G-FREAK FACTORY Pre “山人音楽祭2021 Day2” LIVE REPORT!!
Report by 山口智男
Photo by 青木カズロー
2021.12.5
G-FREAK FACTORY Pre“山人音楽祭2021”Day2
@高崎芸術劇場 大劇場
「思いっきり悔いを残さず楽しんでいってください。誰よりもアーティスト自身が楽しみにしているし、お客さんに楽しんでもらいたいと思っています」
NAIKA MCの、そんな挨拶から始まった2日目はOAUからスタート。MARTIN(Vo, Violin, Ag)とTOSHI-LOW(Vo, Ag)が歌声を重ねながら、躍動感あふれる「Old Road」と、ドラムとパーカッションがソロの応酬を繰り広げたダンス・フォーク・ナンバーの「Again」と繋げ、早速、会場を盛り上げる。
露払いの役割は重大だ。そう意識していたかどうか。群馬県と茂木のことをイジりながら、TOSHI-LOWらしい表現で山人音楽祭に戻ってこられた歓びを言葉にすると、バンドは、さらに、ともにアップテンポの「Peach Melba」と「Making Time」をたたみかける。
来年2月にリリースするEP『New Spring Harvest』に収録される「Peach Melba」を、TOSHI-LOWは「春には、もっと踊れるようになるんじゃないか? その練習をしておこう。そういう曲です」と紹介した。そして、カントリーを思わせる魅力もある「Making Time」では、「山人!山人!」とエールを贈る。すると、手拍子をしていた観客が今度は飛び跳ね始めた。
バンドの演奏は止まらない。TOSHI-LOWがかき鳴らすアコースティック・ギターの音にMARTINのバイオリンの音色が重なる「Thank You」になだれこむと、観客の手拍子は、さらに大きなものに。そのノスタルジックなポップ・ソングを、最後、テンポアップして駆け抜けるように演奏しおえると、TOSHI-LOWが声を上げた。
「やっぱライブは楽しいよ。最高だ。ありがとう」
もちろん、アップテンポの曲だけがOAUの持ち味ではないことは、みなさん、ご存じのとおり。後半戦は茂木を招き、「G-FREAKよりも群馬でライブやっているんだから、俺たち、もう群馬枠でしょ?」(TOSHI-LOW)、「今度、地元のバンドの日に出る?」と冗談半分、本気半分(?)の言葉を交わしてから、10年前、震災で傷ついた東北のいろいろな町を見てきた時にできたというバラード「朝焼けの歌」を「茂木も一緒に歌ってくれます」と披露。前半戦のお祭り騒ぎから一転、温もりある歌をしみじみと聴かせたのだった。
「志の高いバンドがめちゃめちゃいっぱい集まってる。人気者になりたいとか、金が欲しいとか、そんなんじゃなくて、気持ちで動く奴らしかいない。だから、楽屋にいるだけで気持ちいい。山人には、そういう奴らが集まってる。だから、応援したい。来年また群馬で会いましょう」
ラスト・ナンバーは、「帰り道」。ノスタルジックなフォークを思わせる歌と演奏が温もりとともに観客に届けたのは、じっくりと音楽に浸る心地よさだった。
ある意味、ホールで聴くにはふさわしい、しみじみとした空気を、OAUが作った後という出番は、MONOEYESが持つ瞬発力が際立つという意味で絶妙だったと思う。
「Hello Again」という「Fall Out」のオープニングフレーズでスタートダッシュをキメたバンドの演奏は、「行こうぜ、高崎!」という細美(Gt, Vo)のシャウトを合図に「Run Run」「Free Throw」と、どんどん加速。手拍子している観客に「もうちょっと手が見てえんだよな」と細美が声をかけ、観客の手が挙がりはじめる。
個人的に久しぶりに見たMONOEYESは以前にも増して、骨太になった印象だ。ヘヴィなギター・リフが轟音で唸る!
序盤の3曲を駆け抜けるように演奏したバンドは、ちょっとテンポを落として、「Get Up」をじっくりと聴かせる。
「一緒に歌えなくて残念だよ。でも、できることはいろいろある。自分たちが楽しめる方法を見つけて、最高のライブにしてほしい。俺たちバンドマンはフロアからパワーをもらうほどいいライブができるから、ガタガタ言ってねえで楽しもうぜ」
観客に語りかけた細美の言葉は、ライブハウスでモッシュを巻き起こしていたMONOEYESのライブを、モッシュができないホールで見る観客に、どう楽しめばいいのかアドバイスしているようにも思えたし、茂木の選択を全面的に支持していると言っているようにも思えたが、ほんとにその通りだ。ホールだから楽しめないと本気で思っていた観客がいたとは思わないが、ガタガタ言わずに目の前で鳴っている音楽を楽しんだらいいんだと思う。
「スコットがキメるぜ!」(細美)
スコット・マーフィー(Ba, Vo)がリード・ボーカルを取る「Roxette」で、さらに勢いづいたバンドが「Two Little Fishes」に繋げると、ステージの袖からせんべい(?)の着ぐるみが登場? ステージを歩き回りながら、緩い振りつけで踊る着ぐるみに観客も大喜び。着ぐるみの動きに合わせ、手を振った。
着ぐるみの登場に細美が思わず噴き出したということは、MONOEYESのメンバーたちには知らせていないサプライズだったようだが、着ぐるみに入っていたのは、TOSHI-LOWだったのだからさらにびっくりだ。「俺の親友、TOSHI-LOW!」と細美から紹介されたTOSHI-LOWは、最後のサビを細美と歌った。誰もが寄ってたかって、このフェスを成功させようとしている。いや、いたずら心と言うか、ちゃめっけと言うか、もっと単純なことだったのかもしれないが、そんなことを感じた瞬間だった。
「G-FREAK がリアルだから、ライブもリアルになるよね。かっこばかり気にしているような連中じゃなくて、ドロ水の中だって一生懸命に進んでるバンドが好きで山人を見にきてるんだろうから、今日はいいフェスだよな。まあ人によってはそうは見えてねーかも知れねーけど、俺たちは誰にも負けねえくらいちゃんとバンドやってるつもり。以後お見知り置きのほど、よろしくお願いします。」
自らの矜持を細美が語ると、バンドは「My Instant Song」でラストスパートをかける。細美ら、フロントの3人が飛び跳ね、メンバー全員でシンガロングすると、「リザードマン」になだれこみ、2ビートで突っ走る。そして、最後はドラムを囲んだ3人がハイジャンプをキメて、完全燃焼を印象づけたのだった。
実はこの日、誰もが一番楽しみにしていたHAWAIIAN6は、「どえらいハコですね。ほんと、俺たちに似合わねえ!」とHATANO(Dr)が言いながら、いつも通りのライブを繰り広げた。いや、バンドはいつも通りだったかもしれないが、ライブを見ているこちらは演奏しているバンドにしっかりと向き合うことで、誰もが認める彼らの曲の良さを、改めてしっかりと味わうことができたんじゃないか。
「愛のある感じのイベント。最後まで楽しんでいこうぜ!」とHATANOが声をかけ、演奏は「THE LIGHTNING」でスタート。そこから例によって「遊ぼうぜ!」とHATANOが声を上げながら「HAZE」「IN THE DEEP FOREST」と泣きメロのメロディック・パンク・ナンバーをたたみかけると、牧歌的なメロディが流れに変化をつける「I BELIEVE」を披露。体を左右に揺らしながら歌っているYUTA(Vo, Gt)が手を挙げると、それに応えるように観客が一斉に手を挙げた。
「今は手を叩くことにも、拳を挙げることにも夢がある。マスクしているから楽しいのか、楽しくないのか、笑っているのか、笑っていないのかわからない。だったら、態度で示すしかない。楽しいことはいっぱいあるんだよ。遊ぼうぜ!」
HATANOがHAWAIIAN6のホール公演に臨む心構えを語ってから、バンドの演奏は「BURN」から再びスタート。ガガガガと刻むギターのミュート・カッティングがメタルっぽいダークな「BUTTERFLY BEATS」から「A PRAISE OF HUMAN」を挟んで、繋げた「MAGIC」は曲が持つ明るさが一瞬にして、空気を変えるインパクトが! ファンの間で人気が高いのも頷ける。サビのメロディからは往年のフレンチ・ポップを連想させる魅力も感じられはしないか。
「どえらいハコですね!」と前掲の感嘆の声を上げたHATANOはここで、かつて日本武道館で一度だけ演奏したことがあること、それはとあるイベントで自分たちの前がMr. Childrenだったこと、武道館に着いたとき、50人くらいのスタッフに出迎えられ驚いたことなど、懐かしい思い出を語って、観客を楽しませたが、それは大事な話の前置きだった。
「俺たちは音楽業界のためにバンドをやっているわけじゃない。目の前にいる人たち、裏を支えてくれる人たちのために対バンの仲間たちと一生懸命やっています。ライブハウスが本当に苦しくなるのは、来年。みなさんの町のライブハウスにボッコボコのハイエースで向かいます」
それはHAWAIIAN6はこれからもライブハウスで戦いつづけるという、改めての宣言だった。それをホールでやるところが心憎い。いや、だからこそ言っておきたかったのだろう。
「離れる努力をしている世の中で、俺たちは近づくための努力しか考えてない!」(HATANO)
バンドはいつも通りのライブを繰り広げていたと思っていたが、それなりに気負いはあったのかも。
「マスクのないところで会いましょう!」(HATANO)
コロナ禍の終息に望みをかけ、バンドは最後に「STAR FALLS OUR HANDS TONIGHT」と「BRAND NEW DAWN」の2曲をたたみかけた。「BRAND NEW DAWN」、うん、いいタイトルだ。ところで、ABBAの「ダンシング・クイーン」をBGMにHAWAIIAN6の3人がステージに出てきたとき、短髪、ヒゲなしのYUTAを見て、一瞬誰だかわからなかったことを最後に記しておきたい。
2日目のトリを飾ったのも、もちろんG-FREAK FACTORYだ。因みに茂木自身は自ら主催するフェスで、2日間ともトリを務めることに対して、最初は「全員、俺に集中してくれって言ってるみたいでサムい」と考えていたようだが、結局、「でも、地元のバンドが2日間、締めるって普通のことだ」と考えるようになったそうだ。そう言えば、茂木はこの日の終盤、「(ホールは)みんなの顔が見えすぎて恥ずかしい。でも、これも好きです。高崎芸術劇場、またやります」とも言ったが、これまでとは違う形で山人音楽祭を開催したことで、茂木の気持ちにも気づきを含め、いろいろな変化が訪れたみたいだ。
それはさておき、G-FREAK FACTORYのライブは楽器隊によるジャム・セッションでスタート。スペーシーでサイケデリックなバンドの演奏を、観客が固唾を飲んで見守る中、茂木が登場。バンドの演奏はアップテンポのロック・ナンバー「SOMATO」になだれこみ、悠然とステージに出てきた茂木は、いきなりスイッチが入ったようにステージを左右に動きながら力強い歌声を響かせる。
「お集まりの山人、一緒に行こうぜ!」
そこからバンドはさらにギアを上げ、スラップ・ベースから始まる「乞え~KOE~」、レゲエ・ロックの「FLARE」と繋げていく。1日目は先輩・後輩との交歓とも言えるコラボレーションを楽しませたが、2日目は抜き身のG-FREAK FACTORYを見せつけ、気迫に満ちたプレイで圧倒する。客席が大きく波打ち始めた。リズム隊が作る、うねるようなグルーブ、エフェクティブなギター・プレイも聴きどころだ。
「全部それぞれの色が発色豊かだった。すげえよ! これが今年できる最大限の山人音楽祭です」
この2日間を振り返って、茂木が言った言葉に観客が大きな拍手を贈る。
「まだ終わってないけど、俺らが最後までやれれば、大成功だと思ってます!」
その言葉を現実のものにするため、バンドは「Fire」と「Too oLD To KNoW」、アンセミックな2曲を立て続けに披露。「Too oLD To KNoW」のシンガロング・パートではそこにいる全員を祝福するように客電がつき、眩い光の中、メンバーのシンガロングに応え、観客が両手を高く、高く掲げた。
忙しいスケジュールをやり繰りして、出演してくれたすべてのバンドに感謝を述べた茂木は、誰に聞いても無理でしょと言われた今回の山人音楽祭が成功したことを奇跡みたいだと言ったが、その奇跡を起こしたのは他の誰でもない、ちょっとありえないスケジュールを押して、群馬に駆けつけたバンドと裏を支えるスタッフ、そして観客の情熱だ。
「ここに集まったことをもう少し味わってくれ」
茂木はOAUのMARTINを招き、バンドは彼が奏でるバイオリンとともに「ダディ・ダーリン」を、そして「思い出になるまであきらめるなよ」とメッセージを込め、本編最後にハートウォーミングなレゲエ・ナンバー「GOOD OLD DAYS」を披露。
「リスクを冒してこの場所に足を運んでくれて感謝です!」
アンコールは予定を急遽変更して、1日目と同じ「日はまだ高く」を演奏した。
《限りない故郷に愛を 作りあげる力を》
地元・群馬を誇りに守りつづけてきた山人音楽祭だ。その大団円を飾るのは、そんなふうに歌うこの曲がやはりふさわしいと考えたのかもしれない。軽快なレゲエ・ビートとこの曲が持つポジティブな力が、ダメ押しで観客の胸を幸せな気持ちで満たしたのだった。