ank "あそび" INTERVIEW!!
ankが、5年ぶりとなる作品であり、フルアルバムとしては初となる『あそび』をリリースした。「バンドも仕事も子育ても、結局は自分で選んでやっている”あそび”なんじゃないか」という気づきから生まれた本作には、リード曲「WANT TRUST OVER THIRTY」をはじめ、活動休止中のSPACE BOYSへの想いを込めた「It's not goodbye, see you again」など、今のankを表現した楽曲が並ぶ。おおご、ジーコ、まやみきの3人に、アルバム制作の背景や収録曲への想いを聞いた。
Text by Chie Kobayashi
Photo by Ryota Matsumoto
バンドってこんなに楽しいんだ
──ankがアルバムをリリースするのは5年ぶりとなりますが、このタイミングでアルバムを作ろうと思ったのはどうしてですか。
おおご(Dr, Cho) 僕はアルカラが好きなんですけど、アルカラって7曲入りぐらいの作品が多いんです。だからか、全曲聴くのにそれくらいの曲数がちょうどいいなってずっと思っていて。ankも5〜7曲ぐらいの作品をずっと作っていたんですが、フルアルバムを作りたいと思ったんです。どうしてそう思ったのかは覚えていないんですけど……。
ジーコ(Gt, Cho) レコーディングはずっとしていたので、レコーディング期間で言ったら2〜3年くらいかけたよね。
おおご 「うれしみ」とか「なんでちょんにゃにかわいいの...?」は今まで通り「思いついたから曲を作ろう」というので作っていって。曲が少しずつ揃っていく中で、「これを音源にするなら、流れがあったほうがいいかも」と思って、そこからはアルバムとしての流れをイメージしながら曲を作っていった記憶があります。そうやって作ったのが「お月」とか「失敗しても大丈夫」。今までそういう曲作りをしたことがなかったので、それは面白かったですね。
──『あそび』というタイトルですが、“あそび”というテーマやコンセプトはいつ決まったのでしょうか?
おおご “あそび”というコンセプトはずっとうっすら自分の中にあったもので。バンドを続けていると、仕方がないんですけど、つらくなったり人生の流れでバンドをやめちゃう友達がどうしてもいて。でもバンドって、もともとは楽しいから始めたものだろうし、楽しいからやっているのにつらくなっちゃうのってもったいないなと思って。
──そうですね。
おおご バンドに限らず、仕事や子育てもそうですよね。子育てのことで奥さんと喧嘩してめちゃくちゃイライラしているときとか、「もともと好きで結婚したし、楽しい生活のなかで子供も作ったのに、なんでイライラしているんだろう」と思った。全部自分で選んでやっているんだから。全部”あそび”じゃんって。
──「いなくなんないで」の<音楽はあそび 人生はあそび>という歌詞ともリンクすると思いますが、ジーコさん、まやみきさんはankの活動に対して遊びという感覚はありますか?
ジーコ はい。ずっと仕事しながらマイペースに続けているバンドなので。食っていくためにやってはいないし、なんならやらないときもあるし。「楽しいからやってる」という感覚です。それはまさにあそびなんじゃないかな。
まやみき(Vo, Ba) ankのライブに来てくれるお客さんって、ライブを本気で楽しんでくれるんですよ。私たちも本気で楽しく音楽をしていて、それが伝わっているんだろうなと思う。だからankを普段から見てくれている人には、このアルバムを聴いて「これが今のankなんだ」って思ってもらいたいし、ankのことを知らない人も「『あそび』っていうことは楽しそうなアルバムなのかな」って思って聴いてくれるのでもいい。とにかく今のankが楽しんでいることを伝えられる作品にできたらと思っていました。

ジーコ コロナ禍明けくらいで、自分たちの考え方が変わったんです。よりピュアに音楽を楽しむためにライブができるようになっていった。コロナ前は、いろんな人の助言を聞いていたし、いわゆる段階を踏んでいかなきゃいけないんじゃないかとかいろいろ考えて、ピュアなだけではいられなかった。その状態でコロナ禍になってしまって。ライブが思うようにはできなくなったときに、バンドを1回止めるかとか、そういう話も出ました。最終的には「楽しいから続ける」という3人が同じ方向を向いた。そのあたりから3人とも毎回ライブが楽しくなってきて。それがお客さんにも伝わってきているんだと思います。
おおご 今のジーコの言ったことが軸かも。コロナ禍でツアーを回ったんですが、ライブがつまらなく感じちゃって。誘われているライブがあったから、それを消化したらバンドを解散しようという状態までいったんです。だけど、辞めることが決まった状態でスタジオに入ったら逆に純粋に楽しむことができたのか、「なんか楽しくね?」と思えて。「楽しいならやめる必要はないね」という気持ちに変わった。それがさっき話したことにつながるんですけど、バンドも仕事も子育ても、「本当は別にやらなくてもいいこと」くらいに思うと楽しめるなと思った。そういう意味での『あそび』というタイトルなのかもしれない。
ジーコ コロナ禍でF.A.D YOKOHAMAの夏目さん(ブッキングマネージャーの夏目浩二氏)が、親身に話を聞いてくれたことも大きくて。「無理してやらなくてもいいんじゃない?たまにやれたらいいんじゃない?」って言いながら、年末の「爆裂FxAxD」に誘ってくれたりして。そこでやったライブで「バンドってこんなに楽しいんだ」って思ったことは、特に鮮明に覚えていますね。
おおご 強引に引き止めるんじゃなくて「自分たちの自由でいいけどね」って。夏目さんってバンドやってないのに、なんであんなにバンドマンの気持ちがわかるんですか?(笑) 本当にすごい。
──止まることを選択しかけていたバンドが、それを経て出すアルバムに『あそび』と冠していると考えると、すごく良いですね。
おおご 今話したような経緯があるから『あそび』になったんだろうなって、今話していて気づきました。
F.A.Dへの感謝、SPACE BOYSへの愛
──ここからは『あそび』収録曲について伺っていきます。夏目さんの話が出たので、「F.A.D」から。この曲ができた経緯を教えてください。
ジーコ F.A.Dの年末イベント「爆裂FxAxD」って、毎年コピー曲を1曲やるんですね。
──“初期衝動コピー”ですね。
ジーコ はい。2022年の爆裂で、コピーをやらずに「新曲を作って持ってきました」といってこの曲を初披露しました。
──コピーしないで曲作ったのはどうしてだったのでしょうか?
おおご コピーはやってもやらなくてもよかったんです。だったら、「新曲やります」って言って新曲をやったらカッコいいかなって。F.A.Dをテーマにした曲をいつか作りたいと思ったこともあったので、作りました。僕らは日本語バンドですが、本当にメロディックパンクが大好きで。OVER ARM THROWだったりSTOMPIN' BIRDだったり、横浜の先輩たちの鳴らすメロディックパンクは、自分の中でも特にコア。だからそういうメロディックパンクへの憧れや愛を曲にしたいと思った。しかも、そういう先輩たちに憧れているだけじゃなくて、一緒にライブもできている、それは夏目さんが繋いでてくれたから。そういうF.A.Dへの感謝や「音楽をやっていてよかったな」という気持ちを、そのまま曲にすることができたらと思って作りました。

──メロディックパンクの先輩に憧れているという話でいうと、「It’s not goodbye, see you again」。この曲は言わずもがな、現在活動休止中のSPACE BOYSへの想いを綴った楽曲ですね。
まやみき この曲は私が作りました。私はおおごくんの曲が好きだし、今のankはおおごくんの曲がいいかなと思っていたから、最近は全然曲を作っていなかったんです。だけど、SPACE BOYSの活動休止を知ったときに、本当に嫌で、その日のうちに曲を作り始めたんです。今まで、いろいろなバンドが活動を止めていって、もちろん悲しいけど「自分たちで選んだことだから仕方ない」と思って受け止めてきたんですけど、SPACE BOYSだけはどうにも気持ちが収まらなくて。
──感情のままに曲を作ったんですね。
まやみき はい。でもただ「好き」とか「嫌だ」っていうことじゃなくて、「あなたたちが絶対に帰ってくると私は信じてるから、それまで代わりに鳴らし続ける。だからどうか帰ってきてほしい」という気持ちを曲にしました。最後のみんなで歌えるパートは、最初はちょっとやりすぎかなと思ったんですけど……。
──SPACE BOYSの「Reality And Hope」のフレーズですもんね。
まやみき はい。だからちょっとだけ外したメロディにするか悩んだんですけど、おおごくんが「いっちゃったほうがいいよ」と言ってくれて。私としてはそのまんまの感じで歌いたかったから、じゃあと思って。みんなでSPACE BOYSを歌える曲になりました。
おおご 俺が客だったら泣くと思う(笑)。同じフレーズを歌っているとき「本当にありがとう」って思うと思う。
まやみき SPACE BOYSのメンバーにも曲を送らせてもらったんですが、めちゃくちゃ喜んでくれて。本人たちが喜んでくれただけで作った意味があるなと思うし、ただLINEや電話で「戻ってきてください」って言うんじゃなくて、曲として残せたことが本当にうれしかったです。ただ、アルバムに入るかは正直、どっちでもよくて。だけど、入ったことで、おおごくんが作る曲との違いも楽しんでもらえたらいいなという気持ちもあります。
おおご 今まやみきが話したように、作った動機がすごくいいなと思ったんです。音楽をやる本質というか。今回のアルバムでは自分たちのスタンスを表現したいと思っていたから、ここまで話してきたF.A.Dのこととか、メロディックパンクが好きなことを伝えるのにも、めちゃくちゃいいなと思った。そのうえで、アルバムの流れとしてその次曲の頭に「おまえの涙がきれいすぎるから」という言葉がきたら(「いなくなんないで」)カッコいいかなということも考えて入れました。
ジーコ 「It’s not goodbye, see you again」はギターフレーズも結構まやみきが考えてくれていたんです。まやみきの純度100%という感じの曲なので、極力僕らは手を加えないくらいのほうが、まやみきも思いを表現できるんじゃないかと思った。
おおご 例えば僕がSPACE BOYSへの思いをまっすぐに書いた曲を出したら計算高いと思われると思うんですよ(笑)。だけどまやみきの曲だったら大丈夫だと思った。
まやみき 私はこういう人間なので、狡猾なことは考えられないから(笑)。あともう一つ思いがあって。ankって今の音楽性になってから長いんですが、結成当初からメロディックパンク界隈でやらせてもらっていたんですね。今のankを見て「なんでankはこの界隈にいるんだろう」って不思議に思っている人もいると思うんですけど、「It’s not goodbye, see you again」がアルバムに入っていることで納得してもらえたらいいなという思いもあります。ankは、私がメロディックパンクに憧れて始めたバンドなので、そのイズムがあるんだよということを残せたら。
ジーコ 現存する、数少ない「半端ねぇNIGHT」出演バンドですから(笑)。
伝えたいのは「WANT TRUST OVER THIRTY」
──アルバムのリード曲は「WANT TRUST OVER THIRTY」。この曲は、それこそアルバムの核になった曲でもあると思うのですが、この曲が出来上がった経緯を教えてください。
おおご ここまで話してきた、今ankがアルバムを作ることになった動機を一番簡潔に言えた曲だと思います。20代前半から25歳くらいまでは、やりたいことやなりたいものがあって、それに届いたり届かなかったりして、ワクワクしていました。だけど、25歳を過ぎたくらいから、やりたいことやなりたいものがあっても「これは無理だろうな……」ってこととかがわかってきてしまって。逆に叶ったら叶ったで、叶った瞬間からワクワクしなくなってしまう。“人生頭打ち感”というか。その時期が結構長かったんですよ。別に困ってもいないし、不自由でもない。むしろ幸せっちゃ幸せなんだけど、別に明日死んでもいいと思っている。それは「すごく満たされて明日死んでもいい!」と思えるというよりは、生きていても別にもうそんなに面白いことないだろうなっていうほうの考え方で。
──わかる気がします。
おおご 今は、バンドも楽しくできているし、結婚して子供が生まれて、その頭打ち感からは抜け出せたんですが、たぶん、例えばまた子育てに慣れたりしたときとかに、あの感覚と出会うときがくると思うんです。だから、あのとき悩んでいたことを忘れたくないなと思ってこの曲を書きました。ankのお客さんの中にも10代、20代の人もいて「大人になったらつまんないな」とか「人生ってそんなもんなのかな」って思ってほしくないし、自分もそう思いたくない。だから"Don't Trust Over Thirty"という言葉へのカウンターとして「WANT TRUST OVER THIRTY」にしました。
──足るを知って満たされた人が歌う曲ってなかなかないと思うんです。みんな「届かない」という状態を歌にするから。だけど、実際は足るを知ってからの人生のほうが長かったりして。30代だからこそ歌える曲ですし、この曲に共感したり励まされたりする人も多いと思います。
おおご 確かにその着眼点はあんまりなかったかも!
──まやみきさん、ジーコさんは、この曲を聴いたときどう思いましたか?
まやみき 名曲ができたなと思いました。ankは結構アナログな曲作りをしているので、最初におおごくんがドラムの打ち込みとボーカルだけの音源を送ってくれるんですね。それを聴いただけで「やばい!」ってなったことを今でも覚えています。
ジーコ 僕も「最高だ!」と思いました。バンドをやらなくても毎日結構幸せに生きられるところもあるんですよね。子供を見ていれば1日があっという間に過ぎていくし。それでも僕らがステージに立つ理由が、この曲に詰まっているなと思いました。俺らはまだ30代中盤までしか生きていないですけど、30歳付近で「ここからどうしたらいいかわからない」という気持ちはわかる。それをわかった上で、ステージに立ってみんなに発信していく。それがすごくいいなと思ったし、曲としても新しいankが出ていて「これはリード曲になるな」と思いました。
まやみき リリース前のライブで「『あそび』というアルバムが出ますよ」という告知をするときに「今までのankの歩み、気づきが全部詰まった作品になっています」と言わせてもらっているんですが、この曲を聴けば、ankが今どういうことを思ってバンドをやっているのか、これからどういうことを一緒に感じてもらいたいのかが、わかってもらえると思います。

誰かの『CRIMSON SQUARE』になってほしい
──ざっと収録曲について伺ってきましたが、本作で特に聴いてほしいポイントをお一人ずつ教えてください。
おおご 僕は、各曲ももちろんですが、流れで聴いてほしい。フルアルバムという想定で曲順を組み立てていったし、曲間の秒数もめっちゃこだわったので。30分くらい時間をもらってしまいますが、その価値はあると思うので、ぜひ流れで聴いてください。
ジーコ ギター的なところで一番気に入っているのは「ノーアイデア!」。間奏に入る直前にブラッシングでチャカチャカって入っているんですけど、そこが本当にいいんですよ。曲にとってもアクセントになっていると思うので、聴いてほしいです。
まやみき 私は「いなくなんないで」。歌っていて気持ちよくて、レコーディングでは「本当に自分は歌が好きなんだな」って思えました。でも本当に全曲素晴らしいので、全曲聴いてほしいです。みんながどの曲を好きになってくれるのかなというのも楽しみです。
──この『あそび』というアルバムは、ankにとってどんな一作になりそうですか?
まやみき この一枚で、たとえばバカ売れするとか、そういうことにはならなくても、ankを知ってくれている人が聴いてくれたら「やっぱりankいいな」って思ってくれると思いますし、まだankに出会っていない人がこの作品に出会ってくれたら気になってくれると思う。今までのank全部入りみたいな一枚で、新たな章の始まりにもなるような大事な一枚が出来上がったと思っています。
おおご 昨日ジーコと、2005年に出たSHAKALABBITSの『CRIMSON SQUARE』っていうアルバムがいまだに最高だなっていう話をしていたんです。また新しい良さを発見できて。SPACE BOYSの『BARNARD'S LOOP』もそう。そういう伝説的なアルバムを目指したいなと思っています。このアルバムが、誰かの『CRIMSON SQUARE』になればいいなと思っています。

ank「あそび」
1. WANT TRUST OVER THIRTY
2. なんでちょんにゃにかわいいの...?
3. うれしみ
4. 失敗しても大丈夫
5. かわいいおれたち
6. F.A.D
7. お月
8. ノーアイデア!
9. It's not goodbye, see you again
10. いなくなんないで
11. 忘れてね
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