SATANIC PARTY 2022 対談 < Paledusk Kaito × PIZZA OF DEATH 菊地>
photograph by Yuta Kato, text by Teneight
これからのシーンを担っていくであろう次世代アーティストに大舞台でライブする機会を設けたSATANIC PARTY。今年初めての試みである本イベントに向けて、出演者の心境や意気込みをうかがう。その対談相手は、もはや次世代らしからぬ貫禄さえも見せつけるPaleduskのKaitoと、このシーンを底から支え続けるPIZZA OF DEATHの20代のスタッフ菊地の対談だ。
“面と向かって正直な話をぶつけさせてもらって、そこからさらに仲良くなった”(Kaito)
“常に現場に足を運んで、幅広く活動していることに感心しました”(菊地)
ーお2人に面識はありますか?
菊地:SATANIC ENT.のWho’s Nextの連載に登場する前、2019年の年末に1度Paleduskのライブを観たことはあったのですが、その当時は一方的に知っているだけでした。そこから、SATANIC CARNIVAL 2021のオープニングアクトとして出演していただいた際に、挨拶したのが初めてですね。
ー初めてライブを観たときはどう思ったんですか?
菊地:その当時のライブもカッコいいなと思いましたが、その1年半後に観たSATANIC CARNIVALでのライブがもっと印象的でした。1年半の間で全く別物になっていて、その伸び代に驚きました。オープニングアクトで持ち時間が20分しかない中でしたが、一瞬の間に凄いものを魅せつけられた感覚になって。終わってすぐI.S.Oと『ちょっとPaleduskヤバすぎたっすね…』と話をして、その後すぐに会いに2人で名古屋までライブを観に行ったくらいです。
Kaito:SATANIC CARNIVALの1ヶ月後とかですよね?
菊地:そうですね。そこでKaitoくんに話す時間を設けてもらって。僕ら的にはPIZZA OF DEATHでPaleduskをサポートしたいと思っているという旨を伝えたんです。その当時の会話の中で、Kaitoくんがレーベルやプロダクションの必要性について、自分の考えを話してくれて。インディペンデントに活動して規模を拡大してるPaleduskのKaitoくんからその話を聞けたことが、すごくいい機会になりました。デジタルディストリビューションが主流になり、日本でも、徐々に自立したアーティストが結果を出しているケースは増えてきていて、レーベル・プロダクション側の人間として自分たちの存在意義を改めて考え直す必要があることがずっと頭にはあったけど、それをアーティストからリアルに伝えられた体験はそれが初めてで。I.S.Oと僕、2人して結構喰らいましたし、いいキッカケを与えてもらいました。
Kaito:なんかめちゃ悪口言ったみたいじゃないですか(笑)。
菊地:あれは、本当にいい体験で。
Kaito:もちろん、もっと大勢の人に聞いてもらいたいんですが、オファーをお断りした時期はまだ自分達で出来ることがいっぱいあったので、他の人たちの力を借りちゃうと、本当に自分達が目指す頂に到達できないんじゃないかって考えがありました。もちろん声を掛けていただけることは光栄でしたし、PIZZA OF DEATHはめちゃパワーを感じるし嬉しかったんですが、まだコロナ真っ最中ということもあって、自分達の価値を100%見てもらえてないと思ったんですよ。そんな状況ならもう少し自分達だけでいろんなことをやって、出来ないことが明確に判明した時に手を組まないと、現状に満足するバンドになってしまうと考えていたんで、それをI.S.Oさんに伝えました。でもI.S.Oさんも『実際にうちのレーベルでやれるから、スキルとかそういう話じゃなくて、これからも相談してね』って話してくださって。
ーそんな話があったんですね。
Kaito:はい。Who’s Nextの連載からオープニングアクトとしてピックアップしてもらえたことに、凄い感謝の気持ちがありますし、オレももっと頑張ろうって思える一言をもらえて。
菊地:あのとき、我々と一緒にやることにはなりませんでしたが、Paleduskには常に目標が明確にあって、そこに向かうために、自分たちだけで達成することを前提に考え、周りのサポートはどうしても必要になったときにだけ頼っています。というようなことを伝えてくれて。アーティスト自身でそこまでしっかりと考えて活動している以上、レーベルに入らずともこれから先もっとバンドを拡大していけるんだろうなと納得させられました。
Kaito:でもすごく迷ったんですよ。PIZZA OF DEATHにPaleduskがいる構図も面白いと思ったし、あの場では面と向かって正直な話をぶつけさせてもらって、そこから更に仲良くなったかなと思っています。
ーでは、2度目の出演だった今年はどうだったんですか?
菊地:1度話をしてからKaitoくんのSNSをチェックするようになって。常にライブハウスやクラブなど、現場に足を運んで交友関係を広げ、それを音楽活動に繋げていることに感心していました。そんな中でのSATANIC CARNIVAL 2022だったので、この1年でもさらに成長具合が見てとれたし、圧倒的でしたね。
ー2度出演しているKaitoくんのサタニックに対する思い入れはありますか?
Kaito:Crossfaithを大トリに抜擢したり、当たり前じゃないことをやらせてくれるのが凄い印象深くて。オレらはレーベルとかマネジメントがいない分、人付き合いでしか呼ばれないから、そういうポイントにおいては、特別に人の力を感じているんです。I.S.Oさんの人柄がなかったら多分こういうフェスにはなってないと思いますし、音楽や人間をしっかり見てフェスを開催しているから、思い入れもあるしめちゃカッコいい。それにSATANIC ENT.が掲げているパンク・ラウド・ハードコアカルチャーを発信していくメディアっていうことにも共感を得たし、自分達のやり方とリンクして、凄く良いなって思ってました。だからSATANIC CARNIVALは、どこよりも最初にメインステージに連れて行ってくれるフェスだと勝手に期待しています(笑)。それに、オレらが出たことによって、周りの若いバンドもサタニックなら自分達のこともキャッチしてくれるんじゃないかって頑張っていますよ。
“次の世代を担うであろう存在に衝撃を与えたい”(Kaito)
“バンドが新たな可能性を見つけられる場所を用意したい”(菊地)
ーちなみに、今回SATANIC PARTY(以降サタパ)初開催ですが、SATANIC CARNIVALとの違いはどこにありますか?
菊地: SATANIC CARNIVALは、世代を問わずパンクやラウド、ハードコアのアーティストを中心に集めて開催しているイベントです。今回のサタパはその中でも次世代の若いアーティストを中心にしたイベントをやっていこうという話から始まった企画になります。
ーこのイベントを開催する意図は?
菊地:1番の目的はSATANIC CARNIVALのお客さんに若いアーティストを観てもらう機会を作りたいということです。SATANIC ENTの連載企画、Who’s Nextでは次世代のバンドを紹介していて、そこに登場したバンドからSATANIC CARNIVALのオープニングアクトとしてPaleduskやFUNNY THINK、SABLE HILLSにも出演してもらいました。ただ、CARNIVALの出場枠には限りがあるので、他にももっと魅力的なアーティストがいるのに記事にするだけで終わってしまい、観てもらう機会が作れないという課題がありました。そこで次世代バンドだけで新しくイベントを立ち上げてしまおうと。今回のサタパにはWho’s Nextに登場したアーティストも多く出てくれます。お客さんが新たなバンドと出会うキッカケになればいいなと思います。
ーなるほど。今回サタパではPaleduskがトリを務めますが、トリにした理由はなんですか?
菊地:SATANIC CARNIVALの話になりますが、過去8回の開催で、サブのEVILステージからメインのSATANステージにステップアップしたバンドがいくつかいます。中でも04 Limited SazabysとWANIMAの2バンドには、初出演のEVILステージから、その後SATANステージの大トリを引き受けてもらいました。僕らの中ではそんなサタニックにおけるストーリー性を大事にしています。そして、2回の出演で着実にパワーアップしているPaleduskに対してはそういう意味の期待感も持っているので、サタパのトリは彼らが1番相応しいだろうということでお願いしました。
ーPaleduskは次世代を象徴する動きを見せる数少ないバンドですね。
菊地:そうですね。先述しましたが、PaleduskはHideyoshiと楽曲を制作していたり、Kaitoくんが普段から遊んでいる中で出会った友達とジャンルに捉われない活動をしていて。遊びの場からその先にしっかり作品のリリースまで結びつけていることにもとても感心します。ロックシーンでは同じような動きをしているアーティストはまだ数が少ないですよね。
ーそんなバンドがいっぱい出てきて欲しいですからね。
Kaito:ジャンル関係なく遊んでいるのは、出身地が影響していると思っていて。福岡はジャンルの垣根がなくて、ハードコアとHIPHOPの怖い先輩同士が一緒に遊んでるんです。その点、大阪も福岡と似ていて、よく大阪のアーティストと仲良くなることが多いんです。それに、オレはクラブが楽しいからしょっちゅう遊びにいって、仲良くなって音楽でも繋がってきました。うちのギターのDAIDAIは特に音楽でコネクトしたいという考えを強くもっていますね。今は作曲家やビートメーカーとして、ラッパーなど他ジャンルの楽曲制作に携わったりもしています。オレはいろんなジャンルの友達が周りにいるからこそ感じることがあって。それは新しいシーンを作るにはバンドだけじゃ難しいってこと。今のバンドマンはおとなしい人が多いですしね。
ーそうですね(笑)。
Kaito:個人的な意見ですが、シャウトしてアグレッシブなライブをするボーカルが、私生活は大人しすぎると寂しく感じてしまいます。そういう意味で言うと、ラッパーって全員ボーカル気質なやつが多くて、面白く感じます。オレは自分が1番カッコいいと思ってる人と遊んでるのが楽しいので、友達はラッパーが多くなっちゃうかなって感じですね。
菊地:ラッパーはそれぞれが1人で活動し個の力が全てな分、音楽に向き合う姿勢もバンドマンとは異なりますよね。しかも個と個だから、横の繋がりも強いし柔軟で。結果としてその繋がりの中で新しい作品を作って活動の幅をどんどん広げていくみたいな。
Kaito:そうですよね。「KOUBOU」って自主企画をやっている理由のひとつなんですが、今ってバンドマンが若い子の憧れの対象になってなさすぎると懸念しています。オレがもし今15歳で音楽を聞いたら、バンドよりもラッパーに憧れるんじゃないかって。バンドマンは服装でも髪型でも、オフのときは適当でいいって思っている人が多い気がしますが、それじゃ憧れられないと思っています。オレは服装も超カッコいい人たちを見てバンドやりたいなと思わされたので。もちろん人それぞれの価値観があるので、これはオレの個人的な意見なんですが。
菊地:あはは(笑)。
Kaito:オレはバンドに憧れてくれてるキッズも、ファッション込みでカッコいい存在でいて欲しいんです。なので、影響を与える側としての意識があるバンドマンがもっと増えてくれればいいのになって。でもバンドの方がライブでは、オーディエンスを圧倒させていると思うし、ラッパーにはない部分ですよね。
ーそうですよね。
Kaito:それに、ラッパーでもバンドに憧れている人も多いんですよ。でもバンドやりたい友達がいなかったから、1人で始められるラップを表現方法として選んだ人もいます。そういうラッパーが、バンドとの接点を持ちたいと思ったときに、バンドはラッパーとの繋がりが弱いからそれも叶わない状況で。それを今やっているのが、AFJBとCrossfaithですかね。バンドのカッコよさを見出してくれている人って大勢いると思うんです。シーンをバンドだけで作っていくっていうよりは、ラッパー達とオレらが一緒にイベントをやって、1個上のトレンドをキャッチできたらいいかなって。
ーPIZZA OF DEATHのスタッフとして、HIPHOPシーンはどう捉えていますか?
菊地:そうですね。HIPHOPシーンは、アーティスト同士の繋がりで楽曲を共作したりイベントを企画することが盛んですよね。その繋がりが結果としてそれぞれのお客さんも巻き込んでどんどんシーンが拡大していってるような印象を受けています。また、アーティストは、自身の魅せ方にも気を遣っていますよね。ファッションに関してもそうですし、SNSの発言ひとつで惹きつけられたり、曲に限らず多方面で自分の魅力を発信している人が多いと思います。やっぱそういうことをバンドマンも積極的にやっていかないとスター性のあるバンドマンが生まれない気がします。
ー確かに魅せ方が上手いですよね。
菊地:さっきからHIPHOPを持ち上げすぎてしまってますが、Kaitoくんが言ったように、ライブの観点で見れば、ラッパーと違ってバンドには生で演奏できるという絶対的な武器があって、アレンジを加えてライブでしか出せない特別感が出せたりもします。まあどちらが良い悪いの話ではないのですがね。それに、今年のSATANIC CARNIVALではCrossfaithのライブにRalphが登場したり、サタパにはAFJBでJUBEEが登場したり。PaleduskやCrossfaith、AFJBがやっていることをもっと広げられるような機会を作っていきたいです。
ーでは、Kaitoくんから見て、次世代バンドの可能性はどうですか?
Kaito:オレはジャンル問わずもっといろんな現場に足を運ぶのがいいと思うんですよ。そこに行っていない時点で、いろんな可能性を縮ませてしまっているような気がしていて。ライブハウスも場所によっては、ラッパーとバンドを混ぜたイベントをやりたいってところもあるけど、そこには、限られたバンドしか選択肢に無いわけで。
ー確かに同じジャンル同士で一緒にいる人も多いですね。
Kaito:自主企画の“KOUBOU”では、バンドもラッパーも友達で、繋がりのあるみんなだけで作り上げていくのが最高ですし、そこに可能性を感じてます。
ーまさに今のシーンの流れを汲んだ企画ですよね。
Kaito:オレが学生の時に衝撃を受けたのは、ハードコアのライブでした。衝撃を受けて翌日の学校ではぼーっとしちゃって、あれは何だったんだろうって雷を打たれた感覚だったんです。今は雷を打ちにいってるバンドが少ないですよね。ラッパーはいると思う。オレたちが1番だよって。
ーその雷を打つためには何が必要だと思いますか?
Kaito:みんな何かみたいになりたいって思いすぎなんじゃないかな。もちろん憧れって素晴らしい。けど次は自分達が憧れられる存在になりたいと思わないの?って。もちろんこれは自分達にも言い聞かせています。オレたちはCrossfaithやcoldrainとかフックアップしてくれた先輩に負けたくないし、もっと若いバンドマン達が挑戦した方がいいんじゃないかな。高校の時って、小さなライブハウスで客は友達しかいないくせに、超ロックスターの気分でライブしてたと思うんです。でも少し飯が食えるようになったあと、そこからお金持ちになったり海外に行けるようになるところまで目指してる人が少なすぎる気がします。海外行って気が付いたけど、日本人って面白がられてるから、もっとやった方ががいいんじゃないかなって凄く思いますね。
ーKaitoくんみたいにアグレッシブに動いている人は少ないかもですね。
Kaito:あと、オレはSHADOWSが大好きなんですけど、彼らのファンってバンドを気持ちよくライブさせたいってオーラが凄く伝わってくるんです。SEが鳴った瞬間の声量とか。それはFACTやSHADOWSにもっている印象で、バンドを盛り上げようとする姿勢がカッコいいですよね。それと一緒で『なんかPaleduskカッコいいって言っとかないとダメだな』って、バンドの価値を高めてくれるようなことを、自分のファンにしてもらうのはすごく重要かなって。
菊地:Kaitoくんは、今のロックシーンの課題をしっかり考えて、それを打破すべく行動に移してカタチにできているけど、同じようなことを考えてはいるけど行動できないバンドもいると思うんですよね。サタパがそういったバンドが新たな可能性を見つけられる場所になっていったらいいですね。
ーでは、最後の質問になりますがサタパに対する意気込みを聞いてもいいですか?
Kaito:全員殺します。あと、このインタビューちゃんと読んで!
一同:(笑)。
Kaito:でも真面目な話、サタパはガイドラインにはモッシュダイブ禁止って書いてあるじゃないですか。このイベントの中で重要なことって、キャパを落としてまで歌っていいよっていうところ。それはサタニックのチームが話し合ってシーンを前進させようとしていることだと思うんです。今回は出演バンドの知名度は拮抗しているイベントだと思うんですけど、その中でオレらがやる意味を重要視しています。
ー具体的には?
Kaito:遊びにきてる人が衝撃を受けて、数年後に今のバンドに食ってかかってくるような人が1人でも生まれたら良いと思うしオレはそれが作りたいです。去年炎上したイベントもそんな意図もあったし、やっぱり1番はシーンの先を見据えてオレたちと一緒に戦ってくれる人、そして、ここまで上り詰めてこれるような人を、イベントに出演する全アーティストを通して生むことです。初めてハードコアのイベントに行って衝撃を受けたように、オレもそれを次の世代にさせたいんです。なので、パワーを感じられることをこのイベントのガイドラインに沿った上で用意しているので、それを感じてもらえたら良いかなって思います。
菊地:Kaitoくんが言ってくれたように、僕らも元通りのライブをするために模索をしているところです。色々な事情がある中で、今回は1歩進んで声出しだけOKと定めました。もどかしいですが、そこは厳守してもらいたいです。お客さんには新しいバンドとの出会いがあればいいなと思っているので、知らなかったバンドも是非観てもらいたいですね。これは出演してくれるアーティストに対しても同じ気持ちで、AFJBがインタビューで『共演する人には喰らってほしい』と言っていて。出演者同士も面識のないバンドは観てほしいですね。そうやって関わりがないアーティストが繋がって、何か新たな活動のきっかけになったら嬉しいですね。被りはありますが、その気になれば16組全部のライブが見れるようにタイムテーブルも組んでいるので、2会場を行き来してたくさんライブを観てほしいです!
SATANIC PARTY