokyoで久しぶりにライブができた歓びから思わず涙を流したShunが言ったこの言葉に新たな闘いに挑む決意を感じ取ったのは筆者だけではなかったはずだ。

「だからこそ笑っていきたいわけですよ」(Shun)と演奏した「晴天」、「声が出せないなら、モッシュができないなら」と手拍子のコール&レスポンスで全員の気持ちを1つにした「World of Glory」と、バンドは1曲ごとに短い言葉をつけ加え、曲のみならず、その曲に込めた今の気持ちも繋げていった。


 そして、「みんなが歌えない分、俺が全曲歌う」とマイクをヘッドセットに変え、これまで以上にコーラスをがんばっているBuntaと超絶テクを誇るギタリスト、Kubotyが抜けた穴を1人で埋めることにチャレンジしているJoseにShunが感謝の気持ちを伝えたとき、筆者はこの日、Shunが語った新たな決意の根拠を知ったのだった。Shunは決してエモい気分で新たな決意を口にしたわけではなかった。

「ゼロが100になることも100がゼロになることもこの1年で感じたから、21周年関係なく、1本1本のライブを大事にしていきたい」というShunの言葉からなだれこんだ自慢のパーティ・チューン「PARTY PARTY」。Shunの言葉に刺激されたのか、「踊り狂っちゃえばいいんじゃないですか。叫ぶ場所は俺が叫ぶから!」と観客を煽るJoseの言葉もいつも以上に熱かった。

 そして、「俺たちはここから始まった」(Shun)とインディ・レーベルから03年にリリースした1stアルバム『End of Introduction』の1曲目に収録した「HIGHWAY GOIN’」と自らの20年の歩みを振り返った「マイルストーン」という17年の時を経た2曲をダイナミックに繋げてから、いろいろなものと闘って、会場に足を運んでくれた観客を称える気持ちを込め、本編ラストに披露したのが「Good Fight & Promise You」。


「この1年、どのバンドよりも曲を作りつづけてきたし、リハーサルにも入ってきたし、(3人で)話もしてきた」とShunが語った自負を思いっきりぶつけた渾身の演奏は、Shun、Jose、Buntaの3人で声を重ねたシンガロングとともに観客の気持ちをクライマックスに導いていったのだった。

 そしてアンコール。今年4月、20周年と21周年を記念してフェスを開催しようと会場まで押さえながら、発表前に開催を断念せざるを得なかったことを、今だから明かせる裏話として話しているうちに「実現していこうよ。言っちゃったんだから」「やるしかない」「1回やると決めたことはやらないと」とメンバーたちの気持ちが盛り上がっていき、「いつとは言えないけれど」と前置きしながらフェスの開催を宣言! それが転んでもただでは起き上がらない22年目のTOTALFATなのだろう。
「悔しさも何もかもここからゼロスタートで音楽に変えていこう」(Shun)
「少しずつみんなの前に立てるようになってきました。1回、この景色を見たら、俺らからやめる理由なんてない。決めたことを遂行しながらこれからも一緒に楽しんでいきましょう」(Jose)

 TOTALFATの22年目がスタートした。バンドが新たなことに挑戦する気持ちを持ちつづけるかぎり、何年経っても色褪せることがない「Place to Try」は、昨年10月のZepp Tokyo公演と同じように同期でファンのシンガロングを重ね、アンセミックな空間を演出したが、最後の最後はパンク・バンドらしく、「ハデに行っちゃおうぜ!」(Shun)と「DA NA NA」を駆け抜けるように披露して、エンディングを迎えたのだった。


 5月にはメンバー3人によるこのライブの生実況特番がニコニコ動画で配信されるそうだ。そこでは楽曲の制作秘話やステージの裏話も聞けるかもしれないという。



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