
Who’s Next by SATANIC Editing Room Vol.35: Thermostud
SATANIC ENT.の編集スタッフが気になるバンドをピックアップする連載企画"Who's Next”。今回は北海道を拠点に活動するポップパンクバンド・Thermostud。今週末のSATANIC PARTYにも出演が決まっている彼らの素顔に迫る。
Text by Chie Kobayashi
BIGBANGとThe BeatlesとX JAPAN
──まずはバンドの結成の経緯から教えてください。
Takeru(Gt, Vo) もともとは僕が大学の先輩に「Hi-STANDARDみたいなバンドをやろう。お前はギターね」って誘われて始まったんですが、紆余曲折あってこうなりました。もっと言うと……もともとはこの3人に、2人入れて5人組でポップパンクバンドをやろうと思っていたんです。The Story So Farみたいな。だけど札幌は信じられないくらい人がいないので、なかなかメンバーが見つからなくて。その間に先輩に誘われたので、とりあえずThermostudはサイドプロジェクトとしてやろうと思っていたんです。そしたらThermostudから先輩が抜けてしまって。
Touma(Dr) この3人は大学の同期なんです。
Takeru そうそう、チワワのブリーダーの専門学校で。
──そうなんですか!?
Takeru すみません、嘘です。経済学部経済学科です(笑)。
──結果として、この3人でのThermostudになったと。そもそも皆さんの音楽を始めるきっかけなど、音楽的ルーツを教えてください。
むろ(Ba) お父さんがめっちゃバンドが好きだったので、小さい頃から車の中ではいろいろなバンドが流れていたんですけど、僕は嵐やBIGBANGが好きで。なんならバンドはちょっと苦手だなと思っていたんです。だけどONE OK ROCKが車でかかったときにカッコいいなと思って、初めて「これ何?」ってお父さんに聞いたんです。そしたらお父さんがそこから気合い入っちゃって。ワンオクのおすすめ曲を入れたCDと、お父さんが思うカッコいい曲をまとめたCDを作ってくれたり、iPodにおすすめ曲を入れてくれて。そのなかにSum 41やGreen Dayといった今に繋がる音楽も入っていて。そこからロックバンドにハマっていきました。高校に入ってからはバンドが好きな友達も増えて、ラウドロックも聴くようになって、大学入る頃にThe Story So FarとかNeck Deepなどのポップパンクに出会って「僕の中で一番求めていたのはこれだ!」という感じになってポップパンクにハマっていきました。
──楽器はいつ始めたんですか?
むろ BIGBANGが好きだった小学生の頃、CNBLUEというK-POPのバンドを見て、ギターを練習しました。だけどすぐに辞めちゃって。そのあと高校生の頃に、妹がアニメ「けいおん!」にハマってベースを始めて。お父さんに教えてもらっているのを見ていたら「俺もできそうだな」と思ってベースを始めました。大学でバンドサークルに入って、この2人に出会いました。
Takeru 僕の音楽的ルーツはThe Beatlesとマイケル・ジャクソンですね。お父さんがビートルズ好きで、お母さんがマイケルジャクソンが好きで。楽器を始めたのもビートルズがきっかけ。最初にドラムがカッコいいなと思って電子ドラムを買ってもらって始めて。ビートルズだとポールが好きなのでベースも買ってもらって。そうすると「ギターも弾けるようになったら1人でビートルズできるようになるよ」と言われて、ギターも始めました。
──今のThermostudの音楽性であるポップパンクにはいつ出会ったのでしょうか?
Takeru 中学生のときにお父さんがロックコンピDVDを買ってきてくれて。そのDVDでは、The Whoが「パンクの金字塔」と紹介されていたから見たんですけど、あんまりしっくりこなくて。セックス・ピストルズとかザ・クラッシュも聴いたけどそのときはあんまり合わなかった。そのときに、底抜けにバカなことをやっているSum 41やGreen Dayを見て楽しそうだなと思って、2000年代のポップパンクをdigるようになりました。
──そこから自分でもバンドをやりたいと思うように?
Takeru そうです。高校のときにバンドノートを書いていて。
──バンドノート?
Takeru はい、僕の住んでいた街は田舎で、1人でギターを練習して、1人で曲を作っていたので、どうやったら売れるか、その道筋とかを考えて書いていました。書き始めたのは高校生のときだったんですが、その頃はサッカーをやっていてバンドは文化祭でやるコピーバンドくらいだったので、バンドができたらっていう妄想を書いていた感じなんですが、バンドを組んだらスムーズに進められるようにという気持ちもありました。
むろ そこに「5人組のバンドで」ということも書いてあったから、大学で知り合った僕たちは、メンバーが揃うのを待っていたという感じです。
──なるほど! Toumaさんの音楽遍歴は?
Touma 俺も親からの影響なんですが、親がX JAPANやLUNA SEAがめちゃくちゃ好きで、父親もドラムをやっていて。その影響もあって車の中で流れている音楽が1980年〜1990年代のロックシーンだったんですよ。そこで自分がいいなと思ったのがX JAPAN。さらにドラマーのYOSHIKIに憧れて、VHSでライブ映像を観ていて。2008年に東京ドームで行われた復活ライブをWOWOWでリアルタイムで観たときに、めちゃくちゃ感銘を受けてドラムを始めました。と言っても田舎なので、スタジオもライブハウスも身近にはなかったので、家でのエアドラムでしたけど。ただ、高校では部活をやっていてドラムからは離れていて。大学に入ったときに、オリエンテーションで最初に話しかけてきた人が軽音楽部だったので、そこでドラム熱が再燃して、軽音楽部に入ってドラムを始めました。
──ポップパンクに出会ったのは?
Touma それは完全に2人の影響ですね。僕自身はずっとFACTやcoldrain、SiM、マキシマム ザ ホルモンといった日本のバンドばっかり聴いていたんですが、2人は洋楽が好きだったから、2人に教えてもらって良さに気づきました。
自分が10代の頃に聴いておきたかったものを歌詞に
──そのサークルで3人が出会い、紆余曲折あってThermostudが始まったわけですが、「このバンドでこういう音楽をやりたい」と方向性が定まったタイミングはありますか?
Takeru 僕自身が初めて曲を作ったのは高校生のときなんですけど、“9割Good Charlotte”みたいな曲で。全校生徒や先生から褒められたんですが、それってみんなGood Charlotteを知らないからで。そのあと先輩に誘われてThermostudになってからは、他のメンバーも曲を作ってきたんですけど、Hi-STANDARDとはほど遠い日本語詞の曲で。それはないだろうと思って、僕も作るようになりました。そこでも最初に作っていたのはblink-182みたいな曲でした。方向性が定まったかはわからないですが、最近意識しているのはポップパンクだけど、ハードコア要素を入れてヘヴィにするなど、とにかくごちゃ混ぜにしたいということ。ごちゃ混ぜだけどまとまりがあって、そのなかに「この人、このバンドが好きなんだろうな」ってわかるネタも仕込んで。
──ルーツが好きな人がわかるような要素を入れたいのはどうしてなのでしょうか?
Takeru 音楽ってdigる楽しさもあるじゃないですか。好きなバンドの好きなバンドを聴いてみる、みたいな。僕はそういうことがめっちゃ必要だと思っていて。そういう曲を作っていたら、僕の理想とするフロアが出来上がっていくんじゃないかなと思うんです。予定調和じゃない、初期衝動で沸き立つようなフロアが。
──そういう曲は作っていても楽しそうですよね。
Takeru そうですね。Beastie Boysが昔の音をサンプリングしていましたけど、サンプリングに近い感覚なのかもしれないです。パクリじゃなくて、ちゃんと自分たちのものに昇華して、リスナーに気付いてもらえるようにする、という実験的な意図もあります。聴いていても「これ、あの曲じゃない?」って気づいたときに楽しいと思うし。
──曲の歌詞や内容ではどういうことを歌いたいと思っていますか?
Takeru 自分が10代の頃に聴いておきたかったなという歌詞にしています。10代って何も知らないまま突っ走って生きているからこそ、いろんなものに飲まれやすいと思うんですよね。今だったら、TikTokやっていないと話についていけないし、BeReal.が来たら撮らなきゃいけないしみたいな。でもそういう、予定調和で、“みんなで流行りものをやっているのが楽しいよね”みたいなのが僕は嫌なんですよ。自分はみんなが嵐を聴いてるときにビートルズを聴いてコピーをしていたから。それでも大丈夫だよって伝えたい。
──なるほど。
Takeru 最新曲の「LOVE」も、自分を大切にすることとか、「周りに合わせなくていいよね」ということを歌っていますし。自分がそうだったからこそ、伝えていきたいです。
LOVE by Thermostud | TuneCore Japan
──むろさん、ToumaさんはThermostudの楽曲の魅力をどのように感じていますか?
むろ めっちゃ好きなんですよね。普通に、日本のバンドだったら一番カッコいいんじゃないかって思うくらい曲がめっちゃ好きです。
Touma 俺らは、Thermostudの曲を、自分たちが入る前から聴いていたから。
むろ そうそう。あとは、3人のなかで流行っているバンドのエッセンスとかも入れてくれるので、そういうのも面白い。本当に好きなことをやりたいと思って作っているので、ポップパンクっていうジャンルはありますけど、どんどん変わっていくんですよ。それも、飽きずにずっとカッコいいと思える要因なのかなと思います。
Touma 各々のルーツがバラバラなことが逆にいい感じになっているというか。
Takeru だってBIGBANGとビートルズとX JAPANの合いの子がポップパンクですからね(笑)。
Touma 確かに(笑)。だから曲を作っているなかで発見があったり、自分の見たことのない視点からの意見があったりして、新鮮です。
札幌のライブハウスシーンを変えるために
──バンドノートの話もありましたが、北海道は良いバンドが多いイメージがありますが、Thermostudとしては、北海道でずっとカッコいいことをしているというよりも、全国に出ていって活動したいと思いがあるのでしょうか?
Takeru あります、あります。それこそ、メンバーが変わったタイミングで本州のバンドから声がかかるようになって。今、札幌のライブハウスシーンは全然勢いがないので、このシーンを変えなきゃ意味がないなと思っています。北国だからかもしれないんですけど、名古屋とか東京だとちょっと人が少なくても最前でツーステ踏んだりしてくれますけど、北海道の人はみんな端っこで見るだけみたいな。もちろんそれはそれで楽しんでくれているのかもしれないですけど、TURNSTILEみたいな熱量のあるフロアにしていきたいし、高校生とかもどんどんライブハウスに来てほしい。そのためにも僕らが全国に行って名前を知ってもらうことが必要かなと。
むろ それまでは「楽しいことだけやろう」みたいな感じだったんですけど、本州にライブに行くようになってから、北海道を盛り上げたいという気持ちになりましたね。
Takeru 本州で一緒にやった仲良いバンドが北海道に来てくれたときに、フロアがしょぼかったら、飯がうまくても海鮮がうまくても「ライブが面白くない」って言われてしまうかもしれない。そうやって舐められないようにしたいです。
──その一つにもなる「SATANIC PARTY」の出演が決まりましたが、当日はどんなライブにしたいですか?
Takeru 恐れ慄かせたいですね。SPARK!!SOUND!!SHOW!!とView From The Soyuzの間という、とんでもないところに入れてもらったので。でも普段の自分らも忘れずに、「自分たちが一番楽しむ」というのをモットーに挑みたいです。みんな僕らのことを知らないと思うので、曲は知らなくても、見ていて「なんかええやん」ってそのまま飛んでくれたらいいし。モラルあり、ルールなしで、自由に楽しんでもらえたらと思います。
むお 今までやってきた会場の中でもダントツで大きな会場なので、それがまず楽しみですね。いっぱいの人に見てもらえるのが楽しみです。
Touma 渋谷は乗り換えも少なくて行きやすいので助かります。
Takeru 僕らのこと知らないからって、その時間に兆楽に食べに行くようなやつはぶん殴ります!(笑)
”SATANIC PARTY” 2025
日程:2025年10月26日(日)
会場:渋谷Spotify O-EAST
時間:開場13:00 / 開演13:30
前売り ¥5,980- / 餓鬼割 ¥3,980- + 1 Drink / 電子チケットのみ
https://w.pia.jp/t/satanicparty-2025/
出演:ENTH / FOMARE / 花冷え。 / Launcher No.8 / Maki / ONIONRING / RAINCOVER / ReVERSE BOYZ / SHE’ll SLEEP / SPARK!!SOUND!!SHOW!! / Thermostud / TIVE / View From The Soyuz / WORSTRASH
Thermostud official SNS
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