G-FREAK FACTORY「Dandy Lion」INTERVIEW!!
Interview by Chie Kobayashi
Photo by Ruriko Inagaki
G-FREAK FACTORYがニューシングル「Dandy Lion」を9月14日にリリースした。
2020年7月リリースのアルバム「VINTAGE」以来のスタジオ録音作品となる本作は、G-FREAK FACTORYがコロナ禍で作った最初の作品ともなった。コロナ禍でなかなか曲作りが進まなかったという茂木洋晃(Vo)に、その葛藤を聞いた。
今やるべきは「自分が思っていることを素直にちゃんと伝える」
──前作「VINTAGE」では“beforeコロナ”の時代を詰め込んだとおっしゃっていましたので、withコロナを歌った作品という意味では今作が初の作品となります。その表題曲が、柔らかくて明るい曲であることに驚きました。
コロナ禍で、いっぱい落ち込んだし、希望を持って臨んだこともあったし、かと思えばその希望に打ち破れてという繰り返しで。だから別に狙って明るい曲を作ったわけではないんだけれども、確かに「暗いものを作るのはちょっとやめよう」という意識はあったかな。
──それは今の世の中が暗いからですか?
うん。今、世の中に明るさがまったくないでしょ。そういう中で、音楽はどうやったら力になれるのかというのはずっと考えていて。俺、パンクロックもそうだし、レゲエもそうだけど、力になる音楽がすごく好きで。そういう意味でも、なるべく暗いものを作るのはやめようと思った。
──コロナ禍で曲づくりをして、出てくるものは以前と変わりましたか?
変わったね。マインドや価値観が、自分を含め、周りもみんな変わっていることが手に取るようにわかったから。そんな中でどこにあわせて何を言えばいいんだろうと考えた答えが、「自分が思っていることを素直にちゃんと伝える」だった。そしてできればポジティブにいたい。今回リリックも含めてそこは意識したかな。
──メンバーとの曲づくりは変わりましたか?
今まではスタジオでにらめっこして、10時間でも何でも「違う」「できねぇ」って言ってやっていたんだけど、今回はみんなでスタジオに入って作業するみたいなことがほぼできなかった。だからデモを作って、データで送って、各々がアレンジしたものを乗っけて行くという作業になって。周りのみんなはもっと前からやっていた現代社会の楽曲作りなんだろうけど、俺たちは棒と竹槍みたいなところからバンドを始めているからさ。データのやりとりだと、その分、曲は整うんだけど、遊びがなくなっていく感覚もあるよね。ありがたいけど。
──データでのやり取りでの曲づくりをしてみて、いかがでしたか?
いい曲ができたなとは思うけど、体に入っている感が今までと違って。「ライブでやってみねぇと分からねぇな」という不思議な感覚。
──いつもはある程度みんなで演奏した状態で完成となるわけですもんね。
そうそう。
「どうやったら俺たちは信じ合うことができるのか」を歌いたかった
しかも、今回はなかなか曲が生まれなかったんだよね。リリックを書いていても「今の社会だと言えねぇな」みたいなことを思ってしまって。beforeコロナだったら何も気にせず言えていたことが、誤解されるかもと思うと言えなくなってしまった。失言一つで奈落の底まで叩き落とされるようなことも見てきたし、本質とか実質じゃなくて、その周りにまとわりついているふわふわとした風評みたいなところで生きている感じがあって。
──それはやっぱり、コロナ禍の始まりにライブハウスが槍玉に挙げられたあたりから?
うん。槍玉に挙げられて、ツアーも飛んで。でもだからといって、当たり障りのないことを歌うのも違うし。バンドって、ライブに来たり、CDを手に取ってくれたりしたお客さんたちを牽引していく存在じゃないといけないと思うんだよね。クローズドの空間でもいいし、手に取ってくれた人にだけでもいいから、「俺はこう思うんだよ」ということを嘘なく伝えて、その人たちと世界を作っていく。そう思っていたのに、1回ビビったら、何も書けなくなった。
──そういうときこそ曲が書けるものなのかと思いました。……と言うと不躾ですけど……。
無責任だったら書けると思う。でも一語一句でいきなり解釈が変わる怖さも、もちろん嬉しさも、面白さもあるわけで。うん、今回はリリックは悩んだな。今回ばかりは「音楽なんてもう役に立たないな」と思ったもんね。でも最終的には、音楽が、暮らしの中で鳴っている音楽が一番助けてくれている、というところに戻れたから良かった。
──そこで「やっぱり音楽が必要だ」と思ったのはなぜですか?
いい音楽にいっぱい出会えたから。特にコロナ禍ではインストゥルメンタルをよく聴いてたね。インストってすげぇな。俺はボーカルなのに、インストに一番助けられたよ。
──何がきっかけでインストを意識して聴くようになったんですか?
Apple Musicのプレイリストみたいなやつで、たまたま流れてきたの。音楽って、ボーカルが入ると、良くも悪くもボーカルが全部支配してしまうでしょ。でもインストは押し込まないじゃん。主人公が聞き手なんだよね。夕焼けとかもそのとき聞いているインストの質感によって見え方が全然変わってくる。コロナ禍は、一人で川に行っていたんだけど、一人でいると、解放しているんだけど解放していないみたいなよくわからない感覚になって。音楽がなかったら、メンタル的に潰れていたと思う。
──川でインストをよく聴いていたんですか?
そう。川とインストはすごいよ。Bluetoothスピーカーをリュックサックに入れて、音楽を流しながら川の水で顔を洗ったりしてさ。めっちゃいいよ。都会のやつにはできねぇだろ(笑)。
──でも、茂木さんはボーカルとして、しかもメッセージ性の強い音楽をつくり続けてきた。そこで改めて、歌うべきこと、歌わなきゃいけないと思ったことはどういうことでしたか?
コロナ禍って、疑い合ってしまっているということが一番悲しいことだと思うんだよね。だからどうやったら信じ合えるのかを考えていて。ライブハウスの空間で、全員が信じ合えていたらマスクもいらないかもしれない。まぁ地下興行みたいになってしまうけどさ。だから全員が全員をまず疑っているこの現実から解放されたいなと思った。だから、「どうやったら俺たちは信じ合うことができるのか」。それをまず歌いたいなと思った。
──今までも茂木さんは、隣の人や周りの人、半径1メートルの人たちを信じていこうというメッセージを歌ってきていたと思いますが、それとはまた違いますか?
だからこそ、なおさら思うのかもしれない。どれだけ信じ合っていたとしても1個のボタンの掛け違いや失念で、その人をひどく突き放してしまったり、傷つけてしまったりすることもあるんだよね。今までも各々違う価値観の人たちが集まっていたわけだけど、コロナという宿題が、またみんなを考えさせているんだと思う。例えばクローズドなワンマンライブだったら、ノーマスクでライブができるかもしれない。だけど、実際、誰かが嫌な思いをするということも生じてきているわけで。全員、各々背景も違うからさ。
──それを踏まえて、今作のリリースを発表した際にコメントされていた「ウイルスではない。俺たちはもう、その先にある綿毛のようなものだ」という言葉についても、もう少し詳しく教えていただけますか?
俺たちは、ギリギリで手を繋いで、風が吹いたら散っていく。だけど散っていった先で、またその土地の栄養で新しいタンポポとして育っていく。その、ギリギリだけど力強い感じがいいなと思って、綿毛の歌を描きたいなと思った。でも書いているうちに「ダンデライオン」って、ライオンが出てきて。百獣の王と言われているライオンが、こんなに弱い綿毛に例えられているのって、ドンピシャもいいところ。「最強のふりをしていても、実はこんなに弱ぇんだよ」というのもそうだし、「最弱のところからライオンにもなり得るぞ」というのもそう。それで、俺たちはどっちなんだろうなと思ったんだけど……今は綿毛だった。ライオンのふりをして生きていたときもあったけど、今はもう一回ギリギリ風に耐えながら手を繋ぐ必要がある。「あいつが嫌だ」「こいつが嫌だ」と言ってる場合じゃねえって。もう一度ここから始めないとなって。川でも花をいっぱい見たんだよ。「こいつ、こんなにきれいな花だったんだ」みたいな。立ち返ったり、振り返ったりしている時間を、コロナにもらったね。
高崎芸術劇場でのツアーファイナル、日比谷野音でのワンマンライブ
──リリース後にはツアーがあって。ツアーファイナルは高崎芸術劇場でのワンマンライブですね。「山人音楽祭」と同じ会場ですが、去年「山人音楽祭」の前には「ホールでやるのがこわい」とおっしゃっていました。実際やってみていかがでしたか?
2日間あったから、2日目はうまくできたけど、1日目は「やっちゃったな」と思った。ホールって、全員の顔がよく見えるんだよ。しかもバックドロップに照明が反射して、フロアが真っ暗にはならないの。だから集中してない人とかがいると、そこに気が行っちゃって。その日の夜、TAKUMA(10-FEET)から「どうだった?」って電話が来たから、その話をしたら「そういうときは、2階と3階の誰もいないところを見て、そこに向かってやるしかないんだよ」と言われて。ホールを何度も経験している人がそういうんだったらそうなんだと思って、次の日は、持っていかれそうになったら、誰もいないところを見るようにした。そしたら2日目はホールに対していいイメージが持てるようになったね。
──では、今回のツアーファイナルと前日の「山人音楽祭」では、さらにホールに慣れた状態でライブができそうですね。
うん、そのつもり。
──そして、その前の10月23日には、バンドの結成25周年を記念して、日比谷公園大音楽堂でのワンマンライブ「G-FREAK FACTORY 25 th ANNIVERSARY ONE MAN LIVE」があります。これはどんなライブになりそうですか?
前回の野音は、椅子のあるところにいる人たちに対して何ができるんだというチャレンジだったと思うんだけど、今回は椅子があるとか、立ち位置が決まっているとかのライブを経験したうえでのライブ。その中で自分たちが成長した部分を見せられる格好の場所になると思う。
──前回は、「フロアに降りちゃいけない」と必死に言い聞かせながらライブをやっていましたもんね。
そう。でも今回はあのときとは状況がまるっきり違うから、また楽しみだな。
結局、ずっと面白いんだよね
──バンドの25周年についても伺いたいのですが、今はバンドを始めたときに想像していた「25年後」にいますか?
そもそも25年やるつもりなんか微塵もなかったよ。30歳くらいで辞めようと思っていたもん。
──では、予想よりも随分長く続いていますね。
ね。もしかしたら、コロナの前、「VINTAGE」が出来上がったときくらいが一番楽しかったのかなと思うんだよね。でも、そこから1回ライブが取り上げられて、今はまた探して。だけど執念のように探して食らいついて、なんとかやっているのもまた面白くて。結局、ずっと面白いんだよね。
──25年間、バンドを辞めようと思ったことはないですか?
「辞めよう」はねぇな。「ちょっとゆっくりしよう」はあったけど。「辞めなさい」と言われたことは何回もあるよ(笑)。「もう辞めなさい!」って。
──そんな中で25年間続けてきた原動力は、先ほど言っていたように面白いから?
そうだと思う。何よりもそれだと思うね。25年やったという認識も、感覚もなくて、目の前の面白いことをやっていたら25年経っていた。
──年表や地図で示すとしたら、G-FREAK FACTORYは、今どこにいると思いますか?
折り返し地点かな。よぼよぼになっても、フォークギター1本で「G-FREAK FACTORYです」と言って、ライブをやっていてもいいなと思っているもん。辞める理由がないから。
──想像してみましたが、そんなG-FREAK FACTORYも絶対にカッコいいですね。
カッコ悪かったらやらないほうがいいと思う。前にニューヨークで、90歳のおじいさんのデュオを見たの。ふたりとも90歳で、歩くスピードも遅くて、座って演奏するんだけど、ギターを持った瞬間、すごく速いジャズを弾いてた。その姿がすごくカッコよかったんだよね。そういうことをずっとやっていたいなぁと思うよ。
■G-FREAK FACTORY「Dandy Lion」
<CD>
1. Dandy Lion
2. STAY ON YOU
3. 唄種
<初回限定盤DVD>
・2021年6月26日Zepp DiverCity(Tokyo)にて開催された “VINTAGE” TOUR 2021〜Final〜より
・2022年7月3日京都大作戦2022〜今年こそ全フェス開祭!〜より
■初回限定盤(CD+DVD): ¥1,600(税抜価格)+税 / BDSS-0055
■通常盤(CD): ¥1,000(税抜価格)+税 / BDSS-0056
G-FREAK FACTORY 25 th ANNIVERSARY ONE MAN LIVE
日程:2022年10月23日(日)開場17:15 / 開演18:00
会場:東京都 日比谷公園大音楽堂
G-FREAK FACTORY OFFICIAL WEBSITE