INTERVIEW

Who’s Next by SATANIC Editing Room Vol.37: WORSTRASH

SATANIC ENT.の編集スタッフが気になるバンドをピックアップする連載企画"Who's Next”。今回は、ポップパンク×ヒップホップの融合で独自の音楽を生み出しているWORSTRASH。彼らの名前を一気に広めた「REDLINE ALL THE FINAL」での経験など、WORSTRASHがWORSTRASHたらしめる理由を探る。


Text by Chie Kobayashi
Photo by Shingo Tamai


 

出会いはインターネット

──バンド結成の経緯から教えてください。

Len(Vo) 俺たち全員、インターネットで出会っているんです。というのも、俺の高校は軽音楽部がなくて、バンドが組みたくても組めなくて。ライブハウスに人脈を作りに行くみたいな脳みそもなかったんで、「じゃあネットで探すしかないな」と思って、バンドメンバー募集サイトで2人と出会いました。

bibi(Ba, Vo) 高校3年生のときに、俺とLenが他のメンバーと一緒にWORSTRASHというバンドを組んで、LenとTØMは別でバンドを組んでいたんですよ。

──そうなんですね。LenさんとTØMさんの出会いもインターネット?

Len はい。

──メンバー募集サイトだといろんな人がいると思うのですが、その中からこのメンバーに決めたのは何か決め手があったのでしょうか? 好きな音楽が一緒だったとか。

bibi そもそも、そのサイトに投稿している人が少なくて。自分が音楽を始めたきっかけはGreen Dayなんですが、そのサイトの好きなバンドを書く欄にGreen Dayって書いているのがLenしかいなかったのでとりあえず連絡したという感じです。

──その頃はまだ違うメンバーだったということですが、そこから今のWORSTRASHになったのはどういう流れですか?

bibi コロナ禍で旧WORSTRASHが活動休止して。再スタートするときに、俺とLenだけが残ったので、新しいドラマーはTØMがいいなと思って、オファーしました。それまでは、俺がマキシマム ザ ホルモンが好きで、マキシマム ザ ホルモンみたいな音楽をやっていたんですが、TØMが入ったタイミングで新しいことをやりたいねという話になって、自分のルーツにあるポップパンクと、TØMが好きなヒップホップやミクスチャーと、Lenが好きなラップを混ぜた音楽をやろうということになって今の音楽性になりました。

──今、お話にもちょっとありましたが、皆さんのルーツになった音楽や、楽器を始めたきっかけを教えてください。

Len 自分は父がアメリカ人なので、そもそも家で日本の音楽があまり流れていなくて。生まれて初めて聴いた音楽がGreen Dayでした。そこからNirvanaやAerosmithを聞くようになって。年齢が上がるにつれてだんだんハードな音楽が好きになっていくので、Metallica、Limp Bizkitあたりまで来たくらいで、中学生になって洋楽を抜け出して邦楽を聴くようになって、coldrain、Crossfaith、SiMを聴くようになりました。でもロック以外に、ヒップホップも好きだし、EDMも好きで。今、WORSTRASHがバラエティ豊かな楽曲を作ることができているのは、そういうところからの影響もあるのかなと思います。

──自分でもバンドをやろうと思ったのは何かきっかけがあるんですか?

Len 中学生のときに見た「KNOTFEST JAPAN 2014」ですね。そこで初めてcoldrain、Crossfaith、SiMを見て、「日本のロックってこんなにカッコいいんだ」「俺もこの人たちみたいになりてぇ!」って思いました。

──日本のバンドがきっかけだったんですね。

Len はい。正直、その日Slipknotよりもその3バンドにくらって。もうその帰り道には「俺、バンドやりてぇ!」って思っていました。ボーカルを選んだのは、単に目立ちたいからです(笑)。

bibi 自分が音楽を聴き始めたのはL'Arc-en-Cielがきっかけです。L'Arc-en-Cielが主題歌を担当していた「鋼の錬金術師」の映画が深夜にテレビで放送されていて。アニメが好きだったから見ていたら、最後に「GOOD LUCK MY WAY」が流れて、衝撃を受けました。そこから、Aqua TimezやASIAN KUNG-FU GENERATIONの路線と、L'Arc-en-Cielからヴィジュアル系を掘る路線の2軸で音楽を聴くようになりました。楽器をやりたいと思うようになったのは、日本の音楽ばかり聴いていた俺に、親父が「こういうの聴けよ」ってGreen Dayを聞かせてくれたこと。それまでずっとサッカーをやっていたんですけど、Green Dayを聴いた日に「音楽をやりたい」という気持ちに変わりました。それを親父に言ったら、親父がギターを持っている友達からギターを、ベースを持っている友達からベースをもらってきて(笑)。そこにL'Arc-en-Cielを好きな自分が戻ってきて、俺の中ではL'Arc-en-Cielはベースが軸になっているバンドだから、だったらベースをやりたいと思ってベースを選びました。

TØM(Dr) 僕は父がベースを昔やっていたこともあって、家に昔のバンドのCDがたくさん置いてあって。中学生くらいのときに、ふと「何かおすすめ教えてよ」と言って、おすすめ曲をiPodに入れてもらいました。そのなかで僕が特に好きだなと思ったのが、Green DayやZebraheadでした。楽器を始めたきっかけはRed Hot Chili Peppers。それこそ父がRed Hot Chili Peppersのフリーに憧れてベースをやっていたので、映像作品も家にいろいろあって。たまたま一緒にレッチリの映像を見ていたときに、「ドラムって映像で見るとこんなにカッコいいんだ!」と興味が湧いて。中学のクラスメイトで音楽が好きな友達がいたので、その子と遊び感覚でスタジオに入ってドラムを叩いたのがきっかけです。

──お父さんはベースをやってほしかったんじゃないですか?

TØM 全然! むしろドラムを始めた頃は、ドラムとベースで一緒にセッションをやったりしていました。

──素敵ですね。

Len  そこでドラム選んでくれてよかったー! ベースだったら、どっちかとしかバンド組めなかった!


キャッチーさとこの3人にしか出せないもの

──素敵な考えですね。確かに楽器がかぶっていなかったから一緒にバンドができたわけですもんね。先ほどのお話だと、この3人のWORSTRASHになってからは、それぞれの好きな要素を入れた曲を作っているとおっしゃっていましたが、どういう音楽を作っていきたいと思っていますか?

bibi 曲の骨組みは自分が書いているんですが、キャッチーなものということは意識していますね。音楽をやっていると、どんどん難しいことをやりたくなるし、ライブハウスにいると「キャッチーなものはダサい」みたいな風潮もあるんですけど、俺はキャッチーなものが好きなので。

──それこれ皆さんのルーツに共通しているGreen Dayもめちゃくちゃキャッチーですしね。

bibi そうなんです。曲を作り始めてから、自分の好きなものは何だろうかって改めて整理したことがあって。そしたらL'Arc-en-CielもGreen Daymも、Sum 41もマキシマム ザ ホルモンも、みんな歌えるんですよね。サビにすごいインパクトがあって、頭から離れない。ギターのリフでも歌えるものが多くて。だからキャッチーさは大事にしていますね。あとは個性。この3人にしか出せないもの、この3人である意味みたいなものは大事にしたいなと思っています。

──この3人でしか出せないものというのが、先ほどおっしゃっていた皆さんの好きな要素を入れたものということですね。

bibi そうです。全曲にその感じは入れたいなと思って、いつも試行錯誤しています。

TØM 僕はWORSTRASHに加入するときに、「入るんだったら、音楽性をガラッと変えたい」って言ったんですよ。そのときにちょうどMGK(マシン・ガン・ケリー)がポップパンクのアルバムを出したタイミングで。ヒップホップが畑の人はオシャレな人が多いなって思っているんですけど、その中でロックなことをやっているのがすごくいいなと思ったんですよね。「シンプルにめっちゃカッコいいことやってる!」と思って。僕はバンドはやりたいけど、ヒップホップも好きだったから、それを混ぜたものができたらいいなと思っていたので、WORSTRASHではそういうものを作りたいなって2人に話して、それは今でも意識して作れているなと思います。

 

──これまで活動してきたなかで、ターニングポイントを挙げるならいつですか?

Len 去年12月に幕張メッセで行われた「REDLINE ALL THE FINAL」ですね。もっと細分化すると、オープニングアクトの出演をかけたオーディションで受かった日。そこで変わりました。

──どう変わりましたか?

bibi 個人的には、日本で活動している海外のサウンドを取り入れたバンドに対してずっと「真似事だ」って思っていたんですよ。だけど、いざ同じステージに立ったり、舞台裏での人間性を見たりして、「この人たちがいたから、今、こうやって日本でもロックというジャンルが人気なんだ」って実感して。今は日本のバンドが好きになりました。

Len まずは「REDLINE」に出演したことで、WORSTRASHという名前を何となく知っているとか、俺の見た目をなんとなく知っているという人が爆増したこと。それと、それまでは、技術がうまくなれば売れるだろうとかいいライブをすれば売れるだろうって漠然と思っていたんですけど……「REDLINE」に出たときに、いろんなアーティストに「俺らのライブ、どうしたらいいと思いますか?」って聞いてみたんですが、そしたら誰も技術のことは言わなかった。上手になることは前提での話という意味でもあるんでしょうけど、パフォーマンスについての意見だったり、「華があっていいね」というようなことを言われて。REDLINEに出るような人たちが、パフォーマンスとかそういうところを重視しているということは、かなりの発見でした。実際に、憧れの人たちのライブをやっている姿を近くで見ると、パフォーマンスの一つ一つや言葉の一つ一つがその人らしくて。個性が大事なんだなということに気づけたというのは、自分のなかではかなり大きなポイントでしたね。

TØM REDLINEのオーディションで、3組に絞られたときに「この3バンドの中で勝ち上がれば幕張に立てるっていうことだよね」と気付いて。投票もあったので、知り合いにめちゃくちゃ声をかけたんです。僕はそれまで隠していたわけではないけど、自分から「音楽やってます」と大々的には言ってこなかったんですけど、そのときはもう何をしてもREDLINEに出たかったから、いろんな人に連絡して。そうやって出演が決まったので、本当にうれしかったです。REDLINEでは、両親にも初めてライブを見てもらったんですが、すごく感動してくれて。音楽をやっていてよかったなと思いましたし、「また幕張でやりたいから頑張ろう」という気持ちにもなりました。

 

ファッションと音楽の関係性

──WORSTRASHはLenさんの髪型や皆さんの衣装も含めて、ビジュアルも目を引くポイントの一つですよね。そこにはどのような思いがあるのでしょうか?

TØM 僕は洋服が好きなんですが、見た目に惹かれるバンドマンってあまりいなくて。人としてとか、バンドマンとして魅力的な人はたくさんいて、洋服で見ていないということなんですけど。でもヒップホップにハマったときに、ラッパーってみんな服や見た目が個性的でいいなと思ったんです。単純に、見た目がキャッチーだと、曲もよく聴こえると思うし、そこを目指していきたいなと思った。3人とも顔もブサイクなわけではないと思うし、活かせるところは活かしたいなって。

bibi クラブって友達と気軽に行きやすい場所だと思うんですけど、それに対してライブハウスってちょっと行きづらい場所という印象が俺の中にはあって。その理由の一つが、ファッションだったり、カルチャーだったりするのかなと思っていて。もともとロックを聴いていなかった人が、外見に惹かれて聴き始めたということがあってもいいよなと思うんです。自分たちとしては、自分たちに憧れてバンドを始める人が増えてほしいし、そういう点で先輩たちにも影響を与えられるような存在になれたらうれしいなと思っています。

──「ライブハウスにいる人たちってオシャレだよね」みたいなところから。

bibi そうです。ヒップホップってオシャレで、「ヒップホップを聴いている俺がカッコいい」とか「ヒップホップを好きな俺、イケてる」って思って聴いている人もいると思うんです。俺は、それをロックに変えたい。自分が好きだったロックってそうだったんで。その一歩目が服装だと思います。

Len そういう意味では、僕は最初、服に対する意識がまったくなかったんです。体重が100キロあって、短パンを履いていて。だけど2人に言われて、確かにオシャレであることに越したことはないなと思うようになって、TØMに洋服を見繕ってもらいました。

bibi 昔はバンTしか持ってなかったもんね。MVを撮るときに「SiM」って書いたTシャツ着てきましたから、俺らのミュージックビデオなのに(笑)。

Len ドクターマーチン履けって言われたときも「いや、ライブしにくくね?」って思いましたもん(笑)。洋服もアイデンティティのひとつになるというのは、2人から教わりました。

──では最後に、今週末のSATANIC PARTYへの意気込みを教えてください。

Len 僕たちよりもヘヴィな音楽をやっているバンドは、僕たちのあとにいっぱい控えている。ウォールオブデスしやすいバンドも、ハーコーしやすいバンドもたくさんいる。だから暴れたい人たちは、僕たちのライブでも勝手に暴れてくれると思うんですけど、そうじゃない人……例えばフェスにしか行ったことない人、ライブハウスにあまり行ったことがない人もいると思うので、そういう人たちに対して「暴れられなかったからといって、決して楽しくないわけではないぞ」と思ってもらえるような空気感を作りたいです。せっかく来たなら、お前なりに解放してくれって。そういう人たちが解放しやすい空間を作ってあげたいなと思っています。

──WORSTRASHはトップバッターですが、「WORSTRASHのライブでは、こんなライブが見られるよ」とか「こんな気持ちにさせてあげられるよ」といったアピールポイントはありますか?

bibi 音楽の幅が広がるんじゃないかな? 自分たちのことを応援してくれる人や普段ライブに来てくれる人がみんな「自分の音楽の幅が広がった」って言ってくれるんですよ。それがうれしくて。今回は若手バンドも多いですけど、楽しいことが確定しているバンドがいっぱいいるじゃないですか。楽しいか楽しくないか、読めないバンドってWORSTRASHくらいだと思うんですよ。だから、それをちゃんと自分の目で見るためにも、自分のセンスを信じて、頑張って13:30から来てほしいです!

Len 12月5日にSHIBUYA clubasiaで、redmarkerというバンドとツーマンライブをやるので、SATANIC PARTYを見て、「こいつらイケてる」って思った人は、ぜひ長尺の俺たちも観に来てくれたらうれしいです。


”SATANIC PARTY” 2025

日程:2025年10月26日(日)
会場:渋谷Spotify O-EAST
時間:開場13:00 / 開演13:30
前売り ¥5,980- / 餓鬼割 ¥3,980- + 1 Drink / 電子チケットのみ
https://w.pia.jp/t/satanicparty-2025/

出演:ENTH / FOMARE / 花冷え。 / Launcher No.8 / Maki / ONIONRING / RAINCOVER / ReVERSE BOYZ / SHE’ll SLEEP / SPARK!!SOUND!!SHOW!! / Thermostud / TIVE / View From The Soyuz / WORSTRASH

https://satanicparty.com/


WORSTRASH & redmarker pre. "TEENAGE WAVES” -WORSTRASH × redmarker 2MAN SHOW-

日程:2025年12月5日(金)
会場:東京都 clubasia 
出演:WORSTRASH / redmarker

 

WORSTRASH official SNS

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Instagram https://www.instagram.com/worstrash_official/