
『SAKAI MEETING 2016』第2弾出演アーティスト発表
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Report by Shintaro Kumihashi
Photo by Teppei Kishida
2016.05.16「Rumble Of The Month」@ 豊洲PIT
with 東京スカパラダイスオーケストラ
#パンクロックもスカも、どっちも根っこは同じ
2016年5月16日、豊洲PITにて、東京都内の平日限定マンスリーライブ「Rumble Of The Month」の第一弾が開催された。各公演で強力なゲストアーティストが招かれる中、今回共演するのは日本を代表するスカバンド、東京スカパラダイスオーケストラ。6月22日にリリースする横山健とのコラボシングル「道なき道、反骨の。」の初披露や互いの楽曲の熱演は、ジャンルの垣根を軽々と越えていくKen Bandの現在の高いポテンシャルを存分に感じさせてくれた。また、これからのCrossfaithやサンボマスターとの対バンが、大きな感動を呼ぶライブであることを約束するような圧巻のステージとなった。
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まず、ステージにあがったのは東京スカパラダイスオーケストラ。横山とのコラボ曲のビジュアルでも着用している白いスーツでキメた彼らを、大きな歓声と手拍子で出迎える。「気合入れていくんで、気合で返してくれよ!」と叫ぶ谷中(B.Sax)の言葉通り、「DOWN BEAT STOMP」や「ルパン三世78'」など名曲のオンパレードで、前半戦からオーディエンスの心をがっつり掴んで踊らせる。
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中盤にさしかかると、「Hi-STANDARDのころから好きでした。でも、会って、より好きになりました」「日本のパンクのキングです!」と、谷中がステージに呼び込んだスペシャルゲストは、もちろん横山だ。いつものように「ズラ!」と手を挙げるが、白いジャケットと短パンのスカパラ仕様の姿は新鮮。
谷中「やっとできるね!」
横山「半年やってましたからね」
谷中「ずっと夢でした!」
と互いに喜びを分かち合い、「道なき道、反骨の。」を披露。
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スカパラらしい渋さとノリを兼ね備えた楽曲にオーディエンスは体を揺らす。そして、力強くも丁寧に、日本語詞を歌いあげる横山の姿を目に焼き付けようとステージから目を離さない。無事に初披露を終えた後、喜びを全開に「最高のお客さんだな!」と叫ぶ谷中の姿が強く印象に残っている。ステージ上の誰もが、この10人(スカパラの9人+横山)で力を出し切る約4分半を幸せに感じていたように思う。こんな姿を見せられると、この時間にこそ全てがあると確信して、感動して、ジャンルなどお構いなしで魅せられてしまう。
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それでも、彼らはライブ中には余韻に浸る暇を与えてくれない!(ロックは、パンクは、スカはどこまでもストイックなのだ!) 「兄つぁんたち、オラ、もう1曲やりたいズラ!」と横山が呼びかけ、スカパラによるアレンジで演奏するのは「Punk Rock Dream」。「パンクロックもスカも、どっちも根っこは同じだろ! そういう気持ちでやるわ」との横山の言葉通り、全面的なスカアレンジでもパンクスのアティテュードを感じる、パワフルなステージとなった。
凝縮した2曲が終わり横山が去ったあとも、「Can't Take My Eyes Off You -君の瞳に恋してる-」や「Paradise Has No Border」などの代表曲を余すことなく連発し、観客を目一杯躍らせて、メインアクトのKen Bandへ繋いだ。
#本当すごいバンドだよな。……俺が女だったらぐしょりズラ!
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セットチェンジを終えたあと、今度は見慣れた姿の横山が、Hidenori Minami(G)、Jun Gray(B)、松浦英治(Dr)を引き連れカムバック。「さっきはスカパラ兄さんにお邪魔しました。戻ってきました。Ken Bandです!」の言葉だけで、温まりきった会場がさらにヒートアップ。オープニングは「Sentimental Trash」から「Dream Of You」。熱すぎる声援を堂々とかつ真摯に受け止め、続けざまに演奏する「Summer Of ´99」では、オーディエンスがシンガロングとクラウドサーフでさらに応戦。
「Ken Bandを見に来た人も、スカパラを見に来た人も踊ってくれ!」と呼びかけ、3曲目は「I Don’t Care」。間奏では自身もスカダンスを踊りオーディエンスと一体になる。続く「Let The Beat Carry On」では、イントロ終わりに客席へマイクを投げ入れる。マイクを手にしたキッズが思った通りのタイミングで歌い出してくれず、笑いが起こったりもしたが、曲が始まるとそんなことはお構いなし。気合の入った演奏と、それに応える会場の熱気を見ると、横山のビートは確実に繋がれているのだと実感するし、「Ken Bandのテーマ曲」と自ら評するのにもうなずける。
4曲を終えると、改めて今回のゲスト、東京スカパラダイスオーケストラを紹介。楽屋にいるスカパラ兄さんに聞こえるよう拍手を求め、
「本当すごいバンドだよな。だって演奏だけで持ってっちゃうし、さらに歌モノなんかやられたら、、俺が女だったらぐしょりズラ!……いやいや!汗の話ですよ?(笑)」
と、彼らしく笑いも含めた賞賛の言葉。照れ隠しのようにおどけて見せる姿が、逆にスカパラ兄さんへの賛辞が心からのものだと感じて、多くの人がぐっときたのではないだろうか。
そして、メンバー紹介。Jun Grayに続き松浦が紹介されるが、なぜか「よしこー!!」と彼の奥さんの名前が客席から飛び交う。武道館での流れを踏襲して、3000人の観客から奥さんの名前を呼んでもらう運びに。3、2、1、カウントダウンにかぶせて「ギター、ミナミちゃん!!」。フロアからは大歓声!(笑)Ken「まっちゃんの『よしこー!』ってコールは、6月22日発売のDVDに入ってるので、そちらでご確認ください!」
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併せて、先述のコラボシングルのリリースもちゃっかり告知。テレビ慣れはしていないようだが、ライブハウスでの立ち振る舞いは完成している。
MCで一息つくとJun Gray RecordsのオムニバスでKenco Yokoyama名義で参加した「If the Kids Are United」。SHAM69が79年に発表した曲で、オーディエンスもサビを歌って楽しめるよう横山がレクチャー。曲の中盤では「もっと大きな声が聞こえるまでやめないぞ、おれ!」と、客をあおって盛り上げる。キッズエリアにいる少年少女さえも、声を上げて楽しんでいた。
#スカパラの名曲中の名曲を
その後ギターチェンジで持ち出したのは新しいグレッチギター。本国のグレッチが、使ってくれと言って送ってくれたらしい。そんな代物を「ほしいの?これ」と言いながらフロアにギターを投げ込む……フリをするライブあるあるのジョークをかませつつ、「Boys Don’t Cry」。骨太なギターサウンドが、少年を鼓舞する曲を、より力強く感じさせてくれた。
「今日は武道館でやらない曲をここらへんのブロックにまとめてみました」と話し、プレイするのはThird Time’s A Charmより「Why」。最近のライブではめったにお目にかかることがなかったので、常連のキッズもここぞとばかりにあばれまわり、大いに満足したようだ。
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ここでリトルウエスタンと名付けた新しいグレッチから、ホワイトファルコン「レオ」にギターチェンジ。自身のオフィシャルウェブサイトのギター紹介ページの話にも触れたが、かっこいいギタリストが自らのギターを紹介してくれると、ギターに興味が湧いてくるし、ひいてはバンドに憧れる人も増えるはずだ。この中から名ギタリストが生まれたりするのかと夢想していると、話題は先日出演したテレビ番組「Hey! Hey! NEO!」に。横山がInterFMでパーソナリティを務めるラジオ番組「I Won’t Turn Off My Radio」(6月13日で終了……InterFMさん、続投希望です!)でも取り上げていたが、テレビ出演時のJunの仕草が女性っぽく、オカマ疑惑が浮上しているらしい。真相はというと、「ピンマイクってのがつけられてんすよ。結構(音)拾いますよって言われたんで、この人(横山)が真面目なこと言ってんのに、あっはっは!なんてやばいと思ってこうやって(口にてをあててオネェっぽく)」とのことだ。Junの弁明の言葉に安心したのも束の間、横山による、いつにも増してハードな下ネタ劇場。
家族連れも多かったのでハラハラしながらも、気を取りなおして演るのはMaybe Maybe。そして、間髪入れずに鉄板曲「Punk Rock Dream」。下ネタで会場を置き去りにした男と同一人物とは思えないほどかっこいい! 客席から「健さん抱いて~!」と黄色い声があがるほどだ。
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その後、今夜最もスペシャルな演出が会場を沸かせる。「この対バンが実現してから、今やった「Punk Rock Dream」をスカパラがすげぇ頭使って練習してくれたから、俺たちもなんかやりてぇなと思い始めて……スカパラの曲をやろうと思ってさ」と語りながら紹介された曲は「星降る夜に」! 横山だけでなく多くのロックンロール好きを虜にする甲本ヒロトがスカパラとコラボした名曲。「あー、もうやる前から、この曲が好きなんだって気持ちが湧いてくるわぁ!」その言葉だけでもぐっとくるし、演奏そのものは、言うまでもなく感動した。ブルーハーツとして1987年にデビューして以来、ロックンロールをひたすら追い求める甲本ヒロト。90年代にインディーズからパンクシーンをひっくり返し、パンクのアティテュードを貫き続ける横山。最前線を走り続ける二人が、日本のスカを牽引するスカパラの楽曲によって(間接的ではあるが)繋がり、今、目の前でロックンロールが、パンクが、スカが爆発する。今日は最高の気分だ!
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そうは言いつつも、他人の楽曲ばかりでは少し悔しそうな横山は、ここぞとばかりに自身の名曲を連発。最新アルバムから「I Won’t Turn Off My Radio」、ファーストから「Running On The Winding Road」、そして自らがHUSKING BEEに提供した「Walk」と繋ぐ。こうして畳みかけられると、さまざまな時期にこれほどの名曲を生み出す横山のセンスには改めて驚かされる。
#会場全員で極上のスカダンス
ようやく息をつかせてくれると、恒例のリクエストタイム。それぞれに曲名を叫び、ざわつく中選ばれたのは「I Can’t Smile At Everyone」と「My Shoes」。「My Shoes」は久々の演奏でギターのMinamiが若干の不安を抱えるものの、オーディエンスとの間でグルーブ感も生まれ、この日しか味わえない高揚感に包まれた。
惜しまれながらも、リクエストの時間を終えると、日の丸の旗を羽織る横山。
「いつもこの曲をやる前は、震災後のパンクスの歌を聞いてくれって言うんだけど、今日スカパラと一緒に歌わせてもらって、パンクもスカも、レゲエもハードロックも関係ねえな、ここにあるかないかだけなんだわな! でも便宜上言わせてもらう。震災後のパンクスの歌をきいてくれ『Ricky Punks Ⅲ』!」
いよいよライブは大詰め。いつものようにフロアにマイクを投げ入れ、オーディエンスの歌声から始まる「Believer」。最後の力を振り絞り歌いきる横山に、オーディエンスも力をふりしぼって暴れ尽くす。
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「今日は東京スカパラダイスオーケストラと五分五分のつもりでやるから、俺らだけアンコールってのはなしだわ。やりきって帰るよ」と、今夜のこの時間の終わりが告げられる。「今日は半分はスカパラのお客さんだから、スカダンスめちゃうまいはずだろ? 極上のスカダンス見せてくれよ!」そして、会場全体が明るくなり「Pressure Drop」。誰もが極上のスカダンスを踊りながら、多幸感に満ちた「Rumble Of The Month」の第一弾が終演した。
震災以降、パンクの姿勢を保ったままハードコアとの間にある壁を乗り越え、さらに音楽面ではロックンロールやスカなど原点に回帰していく横山。今の彼からはかつてのジョー・ストラマーのようなかっこよさを感じてならない。音楽面だけでなく、一人の人間としての魅力を含めて彼の音楽がある。そして、我々がそれを目撃することで繋がれていく。横山のかっこよさだけでなく、パンクやロックンロールの懐の深さを改めて体感する夜になった。
余談だが、横山が恐れるスカパラの川上(B)はスカパラのステージ終わりに、「ズラ―!」といって横山とハイタッチをしたらしい。また、北原(Tb)はスカパラのステージで横山がコマさんの風呂敷をすることに対し「いいよ」と言っているらしい。再び共演することがあれば、コマさんに扮した横山とスカパラのメンバーが並ぶ姿が拝めるかもしれない、ぜひその機会があることを願うし、その際はなんとしても足を運んでほしい!
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【SET LIST】
01.Dream Of You
02.Summer Of '99
03.I Don't Care
04.Let The Beat Carry On
05.If the kids are united
06.Boys Don't Cry
07.Why
08.Maybe Maybe
09.Punk Rock Dream
10.星降る夜に / 東京スカパラダイスオーケストラ feat. 甲本ヒロト
11.I Won't Turn Off My Radio
12.Running On The Winding Road
13.Walk
14.I Can't Smile At Everyone
15.My Shoes
16.Ricky Punks III
17.Believer
18.Pressure Drop