LIVE REPORT

Earthists. ONE MAN SHOW ⾳球 -ON KYU- LIVE REPORT!!

Report by 矢島大地
Photo by Osawa Okuto


2025.10.19
Earthists. ONE MAN SHOW ⾳球 -ON KYU- @ 渋谷クラブクアトロ

 


 Earthists.の集大成を刻むべくして臨んだライヴだったことと思う。1年ぶりのワンマン公演は“音球 -ON KYU-”と題され、まさに音の球を投げ合って交歓を繰り返し、ヘヴィネスとFunを目まぐるしく行き来する楽曲からは名前のないダンスが生まれ、そこに、ひたすら獰猛なのにピースフルであるという多重人格的なバンド像が浮かび上がっていく。Earthists.とは何かを徹底的に見せ、Earthists.とは何なのかを人と共有し、その上でこの先に向かっていく。そんなマイルストーンを刻む意気が新旧織り交ぜたセットリストには表れていたし、何より、MCらしいMCよりもとにかく音楽で語り切るのだという姿勢が17曲・1時間25分という爆走音絵巻には映っていた。

 トランスの上でハイパーポップが跳ね回るようなSEから“METAHOPE”、“Yours”、“HYPERHELL”を連打したオープニングは、『HYPERMETAL』(2024年)をリリースして以降のEarthists.の在り方自体をイントロデュースするものだ。ズクズン!というギターよりもリリースカットピアノのリフを前に出したアレンジ、メタルコア・マナーとしてのオーセンティックなリズムを高速化してダンスに互換していくアイディア、そして音楽的な型に則るよりも型を食い破ること自体が何よりの快感になってフロアにFunを充満させていく様。これらは、ボカロがサブカルチャーではなくオーヴァーグラウンドを席巻するポップ・ミュージックになっていく10年をリアルタイムで体感してきた世代だからこそのミクスチャー感覚と言っていいだろう。怒号のようなピッチ・スクリームを繰り出し続ける一方、怒でも狂でもなくひたすら笑顔を浮かべるYUIのダンス、ダンス、ダンス。それはいわゆるメタルコアのフロントマンというより、池袋や秋葉原で活況を集めるアイドル的な様相であり、その異様さ自体がEarthists.というバンドのユニークネスを表していると言ってもいいだろう。2015年に結成され、当時技術的にもシーンの活況的にも熟していたメタルコアとDjentに汗くさい咆哮を載せて登場したEarthists.は、この10年でこんなにも遠くまで音楽の旅を続けてきたのだと。それを初っ端から表現し、だからこそ今がこんなに楽しいのだということを端的に伝える怒涛のオープニングだった。メタルコア発、日本土着のポップ・ミュージックとしてのボカロ経由、インターネットカルチャーとサブカルチャーを巻き込んだ変異型ヘヴィ・ミュージック行き——その中にはハイパーポップもトランスも織り込まれ、もはやメタルコアというよりも過剰にハイなダンスミュージックの数々がこのライヴの背骨になっていたようにも思う。これはいかにして生まれた音楽スタイルなのか? その音楽的な変遷についてYUIに訊いた時、彼はこんな言葉でEarthists.の道のりを語ってくれた。



 「言われてみたら確かに、ダンスを共通言語にするようになったのかもしれないですね。思い返すと、最初からその感じがあった気もするんですけど。でも曲を作っているYutoのベースはメタルじゃなかったから、メタルコアをやりたいっていうバンドの方針との整合性がとれない時期もあったし、メタルコアに他の音楽の要素が自然と入ってきちゃうことが多かったんですよね。で、俺らはメタルコアだけじゃなくていろんな音楽が好きなんだっていう部分に素直になれたのが今だと思うんですよ。メタルコアやDjentから出発したバンドが今みたいな音楽性に変化すると、いわゆるセルアウト的な見られ方をされることも多いんですけど、実はその逆で。むしろバンドが始まった頃のほうが、その時海外で流行っていた音楽を取り入れてやろうっていう気持ちだったんです。でも途中から、そういう音をわざわざ俺達がやらなくても他のバンドが勝手にやるんだろうなって気づいて。それが2020年くらいかな。ちょうどコロナ禍に入った時期でしたけど、自分達が本当にやりたい音楽って何なんだろう?っていうことを模索し始めたのがその頃だったんですよ。で、もちろんメタルも大好きだけど、見てわかる通り、Earthists.のメンバーは全員オタクなんですよね(笑)。メタルコアやDjentをやっていた頃はそういうメンバーのキャラクターがコンプレックスだったけど、そのキャラクターや趣向を振り切らせてみたら、自分達だけの独自の音になるんじゃないかなと考えるようになって。それで『Have A Good Cult』(2022年)でメタルコアとボカロ以降のポップスを実験的に混ぜてみたんですけど、特に“Lost Grace”は全箇所でwowakaさんの楽曲をリファレンスにしていて、“ローリンガール”をメタルコアで解釈したらどうなる?っていうのが“Lost Grace”だったんですよ。それを実際に演奏してみたらめちゃくちゃ楽しかったし、その楽しさがお客さんにも伝染して、よりアクティヴなフロアになっていったんです。やっぱり楽しさっていうのは大きくて、『俺らはもっと自分達に正直でいればよかったんだ』と気づけたんですよね。そこから制作に着手したのが『HYPERMETAL』(2024年)だったんですけど、“HYPERHELL”のリリックビデオはニコニコ動画でボカロの映像を作っている方に頼んで、ジャケットもAOTQさん(ボカロP/イラストレーター)にお願いして。そうやって、アートワークから何から何まで本流のメタルコアから外れて、一気に解き放たれていったんですよね。ジャンルとしてのボカロを取り入れるだけに留まらず、自分達の趣向として前に出していったというか。だからリリースカットピアノが前に出る曲も増えていきましたし、言ってみたら一番自由に遊べる場所に気づけた感じがしたんですよ。Earthists.の住所って何なんだろう?と思った時に、自分達の趣向やルーツに素直になることが一番の近道だった。それが今に至るまでの音楽的な道のりだったんじゃないかなと思います」。

 

 作品を重ねるごとにシャウトやスクリームよりもメロディを前に出す楽曲が増加していったことも、上記したYUIの言葉に伴ってのことだろう。コンポーザーであるYuto(Gt&Vo)の艶のあるヴォーカルとYUIのピッチ・スクリームを交錯させて楽曲の性急感が増強されていくアレンジは、ボカロ由来の鍵盤リフとアップダウンの激しい展開を「歌」で接着していく向きから生まれたものなのだと思う。そうして、過激なブレイクダウンでハードコアモッシュを誘発するだけではなく、歌そのものでユナイトする瞬間がライヴの中に生まれ、より多面的な人間の渦がEarthists.の音楽をポップなカオスに変貌させていったのだろう。へヴィでだが雄大な景色を描いていく“HOME”も、楽曲展開こそ王道のロックバラードと言っていいものだが、メロディ自体はコテコテと言っていいほど歌謡性を振り切らせたものであり、それは、Earthists.が常に「歌」の力を横目に見ながら脱皮と挑戦を繰り返してきたことを示している。

 「ボカロカルチャーのノリ、日本的な歌謡なメロディ。それらを取り込んでいった中で日本語詞にトライする気持ちも生まれていったんですけど、正直、元から俺は歌が上手じゃなくて。それでもメロディをつけなくちゃいけないとなった時に、じゃあどうしたらいいんだろう?って考えたんですよ。その時にArchitectsのピッグ・シャウトを聴いて、これをやってみようと思って。そしたら意外と出せたので、“memento mori”で初めて取り入れるようになったんです。そこから徐々にシャウトにも旋律をつけるようになっていって、今に至ってますね」(YUI)

 実際、“SUNBLOOD”のようにどっしりとした楽曲では怒号のような歌で応える観客の姿が多く、さらに“memento mori”といった初期のメタルコアチューンでも、シャウトにシャウトを返す「歌」の応酬がフロアの熱を巨大化させていた。そして“memento mori”の前にYUIが発した「お前らこの煽りが好きだよな? 『初期の曲やりまーす』ってやつ!」というアジテーションも、バンドの始まりから今に至るまでの音楽的な大変化を自覚しているからこそのものだったはずだ(それに応える大歓声とクラウドサーフの大波も壮観だった)。音楽的な羽化を繰り返す中で新たに出会った人、離れていった人、ずっと目の前にいてくれる人。その全部に捧げる言葉が、一見ぶっきらぼうな言葉には表れていたのだと思う。新しい曲も旧い曲も、何度でも生まれ変わっていくのである。そんなバンドのストーリー自体を描き出したライヴの最終盤に繰り出された“SAYYOUKILL”(西遊記と読みます)、“SHAPEBREAKER”、“OVERVISION”の攻勢は、HYPERMETALという屋号を改めて翻訳しているかのように思えた。出自となったメタルへの愛、音楽への敬意があってこその、「形無し」ではなく「型破り」。ここにあるのは単に異端を志したバンドのパーティではなく、愛を捧げるものへの素直さこそが僕の、きみの、お前のユニークネスになっていくのだというメッセージなのだ。

 「いろんな場所に行っていろんな人に出会って、いろんな音楽と出会って。それがバンドっていうライフスタイルの特別さだと思う反面、それが積み重なることで、それがいつしか日常になっていくという事実もある。それでもやっぱり、今日こうしてみんなの顔を見て音を鳴らしてみて、バンドを続けて音を鳴らすことは特別なことなんだと思いました。みんながいることが紛れもなく俺達の支えになっているし、俺達もみんなの支えになれるように進んでいきます。これからも俺達と共に進み続けてください」

 そんな決意表明のような言葉に続いて披露された“HIKARI”は、ここまで書き記してきたEarthists.の音楽的な変遷をさらに極端化させた楽曲だった。四つを打つビートとキラキラしたシーケンスを軸に、ラップと歌唱の間を行き来するメロディ、タオルをぶん回して跳ねるサビが絡み合う本楽曲は、もはやボカロカルチャーとメタルコアとハイパーポップのミクスチャーといった型すら抜け出し、彼らの世代が体感してきたJ-POPへのストレートなリスペクトである。それこそEarthists.の始まりを思い返せば、こんなにも遠くまで音楽的な旅を経てきたこと自体が彼らの唯一無二のユニークネスだと言っていいだろう。“HIKARI”というタイトルも、あなたが僕の光だと直球で告げる歌も、湘南乃風かと見紛うようなタオルの波を巻き起こす様も、音楽愛に対して徹底的にストレート。その真っ直ぐさこそが、誰にも真似できない武器なのだと。たったそれだけを伝える、Earthists.の歴史を丸ごと食らう「未来への走馬灯」みたいなライヴだった。



 


【浜松音球祭2026】

日時:2026年1月17日(土)
会場:浜松窓枠
出演者:Earthists. / and more…

チケット情報: https://eplus.jp/onkyu-sai/
スタンディング ¥6,300(税込・DRINK代別)
※おひとり様:2枚まで
※当日、入場時にドリンク代¥600を別途頂戴いたします。

受付期間:2025年10月19日(日)20:00~2025年10月31日(金)23:59
HP:https://onkyusai.com/

 

10月24日配信予定最新シングル “HIKARI”(読み方:ヒカリ)
Spotify: https://open.spotify.com/intl-ja/artist/2fW1q3e7jiCe9l55PlIcNE?si=a2E5SSpeShGKEgjnbAs6FA
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矢島大地
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