LIVE REPORT

Suspended 4th “Travel The Galaxy Release Party“ LIVE REPORT!!

Report by 山口智男
Photo by かわどう

2022.8.14
Suspended 4th “Travel The Galaxy Release Party“ @EBISU LIQUIDROOM

6月17日の恵比寿LIQUIDROOM公演で、8月14日に同じLIQUIDROOMにG-FREAK FACTORYを迎え、1stフルアルバム『Travel The Galaxy』のリリース・パーティを開催すると聞いた時から、その8月14日を楽しみにしていた。

なぜなら、G-FREAK FACTORYとSuspended 4th(以下サスフォー)というともにライブに軸足を置くバンドでありながら、ちょっと意外にも思える顔合わせももちろんだが、6月17日のLIQUIDROOM公演でサスフォーが印象づけた変化は、『Travel The Galaxy』を完成させたことによって表面化してきたものだと考えていた筆者は、『Travel The Galaxy』の収録曲を中心に演奏するに違いない8月14日のライブでは、その変化がさらに明らかになるはずだと期待していたからだ。たぶん、G-FREAK FACTORYの胸を借りようと考えたことも変化の一環だったと思うのだが、果たして、この日、サスフォーはその変化を、いや、『Travel The Galaxy』のタイミングでバンドに訪れた転機を6月17日のライブの時以上にダイナミックに見せつけたのだった。

そんな熱演の模様を、この日、サスフォーとともにLIQUIDROOMを盛り上げたG-FREAK FACTORYのライブも含め、振り返りたい。トップバッターは、G-FREAK FACTORY。サポート・キーボーディストが奏でるオルガンのドローン音に渡部“P×O×N”寛之(Dr, Cho)、吉橋伸之(Ba, Cho)、原田季征(Gt, Cho)が順々に音を重ねていったジャム・セッションからライブはスタート。そして、茂木洋晃(Vo)のオンステージとともに原田がリフを閃かせ、バンドの演奏は「SOMATO」になだれこむ。8ビートのロック・ナンバーだが、茂木の歌にレゲエのニュアンスが滲むところがG-FREAK FACTORYらしい。「LIQUID!」と茂木が呼びかけると、フロアから一斉に手が上がる。そして、バンドの演奏がレゲエの裏打ちのビートに変わったタイミングで「G-FREAK FACTORY始めます!」と茂木が改めて宣言。ヘヴィなギター・リフが鳴る「FLARE」、読経を思わせる茂木の歌と疾駆する演奏が1つになって突き進む「REAL SIGN」と繋げ、フロアを揺らしていく。

「知識がないまま、(G-FREAK FACTORYを)初めて見ることになってしまったサスフォー目当てのみなさん。日本のアフリカ=群馬からやってきた、見ての通りヴィジュアル系バンド、G-FREAK FACTORYです。コロナ禍のぐちゃぐちゃの中、サスフォーはあきらめずに進んでいる。そんな大事な時に呼んでくれてありがとう」(茂木)

たたみかけるように曲を繋げた序盤から一転、中盤は「FIRE」と「Too oLD To KNOW」をじっくりと聴かせ、切実な思いを伝える言葉の力を見せつける。跳んだり、跳ねたり、体を揺らしたりすることだけがライブの楽しみ方じゃない。直接、メッセージを受け取ることもライブの醍醐味だ。前掲の2曲の言葉は疫病、戦争、分断が我々の暮らしを蝕んでいる今、よけいに観客の胸を抉ったに違いない。

「今は、声は出せない。ならば、拳で伝えろ!」

原田、吉橋、渡部が力強いコーラスを重ねる中、茂木の言葉に応えるようにフロアから一斉に拳が上がった。観客の気持ちが1つになったことを思わせるその光景に茂木が快哉を叫ぶ。「やっぱライブはいいよ!」

「3連チャンのライブは、本来は断るんだけど、(今回、3連チャンになってもサスフォーの誘いを受けたのは)サスフォーが見たくて、一緒にやりたくてやらせてもらってます。ライブをあきらめたくなくて、おまえらに挑戦したくて、ライブを止めてません。俺らはあきらめない。サスフォーも同じだ。だからまたライブハウスで待ってます」(茂木)

そしてもう1曲、フォーキーな魅力もあるバラード「ダディ・ダーリン」をじっくりと聴かせ、熱を込めて、何かを伝えることの美しさを謳い上げた5人は、「また会おう。ロック・バンド最高!」という茂木の言葉からラスト・ナンバーになだれこむ。サスフォーと真っ向からぶつかりあうため、ライブ・アンセムの数々を揃えた50分のライブを締めくくったのは、8ビートが心地いいパンク・ロック・ナンバー「らしくあれと」。

ファンにはお馴染みだと思う。《いつもここにいるから 隠れないで帰ってこいよ》を、《いつもここにいるから ライブハウスに帰ってこいよ》と替えた歌詞が心憎い。それはライブが終われば、いったん別れる観客との再会の約束でもあり、G-FREAK FACTORYからの餞でもあり、何よりも必死にライブを守り続けてきたライブ・バンドの矜持でもあり――。

そんなG-FREAK FACTORYによる渾身のライブがこの後、オンステージするサスフォーに刺激を与えたことは、後述するKazuki Washiyama(Gt, Vo)の言葉からも明らかだったが、対するサスフォーはジャム・セッションから「ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン」になだれこみ、強烈なファンク・サウンドで早速、フロアを揺らしていった。そして、曲の終盤、ボーカルを取ったDennis Lwabu(Dr)が転換中に流れていたクレイジー・キャッツの「ドント節」のサワリを歌うという即興(?)を加え、G-FREAK FACTORYとの差をつけるように持ち前のオプティミズムもアピール。そこからMC5ばりの爆音の演奏とサビの歌謡メロの組み合わせが印象的な「Shaky」、サスフォーが持つジャム・バンド的な要素が際立つ「97.9hz」と繋げ、4つ打ちのリズムで観客を跳ねさせた頃にはフロアに大きな盛り上がりが渦巻いていた。

「G-FREAK FACTORYからバトンを受け取った気がしているんで、思いっきりやらせてもらってもいいですか?」(Washiyama)

もちろん、そこからのセトリを考えれば、最初から思いっきりやるつもりだったのだと思うのだが、そんなふうに宣言することで、現在進行形の自分達の姿を観客の脳裏に焼きつけたいというバンドの目論見は、よりはっきりしたんじゃないか。ハード・ロッキンなリフを持つブルージーな「BIGHEAD」、WashiyamaとSeiya Sawada(Gt)が泣きのソロを応酬しながら、ブルース、フュージョン、ラテンの要素が入り混じるアンサンブルがサスフォーのミクスチャー感覚のユニークさを印象づけた「Betty」、Dennisが1曲通してリード・ボーカルとギター、Washiyamaがドラムを担当したソウルフルな70年代風の王道ロック・ナンバー「Tell Them」、アーミングを駆使したWashiyamaのメタリックなプレイがフロアを沸かせたディープ・パープルの「Burn」インストカバー、コロナ禍じゃなかったらシンガロング必至のアンセミックなブルース・ロック・ナンバー「INVERSION」、ハード・ロッキンなリフとサビの歌謡メロディがキャッチーな「ANYONE」、Hiromu Fukuda(Ba)のウォーキング・ベースがグルービーに鳴るジャジーな「オーバーフロウ」

――新旧織りまぜながら披露した曲の振り幅を伝えるため、一気に書いてみたが、4人それぞれの卓越したテクニックや、そのテクニックに裏打ちされたジャム・バンド的な自由度の高いアンサンブルは今も変わらないものの、それを武器にライブ・シーンで頭角を現してきた頃とは違って、現在のサスフォーはソングライティングや、その幅広さでも戦えるバンドに成長していた。中でも歌ものとしての魅力がぐっと増してきたことは新たな発見だった。

バンド加入から7年を経て、ついに曲間のMCを担当したFukudaが「サスフォーは進化の途中。置いてかれないようについてきてください」と言ったのも大いに頷ける。そして、そんな進化はメンバー達の気持ちも変化させたようだ。

「(ライブのチケット代の)学割を始めました。今ってバンドいなくね? もっとバンドがいないとおもしろくない。チケット代って壁があるなら取っ払って、若い子にライブハウスに入ってきてもらいたい。今まで影響される側だったけど、影響する側を目指したい」(Washiyama)

つまり、サスフォーのライブを見たら、バンドを始めたいと思わせられるようなバンドになりたい。いや、そういうバンドになれるという自信が今の彼らにはあるということだ。それもFukudaが言った進化の1つなのだろう。

「ラスト2曲!」

Washiyamaが上げた声に応えるようにFukudaが鳴らした爆音のスラップからなだれこんだのは、SNSに寄せられるリクエストに応えた「ストラトキャスター・シーサイド」。ラストスパートを掛けるように加速していく演奏を聴きながら、なるほど、そんなある意味サービス精神も芽生えてきたということか――と思ったりも。

「まだ力が足りない。どうしたらいいのかと思うこともある。大きな舞台、長い持ち時間(を求めること)なんてクソどうでもいいことだと言えるライブができる気がする!」(Washiyama)

そんな思いを込め、本編最後にアルバムの表題曲であるアップテンポのストレートなロック・ナンバー「トラベル・ザ・ギャラクシー」を披露したバンドはアンコールに応え、ラテンの魅力もあるダンス・ナンバー「Vanessa」でダメ押しするように観客を踊らせた。「Vanessa」を演奏する前にWashiyamaが言った「G-FREAK FACTORYのようなバンドが先輩でいる業界にいられてよかった。あの山、高いよ! 今の俺達に歌ってるんじゃない?って曲を」という言葉を考えると、観客を踊らせることももちろんだが、この曲が持つ言葉の力が重要だったんじゃないか。

《さあ歌え 生を受けて 死んだって何かが残るように》

自らを叱咤しながらライブを終えたところにサスフォーの志の大きさを感じた。進化の途中と自覚している彼らがここからさらにどんなふうに進化していくのかがまた楽しみになった。歌ものとしての魅力がぐっと増してきたと前述したが、「トラベル・ザ・ギャラクシー」から、「Vanessa」にかけて、Washiyamaの歌声が尻上がりに伸びやかになっていったことを考えると、ボーカリストとしてもぐんぐんと成長しているようだ。

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