COLUMN

ROCK CLASSICS SELECIONS Vol.15 selected by BONE$ aka Shuhei Dohi

この世に数多溢れる名盤と呼ばれる音源の数々。このシーンにおいても、そんなキラキラ金ピカのままに輝き続けるロックのクラシックが存在するわけです。この連載企画"ROCK CLASSICS SELECTIONS"では、現在のシーンに繋がるパンク、ロック、ラウドの名盤を各セレクターにピックアップしてもらい、セレクターの思いと共にお届けしたい。このシーンが好きでCDショップやサブスクでもっとディグりたい! というアナタに捧げる名盤特集。最高のロックエクスペリエンスをどうぞ!
第15回目のセレクターはBONE$ aka Shuhei Dohi。記事のラストには、前回に引き続き、今回のセレクトに基づくオリジナルプレイリスト(Spotify)も掲載しているので、聴いてみて。メロディックハードコアパンクの伝説的1枚のルーツをご紹介!

Select ROCK CLASSICS

 

LIMP BIZKIT "Significant Other"(1999) 

Recommend by BONE$ aka Shuhei Dohi


皆さんこんにちは。BONE$です。引き続きコロナが世界を席巻し、ライブやコンサートを楽しみにされていた方々には引き続き厳しい時期かもしれません。2021年に入って、こんな状況でも日本では様々なライブやフェスが形を変えてアナウンスをされていますね。世界的に見てもなかなか稀な国なのかもしれません。制約はあるものの、またあの日々が戻ってくるまで暫しの辛抱といたしましょう。

まぁ~ったく、前段の挨拶とは関係ありませんが今回はLIMP BIZKIT "Significant Other"(1999)を見ていきたいと思います。売上枚数的には3rdアルバムの"Chocolate Starfish and the Hot Dog Flavored Water"の方が有名ではあるものの、リンプの方向性を決定したのはこの作品ではなかろうかということと、個人的な好みで2ndアルバムをチョイスいたしました。まずはバンドの結成経緯から見ていきましょう。


ヴォーカリストのフレッド・ダーストを中心にアメリカ フロリダ州ジャクソンビルにて結成。当時各メンバーは他のバンドに所属していたものの、各バンドを去る形でリンプに加入。ギター、ベース、ドラム、ボーカルに加え、当時House Of Painにも所属していたDJ リーサルも加入し5ピースバンドとしてスタートします。
タトゥーの彫師でもあったフレッド・ダーストは、それもあって、当時メキメキと頭角を現していたKORNのメンバーと接近。デモテープを渡し、これをえらく気に入ったKORNのメンバーが猛烈フックアップ。レーベル契約などの手助けや、ツアーのフロントアクトとして大抜擢します。
1stアルバム”Three Dollar Bill, Y'all$”(1997/Interscope)をリリース、モダンヘビネスブームの波、なにより本作に収録された、当時性犯罪で逮捕されたゴシップもあったジョージ・マイケルのカヴァー「フェイス」のミュージック・ビデオがMTVでヘヴィー・ローテーションされたことで人気が爆発。200万枚を超えるセールスを記録。選曲の理由は酷かったものの完全に弾みをつけたリンプは満を辞して本作のリリースへと漕ぎ着けます。


当時のインタビュー映像などでメンバーは「フロリダにはシーンなんてない。やることがないから、ただひたすらガレージで練習した」とも語っており、ある意味フロリダという風土がバンドを培ったのかもしれません。

このコラムでも何度も触れていますが、当時はグランジ~モダンヘビネスへの転換期、モダンヘビネスは大きなうねりを起こし世界を席巻していきます。
その中でも代表的な存在だったRAGE AGAINST THE MACHINE(https://satanic.jp/news/detail/NzA4)、KORN(https://satanic.jp/news/detail/ODgz)、そしてこのLIMP BIZKIT。どのバンドも配分は個々に異なりながら大きな共通点として「ロック/メタル + ヒップホップ」という音楽性だったことがあげられますが、リンプはその中でも群を抜いて分かりやすく2つの音楽性をミックス。そのサウンドが完成したのが本作と言えるでしょう。
DJ リーサルの存在もあって、フレッドのわかりやすいラップがさらに目立ち、ギター ウェスのシンプルで激しいリフ回しや、エフェクティブなクリーンパート、リズム隊の2人も太くグルービー。
さらに音楽的な影響を細かく説明していきたいところもあるんですけど、結構KORNとかぶっている面も多い気がします。私の当時の認識も「KORNの弟分」という感じでした。

しか~し! 本作で状況は一変。
本作は全米初登場1位。全米で700万枚を超えるセールスを叩き出します。

その要因の一つにあげられるのがバンドのキャラ設定。ビジネスマンなフレッドは、ひたすら世間をおちょくるような態度、発言を繰り返しヒール役に徹することで今で言う「バズ」を起こし、話題を攫い続けることで良い意味でも悪い意味でもリンプはデカくなり続けます。
本作に収録されている「Nookie」は女性器の隠語であり曲中でもひたすら連呼(でも筆者はこの曲が1番好き)。続いてビデオカットされた「Break Stuff」も「とにかくぶっ壊せ」というストレートかつ、単純な内容が功を奏しブームを巻き起こします。





このバンド的に最高な状態のバンドは同年、総動員数約40万人を記録し「Woodstock 1999」に出演し伝説のライブをぶちかまし、その地位を決定づけます。

続く3rdアルバム"Chocolate Starfish and the Hot Dog Flavored Water"は売上累計1200万枚を越す大ヒットを飛ばし、無双状態へ突入するものの、ヒール役を突き通しゴシップを連発。そのせいで「軽いバンド」の烙印を押され、徐々にその勢いは衰退、ついにはウェスの脱退にまで発展してしまいます。



ここが彼らにとってキャリアのピークとなるものの、近年ではウェスもカムバックし"Gold Cobra"(2011)をリリースします。それでも10年経っちゃってますね~。



一時期、地球上でもっともダサいバンドのような扱いをされていたリンプですが、最盛期のキッズたちが成長し、影響を垣間見せることで王者の風格を取り戻していると言えるでしょう。
今回もプレイリストを添えさせていただきたいと思いますが、影響などを垣間見せるものでなく、題して「モダンヘビネス 虎の巻」というコンセプトで組んでみました。
何卒何卒。


いかがでしょうか、今回のクラシックセレクション。当時、赤いニューエラをみんな被っていたものです。今聴いても最高にグルーヴィでカッコいいですね。では、次回の連載もお楽しみに!!

Selecter's Profile 


Hollow Suns(Vo/Gt),As We Let Go(Gt),Doggy Hood$(Gt)として活動する傍ら、Webデザイナー/コーダー/ディレクター、ファッションブランドWeird Nerveのディレクションなども担当。ロック、パンク、ハードコア、ヒップホップに傾倒し、ひたすら東京をレペゼンするが実は福井県出身。東京育ちだということだけは言わせてもらいたい37歳。
https://www.instagram.com/bones0513/
https://twitter.com/bones0513
http://hollowsuns.com/top/


####ROCK CLASSICS SELECIONS ARCHIVE 

Vol.17 by TM paint
Vol.16 by KISHI KOUJI - Roy Lichtenstein
Vol.15 by KISHI KOUJI - JIM PHILLIPS
Vol.14 by Hirotton - Mark Foster
Vol.13 by TM paint コラム番外編! サタニック反省会
Vol.12 by Hirotton - Hundertwasser
Vol.11 by KISHI KOUJI - FRANK KOZIK
Vol.10 by TM paint - Melodic Punk Cover Art 2000年ver
Vol.09 by KISHI KOUJI - 佐伯俊男
Vol.08 by Hirotton - BB BASTIDAS
Vol.07 by TM paint - -僕が影響を受けた "90sくらいのMelodic Punk Cover Art" を描くアーティストたち-
Vol.06 by KISHI KOUJI - Boris Tellegen / DELTA
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