COLUMN

ROCK CLASSICS SELECIONS Vol.08 selected by BONE$ aka Shuhei Dohi

この世に数多溢れる名盤と呼ばれる音源の数々。このシーンにおいても、そんなキラキラ金ピカのままに輝き続けるロックのクラシックが存在するわけです。この連載企画"ROCK CLASSICS SELECTIONS"では、現在のシーンに繋がるパンク、ロック、ラウドの名盤を各セレクターにピックアップしてもらい、セレクターの思いと共にお届けしたい。このシーンが好きでCDショップやサブスクでもっとディグりたい! というアナタに捧げる名盤特集。最高のロックエクスペリエンスをどうぞ!
第8回目のセレクターはBONE$ aka Shuhei Dohi。記事のラストには、前回に引き続き、今回のセレクトに基づくオリジナルプレイリスト(Spotify)も掲載しているので、聴いてみて。ラウドのルーツを辿るプレイリスト、どうぞ聴いてくださいませ
 

Select ROCK CLASSICS

Korn “Korn”(1994)

そろそろ秋の風が吹いてきそうな今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今回は、そんな爽やかな季節とは裏腹にジメジメっとした名盤をレビュー。行ってみましょう! Korn“S/T” 

1994年発売のセルフタイトルでありバンドの1stアルバム。前身バンドであるCreepに現在のフロントマンであるジョナサン・デイビスが加入したことによりバンド名をKornに改名し、イモータル・レコードからリリースされたのが本作です。
ちなみにこの名前はマネージャーから「まじ勘弁」が出たとか、Rの文字をひっくり返したのはトイザラスのロゴから取ったとか逸話も。

1994年はオルタナティブロック周辺にとってはまさに激動があった年。Nirvanaのカートコバーンが自殺し、当時頂点にあったグランジムーブメントは一気に崩壊。そんな中リリースされた本作は、下降するグランジブームに取って代わるようにニューメタル/モダンヘビネスのブームのパイオニアとして新たなムーブメントの火付け役となっていきます。
ちなみに、NOFX『Punk in Drublic』も同年リリースであり、これらの作品を境にポップカルチャーがグランジから大きく枝分かれしていったという意味で、1994年は良くも悪くも話題が多かったようです。
 

Kornは当時としては革新的な7弦ギター、5弦ベースを使用したスタイル。
Fear Factory、Sepulturaのようにメタル的なリフアプローチながら、ひたすらシンプルで単純、引きずり倒すようなリフ回し。
さらに不協和音、エフェクターを多用したグルービーでおどろおどろしい音色使いはPrimus、Faith No Moreなどに通ずるものを感じますし、同時にNWAやIce Cubeと言ったウエストコースト・ヒップホップの影響も随所に。彼らの当時のファッションもとてもヒップホップ的。
そして何よりもセンセーショナルだったのはボーカル ジョナサンの歌詞の世界や歌唱法にありました。幼い頃の両親からの虐待、死体検視場での勤務経験から来るエグい歌詞を時に精神異常者のように叫び散らし、時に囁き。楽曲の爆発力と相まって唯一無二の世界観を作り上げてゆきます。
 

「グランジは有名になりたくない症候群」というジョナサン自身の発言からも読み取れるように、Kornはロックスターアティテュードでありながら、グランジの内向的でセンシティブな面を引き継いで新たなアイコンへと変貌します。

当時のKornはハードワーカーであり、ウータン・クラン、ハウス・オヴ・ペイン、バイオハザード、シックオブイットオール、311らと18ヶ月にも及ぶ欧米ツアーを敢行。メンツを見てもいかに新しすぎてドンピシャの対バンがいなかったかが見てとれますよね。そのせいかは分かりませんが、MTVなどからのバックアップを一切受けられなかった彼らはツアーで地道に知名度をあげ1995年に本作は70万枚のセールスに到達しゴールドディスクを獲得し、人気を不動のものにします。

続く2ndアルバム『Life Is Peachy』、3rdアルバム『Follow The Leader』のぶっちぎりのセールス、自身に影響を与えたバンド、友人バンドを引き連れ行ったヘッドラインツアー『Family Values』など。Kornの勢いは止まることはありませんでした。

 Kornが作り上げたモダンヘビネスの雛形は多くのフォロワーを生み出し、栄華を極めたシーンもいつしか飽和。同時期人気だったRage Against the MachineやLimp Bizkitがコンスタントな活動を停止する中、唯一Kornは今日までコンスタントな活動をキープしています。(メンバーの出入りはあったものの)
そこが半端ねーなーっつーか、いいよねポイント最高峰なところなんですよね。ブームを越えて死語となったモダンヘビネスでしたが、当時のキッズ達が成長し現在メタルコアを中心に影響を感じさせるバンドも数多く存在します。

寄せては返す波の如きプレイリストを今回もご用意いたしました。残暑厳しき折、お身体にはお気をつけてご堪能ください。(謎)



Selecter's Profile 


Hollow Suns(Vo/Gt),As We Let Go(Gt),Doggy Hood$(Gt)として活動中する傍ら、Webデザイナー/コーダー/ディレクター、ファッションブランドWeird Nerveのディレクションなども担当。ロック、パンク、ハードコア、ヒップホップに傾倒し、ひたすら東京をレペゼンするが実は福井県出身。東京育ちだということだけは言わせてもらいたい37歳。
https://www.instagram.com/bones0513/
https://twitter.com/bones0513
http://hollowsuns.com/top/


いかがでしたでしょうか、今回の"ROCK CLASSICS SELECTIONS"。
Korn、90年代中後期、あの存在は異端そのもので、今なお世界を代表するロックスターなわけです。そして今の国内ロックシーンにも大きな影響を与えるレジェンドの大名盤。これを聴かずしてラウド好きは語れないでしょう。
それでは、次回もお楽しみに!!

ROCK CLASSICS SELECIONS ARCHIVE 

Vol.19 selected by BONE$ aka Shuhei Dohi - Descendents “Everything Sucks”(1996)
Vol.18 selected by SENTA - TURNSTILE “GLOW ON” (2021)
Vol.17 selected by Taishi Iwami - RED HOT CHILI PEPPERS “BLOOD SUGAR SEX MAGIK” (1991)
Vol.16 selected by Taishi Iwami - The Jesus And Mary Chain “ Psycho Candy”(1985)
Vol.15 selected by BONE$ aka Shuhei Dohi - LIMP BIZKIT "Significant Other"(1999)
Vol.14 selected by TAISHI IWAMI - The Vines "Highly Evolved"(2002)
Vol.13 selected by SENTA - SWITCH STYLE "....TO INFINITY"(1997)
Vol.12 selected by TAISHI IWAMI - Machine Gun Kelly "Tickets To My Downfall"(2020)
Vol.11 selected by BONE$ aka Shuhei Dohi - NOFX “Punk in Drublic”(1994)
Vol.10 selected by TAISHI IWAMI - The Music "The Music"(2002)
Vol.09 selected by SENTA - V.A. "NEW YORK'S HARDEST"(1995)
Vol.08 selected by BONE$ aka Shuhei Dohi - Korn “Korn”(1994)
Vol.07 selected by TAISHI IWAMI - Jet "Get Born"(2003)
Vol.06 selected by SENTA from NUMB - Madball “Set It Off”(1994)
Vol.05 selected by TAISHI IWAMI-GREEN DAY “Dookie”(1994)
Vol.04 selected by BONE$ aka Shuhei Dohi - blink-182 “Enema Of The State”(1999)
Vol.03 selected by SENTA from NUMB - HATEBREED / Satisfaction Is the Death of Desire (1997)
Vol.02 selected by TAISHI IWAMI - Matthew Sweet / 100% Fun (1995)
Vol.01 selected by BONE$ aka Shuhei Dohi - Rage Against the Machine / S/T (1992)