LIVE REPORT

“REDLINE ALL THE FUTURE“ LIVE REPORT!!

Report by Chie Kobayashi
Photo by Takahiro Takinami(主催提供)

2022.08.15
REDLINE ALL THE FUTURE @ 新宿ACB HALL

SATANIC ENT.主催の「SATANIC PARTY 2022」はキャパ50%で声を取り戻すと宣言。SiMも10月から“大声あり”の全国ツアー「SiM TOUR 2022 "BEWARE"」を開催するなど、ライブハウスシーンはそれぞれの信念とそれぞれのやり方で、少しずつ、コロナ前のライブハウスを取り戻そうとしている。

そんな中で「REDLINE」は、“実験”と称してThe BONEZ、SHADOWS、HEY-SMITHのスリーマンライブを、新宿ACB HALLで“フルキャパ”で開催した。これはあくまでも「REDLINE」のやり方。

「この3組でフルキャパでライブをやりたい」と盛り上がった、HEY-SMITH猪狩秀平(Gt, Vo)のYouTube(猪狩秀平の大阪のバンドマンチャンネル)とJMSのYouTubeチャンネルによる「STAY FREE」とのコラボ動画。それが実現したのがこの日のライブだ。このライブはフルキャパであることが話題になったが、そもそもThe BONEZ、SHADOWS、HEY-SMITHの3マンがACBで行われること自体が大事件である。

ということでチケットはもちろん即ソールドアウト。満員のACBは、開演前から熱気と興奮に包まれていた。トップバッターを務めたのは、ACB HALL初出演となるThe BONEZ。JESSE(Vo, Gt)、T$UYO$HI(Ba)、ZAX(Dr)、KOKI(Gt)の4人はステージに登場するなり、観客がひしめきあうフロアを後方までうれしそうに見渡す。そしてJESSEの「新しい時代を作るぞー!」という宣言を合図に、「Plasma」でライブをスタートさせた。さっそくギュウギュウのフロアにヘドバン、ジャンプが巻き起こり、さらに場内はヒートアップ。そんな様子を、ZAXは立ち上がって見る場面もあった。
JESSEが「バンドマンが3年待った生き様見せてやるからついてこいよ!」とさらに焚き付けて始まったのは「My Band」「We are The BONEZ」。まさにバンドマンの生き様や喜びを歌った楽曲だ。テンションだけでなく、音楽と演奏で感情を高ぶらせてくるThe BONEZのライブを、ACB HALLで味わえる至高の時間に。4人はバンドを始めたてのようなキラキラした目でフロアを見たり、メンバー同士で顔を見合わせたりしながら、生き生きと、かつ骨太にプレイ。JESSEは何度も「楽しいな」「マジで待ってたよ」と、フロアのファンと交流しながら喜びの言葉を口にしていく。
JESSEが「死ぬときにこの景色を思い出すと思います」と言ってから始まったのはコロナ禍の葛藤やその先の希望を歌った「That Song」。それは、ただフルキャパのACB HALLでのライブの景色というだけでなく、この日に至るまでの悔しさや迷いや葛藤、それぞれが抱えた思いも込めた、この日のACB HALLに渦巻く“想い”。The BONEZによるひときわエモーショナルな演奏が、すべてを物語っていた。そして彼らは「SUNTOWN」を終えると、汗だくでSHADOWSへと繋いだ。

SHADOWSは人一倍、コロナ禍でのライブのやり方に苦悩していたように見えるバンドだった。というのも彼らは新型コロナウイルスの感染が広がった2020年から、2021年のSATANIC CARNIVALまで一度もライブを行っていなかった。「SATANIC CARNIVAL 2021」の直前にはHiro(Vo)がインタビューで「コロナ禍でのライブを自身がどう感じるかわからない」と、その戸惑いを口にしていたのが印象的だった。彼らは単純にライブができればそれでいいというわけではなかった。「SATANIC CARNIVAL 2021」を皮切りに彼らはライブを徐々に増やしていき、今ではすっかりコロナ禍でのライブも楽しめているようだが、彼らの本質はやはり、観客と共に生み出すあの空気感や熱狂ありきなのだ。だからこそ、彼らが満員のACB HALLのフロアをうれしそうに見つめている姿には、改めてグッときてしまった。
「All I Want」を1曲目に持ってくるという、ブチ上げセトリでスタートしたSHADOWSは「Senses」「Overcome」と序盤からフルスロットル。もちろんフロアだけでなく、ステージ上のSHADOWSメンバーも感情を爆発させ、Hiroはもちろん、Kazuki(Gt, Vo)とTakahiro(Gt, Vo)のギターもシャウトもキレッキレ。Hiroが「忘れていたものを思い出しました」と口にすれば、Kazukiも「お前らがずっと信じているものを、誰にも潰させねえよ!」と頼もしくオーディエンスとの距離を詰めていく。「A Ghost Of Walls」でバンドの最新モードを見せつけたあとには、「Fail」や「My Direction」と休む暇も与えない。そんなACB HALLにさらにHiroが「くたばってんじゃねえよ!」と焚き付けた「BEK」では、ステージ袖で見ていたJESSEが乱入するほどの盛り上がりに。何度もうれしそうにフロアのファンと拳をぶつけ合っていたHiroは、「ここから先のライブハウスが楽しみだよ。ありがとう」との言葉を残していった。

トリを飾ったのはHEY-SMITH。猪狩が「しゃべらないほうが伝わるやろ? すべて音楽で、ライブで表現していきます」と宣言していた通り、この日のHEY-SMITHは演奏にもセットリストにも、6人の姿にも、喜びと楽しさが溢れていた。1曲目として、登場するなり彼らがプレイしたのは「Come back my dog」。まさかの選曲にACB HLALLは一気に熱狂の渦に。さらに満(Sax)、かなす(Tb)、イイカワケン(Tp)のロングトーンから「Dandadan」になだれ込むと、会場全員が汗だくになるほどの熱気に包まれる。「この熱気も含めてライブハウスだよなぁ」などと考えていたところに「Not A TV Show」が叩き込まれるものだから、盛り上がりは最高潮。そんな様子を見て……というよりも、その渦中にいる猪狩が「俺たち、生きてるなー!」と上げたその声は、その場にいる全員の心の声だった。
「この曲は、今日この場所で演奏されるために作られた曲だー!」と、猪狩がより一層熱を込めたのはコロナ禍に制作された「Be The One」。Task-n(Dr)のドラムと猪狩のリフが鋭く響くイントロから、まさに一体感を増していく。「Let It Punk」ののちに、間髪入れずにYUJI(Vo, B)が歌い始めた「Don't Try So Hard」、さらに間髪入れずに猪狩が「Summer Head」を歌い出すという流れでオーディエンスをさらに熱狂させていく。終盤には猪狩があまりの熱気に「まともに演奏できへんわ」と笑い、「めちゃくちゃROCK SHOWやんな!」と声を弾ませる。そしてHEY-SMITHのメンバーも、オーディエンスももはやヘトヘトになる中、ドロップされたラストチューンは「Endless Sorrow」。大盛り上がりのうちに本編が締めくくられた。

汗だくのフロアではドリンクを求める観客がドリンクカウンターに列をなし、その光景にすら懐かしさを覚えた。そんな中でアンコールを求める声も止まず、HEY-SMITHが再びステージに。改めて猪狩が、「時代の節目節目にACBが歴史を作ってくれて、ACBで育ってよかったなと思います」とこの日の会場・ACB HALLへの感謝を述べる。そして「今日は夢の中にいるみたいでした」と「I'm In Dream」で熱狂の1日の幕を下ろした。

最初にも触れた通り、これはあくまでも「REDLINE」のやり方。JESSE(The BONEZ)は「今日は何をしちゃいけないとか、お前らが決めろ。またこれができるように俺らは突っ張ってるからさ」とステージで話していたが、まさにその通りで、バンドもオーディエンスも、これまで当たり前だった日常を取り戻すために、仲間とバンドとライブハウスを守るために、何が大切かを考えた上での楽しみ方を模索してきた。きっとまだまだ模索の日々は続くだろう。そんな中で、この日のACB HALLは、一つの未来の形に思えた。終幕後のACB HALLには汗だくのTシャツに身を包み、ヘトヘトの観客たち。「やっぱライブハウスじゃないとアカンな」。猪狩が発していたこの言葉に尽きる。


セットリスト

The BONEZ
01. Plasma
02. My Band
03. We are The BONEZ
04. Numb
05. Jump Around
06. Rusted Car
07. That Song
08. SUNTOWN

SHADOWS
01. All I Want
02. Senses
03. Overcome
04. Into The Line
05. A Ghost Of Walls
06. Fail
07. So What
08. My Direction
09. BEK
10. Chain Reaction
11. The Lost Song

HEY-SMITH
01. Come back my dog
02. Dandadan
03. Not A TV Show
04. Fellowship Anthem
05. Be The One
06. Fog And Clouds
07. Let It Punk
08. Don't Try So Hard
09. Summer Head
10. Over
11. We sing our song
12. Download Me If You Can
13. Drug Free Japan
14. Endless Sorrow
アンコール
15. I'm In Dream


REDLINE
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SHADOWS official site
HEY-SMITH OFFICIAL WEB SITE